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見得
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みえ
ふりがな文庫
“
見得
(
みえ
)” の例文
急の
剣閃
(
けんせん
)
におどろいて一時戸を離れたのが、相手なしの
見得
(
みえ
)
と知ると、またコッソリ水口に帰ってきて、呼吸を殺して
隙
(
すき
)
見している。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
両親は私の書くものを一番ケイベツしていたので、その申しひらきの
見得
(
みえ
)
もありなかなかに人生ユカイなものの一つであったのだ。
落合町山川記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
とひょいと立つと、
端折
(
はしょ
)
った
太脛
(
ふくらはぎ
)
の
包
(
つつ
)
ましい
見得
(
みえ
)
ものう、ト身を返して、
背後
(
うしろ
)
を見せて、つかつかと
摺足
(
すりあし
)
して、奥の
方
(
かた
)
へ駈込みながら
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
墨江は、
咽
(
むせ
)
び泣いてしまった。どうあろうかと案じていた胸の
凝
(
こ
)
りが、いちどに解けて、
見得
(
みえ
)
もなく、両手をついて
欣
(
うれ
)
し泣きに云った。
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あとでその話をすると、子供のくせに詰まらない
見得
(
みえ
)
をするから悪い、なんでも知らないことは正直に訊くものだと、父や母に叱られた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
切れもしない刀を抜いては
嘔吐
(
へど
)
の出るような
見得
(
みえ
)
を切って得意になっているのが、
田舎廻
(
いなかまわ
)
りならとにかく、江戸のまんなかではやっている。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
見得
(
みえ
)
を
搆
(
かま
)
はず
豆
(
まめ
)
なり
栗
(
くり
)
なり
氣
(
き
)
に
入
(
い
)
つたを
喰
(
た
)
べて
見
(
み
)
せてお
呉
(
く
)
れ、いつでも
父樣
(
とゝさん
)
と
噂
(
うわさ
)
すること、
出世
(
しゆつせ
)
は
出世
(
しゆつせ
)
に
相違
(
さうゐ
)
なく、
人
(
ひと
)
の
見
(
み
)
る
目
(
め
)
も
立派
(
りつぱ
)
なほど
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
簡衣粗食
(
かんいそしよく
)
、
見得
(
みえ
)
ばらぬ設備、不屈な活溌な習慣——これらが、私の學校及び生徒たちによつて、毎日守られてゐることです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
市中の電車に乗って
行先
(
ゆくさき
)
を急ごうというには
乗換場
(
のりかえば
)
を
過
(
すぎ
)
る
度
(
たび
)
ごとに
見得
(
みえ
)
も
体裁
(
ていさい
)
もかまわず人を突き
退
(
の
)
け
我武者羅
(
がむしゃら
)
に飛乗る
蛮勇
(
ばんゆう
)
がなくてはならぬ。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
こんな
見得
(
みえ
)
をした時がよかったとか、この時の着附けはこうだとか、誰の芸風はこうで彼はこうと、自分たちの興味も手つだってよく話してくれた。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかし生活改善、簡易生活等の流行語と、実際的な必要とから洋服通勤諸子の家庭について、パンという物は決して
洒落
(
しゃれ
)
や
見得
(
みえ
)
ではなくなって来た。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
落目になっていると言うものの、昔からの通り一丁目の沢屋で、付き合いも派手で、
出銭
(
でせん
)
も惜しみないのは江戸ッ子らしい主人の
見得
(
みえ
)
であったのです。
銭形平次捕物控:376 橋の上の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ドテッ腹へ風穴をあける」なぞと大きな事を云い合いながら、いつまでも何もし得ない支那人式喧嘩を
見得
(
みえ
)
にしている、気の毒な民族であったのだ。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
世俗的な
見得
(
みえ
)
や打算が含まれてゐないのだと信じれば信じるほど、彼女は、真実な魂を動かす目に見えない権威が
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
あっぱれ恩威
並
(
ならび
)
行われて候と陛下を
小楯
(
こだて
)
に五千万の見物に向って気どった
見得
(
みえ
)
は、何という醜態であるか。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
それから、切って了った
見得
(
みえ
)
で、ダンビラを投げ出すと、何物かを
袖
(
そで
)
で隠して、かたえのテーブルの所まで行き、ドサッという音を立てて、それを卓上に置いた。
踊る一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と畳みたる枕を抱えながら立ち上る。そんなことを言わずに、これ、出してくれよと下から出れば、ここぞという
見得
(
みえ
)
に勇み立ちて
威丈高
(
いたけだか
)
に、私はお湯に参ります。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
大杉にはこういう児供げた
見得
(
みえ
)
を切って空言を吐く癖があったので、この見得を切るのが大杉を花やかな役者にもしたが、同時に奇禍を買う原因の一つともなった。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
白木のやつは、どうやらドイツ軍人たちに、この暗号の鍵は、われわれの手によらなければ永久に発見できないであろうといったような
見得
(
みえ
)
を切って来たものらしい。
暗号音盤事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこに泣き
崩
(
くず
)
れている小平太の姿と見較べていたが、恥も
見得
(
みえ
)
も忘れて、心の底を
曝
(
さら
)
けだした男の意気地なさに、ただもう胸が迫るばかりで、何とも言うことができない。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
悲しみを
怺
(
こら
)
えて爽快げな
見得
(
みえ
)
を切りながら古い自作の「新キャンタベリイ」と題する
Ballad
(
うまおいうた
)
を、六脚韻を踏んだアイオン調で朗吟しはじめたが一向
利目
(
ききめ
)
がなかった。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
鏡の前へ
一寸
(
ちよつと
)
嘘坐
(
うそずわ
)
りして中を
覗
(
のぞ
)
くと、今の紫の襟が黒くなつた顔の傍に、
見得
(
みえ
)
を切つた役者のやうに光つて居た。
良人
(
をつと
)
が居ないのだからと鏡子は不快な
投
(
なげ
)
やり
心
(
ごゝろ
)
を
起
(
おこ
)
して立つた。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
平生
派手
(
はで
)
に作っている外見は相当な若さに見せる典侍も年は五十七、八で、この場合は
見得
(
みえ
)
も何も捨てて
二十
(
はたち
)
前後の
公達
(
きんだち
)
の中にいて気をもんでいる様子は醜態そのものであった。
源氏物語:07 紅葉賀
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
計算されていますから私共は分子の形や
構造
(
こうぞう
)
は
勿論
(
もちろん
)
その
存在
(
そんざい
)
さえも
見得
(
みえ
)
ないのです。
手紙 三
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
度々
(
たび/\
)
遊びに来る、其の頃の名主と申しては中々幅の利いた者ですから、名主様の座敷へ出る時は、働き女でも
芸妓
(
げいしゃ
)
でも、まア名主様に出たよなどと申して
見得
(
みえ
)
にしたものでございます。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その中に
二銭
(
にせん
)
の
団洲
(
だんしゅう
)
と呼ばれた、
和光
(
わこう
)
の
不破伴左衛門
(
ふわばんざえもん
)
が、
編笠
(
あみがさ
)
を片手に
見得
(
みえ
)
をしている。少年は舞台に見入ったまま、ほとんど息さえもつこうとしない。彼にもそんな時代があった。……
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そうだ、
姐
(
ねえ
)
さん。こいつァ
何
(
なに
)
も、あっしらばかりの
見得
(
みえ
)
じゃァごあんせんぜ。
春信
(
はるのぶ
)
さんの
絵
(
え
)
で
売
(
う
)
り
込
(
こ
)
むのも、
駕籠
(
かご
)
から
窺
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
せてやるのも、いずれは
世間
(
せけん
)
へのおんなじ
功徳
(
くどく
)
でげさァね。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
然
(
しか
)
し、それもこれもつまりは
勝負事
(
しようぶごと
)
に
勝
(
か
)
ちたいといふ
慾
(
よく
)
と、
誇
(
ほこり
)
と、
或
(
あるひ
)
は
見得
(
みえ
)
とからくるのかと
思
(
おも
)
ふと、
人間
(
にんげん
)
の
卑
(
いや
)
しさ
淺
(
あさ
)
ましさも
少々
(
せう/\
)
どんづまりの
感
(
かん
)
じだが、
支那人
(
しなじん
)
の
麻雀
(
マアジヤン
)
ばかりとは
言
(
い
)
はず
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
虚飾
(
かざり
)
だの
見得
(
みえ
)
だの外聞だの、ないしは
儀礼
(
ぎれい
)
だのというようなものを、セセラ笑っている人間なのさ。が、他面からいう時には、浮世の下積みになっている、憐れな人間だということができる。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
命がけで入り込んで、生殖の為に一命を果した彼
無名犬
(
ななしいぬ
)
の死骸を、
欅
(
けやき
)
の根もとに
葬
(
ほうむ
)
った。向うの方には、二本投げ出した
前足
(
まえあし
)
に
頭
(
あたま
)
をのせて、
頬杖
(
ほおづえ
)
つくと云う
見得
(
みえ
)
でデカがけろりとして眺めて居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
中には、もう、変化になり終られた岩井半四郎が、
被衣
(
かつぎ
)
を冠って、俯せになっております。これに、花四天がからみまして押戻しが出、そして、引っぱりの
見得
(
みえ
)
となって、幕になるので御座います。
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
「紳士諸君」ちょいとドラマティックに
見得
(
みえ
)
を切って
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
幕切の
見得
(
みえ
)
。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
しかし彼自身は一心一念、苦痛も
見得
(
みえ
)
も何物も
顧
(
かえり
)
みる
暇
(
いとま
)
はない——片足を無理に急がすおかしさはその時かえって涙ぐましいものだった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芝居気たっぷりの片手斬りに大向うを
唸
(
うな
)
らせようという
見得
(
みえ
)
から出たのでもなく、はしなく
嗾
(
そそのか
)
し得たり少年の狂——と春濤がうたった通りの
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
という
見得
(
みえ
)
半分の意地っ張りから、
蔵前
(
くらまえ
)
人形問屋の若主人
清水
(
きよみず
)
屋伝二郎は、前へ並んだ小皿には箸一つつけずに、雷の
怖
(
こわ
)
さを払う下心も手伝って
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
芸人には
見得
(
みえ
)
がある。とりわけて女の師匠は自分の花見の景気をつけるために、弟子以外の団体を狩り出さんとして、しきりに運動中であるらしい。
半七捕物帳:40 異人の首
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「つまらねエ
見得
(
みえ
)
を張りあがるな、側に美しい新造でも居る時は、八さんとか、八
兄哥
(
あにい
)
とか言つてやるよ、
平常
(
ふだん
)
使ひはガラツ八で澤山だ。贅澤を言ふな」
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
時
(
とき
)
の
流行
(
りうかう
)
といへば、
別
(
べつ
)
して
婦人
(
ふじん
)
が
見得
(
みえ
)
と
憧憬
(
しようけい
)
の
的
(
まと
)
にする……
的
(
まと
)
となれば、
金銀
(
きんぎん
)
相
(
あひ
)
輝
(
かゞや
)
く。
弓
(
ゆみ
)
を
學
(
まな
)
ぶものの、
三年
(
さんねん
)
凝視
(
ぎようし
)
の
瞳
(
ひとみ
)
には
的
(
まと
)
の
虱
(
しらみ
)
も
其
(
そ
)
の
大
(
おほ
)
きさ
車輪
(
しやりん
)
である。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「こう落ちぶれたら、
見得
(
みえ
)
も
糸瓜
(
へちま
)
もかまっちゃアいられないからね。実は女給か何かにしたいと思っているんだがね。僕から言出しちゃチトまずいからな。」
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
上杉
(
うえすぎ
)
といふ
苗字
(
めうじ
)
をば
宜
(
よ
)
いことにして
大名
(
だいめう
)
の
分家
(
ぶんけ
)
と
利
(
き
)
かせる
見得
(
みえ
)
ぼうの
上
(
うへ
)
なし、
下女
(
げじよ
)
には
奧樣
(
おくさま
)
といはせ、
着物
(
きもの
)
は
裾
(
すそ
)
のながいを
引
(
ひ
)
いて、
用
(
よう
)
をすれば
肩
(
かた
)
がはるといふ
ゆく雲
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
見得
(
みえ
)
にでも言つてみるもので、いざとなれば、それぞれ平凡な主婦として、一切の運命に甘んじるのだと、彼も内心高をくくつてゐるにはゐるが、それにしても
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
雲井に近きあたりまで出入することの出来る立身出世——
玉
(
たま
)
の
輿
(
こし
)
の風潮にさそわれて、
家憲
(
かけん
)
厳しかった家までが、
下々
(
しもじも
)
では一種の
見得
(
みえ
)
のようにそうした家業柄の者を
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と、そこまでは、
威勢
(
いせい
)
のいい声を出して、
見得
(
みえ
)
を切ったが、その後で、急に
情
(
なさ
)
けない声になって
人造人間戦車の機密:――金博士シリーズ・2――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この年になってもまだ
稚気
(
ちき
)
を失わぬ、それ
故
(
ゆえ
)
にこそ珍重すべき老人が、子供らしく
見得
(
みえ
)
を切った。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
結局が
百日鬘
(
ひゃくにちかずら
)
と
青隈
(
あおぐま
)
の
公卿悪
(
くげあく
)
の目を
剥
(
む
)
く
睨合
(
にらみあ
)
いの
見得
(
みえ
)
で幕となったので、見物人はイイ気持に
看惚
(
みと
)
れただけでよほどな
看功者
(
みごうしゃ
)
でなければドッチが上手か下手か解らなかった。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
同時に、その間一ヶ月間市長の椅子を
空
(
から
)
っぽにした責任を負うというので、市会議長の沢田氏が辞職すると大
見得
(
みえ
)
を切ったところを、「マアマア」が出て来てゴタゴタさした。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
彼は折々突然に開き直って、いとも
鹿爪
(
しかつめ
)
らしく
唸
(
うな
)
り出すと
大業
(
おおぎょう
)
な
見得
(
みえ
)
を切って斜めの虚空を
睨
(
ね
)
め尽したが、おそらくその様子は誰の眼にも空々しく「法螺忠」と映るに違いないのだ。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
「こうなると、
銭金
(
ぜにかね
)
のお
客
(
きゃく
)
じゃァねえ。こちとらの
見得
(
みえ
)
になるんだ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
それも、余人がいうならともかく、呂布が自分の口で、(おれは平和主義だ)と、
見得
(
みえ
)
を切ったなどは、近ごろの珍事である。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“見得”の意味
《名詞:みえ》
「みえ」を参照。
(出典:Wiktionary)
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
得
常用漢字
小5
部首:⼻
11画
“見得”で始まる語句
見得坊
見得仆
見得張
見得者
見得装飾