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途方
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とほう
ふりがな文庫
“
途方
(
とほう
)” の例文
二人の青年
紳士
(
しんし
)
が
猟
(
りょう
)
に出て
路
(
みち
)
を
迷
(
まよ
)
い、「
注文
(
ちゅうもん
)
の多い
料理店
(
りょうりてん
)
」にはいり、その
途方
(
とほう
)
もない
経営者
(
けいえいしゃ
)
からかえって注文されていたはなし。
『注文の多い料理店』新刊案内
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
渠
(
かれ
)
は
路頭
(
ろとう
)
の
乞食
(
こつじき
)
の
如
(
ごと
)
く、腰を
屈
(
かが
)
め、頭を下げて、
憐
(
あわれみ
)
を乞えり。されどもなお応ずる者はあらざりしなり。
盲人
(
めしい
)
はいよいよ
途方
(
とほう
)
に暮れて
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は、一時、
途方
(
とほう
)
にくれた。拾って来た緑の風呂敷は、メリンスで、こまかい穴が二十も三十もあいている。謂わば、薄汚いものである。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あの口の悪いメリメと云うやつは、側にいたデュマか誰かに「おい、誰が一体日本人をあんな
途方
(
とほう
)
もなく長い刀に
縛
(
しば
)
りつけたのだろう。」
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蜜柑
(
みかん
)
は袋共に食へとか、芋の養分は中よりも外皮に多しとか、
途方
(
とほう
)
もなき養生法をとなへて人の腸胃を害すること驚き入つたる次第なり
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
「ああ、あたしは……」と妖女は胸を
大濤
(
おおなみ
)
のように、はげしく
慄
(
ふる
)
わせた。思いがけない大きな驚きに全く
途方
(
とほう
)
に暮れ果てたという形だった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「やさしい、
酒屋
(
さかや
)
の
小僧
(
こぞう
)
さんが、
途方
(
とほう
)
にくれていますから、
水先案内
(
みずさきあんない
)
をしてやります。」と、
鷭
(
ばん
)
は、かわいらしい
目
(
め
)
を
上
(
あ
)
げて
太陽
(
たいよう
)
を
見
(
み
)
ました。
酒屋のワン公
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そこでこの問題は夫婦間だけでは解決がつかなくなって来て、祖母はどうしていいか、
途方
(
とほう
)
に暮れてしまったのだ。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
ことに
途方
(
とほう
)
もない高値を吹かれて、とても手がとどかないと思ったあとであるから、いっそうそれが欲しくなった。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
何と答えて好いか解らないので、むしろ
途方
(
とほう
)
に暮れた顔をしながら涙を眼にいっぱい
溜
(
た
)
めていた。兄はそれを見て
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思いもかけぬ『変態性慾の心理遺伝』なぞいう
途方
(
とほう
)
トテツもない夢遊発作を見せられたために、吾れ知らずその夢遊発作の暗示作用に引っかけられて
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
まったく
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れたのであろう。
春信
(
はるのぶ
)
の
顔
(
かお
)
を
見
(
み
)
あげたおせんの
瞼
(
まぶた
)
は、
露
(
つゆ
)
を
含
(
ふく
)
んだ
花弁
(
かべん
)
のように
潤
(
うる
)
んで
見
(
み
)
えた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
しかし新吉は、そこですっかり
途方
(
とほう
)
にくれてしまいました。叔父さんの家はどっかへ引っこしてしまって、その引っこし先もまるでわからなかったからです。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
私
(
わたくし
)
は
全
(
まった
)
く
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れ、
泣
(
な
)
くにも
泣
(
な
)
かれないような
気持
(
きもち
)
で、ひしと
枕
(
まくら
)
に
噛
(
かじ
)
りつくより
外
(
ほか
)
に
詮術
(
せんすべ
)
もないのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
大工
(
だいく
)
は、こう
独
(
ひと
)
り
言
(
ごと
)
をいいながら、ただあきれて
途方
(
とほう
)
にくれて、川の
水
(
みず
)
をぼんやりながめていました。
鬼六
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
親譲りの田畑を売った金で買った黒馬が、
天下一
(
てんかいち
)
と自慢していた見事な黒馬が、そんなことになったらどうでしょう。甚兵衛はこれには
途方
(
とほう
)
にくれてしまいました。
天下一の馬
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
親譲りの山も林もなくなりかゝってお吉心配に病死せしより、
齢
(
とし
)
は
僅
(
わずか
)
に
十
(
とお
)
の冬、お辰浮世の
悲
(
かなし
)
みを知りそめ
叔父
(
おじ
)
の
帰宅
(
かえ
)
らぬを困り
途方
(
とほう
)
に暮れ居たるに、近所の人々
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
折節
(
おりから
)
孰
(
いづ
)
れも
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
お
)
りましたから、
取敢
(
とりあ
)
へず
之
(
これ
)
を
遣
(
や
)
ツて
見樣
(
みよう
)
と
云
(
い
)
ふので、
父親
(
ちゝおや
)
が
子供
(
こども
)
の
兩足
(
りようあし
)
を
捕
(
とら
)
へて
中
(
ちう
)
に
釣
(
つる
)
し、
外面
(
そと
)
を
向
(
む
)
かして
膝
(
ひざ
)
で
脊髓
(
せきずい
)
を
撞
(
つ
)
きました、トコロガ
手療法一則:(二月例会席上談話)
(旧字旧仮名)
/
荻野吟子
(著)
蜃気楼とは、
乳色
(
ちちいろ
)
のフィルムの表面に
墨汁
(
ぼくじゅう
)
をたらして、それが自然にジワジワとにじんで行くのを、
途方
(
とほう
)
もなく巨大な映画にして、大空に映し出した様なものであった。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お手紙はいかにも拝見しましたが、なにやらいっこう通じない文意で、
途方
(
とほう
)
にくれたこってした。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そうして、行きかえりに寝台の前に立ちどまって、その
屍衣
(
しい
)
を透して見える美しい死骸のことを考えているうちに、
途方
(
とほう
)
もない空想が私の頭のなかに浮かんで来ました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
恐らくそういう最悪の時には、大多数の国民は、ただ
途方
(
とほう
)
にくれて右往左往するばかりだろう。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
わたしは、いったいどう考えたらいいものか
途方
(
とほう
)
に暮れて、こっちが泣き出さんばかりだった。年こそ十六になっていたけれど、わたしはまだほんの
赤
(
あか
)
ん
坊
(
ぼう
)
だったのである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
もし歴史が
後
(
うしろ
)
に控えていなかったら、あの簡単に見える
草履
(
ぞうり
)
一つだって作るのに
難儀
(
なんぎ
)
をするでありましょう。一枚の紙だとて、どうして作るか、
途方
(
とほう
)
にくれるでありましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
此方
(
こつち
)
に
理
(
り
)
が
有
(
あ
)
らうが
先方
(
さき
)
が
惡
(
わ
)
るからうが
喧嘩
(
けんくわ
)
の
相手
(
あひて
)
に
成
(
な
)
るといふ
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
い、
謝罪
(
わび
)
て
來
(
こ
)
い
謝罪
(
わび
)
て
來
(
こ
)
い
途方
(
とほう
)
も
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
だと
我子
(
わがこ
)
を
叱
(
しか
)
りつけて、
長吉
(
ちようきち
)
がもとへあやまりに
遣
(
や
)
られる
事
(
こと
)
必定
(
ひつぢやう
)
なれば
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
取っつかまえるということになると、わたしは驚いて
途方
(
とほう
)
に暮れてしまうのです
世界怪談名作集:17 幽霊の移転
(新字新仮名)
/
フランシス・リチャード・ストックトン
(著)
もし憑きものだとすれば、こんな奇妙な憑きものは
前代未聞
(
ぜんだいみもん
)
だし、もし憑きものでないとすれば、こんな
途方
(
とほう
)
もない
出鱈目
(
でたらめ
)
を次から次へと思いつく気違いはいまだかつて見たことがない。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
十勝に
跨
(
またが
)
る針葉樹の
処女林
(
しょじょりん
)
には、アイヌを連れた技師技手すら、踏み迷うて
途方
(
とほう
)
に暮るゝことがある、
其様
(
そん
)
な時には峰を
攀
(
よ
)
じ、峰に
秀
(
ひい
)
ずる蝦夷松椴松の百尺もある梢に
猿
(
ましら
)
の如く攀じ
上
(
のぼ
)
り
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
例
(
れい
)
のビール
樽
(
だる
)
船長
(
せんちやう
)
は
此時
(
このとき
)
私
(
わたくし
)
の
頭上
(
づじやう
)
に
當
(
あた
)
る
船橋
(
せんけう
)
の
上
(
うへ
)
に
立
(
た
)
つて、
頻
(
しき
)
りに
怪
(
あやし
)
の
船
(
ふね
)
の
方向
(
ほうかう
)
を
見詰
(
みつ
)
めて
居
(
を
)
つたが、
先刻
(
せんこく
)
遙
(
はる
)
か/\の
海上
(
かいじやう
)
に
朦乎
(
ぼんやり
)
と
三個
(
さんこ
)
の
燈光
(
ともしび
)
を
認
(
みと
)
めた
間
(
あひだ
)
こそ、
途方
(
とほう
)
も
無
(
な
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたものゝ
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「
途方
(
とほう
)
もない。どうして、そう底抜けに、兵力が必要なのか」
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
という
途方
(
とほう
)
もない尋ね。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
一同は
途方
(
とほう
)
に暮れた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
きりはこあめにかわり、ポッシャンポッシャン
降
(
ふ
)
ってきました。
大臣
(
だいじん
)
の子は
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れたように目をまんまるにしていました。
虹の絵の具皿:(十力の金剛石)
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
男
(
おとこ
)
は、
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れはててしまいました。なお、そこここと
口
(
くち
)
を
探
(
さが
)
して
歩
(
ある
)
きましたが、やはりいい
口
(
くち
)
が
見
(
み
)
つかりませんでした。
おかしいまちがい
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ましてナイフを落した時には
途方
(
とほう
)
に暮れるよりほかはなかった。けれども
晩餐
(
ばんさん
)
は幸いにも
徐
(
おもむ
)
ろに最後に近づいて行った。
たね子の憂鬱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
とみは、
途方
(
とほう
)
にくれた人のように窓外の葉桜をだまって眺めた。男爵も、それにならって、葉桜を眺めた。にが虫を噛みつぶしたような顔をしていた。
花燭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
戦車の中に、幽霊が現れるなんて、
途方
(
とほう
)
もない話だ。相当、戦場ではたらいてきた戦車なら、そのとき戦死した勇士の幽霊が、出てくるかもしれない。
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
宗助も
途方
(
とほう
)
に暮れて、発作の治まるのを穏やかに待っていた。そうして、
緩
(
ゆっ
)
くり御米の説明を聞いた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二郎は一目その顔を見ると、まるでお化けにでも出会った様に、「ワッ」と、
途方
(
とほう
)
もない叫声を立てたかと思うと、いきなりクルッと向きを変えて、
滅茶苦茶
(
めちゃくちゃ
)
に駈け出した。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いやしくも『叔女』であり、おまけに公爵夫人ともあろう人に、返事をしないわけにはゆかず、ではどう返事をするかという段になると——母は
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れざるを得なかった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
『イヤそう
言
(
い
)
われると
俺
(
わし
)
はうれしい。』とお
爺
(
じい
)
さんもニコニコ
顔
(
がお
)
、『
最初
(
さいしょ
)
この
人
(
ひと
)
を
預
(
あず
)
かった
当座
(
とうざ
)
は、つまらぬ
愚痴
(
ぐち
)
を
並
(
なら
)
べて
泣
(
な
)
かれることのみ
多
(
おお
)
く、さすがの
俺
(
わし
)
もいささか
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れたものじゃが、 ...
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
それでも僧侶として、わたしの良心の
呵責
(
かしゃく
)
は今まで以上にわたしを苦しめ始めました。わたしはいかなる方法で自分の肉体を抑制し、浄化することが出来るかについて、まったく
途方
(
とほう
)
に暮れたのです。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
今日
(
きょう
)
は雨が欲しく、風が
恋
(
こい
)
しく、
蔭
(
かげ
)
がなつかしい五月下旬の日であった。
蝉
(
せみ
)
の
音
(
ね
)
、色づいた麦、耳にも眼にもじり/\と
暑
(
あつ
)
く、
光
(
ひか
)
る緑に眼は
痛
(
いた
)
い様であった。
果然
(
かぜん
)
寒暖計
(
かんだんけい
)
は
途方
(
とほう
)
もない八十度を
指
(
さ
)
した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「
途方
(
とほう
)
もねえ野郎だの。……うむ、それで」
顎十郎捕物帳:06 三人目
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
かれは
途方
(
とほう
)
にくれた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、もう
途方
(
とほう
)
もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
注文の多い料理店
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
途方
(
とほう
)
に暮れたのは新蔵で、しばらくはただお敏の背をさすりながら、叱ったり励ましたりしていたものの、さてあのお島婆さんを向うにまわして
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いまのところ、まだ五、六
人
(
にん
)
ですが、なにしろこんな
時勢
(
じせい
)
で、それさえ
荷
(
に
)
が
重
(
おも
)
すぎ、ときどき
途方
(
とほう
)
にくれますよ。
子供は悲しみを知らず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼は
途方
(
とほう
)
に暮れて、なおもうろうろしていた。するとそこへ走ってきた一台のトラックが、
傍
(
わき
)
へぴたりと停った。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
なまけ者の空想ほど、ばかばかしく
途方
(
とほう
)
もないものはない。悪事千里、というが、なまけ者の空想もまた、ちょろちょろ
止
(
と
)
めどなく流れ、走る。何を考えているのか。
懶惰の歌留多
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“途方”の意味
《名詞》
向かうべき方向。
手段。方法。
道理。筋道。
(出典:Wiktionary)
途
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“途”で始まる語句
途
途中
途端
途々
途切
途絶
途轍
途次
途上
途断