酔狂録すいきょうろく
またしても恋物語である。しかしその物語の主人公は私ではない。 それはもう今から七八年前の或る冬の夜のことであつた。私はその時分毎晩のやうに銀座界隈の酒場歩きをやつてゐたので、その夜ももうかなり遅く、尾張町の角のところにある、或る大きな、天井 …