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熾
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さかん
ふりがな文庫
“
熾
(
さかん
)” の例文
一たび愛慾の
迷路
(
めいろ
)
に入りて、
七五
無明
(
むみやう
)
の
七六
業火
(
ごふくわ
)
の
熾
(
さかん
)
なるより鬼と化したるも、ひとへに
七七
直
(
なほ
)
くたくましき
性
(
さが
)
のなす所なるぞかし。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
と、両方の手へ、仮面をかぶった顔をのせて、
熾
(
さかん
)
に、火の粉を吹きあげて来る修羅のさわぎを、
他人事
(
ひとごと
)
のように見下ろしていました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
即ち予州は極めて
僻在
(
へきざい
)
の地ながら俳句界の牛耳を取る証拠にしてこの事を聞く
已来
(
いらい
)
猶更小生は『ほととぎす』を永続為致度念
熾
(
さかん
)
に起り申候。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
かと思うと、すぐあとから
鮮
(
あざやか
)
なやつが、一面に吹かれながら、
追
(
おっ
)
かけながら、ちらちらしながら、
熾
(
さかん
)
にあらわれる。そうして不意に消えて行く。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それはこの記者を
生擒
(
いけどり
)
にして、新聞紙の上で
熾
(
さかん
)
に賛成論を書き立てさせたら、屹度
効力
(
ききめ
)
があるだらうと思つたからだつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
彼等
(
かれら
)
は
他人
(
たにん
)
の
目
(
め
)
を
偸
(
ぬす
)
むのには
幾多
(
いくた
)
の
支障
(
さはり
)
、それは
其
(
そ
)
の
爲
(
ため
)
に
相
(
あひ
)
慕
(
した
)
ふ
念慮
(
ねんりよ
)
が
寧
(
むし
)
ろ
却
(
かへつ
)
て
熾
(
さかん
)
に
且
(
か
)
つ
永續
(
えいぞく
)
することすら
有
(
あ
)
りながら
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
『人身生理学』は中学校程度の教科書としては
甚
(
はなは
)
だくわしいもので、そのころ知識欲の
熾
(
さかん
)
であった私の心を
刺戟
(
しげき
)
したのみでなく、その文章はたとえば
呉秀三先生
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
言いさま
整然
(
ちゃん
)
として坐り直る、怒気満面に
溢
(
あふ
)
れて男性の意気
熾
(
さかん
)
に、また仰ぎ見ることが出来なかったのであろう、お雪は袖で顔を
蔽
(
おお
)
うて
俯伏
(
うつぶし
)
になった。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わが奇を好む心は、かの
露肆
(
ほしみせ
)
の主人が言に
挑
(
いど
)
まれて、愈〻
熾
(
さかん
)
になりぬ。われは人なき處に於いて、はじめて此卷を
繙
(
ひもと
)
かん折を、待ち兼ぬるのみなりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
其の後の
煖爐
(
ストーブ
)
には、フツ/\音を立てなが石炭が
熾
(
さかん
)
に燃えてゐる。それで此の室へ入ると
嚇
(
くわツ
)
と上氣する位
煖
(
あツた
)
かい。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
あるひはまた彼が一派一流の狭き画法に
拘泥
(
こうでい
)
するの
遑
(
いとま
)
なかりしが如き、これ皆その観察力の鋭敏なると写生の狂熱
熾
(
さかん
)
なるによるものに非らずして何ぞや。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ところが、生活慾の
熾
(
さかん
)
な、刻々と転進して行く生は、私を徒にいつまでも涙のうちに垂込めては置きますまい。
偶感一語
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
而して私共はこの大海のただ中の甲板上に立って、私共を出口まで引張って来た所の三人の恩人を顧みて、
転
(
うた
)
た感謝の念を
熾
(
さかん
)
にせざるを得ないのであります。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
しかし自分の想像では、男子は生理的に女子とよほど
異
(
ちが
)
った所があって、処女には性欲の自発がないにかかわらず、若い男子にはそれが反対に
熾
(
さかん
)
であるらしい。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
私は心の内に、焔をあげてパチパチ燃え上る
熾
(
さかん
)
な焚火を想像して、早く泊り場所へ着きたいものだと思った。
然
(
しか
)
し今日の難関は未だ切抜けられた訳ではなかった。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
害を加えた物に対して
快
(
こころよ
)
くない感情を
惹起
(
ひきおこ
)
すのは人の情であって、殊に未開人民は復讐の情が
熾
(
さかん
)
であるから、木石を
笞
(
むちう
)
って僅に余憤を洩す類のことは
尠
(
すく
)
なくない。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
彼等
(
かれら
)
は
朝
(
あさ
)
起
(
を
)
きて先づ火焚き塲の火を
熾
(
さかん
)
にし、
食物調理
(
しよくもつてうり
)
を爲し、
飮食
(
いんしよく
)
を終りたる後は、或は食物
原料採集
(
げんれうさいしう
)
に出掛け、或は器具製造に
從事
(
じうじ
)
し、日中の
時
(
とき
)
を
費
(
つひや
)
したる後
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
「どうぞ
此方
(
こちら
)
へ」と案内した、導かれて二階へ上ると、
煖炉
(
ストーブ
)
を
熾
(
さかん
)
に
燃
(
た
)
いていたので、ムッとする程
温
(
あった
)
かい。
煖炉
(
ストーブ
)
の前には三人、他の三人は少し離れて椅子に寄っている。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
斯
(
かく
)
なして
尚
(
なほ
)
貧民等は市街を横行なせる事は日を追つて
熾
(
さかん
)
なりしが、其頃品川宿に於て
施行
(
せぎよう
)
を出すを
左右
(
かにかく
)
と拒みたる者ありとて忽ち其家を
打毀
(
うちこは
)
せしより人気いよいよ
荒立
(
あらだつ
)
て
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
して
見
(
みる
)
とやはり、此処も廃井ではあるまいか? いや其様筈がない。烟突から黒烟が上っている。
彼様
(
あんな
)
に
熾
(
さかん
)
に火が燃えている。彼様に機械が運転している。人のいない筈がない。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
意気だけ
熾
(
さかん
)
で実行の創作上にともなわない、浮き足立った感激ではなくて、むしろ反対に、俊成自身の生命の直覚的共感が『古今集』を
掴
(
つか
)
み、『古今集』にたよることによって
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
加之
(
しかも
)
其処は破れ壁から北風が吹き通し、屋根が低い割に炉が高くて、
熾
(
さかん
)
な焚火は火事を覚悟しなければならなかった。彼は
一月
(
ひとつき
)
ばかりして面白くない
此
(
この
)
型
(
かた
)
ばかりの炉を見捨てた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
否
(
い
)
や、
左様
(
さう
)
ばかりも言へないでせう、現に高等学校に居る剛一と云ふ
長男
(
むすこ
)
の如きも、
数々
(
しば/\
)
拙宅
(
うち
)
へ参りますが、実に有望の好青年です、
父親
(
おや
)
の不義に
慚愧
(
ざんき
)
する
反撥力
(
はんぱつりよく
)
が非常に
熾
(
さかん
)
で
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
私の経験で言つて見ても、私には幼い時から、何処か自由を欲する念が
熾
(
さかん
)
であつた。
小説新論
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
火を
熾
(
さかん
)
にすれば、雨にも消えざるもの也。今夜も焚火に山上の寒さを忘れたるが、天幕に雨を避くることとて、焚火を掛布団とすることは出来ず。九人が四人に減じて、何となく寂し。
層雲峡より大雪山へ
(新字新仮名)
/
大町桂月
(著)
家の中は暖炉が
熾
(
さかん
)
に燃えてゐるので、むしろ顔が火照る位熱かつたが、外は霙まじりの雨が振り頻つてゐるので、入口の硝子扉が開く度毎に、冷たい湿つた風が用捨なく吹き込んで来て
酔狂録
(新字旧仮名)
/
吉井勇
(著)
神通の
宝輅
(
はうらく
)
に召し虚空を凌いで速かに飛び、真如の浄域に到り、光明を発して
長
(
とこし
)
へに
熾
(
さかん
)
に御坐しまさんこと、などか疑ひの侍るべき、仏魔は一紙、
凡聖
(
ぼんじやう
)
は不二、
煩悩即菩提
(
ぼんなうそくぼだい
)
、
忍土即浄土
(
にんどそくじやうど
)
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
アメリカの
習慣
(
しゅうかん
)
で
羨
(
うらや
)
ましく思うものは、かの大学
卒業式
(
そつぎょうしき
)
を
熾
(
さかん
)
にすることである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
十二時半頃になると、近所がまたさわがしくなって来て、火の手が再び
熾
(
さかん
)
になったという。それでもまだまだと油断して、わたしの横町ではどこでも荷ごしらえをするらしい様子もみえなかった。
火に追われて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ほかの物は見るとも、構えて眼ばかりは
窺
(
うかが
)
うべからず。これ秘蔵の事なり。たとえば暑き頃、天に向いて日輪を見る事暫く間あらば、たちまち昏盲として目見えず。これ太陽の光明
熾
(
さかん
)
なるが故に云々。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
併
(
しか
)
し火気が
熾
(
さかん
)
なので、此手のものも這入ることが出来なかつた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
大火山其勢甚
熾
(
さかん
)
。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
熾
(
さかん
)
な陽の中に
わがひとに与ふる哀歌
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
私が多年知りたいと念じていたのは、彼が
熾
(
さかん
)
な修養時代において、誰か、その方面の啓示を彼に致した禅門の人物があるにちがいない。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕は
顛落
(
てんらく
)
するやうにしてやうやくにして身を支へたが、そこは
硫黄
(
いわう
)
の
熾
(
さかん
)
に噴出してゐるところで、僕の
咽喉
(
のど
)
は
切
(
しき
)
りに硫黄の気で
咽
(
む
)
せるのに堪へてゐる。
ヴエスヴイオ山
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
落雲館に群がる敵軍は近日に至って一種のダムダム弾を発明して、
十分
(
じっぷん
)
の休暇、もしくは放課後に至って
熾
(
さかん
)
に北側の
空地
(
あきち
)
に向って砲火を浴びせかける。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いずれも若い、三十
許少
(
わずか
)
に前後。気を負い、色
熾
(
さかん
)
に、心を放つ、血気のその燃ゆるや、男くささは格別であろう。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
熾
(
さかん
)
な
火
(
ひ
)
の
柱
(
はしら
)
が
近
(
ちか
)
く
目
(
め
)
を
掩
(
おほ
)
うて
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
彼
(
かれ
)
は
又
(
また
)
直
(
すぐ
)
に
激
(
はげ
)
しい
熱度
(
ねつど
)
を
顏
(
かほ
)
一
杯
(
ぱい
)
に
感
(
かん
)
じた。
火
(
ひ
)
はどうした
機會
(
はずみ
)
か
横
(
よこ
)
に
轉
(
ころ
)
がした
大籠
(
おほかご
)
の
落葉
(
おちば
)
に
移
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
たのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
伸子は、白レイスの肩掛をして、
熾
(
さかん
)
に政談を戦わしていた老夫人の険のある世話焼らしい顔つきを思い出した。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
○予六歳にして始めてお茶の水の幼稚園に行きける頃は、世間一般に西洋崇拝の風
甚
(
はなはだ
)
熾
(
さかん
)
にして、かの丸の内
鹿鳴館
(
ろくめいかん
)
にては夜会の催しあり。女も洋服着て踊りたるほどなり。
洋服論
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
焚火の炎が天をも焦す
勢
(
いきおい
)
で
熾
(
さかん
)
に燃えている、ここではどんな大きな焚火をしても、何の心配にも及ばない。晩飯は既に用意されていたが、岩魚は果して釣れていなかった。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
時々
(
とき/″\
)
使童
(
ボーイ
)
が
出入
(
しゆつにふ
)
して
淡泊
(
たんぱく
)
の
食品
(
くひもの
)
、
勁烈
(
けいれつ
)
の
飮料
(
いんれう
)
を
持運
(
もちはこ
)
んで
居
(
ゐ
)
た。ストーブは
熾
(
さかん
)
に
燃
(
も
)
えて
居
(
ゐ
)
る——
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
こは火山の所爲にて、この
郷
(
さと
)
の空氣の惡しくなれるならん。ヱズヰオの噴火は次第に
熾
(
さかん
)
なり。熔巖の流は早く
麓
(
ふもと
)
に到りて、トルレ、デル、アヌンチヤタの方へ向へりと聞く。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
設
(
よ
)
しや事業熱は
冷
(
さ
)
めても、失敗を取返へさう、損害を
償
(
つくの
)
はうといふ
妄念
(
まうねん
)
が
熾
(
さかん
)
で、頭は
熱
(
ほて
)
る、
血眼
(
ちまなこ
)
になる。それでも
逆上氣味
(
のぼせぎみ
)
になツて、危い橋でも何んでも
妄
(
やたら
)
と渡ツて見る………
矢張
(
やはり
)
失敗だ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
一一九
応保
(
おうほう
)
の夏は
美福門院
(
びふくもんゐん
)
が
命
(
いのち
)
を
窮
(
せま
)
り、
長寛
(
ちやうくわん
)
の春は
一二〇
忠通
(
ただみち
)
を
祟
(
たた
)
りて、
朕
(
われ
)
も其の秋世をさりしかど、
猶
(
なほ
)
一二一
嗔火
(
しんくわ
)
熾
(
さかん
)
にして
尽
(
つ
)
きざるままに、
終
(
つひ
)
に大魔王となりて、三百余類の
巨魁
(
かみ
)
となる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
六畳の室には電燈が
吊下
(
つるさが
)
っていて、下の火鉢に火が
熾
(
さかん
)
に起きている。鉄瓶には湯が煮え
沸
(
た
)
っていた。小さな机兼食卓の上には、鞄の中から、出された外国の小説と旅行案内と新聞が載っている。
渋温泉の秋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
辺鄙
(
へんぴ
)
なところに住んでおりますので、めったに市内のまん中へは出ませんから、世間のこともよく判らないのでございますが、毎日の新聞を見ますと、市内のコレラはますます
熾
(
さかん
)
になるばかりで
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いまや梁山泊が大となるにつれ、不遇不平な天下の才と
侠骨
(
きょうこつ
)
を、いよいよここへ
募
(
つの
)
ろうとする意志は仲間一同にも
熾
(
さかん
)
だったのだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たといみや子が夫婦間の特別な敏感さを利用して
熾
(
さかん
)
に暗号を送ったとしても、その時の彼は、頼りにならない無反応の冷淡さを証拠だてるに過なかったろう。
伊太利亜の古陶
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
独乙
(
ドイツ
)
で浪漫主義の
熾
(
さかん
)
に起った時、御承知の通り、有名なカロリーネと云うシュレーゲルの細君がありました。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
熾
漢検1級
部首:⽕
16画
“熾”を含む語句
熾烈
熾盛
熾火
煩悩熾盛
熾熱
熾熱燈
熾々
有栖川宮熾仁
熱熾
熾仁
熾仁親王
熾然
盛熾
薬師熾盛光
逆焔仍熾
高熾