)” の例文
ミトライユは今日でいへば機関砲のことで、日清戦争の頃には軍艦にゑつけてあつたし、又陸軍でも台湾征伐に使つたものである。
風変りな決闘 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
どうせ文鳥を飼うなら、こんな暖かい季節に、この縁側へ鳥籠をえてやったら、文鳥も定めし鳴きかろうと思うくらいであった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とにかく彼はえたいの知れないまぼろしの中を彷徨ほうこうしたのちやっと正気しょうきを恢復した時には××胡同ことうの社宅にえた寝棺ねがんの中に横たわっていた。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「おい、隊長に莫迦ばかな真似はやめろと云え。三十分以内に交替しないと砲撃されるぞ。向うの丘に砲を二門えたのが見えないのか」
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
幾頭の獅子ししける車の上に、いきおいよく突立ちたる、女神にょしんバワリアの像は、先王ルウドヰヒ第一世がこの凱旋門がいせんもんゑさせしなりといふ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
お前は食いしんぼうの癖に手をこまねいてぜんはしを取ることばかり考えていると云い、私を冷血動物で意地の悪い女だとさえ云う。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
乳母は、伏目にじっと赤児の顔を見ていた。頭がぼうとしているらしくわりの悪いところがあったので、疲れている、と、思った。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
一方に白塗のピアノがえ附けてあって、その傍に Liberty の薄絹を張った硝子戸ガラスどがある。隣の室に通じているのであろう。
田舎 (新字新仮名) / マルセル・プレヴォー(著)
(部屋の中央にえた小さな食卓も部屋の隅に取片づけ)子供たちにあんな大金を持たせるのは、いい事じゃないと思いますがね。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私は校庭にゑられた分捕品ぶんどりひんの砲身にすがり、肩にかけたかばんを抱き寄せ、こゞみ加減に皆からじろ/\向けられる視線を避けてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
音のせぬように襖を開けて入ると、子供の時分から見馴れていた赤毛氈あかもうせんを掛けた机が、以前のとおりに壁ぎわにえられてあった。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
私はその亡霊に思う存分の面罵めんばをして腹一杯呶鳴どなりつけて打って打って打ちえてやらなければ気の静まらぬような気持であった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そんなはげしい光線の直射するのにも無頓著むとんじゃくのように、その空地のやや小高いところを選ぶと、三脚台さんきゃくだいえて、その上へ腰かけ
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その間に、わが四隻の戦艦は、横須賀、呉、佐世保、神戸の船渠ドックに入って、装甲をつくろったり、新しく大砲をえつけたりした。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
木村という大きな邪魔者を目の前にえておきながら、互いの感情が水のように苦もなく流れ通うのを二人は子供らしく楽しんだ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
おつぎは浴衣ゆかたをとつて襦袢じゆばんひとつにつて、ざるみづつていた糯米もちごめかまどはじめた。勘次かんじはだかうすきねあらうて檐端のきばゑた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此の観音様も段々繁昌して参り、お比丘さんにおきゅうえて貰えのおまじないをして貰いたいのといって頼みに来るから、私も何も知らないが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その下にだいだいを置き橙に並びてそれと同じ大きさほどの地球儀をゑたり。この地球儀は二十世紀の年玉なりとて鼠骨そこつの贈りくれたるなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
彼は池のほとりにえられた粗末なベンチに腰を下ろして、しばらく静かな景色に見とれていたが、雑木林の中を歩きながら考えた。
首を失った蜻蛉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
四畳の座敷に六人がいる格で一ぜんのお膳に七つ八つの椀茶碗わんぢゃわんが混雑をきわめてえられた。他目よそめとは雲泥うんでいの差ある愉快なる晩餐ばんさんが始まる。
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
宇治山田の米友は、尾州清洲の山吹御殿の前の泉水堀の前へ車をえて、その堀の中でしきりに洗濯を試みているのであります。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一度は「ほんとに気がつきませんで……」といって、三面鏡の化粧台を店員たちに運ばせて、程よい光線の窓際にえて行った。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
双方の侍童がこの絵の箱を御前にえたのである。源氏の内大臣と権中納言とが御前へ出た。太宰帥だざいのそつの宮も召されて出ておいでになった。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「ばかなやつだ。とんまめ。あほうめ。みんな、こらしめのためにこいつのほねのなくなるまで、ぶって、ぶって、ぶちえろ。」
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
このやくもたつといふ言葉ことばが、うたうへでいふ枕詞まくらことばなのです。すなはちこの場合ばあひは、いづもといふ言葉ことばおこすための、ゑことばなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「なア、東作。夜は長げえ、先づ御輿みこしゑて飮むがいゝ、——そのうちにはお富も、一と晩經てば、一と晩だけ年を取るといふものだ」
そこまで腰をえてかかってごらん、一家を成せるかもしれない。まあ、二三年は旅だと思って出かけて行ってみてはどうだね。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
立ちるように吉良兵曹長はさけんだ。獣のさけぶような声であった。硝子玉ガラスだまのように気味悪く光る瞳を、真正面に私にえた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
そして或る夜、——元井エンジが晩めしを済ませ、燭光しょっこうの弱い電燈でんとうの下へ将棋盤をえて、例のとおり自分に話しかけながらこまを並べた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
御神楽歌おかぐらうた一巻をとなはやし踊る神前の活動はやんで、やがて一脚の椅子テーブルが正面にえられ、洋服を着た若い紳士が着席し
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
くと、今度こんどは、あし突張つツぱつてうごかない。まへへ、丁度ちやうどひざところおもしがかる。が、それでもこしゑて、ギツクリ/\一歩ひとあし二歩ふたあしづゝはあるく。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
食卓は、日ざしのいい窓ぎわにえられており、朝倉先生夫妻のほかに、大河無門がもう卓について、三人がはいって来るのを待っていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
空虚からの棺桶は、ローマの国会議事堂前へなぞらえた壇の下に、えられていたが、これはふたたび女生徒に担がれて講堂入口の方へはこばれた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今し方工場から帰つたばかりの嘉吉は、いつもの癖で仕事着のまゝまる飯台はんだいの一方に場広くあぐらにわつて、もうがつ/\やらかしてゐた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
その時もその花畑の中にラジオの車がえてあってさかんうたを歌うていた以外には少しも感興をそそるものはありませんでした。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
私の眼はえつけられた二つのプロジェクターのように、その死体に投げつけられて、動かなかった。それは死体と云った方が相応ふさわしいのだ。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
若くて、恰幅かっぷくがよくて、運動好きのこの先生は、広い校庭に遊動円木ゆうどうえんぼくや、廻転塔かいてんとうなど、つぎつぎに運動器械をえつけて子供を喜ばせていた。
れい御神鏡みかがみがいつのにかえられてり、そしてそのわきには、わたくしはは形見かたみの、あのなつかしい懐剣かいけんまでもきちんとせられてありました。
雪之丞は、そこまでいって、女の了見が、怖ろしいまでにわっているのを見ると、いっそ正直に、何もかも打ち明けた方が——と、思って
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
客間兼帯の書斎は六畳で、ガラスのまった小さい西洋書箱ほんばこが西の壁につけて置かれてあって、くりの木の机がそれと反対の側にえられてある。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
役所では窓に黄いろな日覆ひおおいもできましたし隣りの所長の室には電気会社から寄贈になった直径七デシもある大きな扇風機もえつけられました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「東京へ逃げるなら逃げる、西へ落ちるなら落ちるように早くお決め下さらんとわれわれふたり、度胸どきょうわらんですよ」
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
その方を眺めながら、市郎はぼんやり歩いていますと、そこの木の下に、画架をえて絵を書いている人がありました。
市郎の店 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
潮が引く間に、大河口の奥深く進入して、征服した都市に腰をえるつもりだった。通路は狭く水は荒立っていた。巧妙でなければいけなかった。
そこへ跫音あしおとがして、下のおかみさんが入口のところへ顔を見せた。お媽さんは丼をえたぜんを持って来たところであった。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ここを日本のメロドラマでゆくと、委細いさいみ込んだ姐御あねごが、湯上りの身体を鏡台の前にえて諸肌もろはだ脱いで盛大な塗立工事にかかろうというところ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ひさしの上に目の玉の大きな口を開いて、饅頭笠をかぶったその当時の姿をした郵便屋さんが、手に手紙をもって走っている人形が、えつけてあり
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
「承知しました」と、目をその女性の顔へ焼きつけるようにえたまま、ちょっと上体をかがめてカムポスが挨拶あいさつした。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
たゞかん中庭なかにはにはあのどるめんのちひさいものを、原状げんじようのまゝつてゑてありますから、後程のちほどには御覽下ごらんください。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ゆったりとすわって烟草たばこを二三服ふかしているうちに、黒塗くろぬりの膳は主人の前にえられた。水色の天具帖てんぐじょうで張られた籠洋燈かごランプ坐敷ざしきの中に置かれている。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)