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隙
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ひま
ふりがな文庫
“
隙
(
ひま
)” の例文
したがって生計上に困ることは自然の理で、ようやくその日を
糊
(
のり
)
する位のもので、さらに他を顧みる
隙
(
ひま
)
もなかったことでありました。
幕末維新懐古談:76 門人を置いたことについて
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
あまり
隙
(
ひま
)
な晩に、または用事に、または仲間への御礼返しに……。だからおかみさんにとっても、彼女はごく忠実な抱えっ妓だった。
操守
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
奥へ踏込むところを、折よく外から帰って来たお菊の声におどろいて、何にも盗む
隙
(
ひま
)
もなく、そのまま逃げてしまったというのです。
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その癖、お絹さん、お前さんの好きそうな処ばかりだぜ。……境さん——この人は、まだ休んでいて
隙
(
ひま
)
ですから、そこいら、御案内を
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
クリストフはユーディットの利己心を、その冷血を、その凡庸な性格を、見て取った。彼はすっかり
虜
(
とりこ
)
になってしまう
隙
(
ひま
)
がなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
お雪さんの、血の急流が毛細管の中を
奔
(
はし
)
っているような、ふっくりしてすべっこくない顔には、刹那も表情の変化の絶える
隙
(
ひま
)
がない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
表町
(
おもてちょう
)
で小さい
家
(
いえ
)
を借りて、酒に
醤油
(
しょうゆ
)
、
薪
(
まき
)
に炭、塩などの新店を出した時も、飯
喰
(
く
)
う
隙
(
ひま
)
が惜しいくらい、クルクルと働き詰めでいた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いつも今時分は内科も
隙
(
ひま
)
なのを知つてゐるので、忙しい院長を職務外の事に向けさせるのに、ちやうどいい折だと私はひそかに思つた。
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
そしてその
隙
(
ひま
)
に近所で昼食をしたためて来てから、自分も若夫婦に手を貸して、
埃
(
ほこり
)
の
堆
(
うずたか
)
い
嵩張
(
かさば
)
った荷物を明るい縁先へ運び出した。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
厩から出てゆっくり歩きながらここまで来る
間
(
ま
)
に三分かかっている訳だ。あとは僅に十七分間である。女の事なぞ考えている
隙
(
ひま
)
はない。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
けふもアウレリアが部屋をばおとづれ給ひし檀那達いと多かりき、宿に案内しまゐらするは易けれど、歸るには些の
隙
(
ひま
)
あるべしと答ふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ガルールは二皿の料理を瞬く
隙
(
ひま
)
に平らげ、更になみなみと注いだ酒を飲み乾したが、それで
漸
(
やっ
)
と人心地がついたように、ほっと一息した。
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
おもふに、
人
(
ひと
)
散
(
ちれ
)
ば
演場
(
しばゐ
)
の
蕭然
(
さみしくなる
)
を
厭
(
いと
)
ふゆゑなるべし。いづくにか
出
(
いづる
)
所あらんと
尋
(
たづね
)
しに、此寺の四方
垣
(
かき
)
をめぐらして出べきの
隙
(
ひま
)
なし。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
能登守殿がおっしゃるには、自分はもう今の世では望みのない身体じゃ、この
隙
(
ひま
)
に西洋を見て来たい、いずれ万事は帰ってから後のこと。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いたって少ないわずかな
隙
(
ひま
)
の時間を、昼は園芸に夜は観想に分かち用いていたこの老人にとって、それ以上何が必要であったか。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
新一さんにどうしてそんなことをする
隙
(
ひま
)
があったでしょう。お母さまを縛って逃げた奴が下手人です。新一さんではありません。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あの
折
(
おり
)
は
思
(
おも
)
いの
外
(
ほか
)
の
乱軍
(
らんぐん
)
、
訣別
(
わかれ
)
の
言葉
(
ことば
)
一
(
ひと
)
つかわす
隙
(
ひま
)
もなく、あんな
事
(
こと
)
になって
了
(
しま
)
い、そなたも
定
(
さだ
)
めし
本意
(
ほい
)
ないことであったであろう……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ふいと
背後
(
うしろ
)
に軽い物音がした。それはマリイであった。見返る
隙
(
ひま
)
もない内に、女はそこへ出て来て、輝く目をして、顔を少し赤くしている。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
營
(
いとな
)
み候へ
共
(
ども
)
彼地は至て
邊鄙
(
へんぴ
)
なれば家業も
隙
(
ひま
)
なり
夫故
(
それゆゑ
)
此度同所を
引拂
(
ひきはら
)
ひ少々御
内談
(
ないだん
)
も致度事これありて
伯父上
(
をぢうへ
)
の
御許
(
おんもと
)
へ
態々
(
わざ/\
)
遠路
(
ゑんろ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
というのでこそ/\と
後
(
あと
)
にさがる。此の
隙
(
ひま
)
に宇治の里の亭主手代なども
交
(
かわ
)
る/\詫びますけれども一向に聞入れがありません。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
殊に今もしみじみと
哀
(
あわれ
)
を覚えるは、夕顔の巻、「八月十五夜、くまなき月影、
隙
(
ひま
)
多かる板屋、残りなく洩り来て」のあたり
『新訳源氏物語』初版の序
(新字新仮名)
/
上田敏
(著)
人間は丁度それだ、それぎりだ、結んで、落ちて、流れる
滴
(
したゝり
)
だ。而してその束の間に一の世界を創作して、それを
生
(
い
)
きてゆく
隙
(
ひま
)
をもつてゐる。
落葉
(旧字旧仮名)
/
レミ・ドゥ・グルモン
(著)
折しも秋の末なれば、屋根に
生
(
お
)
ひたる
芽生
(
めばえ
)
の
楓
(
かえで
)
、時を
得顔
(
えがお
)
に色付きたる、その
隙
(
ひま
)
より、
鬼瓦
(
おにがわら
)
の傾きて見ゆるなんぞ、
戸隠
(
とがく
)
し
山
(
やま
)
の
故事
(
ふること
)
も思はれ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
霜夜
(
しもよ
)
ふけたる
枕
(
まくら
)
もとに
吹
(
ふ
)
くと
無
(
な
)
き
風
(
かぜ
)
つま
戸
(
ど
)
の
隙
(
ひま
)
より
入
(
い
)
りて
障子
(
しようじ
)
の
紙
(
かみ
)
のかさこそと
音
(
おと
)
するも
哀
(
あは
)
れに
淋
(
さび
)
しき
旦那樣
(
だんなさま
)
の
御留守
(
おんるす
)
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
自分は日あたりを避けて
楢林
(
ならばやし
)
の中へと入り、
下草
(
したぐさ
)
を敷いて腰を
下
(
お
)
ろし、わが年少画家の後ろ姿を木立ちの
隙
(
ひま
)
からながめながら、
煙草
(
たばこ
)
に火をつけた。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
隙
(
ひま
)
漏る風に手燭の火の揺れる時怪物のようなわが影は
蚰蜒
(
げじげじ
)
の
匐
(
は
)
う畳の上から
壁虎
(
やもり
)
のへばり付いた壁の上に
蠢
(
うごめ
)
いている。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
許宣はびっくりして
弁解
(
いいわけ
)
しようとしたがその
隙
(
ひま
)
がなかった。彼の体にはもう縄がひしひしと喰いついて来た。彼はその場から府庁に曳かれて往った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
我等近づき、一の場所にいたれるとき、さきにわが目に壁を分つ
罅
(
われめ
)
に似たる一の
隙
(
ひま
)
ありとみえしところに 七三—七五
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
『一ッ
車
(
くるま
)
、
何
(
なん
)
だらう?』とは
思
(
おも
)
つたものゝ
考
(
かんが
)
へてる
隙
(
ひま
)
もなく、
軈
(
やが
)
て
砂礫
(
されき
)
の
雨
(
あめ
)
が
窓
(
まど
)
に
降
(
ふ
)
りかゝると
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、二三
人
(
にん
)
して
愛
(
あい
)
ちやんの
顏
(
かほ
)
を
打擲
(
ちやうちやく
)
しました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
水仙の鉢を置いてそれを見て楽しむというのも
畢竟
(
ひっきょう
)
閑
(
ひま
)
があっての上の事で、多忙となるとなかなかそういう悠長なことに時間をつぶしている
隙
(
ひま
)
がない
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
如何
(
いか
)
に答へんとさへ惑へるに、
傍
(
かたはら
)
には貫一の益
詰
(
なじ
)
らんと待つよと思へば、身は
搾
(
しぼ
)
らるるやうに
迫来
(
せまりく
)
る息の
隙
(
ひま
)
を、得も
謂
(
い
)
はれず
冷
(
ひやや
)
かなる汗の流れ流れぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ヤマハハ尋ね来たりて、どこに隠れたかと柴の
束
(
たば
)
をのけんとして柴を
抱
(
かか
)
えたるまま山より
滑
(
すべ
)
り落ちたり。その
隙
(
ひま
)
にここを
遁
(
のが
)
れてまた
萱
(
かや
)
を苅る翁に逢う。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
だが、はたして誰が拾ったか、それを見定める
隙
(
ひま
)
もなく、それッ、と、うしろの方で叫んだ。幸運の餅は反対の隅に向って投げられるところであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
私は犬飼現八と立ち廻りをしながら、
隙
(
ひま
)
を
窃
(
ぬす
)
んで、見物席の何時も貴女が、坐っていた辺りを見ますと、私の感じは私をあざむいてはおりませんでした。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
煙は中天に
満々
(
みちみち
)
て、炎は虚空に
隙
(
ひま
)
もなし。
視
(
まのあた
)
りに見奉れる者、更に
眼
(
まなこ
)
を
当
(
あて
)
ず、遥に
伝聞
(
つたへき
)
く人は、
肝魂
(
きもたましひ
)
を失へり。
法相
(
ほつさう
)
三論の法門聖教、
総
(
すべ
)
て一巻も残らず。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
隙
(
ひま
)
行く
駒
(
こま
)
の足早くて
午
(
うま
)
の歳を迎うる今日明日となった。誠や十二支に配られた動物輩いずれ優劣あるべきでないが、附き添うた伝説の多寡に著しい
逕庭
(
ちがい
)
あり。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「金の調達が
隙
(
ひま
)
どつて、僕の東上が遅れるやうだつたら、Oは死ぬかも知れない。もしかそんなことがあつたら、Oを殺した責任の幾分は君にあるんだから」
恋妻であり敵であった
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼れはこの
隙
(
ひま
)
に兄の方を見た。兄は
眞蒼
(
まつさを
)
な額に玉のやうな冷汗を滴らしながら、いつの間にか椅子から立上つて、腕を組んだまゝぢつと死體を見詰めてゐた。
実験室
(旧字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
乳酪
(
ミルク
)
を買う銭がないので、
隙
(
ひま
)
をつぶして、あっちこっちと情け深い人の恵みを求め歩いた。で、昼はまずどうやらこうやら過ごしていくが、夜が実につらい。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
されど自慢の頬鬢
掻撫
(
かいな
)
づる
隙
(
ひま
)
もなく、青黛の跡絶えず鮮かにして、
萌黄
(
もえぎ
)
の
狩衣
(
かりぎぬ
)
に
摺皮
(
すりかは
)
の
藺草履
(
ゐざうり
)
など、よろづ派手やかなる
出立
(
いでたち
)
は人目に
夫
(
それ
)
と
紛
(
まが
)
うべくもあらず。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
その
隙
(
ひま
)
に、覆面をした、
龕灯提灯
(
がんどうぢょうちん
)
を
提
(
さ
)
げた男が、抜刀のまま、
小
(
ち
)
さい潜戸から大勢
家
(
うち
)
の中へ入って来たのだそうである。泥棒の
人数
(
にんず
)
はたしか八人とか聞いた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
で、弦四郎の一行は、顔を互いに見合わせたが、眼を返すと木立の
隙
(
ひま
)
から、歌声の来る方をすかして見た。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
只
隙
(
ひま
)
さえあれば、道綱を呼びにお寄こしになって、別に
為事
(
しごと
)
もないのにいつまでもお手放しにならなかった。それにはさすがの道綱も殆ど困っているらしかった。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
『右の日、子供は酒の一番火入、われら見世番にて
隙
(
ひま
)
に候間、覺書いたし候——源十郎五十三歳記す』
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
燕の軍戦って
克
(
か
)
てば
則
(
すなわ
)
ち可、克たずんば自ら支うる無き也。
而
(
しこう
)
して当面の敵たる
何福
(
かふく
)
は兵多くして力戦し、
徐輝祖
(
じょきそ
)
は堅実にして
隙
(
ひま
)
無く、
平安
(
へいあん
)
は
驍勇
(
ぎょうゆう
)
にして奇を
出
(
いだ
)
す。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「先日、ゆっくりお話し申す
隙
(
ひま
)
もございませんで名残惜しゅう存じました。じつはあたくし——あなたさまのお帰りを、どんなにお待ち申していたか知れないのです」
初午試合討ち
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
秋に別れて冬になろうと云う此
隙
(
ひま
)
に、自然が一寸静座の
妙境
(
みょうきょう
)
に入る其幽玄の
趣
(
おもむき
)
は言葉に尽くせぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
まだまだと云ってる
中
(
うち
)
にいつしか此世の
隙
(
ひま
)
が明いて、もうおさらばという時節が来る。其時になって幾ら
足掻
(
あが
)
いたって
藻掻
(
もが
)
いたって
追付
(
おッつ
)
かない。覚悟をするなら今の
中
(
うち
)
だ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
且年若より一日も
隙
(
ひま
)
に暮したる事なき身故、何ぞの業を致度候得ども、それもいらぬ事故、念仏を日々の稽古事の様に致し候ゆへ、毎日朝起いたし、夜もはやくは休不申
大久保湖州
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その
隙
(
ひま
)
にプリスタフは頻にソロドフニコフを
宥
(
なだ
)
めてゐる。「先生。どうしたのです。なぜそんなに。それは気の毒は気の毒です。併しどうもしやうがありませんからな。」
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
“隙”の意味
《名詞》
(すき、ひま、ゲキ)ものとものの接合部位に生ずる狭い空間。隙間。
(すき)部分的に無防備となった部位又は状態。
(ひま、ゲキ)不和。仲違い。
(出典:Wiktionary)
隙
常用漢字
中学
部首:⾩
13画
“隙”を含む語句
隙間
罅隙
間隙
空隙
隙漏
寸隙
隙間風
隙々
地隙
隙潰
隙虚
隙取
破隙
裂隙
閑隙
雨隙
其隙
岩隙
隙見
手隙
...