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ひばし
ふりがな文庫
“
火箸
(
ひばし
)” の例文
この十蔵が事は
貴嬢
(
きみ
)
も知りたもうまじ、かれの片目は
奸
(
よこしま
)
なる妻が投げ付けし
火箸
(
ひばし
)
の傷にて
盲
(
つぶ
)
れ、間もなく妻は狂犬にかまれて
亡
(
う
)
せぬ。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「おや……」と夫人は血相変え、
火箸
(
ひばし
)
を片手に握りしまま、
衝
(
つ
)
と立上って矢島を
睨附
(
ねめつ
)
け、「ヌ——」とばかり、激怒して口が利けず。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
外の殺し方、例えば
火箸
(
ひばし
)
を鼠の口から突き刺す、という様なことは恐ろしくて出来なかったからだ。だが、水責めも随分残酷だった。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「うむ、なあに
俺
(
お
)
れもそれから
去年
(
きよねん
)
の
秋
(
あき
)
は
火箸
(
ひばし
)
で
打
(
ぶ
)
つ
飛
(
と
)
ばしてやつたな」
卯平
(
うへい
)
は
斯
(
か
)
ういつて
彼
(
かれ
)
にしては
著
(
いちじ
)
るしく
元氣
(
げんき
)
を
恢復
(
くわいふく
)
して
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
おばあさんがいるときはね、
火箸
(
ひばし
)
を持って追っぱらうもんだからね、ばあさんがいないときに、女の子たちは、とりにいくんです。
病む子の祭
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
▼ もっと見る
氏はその時受けた感じを、たとえば何か、固い
火箸
(
ひばし
)
のようなもので
向
(
む
)
こう
脛
(
ずね
)
をなぐられたような——到底説明しがたい感じだといった。
地図にない街
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
行かなければぶん
撲
(
なぐ
)
るぞと言っていまヤクの糞の火を掻き捜して居るチベットの
火箸
(
ひばし
)
を持って私をぶん撲ろうとして立ち掛けたのです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
和尚
(
おしょう
)
に対面して話の末、禅の大意を聞いたら、
火箸
(
ひばし
)
をとって火鉢の灰を叩いて、パッと灰を立たせ、和尚は
傍
(
かたわら
)
の僧と相顧みて
微笑
(
ほほえ
)
んだが
我が宗教観
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
人が顔を見て存外に
痩
(
や
)
せずに居るなどと言はれるのに腹が立ちて
火箸
(
ひばし
)
の如く細りたる足を出してこれでもかと言ふて見せる事
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それを見た舎人は立ちあがって、部屋の隅から
火桶
(
ひおけ
)
を持って来た。甲斐は火桶の中で注意ぶかく燃してから、
火箸
(
ひばし
)
できれいに灰をならした。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お雪が
炬燵
(
こたつ
)
のところに頭を押付けているのを見ると、
下婢
(
おんな
)
も手持無沙汰の気味で、アカギレの
膏薬
(
こうやく
)
を
火箸
(
ひばし
)
で延ばして
貼
(
は
)
ったりなぞしていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一
(
ひと
)
かどの茶人の
嗜
(
この
)
みでもあるかのように、
煤竹
(
すすだけ
)
の
炭籠
(
すみとり
)
に
火箸
(
ひばし
)
はつつましく寄せてあるし、描板のうえには
茶布巾
(
ちゃふきん
)
がきちんと
畳
(
たた
)
みつけてある。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「こっちへ来たまえ。」私は、火鉢をまえにして坐って、
火箸
(
ひばし
)
で火をかきまわし、「ここへ坐りたまえ。まだ、火がある。」
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
大分遠くへ押し
遣
(
や
)
られていた火鉢の
傍
(
そば
)
へ行って、
火箸
(
ひばし
)
を手に取って、「あ、火が消えそうになった、少しおこしましょうね」
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ケシ飛ばされたのをたて直して、いざりよって来たところを、お絹が火鉢の炭を
火箸
(
ひばし
)
でつまみ、片手でゾロリとした羽織の袖口をひっぱって
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すると
何時
(
いつ
)
か火鉢の中から、薄い煙が立ち昇つてゐる。何かと思つて
火箸
(
ひばし
)
にかけると、さつきの木の葉が煙るのであつた。
わが散文詩
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
長火鉢の
猫板
(
ねこいた
)
に
片肱
(
かたひじ
)
突いて、美しい
額際
(
ひたいぎわ
)
を抑えながら、片手の
火箸
(
ひばし
)
で炭を
突
(
つ
)
ッ
衝
(
つ
)
いたり、灰を
平
(
なら
)
したりしていたが、やがてその手も動かずなる。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
「こいつは三十八九の
火箸
(
ひばし
)
のやうに痩せた女だが、信心に
凝
(
こ
)
つてしまつて、主人の重三郎とはどうしても馬が合はねエ」
銭形平次捕物控:130 仏敵
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
火箸
(
ひばし
)
が
眞
(
ま
)
ッ
先
(
さき
)
に
飛
(
と
)
んで
來
(
き
)
て、それから
續
(
つゞ
)
いて
肉汁
(
スープ
)
鍋
(
なべ
)
や、
皿
(
さら
)
や
小鉢
(
こばち
)
の
雨
(
あめ
)
が
降
(
ふ
)
つて
來
(
き
)
ました。
公爵夫人
(
こうしやくふじん
)
は、
其等
(
それら
)
が
我
(
わ
)
が
身
(
み
)
を
打
(
う
)
つをも
平氣
(
へいき
)
で
居
(
を
)
りました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
「とにかく松島を愛していたんだろう。よく一人で
火鉢
(
ひばち
)
の灰なんか
火箸
(
ひばし
)
で
弄
(
いじ
)
りながら、考えこんでいたというから。」
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
胴丸の
火鉢
(
ひばち
)
に両
肘
(
ひじ
)
をつき、
火箸
(
ひばし
)
の頭に両方の
掌
(
てのひら
)
を重ねたままの姿勢で、
俯向
(
うつむ
)
き加減に
坐
(
すわ
)
ったきり、一日何をするのでもなくじっとしていたが、時々
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ひとりは
斧
(
おの
)
を持ち、ひとりは大鍵を持ち、ひとりは
玄翁
(
げんのう
)
を持ち、その他の者は
鋏
(
はさみ
)
や
火箸
(
ひばし
)
や
金槌
(
かなづち
)
などを持ち、テナルディエはナイフを手に握っていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そこで
火箸
(
ひばし
)
を火のうえにわたして餅をのせ、その焼けあんばいによって焜炉の扉のかげんをするのをひとりで興がりながら端から醤油をつけてたべる。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
長い
火箸
(
ひばし
)
で絶えまなしに囲炉裏の中から真黒に焼けた栗を拾いだす、同じ動作を無意識のうちにくりかえしていた。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
話を聞きに来たのだと思われてはならないとでも思っているらしく、音を立てないように手でそっと石炭を入れたり、
火箸
(
ひばし
)
を動かしたりしていました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
佐藤の妻は
安座
(
あぐら
)
をかいて長い
火箸
(
ひばし
)
を右手に握っていた。広岡の妻も背に赤ん坊を背負って、早口にいい募っていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
時々
持駒
(
もちごま
)
を
失
(
な
)
くして、次の勝負の来るまで双方とも知らずにいたりした。それを母が灰の中から
見付
(
みつ
)
け出して、
火箸
(
ひばし
)
で
挟
(
はさ
)
み上げるという
滑稽
(
こっけい
)
もあった。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
妹さんは疑いもなく、殉教の苦患を堪え得た女性の一人です。真っ赤に焼けた
火箸
(
ひばし
)
で胸を焼かれた時でも、もちろん微笑を含んでおられたに違いない。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
おかみさんはきいきい
言
(
い
)
って、
火箸
(
ひばし
)
でぶとうとするし、
子供達
(
こどもたち
)
もわいわい
燥
(
はしゃ
)
いで、
捕
(
つかま
)
えようとするはずみにお
互
(
たが
)
いにぶつかって
転
(
ころ
)
んだりしてしまいました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
北の国々は寒い地方ですから
囲炉裏
(
いろり
)
とは離れられない暮しであります。それ故必然に
炉
(
ろ
)
で用いるもの、
自在鉤
(
じざいかぎ
)
とか、
五徳
(
ごとく
)
とか
火箸
(
ひばし
)
とか
灰均
(
はいならし
)
なども選びます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ザビーネは火の上にかがみ込んで、重い
火箸
(
ひばし
)
で機械的に火をかきたてていた。彼女は少しぐったりしていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
今度は
火箸
(
ひばし
)
で円い蓋の端を強く押すと円形の鍋が自分でクルリと裏返しになって両面を自由に焼ける。モー出来上った。この通り両面とも狐色になればいい。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
オランダ式の
椅子
(
いす
)
や、黒いマホガニーのテーブルが鏡のように輝いており、
薪
(
まき
)
おきは、シャベルや
火箸
(
ひばし
)
も一式ふくめて、アスパラガスの葉のかげに光っていた。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
併し
成可
(
なるべ
)
く沈着に、火鉢で焼けて居る花の莟を、
火箸
(
ひばし
)
の
尖
(
さき
)
で
撮
(
つま
)
み上げるや、傍の炭籠のなかに投げ込んだ。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
「
如何
(
いか
)
なる件でありまするか、御遠慮なく
仰
(
お
)
つしやつて下ださい」篠田は
火箸
(
ひばし
)
もて灰かきならしつゝあり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
婆さんはもうとうに起きて、広い勝手元で、昔のまゝの
土竈
(
どべつつひ
)
で、
釜
(
かま
)
と
火箸
(
ひばし
)
で朝飯を
炊
(
た
)
いてゐるのを見た。何を見ても、昔のことが思ひ出されないものはなかつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
お母様が灰だらけの
毛書
(
けが
)
き筆を
火箸
(
ひばし
)
でお拾いになりましたので、三人は又涙の出る程笑いこけましたが、お母様がこんなに心からお笑いになるのを見ましたのは
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
岩次郎はこれを芝居ごととしないで
羨
(
うらや
)
んだ。そして家へ帰ると数日間一心不乱に経を唱えたうえ、もうこのくらいなら大丈夫だろうと
火箸
(
ひばし
)
を焼いて股に当てて見た。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
やっとその一匹を箒でおさえつけたのを私が
火箸
(
ひばし
)
で少し引きずり出しておいて、首のあたりをぎゅうっと麻糸で縛った。縛り方が強かったのですぐに死んでしまった。
ねずみと猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
年とった
僕
(
げなん
)
が赤く焼いた
火箸
(
ひばし
)
のような鉄片を持って出て来ました。握る処には
濡
(
ぬ
)
れた
藁縄
(
わらなわ
)
を巻いてありました。長者はそれを受けとると、庭に下りて
壮
(
わか
)
い男の前に立ちました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
二枚折の戸は開け放しになつてゐて、
爐格子
(
ろがうし
)
の中には勢よく火が燃え、
快
(
こゝろよ
)
い光で大理石の灰皿や眞鍮の
火箸
(
ひばし
)
や
十能
(
じふのう
)
に輝き、紫の掛布や磨きをかけた家具類を照し出すのが見えた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
突然、すては
爐
(
ろ
)
にささった竹の
火箸
(
ひばし
)
を手に取ると、唇に
咥
(
くわ
)
えこんだと見る間に、あろうことかばりばりと上と下の白い前歯で噛み砕いた。歯と唇とから一面に鮮血が
噴
(
ふ
)
いてはしった。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
秋の日影も
稍
(
やや
)
傾
(
かたぶ
)
いて庭の
梧桐
(
ごとう
)
の影法師が背丈を伸ばす三時頃、お政は独り
徒然
(
つくねん
)
と長手の
火鉢
(
ひばち
)
に
凭
(
もた
)
れ懸ッて、
斜
(
ななめ
)
に坐りながら、
火箸
(
ひばし
)
を
執
(
とっ
)
て灰へ書く、
楽書
(
いたずらがき
)
も
倭文字
(
やまともじ
)
、牛の角文字いろいろに
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
アヽ
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
屹度
(
きつと
)
物
(
もの
)
を
喰
(
く
)
はうとするとボーと火か
何
(
なに
)
か
燃上
(
もえあが
)
るに
違
(
ちげ
)
えねえ、一
番
(
ばん
)
見たいもんだな、
食物
(
くひもの
)
から
火
(
ひ
)
の
燃
(
もえ
)
る
処
(
ところ
)
を、ウム、
幸
(
さいは
)
ひ
壁
(
かべ
)
が少し破れてる、
斯
(
か
)
うやつて
火箸
(
ひばし
)
で
突
(
つ
)
ツついて、ブツ
黄金餅
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『キャッ』と言って飛び上って、胸がドキドキしていつまでも止まない、私あんまり吃驚させられて悔しかったから、いじいじして大きな
火箸
(
ひばし
)
を持って行って、遠くの方から火箸の
尖
(
さき
)
で打ってやった。
雪の日
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
頬
(
ほほ
)
のこけた
蒼白
(
そうはく
)
の顔の上部、両の
鬢
(
びん
)
と額とは
大火傷
(
おおやけど
)
のあとのごとくあか黒く光って、ひっつれている。そして
眉間
(
みけん
)
と、左右の米かみのところに焼け
火箸
(
ひばし
)
で突いたほどの
孔
(
あな
)
のあとが残っているのである。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
「でも、ここの麦酒じゃね。」とHさんが
火箸
(
ひばし
)
をいじった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
栄三郎の手に、炭をはさんだ
火箸
(
ひばし
)
がそのまま宙にとまる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ところが、そこには、
錐
(
きり
)
もなければ
火箸
(
ひばし
)
もなかった。
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
おせんは、
火箸
(
ひばし
)
のように
立
(
た
)
ちすくんでしまった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
“火箸”の意味
《名詞》
ひばし。
(出典:Wiktionary)
“火箸”の解説
火箸(ひばし)は、炭火などを扱うための金属製の箸
。火ばさみを含めた総称である地域もある。
(出典:Wikipedia)
火
常用漢字
小1
部首:⽕
4画
箸
常用漢字
中学
部首:⽵
15画
“火”で始まる語句
火
火鉢
火傷
火照
火影
火焔
火桶
火光
火酒
火事