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茫然
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ぼんやり
ふりがな文庫
“
茫然
(
ぼんやり
)” の例文
その
日
(
ひ
)
は
風
(
かぜ
)
もなく、
波
(
なみ
)
も
穏
(
おだ
)
やかな
日
(
ひ
)
であったから、
沖
(
おき
)
のかなたはかすんで、はるばると
地平線
(
ちへいせん
)
が
茫然
(
ぼんやり
)
と
夢
(
ゆめ
)
のようになって
見
(
み
)
えました。
赤い船
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
(
茫然
(
ぼんやり
)
してると、
木精
(
こだま
)
が
攫
(
さら
)
ふぜ、
昼間
(
ひるま
)
だつて
用捨
(
ようしや
)
はねえよ。)と
嘲
(
あざけ
)
るが
如
(
ごと
)
く
言
(
い
)
ひ
棄
(
す
)
てたが、
軈
(
やが
)
て
岩
(
いは
)
の
陰
(
かげ
)
に
入
(
はい
)
つて
高
(
たか
)
い
処
(
ところ
)
の
草
(
くさ
)
に
隠
(
かく
)
れた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
何故行ったか判らないが、少し
狂気染
(
きちがいじ
)
みた女だから、何だか夢のようにふらふら出掛けたらしいよ。で、
明
(
あく
)
る日
茫然
(
ぼんやり
)
帰って来たんだ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とまれ強悪の村井長庵がものした金を又ものされ、手出しもならず口を開き、
茫然
(
ぼんやり
)
立ったという所に、この物語の興味はあろうか。
村井長庵記名の傘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夫婦は
他
(
ひと
)
の働くさまを夢のように眺め、
茫然
(
ぼんやり
)
と考え沈んで、通り過ぎて行きましたのです。板橋村を離れて旅人の群に逢いました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
無論
(
むろん
)
です、けれど
本船
(
ほんせん
)
の
當番
(
たうばん
)
水夫
(
すゐふ
)
は
眼
(
め
)
の
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
に、
情
(
こゝろ
)
の
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
です、
一人
(
ひとり
)
は
茫然
(
ぼんやり
)
して
居
(
ゐ
)
ます、
一人
(
ひとり
)
は
知
(
し
)
つて
知
(
し
)
らぬ
顏
(
かほ
)
をして
居
(
ゐ
)
ます。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
もはや部屋のなかには電気がついてゝ戸は立てられてあった、そして
淡黄色
(
うすきいろ
)
い光りが
茫然
(
ぼんやり
)
と部屋の中程を浮かさるゝやうになって見えた。
かなしみの日より
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
茫然
(
ぼんやり
)
と突っ立っている私の耳にも、店の方から番頭や小僧たちのどやどやと駈け出して来る
跫音
(
あしおと
)
が聞こえてきたのでございます。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ついぞ
學資
(
がくし
)
と
云
(
い
)
ふ
問題
(
もんだい
)
を
頭
(
あたま
)
に
思
(
おも
)
ひ
浮
(
うか
)
べた
事
(
こと
)
がなかつたため、
叔母
(
をば
)
の
宣告
(
せんこく
)
を
受
(
う
)
けた
時
(
とき
)
は、
茫然
(
ぼんやり
)
して
兎角
(
とかく
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
さへ
出來
(
でき
)
なかつたのだと
云
(
い
)
ふ。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
『
私
(
わたし
)
は
是非
(
ぜひ
)
怠惰屋
(
なまけや
)
になるのだ、
是非
(
ぜひ
)
なるのだ』と
言張
(
いひは
)
つて
聽
(
き
)
かない。
櫻
(
さくら
)
の
皮
(
かは
)
を
剥
(
む
)
くどころか、
家
(
いへ
)
の
隅
(
すみ
)
の
方
(
はう
)
へすつこんで
了
(
しま
)
つて
茫然
(
ぼんやり
)
して居る。
怠惰屋の弟子入り
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
握
(
にぎ
)
り向ふを
佶
(
きつ
)
と見詰たる手先に
障
(
さは
)
る
箸箱
(
はしばこ
)
をば
掴
(
つか
)
みながらに
忌々
(
いま/\
)
しいと怒りの餘り
打氣
(
うつき
)
もなく
側
(
かたへ
)
に
茫然
(
ぼんやり
)
坐
(
すわ
)
りゐて獨言をば聞ゐたる和吉の
天窓
(
あたま
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
かの女は
茫然
(
ぼんやり
)
としてゐた。墓に行く気も起らなければ、野の道を歩いて見る気にもなれなかつた。母親からはよく叱られた。
百合子
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
私は一言も言はずに
茫然
(
ぼんやり
)
立つてゐたので、すた/\と夕暗の中を走つて行つたが、五六間行くと後ろを振返つて、手を顏の前で左右に動かした。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
×「殿様
此者
(
これ
)
は
喰
(
くら
)
い酔って居まして唯詰らねえことを云ってたんで出鱈まえで、唯
茫然
(
ぼんやり
)
、変な話なんで、嘘を云ったんで」
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『ア、美しい女!』と栄一は思つたが、羞しかつたから障子を閉めて
茫然
(
ぼんやり
)
何とはなしに考へて居た。父の声が下にする。
死線を越えて:01 死線を越えて
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
煤だらけな顔をした耄碌頭巾の好い若い衆が気が抜けたように
茫然
(
ぼんやり
)
立っていた。刺子姿の消火夫が忙がしそうに雑沓を縫って往ったり来たりしていた。
灰燼十万巻:(丸善炎上の記)
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
良久
(
しばらく
)
して
覘
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
ると
魚
(
うを
)
の
歩兵
(
ほへい
)
の
姿
(
すがた
)
はなくて、モ
一人
(
ひとり
)
の
方
(
はう
)
が
戸
(
と
)
の
側
(
そば
)
に
地面
(
ぢべた
)
の
上
(
うへ
)
に
坐
(
すわ
)
つて、
茫然
(
ぼんやり
)
空
(
そら
)
を
凝視
(
みつめ
)
てゐました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
が、雪江さんも悪くない、なぞと思いながら、
茫然
(
ぼんやり
)
机に頬杖を突ている脊中を、誰だかワッといってドンと
撞
(
つ
)
く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
と、苦もなく言つて、
茫然
(
ぼんやり
)
窓越しに向うの空を眺めて居る。暮れの遲い空には尚ほ一抹の微光が一片二片のありとも見えぬ薄雲のなかに美しう宿つて居る。
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
昼食後も亦元の所に坐って
茫然
(
ぼんやり
)
薄日の差す霜解けの庭を眺めていたが、三時を過ぎると物憂げに立上って、気の進まぬように着物を着替え初めたのだった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
余りの事に
呆
(
あき
)
れて口も利けなくなって、
茫然
(
ぼんやり
)
と鸚鵡を見つめていると、赤鸚鵡は構わずに叫び続けた——
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
此方
(
こっち
)
までが、人の
譏
(
そし
)
りも世間の義理も、見得も
糸瓜
(
へちま
)
もかまわぬ気になって、ただ
茫然
(
ぼんやり
)
と夢でも見ているような、半分痲痺した呑気な
心持
(
こころもち
)
になって、一日顔も洗わず
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
院長
(
いんちょう
)
は
茫然
(
ぼんやり
)
とブロンジンのドクトルを
見
(
み
)
たが。『しかし
公平
(
こうへい
)
に
考
(
かんが
)
えなければなりません。』と
云
(
い
)
うた。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「どうしましょうね。大丈夫でしょうか」お島は庭の方を捜してから、これも
矢張
(
やっぱり
)
そこいらを捜しあぐねて、蚊帳の外に
茫然
(
ぼんやり
)
坐っている房吉の傍へ帰って来て言った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何しろ彼は、商売仲間では
隼
(
はやぶさ
)
英吉と云う名で通って居る
丈
(
だ
)
けに、年は若いが腕にかけては
確乎
(
しっかり
)
したものである。
尾行
(
つけ
)
られて居るのも知らない程
茫然
(
ぼんやり
)
して居よう
筈
(
はず
)
はない。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
十兵衞感応寺にいたりて朗圓上人に
見
(
まみ
)
え、涙ながらに辞退の旨云ふて帰りし其日の味気無さ、煙草のむだけの気も動かすに力無く、
茫然
(
ぼんやり
)
としてつく/″\我が身の
薄命
(
ふしあはせ
)
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
その間ステーションで
茫然
(
ぼんやり
)
と待って居らなければならぬ。腹は減るし目的は達せず
凡夫
(
ぼんぶ
)
という者はこんなつまらぬ考えをするものかと思うような
愚痴
(
ぐち
)
も実は心の中に浮びました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
車
(
くるま
)
は
八百膳
(
やをぜん
)
に
止
(
と
)
まりて
人
(
ひと
)
は
奧深
(
おくふか
)
く
居
(
ゐ
)
るを、
憎
(
に
)
くさげな
評
(
ひよう
)
いふて
見送
(
みおく
)
るもあり、
唯
(
たゞ
)
大方
(
おほかた
)
にお
立派
(
りつぱ
)
なといひて
行
(
ゆき
)
過
(
す
)
ぐるも
有
(
あり
)
しが、
美尾
(
みを
)
はいかに
感
(
かん
)
じてか、
茫然
(
ぼんやり
)
と
立
(
た
)
ちて
眺
(
なが
)
め
入
(
い
)
りし
風情
(
ふぜい
)
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
飛んだところで掴まってしまった、と美佐子は心配して、初子を呼びに行こうと思ったが、この場を離れたら百合子が
嘸
(
さ
)
ぞ困るだろうと思い、思案にあまって
茫然
(
ぼんやり
)
していると、吉川が
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
両親
(
ふたおや
)
に対しては前よりも
一入
(
なお
)
言わぬ。何処をあてともなく
茫然
(
ぼんやり
)
として溜息をつく。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
しかし、検事は未だに半信半疑の面持で、
莨
(
たばこ
)
を口から放したまま
茫然
(
ぼんやり
)
と法水の顔を
瞶
(
みつ
)
めている。それに法水は、皮肉に微笑みながらも、ハートの史本を繰りその
頁
(
ページ
)
を検事に突き付けた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
松田はまだ馴染も少ないので
茫然
(
ぼんやり
)
としていたが、日が暮れてから三田が来て
恨なき殺人
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
一心に毎日の仕事をしている中にも、ふと、家のことを思い出すと、仕事の手を留めて、
茫然
(
ぼんやり
)
とその事を考えている。今頃、父はどうしていられることだろう。母様は何をしていられることか。
幕末維新懐古談:18 一度家に帰り父に誡められたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
落ちつく空はない、とかくに気の重い人夫どもを促して、登りかける、実を言うと、どの方面へ向いて、何処を登っているのだか、もう解らない、人夫もみんな初めての途で、
茫然
(
ぼんやり
)
しているばかりだ
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
日暮れがたにはたゞ
茫然
(
ぼんやり
)
と、空を眺めて涙ぐむ
植物一日一題
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「…………。」辰は默つて
茫然
(
ぼんやり
)
してゐた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
ぢいつと
茫然
(
ぼんやり
)
黄昏
(
たそがれ
)
の中に立つて
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
「小間使でありますよ。」と教えたが、
耐
(
たま
)
りかねたか、ふふと笑った。
青年
(
わかもの
)
の
茫然
(
ぼんやり
)
拍子抜のした顔を上げた時、奥の
方
(
かた
)
で女の笑声。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は
茫然
(
ぼんやり
)
佇んだまま室の中を見廻わした。夫れはガランとした大きな室で、机と椅子とは置いてあるが、人の姿は見えなかった。
人間製造
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
貧しい職人
体
(
てい
)
の男も居る。中には
茫然
(
ぼんやり
)
と眺め入って、どうしてその日の
夕飯
(
ゆうめし
)
にありつこうと案じ
煩
(
わずら
)
うような
落魄
(
らくはく
)
した人間も居る。
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
多少
(
たせう
)
はヒステリーの
所爲
(
せゐ
)
かとも
思
(
おも
)
つたが、
全然
(
ぜんぜん
)
さうとも
決
(
けつ
)
しかねて、しばらく
茫然
(
ぼんやり
)
してゐた。すると
御米
(
およね
)
が
思
(
おも
)
ひ
詰
(
つ
)
めた
調子
(
てうし
)
で
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
怪しい者は小さくなって、
窟
(
いわや
)
の奥へ逃げ込んで
了
(
しま
)
った。お葉は
茫然
(
ぼんやり
)
と立っていた。重太郎も黙って
其
(
その
)
顔や
容
(
かたち
)
に
見惚
(
みと
)
れていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
日はとっぷり暮れたが月はまだ登らない、時田は
燈火
(
ひ
)
も
点
(
つ
)
けないで片足を敷居の上に延ばし、柱に
倚
(
よ
)
りかかりながら、
茫然
(
ぼんやり
)
外面
(
そと
)
をながめている。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
私は一言も言はずに
茫然
(
ぼんやり
)
立つてゐたので、すた/\と夕暗の中を走つて行つたが、五六間行くと後ろを振返つて、手を顔の前で左右に動かした。
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それから一年程経つて失敗に失敗を重ねて、
茫然
(
ぼんやり
)
田舎に帰つて行つた相だが、間もなく徴兵の
鬮
(
くじ
)
が当つて高崎の兵営に入つたといふ
噂
(
うはさ
)
を聞いた。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
そこに出ておいでなさるお若さんを珍らしそうにながめ、
何
(
なん
)
だか
変挺
(
へんてこ
)
の様子で考え、まことに
茫然
(
ぼんやり
)
といたして居ります。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
帰ろうと思っても、帰ることが出来ず、家では親達が心配しているだろうと思うと一刻も
茫然
(
ぼんやり
)
してはいられず、だんだん心細くなって来て泣き出した。
稚子ヶ淵
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そして彼女は丁度野原に遊びに行って、遠く草のなかに自分の洋傘を置いて花をつみながら、振りかへったやうな心持がした。そして彼女は
茫然
(
ぼんやり
)
した。
青白き夢
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
そして私が
茫然
(
ぼんやり
)
している間に、またどのくらいかの時が過ぎ去ったのであろう。突然部屋の静寂は破られた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
打合せてあった通り石子刑事は
茫然
(
ぼんやり
)
待っていた。渡辺が成功した事を伝えると、彼は
雀躍
(
こおど
)
りして喜んだ。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
茫
漢検1級
部首:⾋
9画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“茫然”で始まる語句
茫然自失
茫然飛入老婆房