づれ)” の例文
その時茶店の軒へ駆け込んで雨を避ける二人づれ遊人体あそびにんていの男がある。それが小降になるのを待ちながら、軒に立ってこんな話をした。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
或る日学校からの帰り道竜子は電車の中で隣に腰をかけている二人づれの見知らぬ男の口から、茗荷谷みょうがだにという自分の住んでいる町の名と
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
客といっても、多くは殺人騒ぎにきもをつぶして、宿を立ってしまい、あとに残っているのは、河野と私の外に三人づれの男客だけです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しばし有りてをんなどもの口々に呼邀よびむかふる声して、入来いりきし客の、障子ごしなる隣室に案内されたる気勢けはひに、貫一はその男女なんによの二人づれなるを知れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
私と先輩の同窓生で久留米くるめ松下元芳まつしたげんぽうと云う医者と二人づれで、御霊ごりょうと云う宮地みやちに行て夜見世よみせの植木をひやかしてる中に、植木屋が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
馬「旦那御覧ごろうじろ今の三人づれは顔附でも知れるがみんな助平れんで、此家ここの娘を見たばっかりでもう煙草入を忘れてきましたぜ」
むか/\と其声聞度ききたく身体からだむきを思わずくるりとかゆる途端道傍みちばたの石地蔵を見て奈良よ/\誤ったりと一町たらずあるくむこうより来る夫婦づれ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なんでも山を買いたいという男が三人づれで入り込んで来たのを、角三が案内をして、山を回って歩いているあいだに取られてしまったのだそうだ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
綾子が一室にこもりてより、三日目の夕まぐれ、勝手口の腰障子をぬっと開けて、つら出す男、「姉御あねご、姉御。」と二人づれ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引摩々々ひきずり/\來るは如何にもたびなれぬ樣子なりしが夫婦づれの者此寶珠花屋このはうじゆばなや八五郎の見世にこしを打懸やれ/\草臥くたびれたりと云ていき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
崖頂まで大蛇の仲継をたのまにゃならぬとは不似合な話だが、呉の劉綱その妻はん氏とともに仙となり、大蘭山上の巨木に登り鋳掛屋いかけや風の夫婦づれで飛昇したなどその例多し。
町の女房らしい二人づれが日傘を持って這入って来た。彼らも煙草入れを取出して、鉄漿おはぐろを着けた口から白い煙を軽く吹いた。山の手へ上って来るのは中々草臥くたびれるといった。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
恋人同志らしい二人づれの姿が、人気のない海岸の草叢の中に消えてしまった、ということに、他人の色々な臆測は、かえっておせっかいかも知れない、鷺太郎は一寸ちょっと、こんな時
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「先生!」と、声がして、いつもよく、遊びに来る隣家の子供が、兄弟づれでやって来た。譲吉はもう三十に近かったが子供とたわいなく、遊ぶ事が好きで、こうした来客を歓迎した。
大島が出来る話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それから窓の扉も、戀人同士が囁き交す、誓言せいごんの出口に間に合ふだけの幅を殘してめてしまひ、私はこつそり椅子に歸りました。するとそのときその二人づれが這入つて來たのです。
やはり閑静な住宅地が専門らしく、既に二軒ほど、おなじ二人づれの黒装束に襲われていて、一軒のうちでは、後家さんが絞殺され、モウ一軒のうちでは、留守番の男が前額を斬割られていた。
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其後そのうしろの新公園を朝霧の中に濡れた落葉を踏んで凱旋門まで抜けたのは気持を清清すが/″\させた。其処そこで逢つた三人づれの小学の女生徒が黒い服に揃ひの青い帽をかぶつて背嚢はいなうを負うて居たのは可愛かあいかつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ヨカヨカ飴屋は二、三人づれで、一人がうたうと二人がはやした。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
三人づれの客だと、電話であらかじめ女の方へ交渉して、客の方は聯絡れんらくのついている待合まちあいか旅館かへ行ってもらって家へは上げないようにしている。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「その十一番さんというのは、もしや洋服を着た二人づれで、大きなトランクを持っている人ではないかい。そしてゆうべおそくここを立った」
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
軍人の三人づれが改札口から出て、八が立つてゐる方へ、高声に話しながら来る。外にはたれも降りなかつたと見えて、電車はそのまま出てしまつた。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
尋ねて呉しぞ先々草鞋わらんぢといて上るべし二人づれか御前樣大きに御苦勞なり先々御あがりなされ是々お初おくめ我等は何を胡亂々々うろ/\して居やる早く洗足せんそくの湯を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そりゃ好いが、その展覧場へ東風が這入はいって見物していると、そこへ独逸人ドイツじんが夫婦づれで来たんだって。それが最初は日本語で東風に何か質問したそうだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこの釣堀に、四人づれ、皆洋服で、まだ酔のめねえ顔も見えて、帽子はかぶっても大童おおわらわと云う体だ。芳原げえりが、朝ッぱら鯉を釣っているじゃねえか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十二三になる可愛らしい白色いろじろなお小僧さんで、名を宗觀と申して観音寺に居りまする、此の小坊主を案内して来ましたは音助おとすけという寺男で、二人づれで這入って参り
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
夫婦づれで出て来て、国王はただ羅紗ラシャの服を着て居ると云うくらいな事、家も日本で云えば中位ちゅうぐらいの西洋造り、宝物たからものを見せると云うから何かとおもったら、鳥の羽でこしらえた敷物しきものもって来て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
鉱山のお客だとか云う三人づれが、昨夜ゆうべから柳屋の奥に飲みあかしていて、今朝けさ早天そうてんから近所構わずに騒いでいたが、もう大抵騒ぎ草臥くたびれたと見えて、午頃ひるごろには生酔なまよい漸々だんだんに倒れてしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は素早すばやく隙間の上に眼をてがひました。セリイヌの部屋附女中が這入つて來て、洋燈ランプともし、卓子テエブルの上に置いて退さがりました。かうしてこの二人づれがはつきりと私の眼に照し出されたのです。
刑場からの帰途、春泰と良円とは、一足遅れたため、良沢と玄適と淳庵、玄白の四人づれであった。四人は同じ感激に浸っていた。それは、玄妙不思議なオランダの医術に対する賛嘆の心であった。
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
二人の歩いて行く先に、同じような二人づれがあって、その話声の中から早番だの晩番おそばんだのという言葉が漏れ聞える。重吉は思出したように
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もうヘベレケに酔っ払った吉原よしわら帰りのお店者たなものらしい四五人づれが、肩を組んで調子外れの都々逸どどいつ怒鳴どなりながら通り過ぎた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
主人や細君や乃至ないしさん、三平づれが吾輩を吾輩相当に評価してくれんのは残念ながら致し方がないとして、不明の結果皮をいで三味線屋に売り飛ばし
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うれしや人里も近いと思う、月が落ちて明方あけがたの闇を、向うから、洶々どやどやと四、五人づれ松明たいまつげて近寄った。人可懐ひとなつかしくいそいそ寄ると、いずれも屈竟くっきょう荒漢あらおのこで。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
口元の締ったい男で、其の側に居るのは女房と見え、二十七八の女で、頭髪あたまは達磨返しに結び、鳴海なるみ単衣ひとえに黒繻子の帯をひっかけに締め、一杯飲んで居る夫婦づれ旅人りょじん
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なし是より三人づれにて丸龜城下なる後藤半四郎の方へといたりけり又後藤方にては此日は丁度ちやうど稽古日けいこびにておほく門弟もんていあつま竹刀しなひおと懸聲かけごゑかまびしく今稽古けいこ眞最中まつさいちうなる所へ三人は玄關げんくわんかゝ案内あんない
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
月琴げっきんかかえたる法界節の二人づれがきょうの収入みいりを占いつつ急ぎ来て、北へくも南へ向うも、朝の人はすべて希望と活気を帯びて動ける中に、小さき弁当箱携えて小走りに行く十七、八の娘
銀座の朝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「彼の男は、金のために、あんなにいやしくなってしまったのだ。政商づれと結託して、金のためにばかり、動いているらしいのだ。今日の縁談なども、まとまれば幾何いくらと云う、口銭が取れる仕事だろう。ハヽヽヽヽ。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
君江は自分の事から起った騒ぎに拠所よんどころなく、雑巾ぞうきんを持って来て袂の先を口にくわえながら、テーブルを拭いているうち、新しく上って来た二、三人づれの客。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
面倒だからい加減に読んだ。何でも山を買ひたいといふ男が三人づれで入り込んでたのを、角三が案内をして、山をまはつてあるいてるあひだられて仕舞つたのださうだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
桜にちゅうの字の徽章きしょうの着いた学校の生徒が三人づれで、向うからき違って、一件を見ると声を揃えて、(やあ、西岡先生。)と大笑おおわらいをして行き過ぎたが、何のこった知らんと
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅「へえ旦那様もお女中づれかね、やっぱり女ア連れて逃げてござらしったのけえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
市郎は夢のようにの行方を見送っていると、トムの声を聞き付けて、この下男しもおとこも内から出て来た。その話によると、の怪しの老女は北の山奥に棲むおすぎという親子づれの乞食であると云う。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三人づれで向側の蕎麦屋そばや這入はいりかけた時、丁度長小便をし終った清岡はひょろひょろと歩み出で、むこうを眺めながら、「どこの女給だ。おれが行っておごってやろう。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そんなに臆病な癖にして、昨夜ゆうべも髯と二人づれで、怪談を聞きに行ったじゃあないか。」
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は三人づれで日本橋へ出掛けたところを、その男にどこかで見られたものとみえます。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其のほうは此の文治を欺き五十両強請ろうとして参ったか、其の方は市中おかまいの身の上で肩書のある悪人でありながら、夫婦づれにて此の近傍かいわいの堅気の商家あきんどへ立入り、強請騙りをして人を悩ます奴
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
蓄音機が絶え間なく鳴響なりひびいている中から、やがて「お客様ア」と呼ぶ声につれて、二人づれの客が三、四人の女給に取巻かれ、引摺ひきずり上げられるように階段を上って来た。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
代助の右隣みぎどなりには自分と同年輩の男が丸髷にいつた美くしい細君を連れててゐた。代助は其細君の横顔を見て、自分の近付ちかづきのある芸者によく似てゐると思つた。左隣ひだりどなりには男づれ四人許よつたりばかりゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
衣更ころもがえの姿を見よ、と小橋の上でとまるやら、旦那を送り出して引込ひっこんだばかりの奥から、わざわざ駈出すやら、刎釣瓶はねつるべの手を休めるやら、女づれが上も下もひとしく見る目をそばだてたが、車は確に
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
尼「おや/\御夫婦づれで旅をなさいますの、藤心村まで出るとお茶漬屋ぐらいはありますが、此の辺には宿屋がございませんから定めてお困りでしょう、遠慮なしにもっと囲炉裡の側へお寄んなさい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)