-
トップ
>
-
與曾平
與曾平は、
三十年餘りも
律儀に
事へて、
飼殺のやうにして
置く
者の
氣質は
知れたり、
今の
世の
道中に、
雲助、
白波の
恐れなんど、あるべくも
思はれねば、
力はなくても
怪しうはあらず
神の
使であつたらう、この
鳥がないと、
民子は
夫にも
逢へず、
其の
看護も
出來ず、
且つやがて
大尉に
昇進した
少尉の
榮を
見ることもならず、
與曾平の
喜顏にも、
再會することが
出來なかつたのである。