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しずか
ふりがな文庫
“
静
(
しずか
)” の例文
旧字:
靜
世間も
静
(
しずか
)
になり、世の中もかわって来たので、いよいよ故郷に落ちつくことにして、家を建て、細君ももらって新しい生活に入った。
掠奪した短刀
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
朦朧
(
もうろう
)
と見えなくなって、国中、町中にただ
一条
(
ひとすじ
)
、その桃の古小路ばかりが、漫々として波の
静
(
しずか
)
な
蒼海
(
そうかい
)
に、船脚を
曳
(
ひ
)
いたように見える。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただ
静
(
しずか
)
にして居ったばかりでは単に
無聊
(
ぶりょう
)
に苦しむというよりも、むしろ厭やな事などを考え出して終日不愉快な事を
醸
(
かも
)
すようになる。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
夜は
更
(
ふ
)
けた。彼女は椎の
梢
(
こずえ
)
の上に、
群
(
むらが
)
った
笹葉
(
ささば
)
の上に、そうして、
静
(
しずか
)
な暗闇に垂れ下った
藤蔓
(
ふじづる
)
の
隙々
(
すきずき
)
に、亡き
卑狗
(
ひこ
)
の
大兄
(
おおえ
)
の姿を見た。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
が、瑠璃子が、そう声をかけた瞬間、
今迄
(
いままで
)
静
(
しずか
)
であった父が、
俄
(
にわか
)
に立ち上って、何かをしているらしい様子が、アリ/\と感ぜられた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
古ぼけた
葭戸
(
よしど
)
を立てた縁側の
外
(
そと
)
には
小庭
(
こにわ
)
があるのやらないのやら分らぬほどな
闇
(
やみ
)
の中に軒の
風鈴
(
ふうりん
)
が
淋
(
さび
)
しく鳴り虫が
静
(
しずか
)
に鳴いている。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
襖
(
ふすま
)
が
静
(
しずか
)
に開いて現われたのが梅子である。紳士の顔も梅子の顔も
一時
(
いちじ
)
にさっと
紅
(
こう
)
をさした。梅子はわずかに会釈して内に入った。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
何の奇もない穏かな山であると思っていたのが、忽ち骨だらけな
矹々
(
ごつごつ
)
した山と変って行く。其変化の様を
静
(
しずか
)
に観ていると堪らなく面白い。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
母はそれからふっつり口を
利
(
き
)
かなくなった。自分も眼を
眠
(
ねむ
)
った。
襖
(
ふすま
)
一つ隔てた隣座敷には兄夫婦が寝ていた。これは
先刻
(
さっき
)
から
静
(
しずか
)
であった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
旅が、旅程の丁度半分程の処で宿をとつたのですがその国の都と、都から百五十里も離れた
田舎
(
いなか
)
との中間の或る湖畔の街の
静
(
しずか
)
なホテルです。
秋の夜がたり
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
濃厚に
嵩
(
かさ
)
を持って、
延板
(
のべいた
)
のように平たく澄んでいる、大岳の影が万斤の重さで
圧
(
お
)
す、あまり
静
(
しずか
)
で、
心臓
(
ハート
)
形の桔梗の大弁を、
象嵌
(
ぞうがん
)
したようだ
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
単純な装いこそ
相応
(
ふさ
)
わしいのです。自からひかえめがちな、
静
(
しずか
)
な素朴な姿に活きています。人々は呼んでかかる美を「渋さ」と云うのです。
民芸とは何か
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
燈火の下でやる時もあるが、昼間でも
静
(
しずか
)
なときには一室を締めきってとじこもっていた。そんな時、母は大きらいで自分からさきに避けた。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
けだし
静
(
しずか
)
の歌にある「峰の白雪
蹈
(
ふ
)
み
分
(
わ
)
けて入りにし人」は、この橋を過ぎて吉野の裏山から中院の谷の方へ行ったのであろう。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
是
(
こ
)
れが出来れば
斯
(
この
)
道
(
みち
)
の
為
(
た
)
めに誠に有益な事で、私も
大
(
おおい
)
に喜びますが、果して出来るか出来ないか、私は
唯
(
ただ
)
静
(
しずか
)
にして見て居ます。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
が、
静
(
しずか
)
にとって、気になるのは、二十九という良人の若い肉体まで、そのせいか
翡翠
(
ひすい
)
を
削
(
けず
)
ったように
蒼
(
あお
)
く見えることだった。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その六人が六人とも、五十歳以上の老人ばかり揃っていたせいか、まだ春の浅い座敷の中は、肌寒いばかりにもの
静
(
しずか
)
である。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
木の葉が石の上にひたに散ってあるのが下駄にさわる、がさがさする音が耳立って聞える 二人は無言で進む
静
(
しずか
)
なことはこおろぎも鳴かぬ。
八幡の森
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そして、黒い水の中央に、同じ黒さで浮んでいる、一つの岩をめがけて、
静
(
しずか
)
に泳ぎ初めた。水は冷たくも暖かくもなかった。
火星の運河
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
爾
(
そう
)
先
(
さき
)
ッ潜りをするから困る
静
(
しずか
)
に
聞
(
きゝ
)
たまえな、持物の無いのは誰が見ても曲者が手掛りを無くする為に隠した事だから追剥の証拠には成らぬが
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
婆あさんは膳と土瓶とを両手に持って、二人の顔を
見競
(
みくら
)
べて、「まあ、
大相
(
たいそう
)
お
静
(
しずか
)
でございますね」と云って、勝手へ行った。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
夜更
(
よふ
)
けて
四辺
(
あたり
)
静
(
しずか
)
なれば大原家にて人のゴタゴタ語り合う声
幽
(
かすか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆ。お登和嬢その声に引かされて思わず門の外へ
出
(
い
)
でたり。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
朝目がさめるとながいあいだの習慣にしたがって睡後のけだるさが心臓から指の先まですっかりきえてしまうまでは
静
(
しずか
)
に床のなかに仰臥している。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
真面目な、
静
(
しずか
)
な顔付で、色艶が余り好くなくって。口は何事も
堪
(
こら
)
えて黙っているという風な、美しい口なのね。額と目とには気高い処がありますね。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
内儀「はい/\、あの鳶頭、奥の六畳へ連れて行ったらよかろう、離れてゝ
彼所
(
あすこ
)
が一番
静
(
しずか
)
でもあり人が行かないから」
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「騒々しい。
静
(
しずか
)
にお
為
(
し
)
よ。」と、お杉は鋭い声で叱り付けると、怪しい声は
忽
(
たちま
)
ち止んだ。お杉は再び無言で歩み出すと、重太郎も黙って続いて出た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それをまだお白粉の残っている少女の鼻の処へ、ソロソロと近付けつつ、左手で
静
(
しずか
)
に脈を取っているので御座います。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
日
(
ひ
)
はすでに
没
(
ぼっ
)
した。イワン、デミトリチは
顔
(
かお
)
を
枕
(
まくら
)
に
埋
(
うず
)
めて
寐台
(
ねだい
)
の
上
(
うえ
)
に
横
(
よこ
)
になっている。
中風患者
(
ちゅうぶかんじゃ
)
は
何
(
なに
)
か
悲
(
かな
)
しそうに
静
(
しずか
)
に
泣
(
な
)
きながら、
唇
(
くちびる
)
を
動
(
うご
)
かしている。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「お
静
(
しずか
)
な晩ですね。」と声をかけてしまう。すると婆さんは、きっと小さな咳をつづけさまに三つばかりやって
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
失望
落胆
(
らくたん
)
に沈んでいる時にも、もしこれがソクラテス
翁
(
じい
)
さんであったら、この
一刹那
(
いっせつな
)
を
如何
(
いか
)
に処するであろう、と振返って、
静
(
しずか
)
に
焦立
(
いらだ
)
つ精神を
鎮
(
しず
)
めてみると
ソクラテス
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
先刻
(
さっき
)
私を案内して来た男が入口の処へ
静
(
しずか
)
に、影のように現れた。そして手真似で、もう時間だぜ、と云った。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
招ばれて来た町方の
妓女
(
おんな
)
を擬し、白拍子の
静
(
しずか
)
の仮装をした、織江がそこに坐ってい、桐島伴作が付いていた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
白茶色になって来た
田圃
(
たんぼ
)
にも、白くなった小川の
堤
(
つつみ
)
の
尾花
(
おばな
)
にも夕日が光って、眼には見る南村北落の夕けぶり。烏啼き、小鳥鳴き、
秋
(
あき
)
静
(
しずか
)
に今日も過ぎて行く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
アッと驚き
振仰向
(
ふりあおむけ
)
ば、
折柄
(
おりから
)
日は傾きかゝって
夕栄
(
ゆうばえ
)
の空のみ外に明るく
屋
(
や
)
の内
静
(
しずか
)
に、淋し気に立つ彫像
計
(
ばか
)
り。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「あん。」達二は、
垣根
(
かきね
)
のそばから、
楊
(
やなぎ
)
の
枝
(
えだ
)
を一本
折
(
お
)
り、青い
皮
(
かわ
)
をくるくる
剥
(
は
)
いで
鞭
(
むち
)
を
拵
(
こしら
)
え、
静
(
しずか
)
に牛を追いながら、上の原への
路
(
みち
)
をだんだんのぼって行きました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
不吉の前兆のような、無気味な
静
(
しずか
)
さが、原っぱの上全体に押しかぶさって、夕靄が、威圧するように、あたりを
罩
(
こ
)
めていた。そして
颯々
(
さつさつ
)
と雑草を
薙
(
なぎ
)
る
黝黯
(
あおぐろ
)
い風……。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
望
(
のぞみ
)
は達せられずしては満足しない。しかし望の達せられぬ間は、望のある事その事が慰めである。「汝神を待ち望め」とわが魂に告げつつ、
静
(
しずか
)
に待つ者は
幸
(
さいわい
)
なるかな。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
読者はこの語によって、
昧爽
(
まいそう
)
の
静
(
しずか
)
な空気の中に匂う梅の花の趣を感じさえすればいいのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
静
(
しずか
)
に佇立しているようだが、体躯は絶えず上へ上へとのびあがり、今にも歌い出さんばかりである。飛鳥びとの心に宿った信仰の焔を、そのまま結晶せしめたのだろうか。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
その翌日であったが海岸の
楼上
(
ろうじょう
)
で祭礼を見た。それは一つの船には
神輿
(
みこし
)
が乗っていて、一人の男が妙な体の恰好をして太鼓を打っていた。その他にも男がいたが皆
静
(
しずか
)
にしていた。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
もうすっかり日がくれて
蛙
(
かえる
)
の声が
静
(
しずか
)
な野中に聞え、人家には
灯
(
ひ
)
が
点
(
とも
)
されていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ザルツァハの岸の、心持ちの
好
(
い
)
い、
静
(
しずか
)
な所から、二人は市中の
賑
(
にぎや
)
かな所へ出た。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
風
号
(
さけ
)
び雲走り、
怒濤澎湃
(
どとうほうはい
)
の間に立ちて、動かざること
巌
(
いわお
)
の如き日蓮上人の意気は、壮なることは壮であるが、煙波
渺茫
(
びょうぼう
)
、風
静
(
しずか
)
に波動かざる親鸞上人の胸懐はまた何となく
奥床
(
おくゆか
)
しいではないか。
愚禿親鸞
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
子供は
床
(
とこ
)
の中に
静
(
しずか
)
に
睡
(
ねむ
)
っている。母はルパンの手で長椅子の上に横に寝かされて身動きもしない。しかし段々と
呼吸
(
いき
)
も穏かになり、血の気もその頬に
潮
(
さ
)
して来て、ようやく回復の徴候が現れた。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
一通りの検屍を終った喬介は、
傍
(
そば
)
の婦人に向って
静
(
しずか
)
に口を切った。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
義経が日頃、寵愛していた
静
(
しずか
)
という白拍子の娘があった。
現代語訳 平家物語:12 第十二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
母は
静
(
しずか
)
に扉を開きて出で、
静
(
しずか
)
に一
間
(
ま
)
の
中
(
うち
)
をあちこち歩む。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
謝して明窓
浄几
(
じょうき
)
の下に
静
(
しずか
)
に書を読むべきを
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
郊外の冬の夜は
静
(
しずか
)
である。
按摩
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
眠れば
静
(
しずか
)
に
蛍の灯台
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
静
常用漢字
小4
部首:⾭
14画
“静”を含む語句
静寂
静粛
静止
沈静
静心
静謐
寂静
安静
閑静
寝静
静息
動静
静岡
静脈
静坐
物静
静子
幽静
静閑
静々
...