ごふ)” の例文
食料くひものしがるなんちごふつくばりもねえもんぢやねえか、本當ほんたうばちつたかりだから、らだらかしちやかねえ、いやまつたくだよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ごふの深いのは癒らないとされて居ります。例へば御徒町の伊勢屋の利八さん、これは喘息ぜんそくがどうしても治らず、先達樣を怨んで居りました」
ちよいとちいさいシヤツポをかぶり、洋服で歩いてますから知れませんよ。岩「あの浄玻璃じやうはりの鏡にごふ権衡はかりうしました。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
羅子らし水滸すいこせんして、三世唖児あじみ、紫媛しゑん源語げんごあらはして、一旦悪趣につるは、けだごふのためにせまらるるところのみ。
さうとすればこの男は、さつき平吉が八犬伝を褒めたのにごふを煮やして、わざと馬琴に当りちらしてゐるのであらう。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そは愛外部そとより我等に臨み、魂ほかの足にて行かずば、直く行くも曲りてゆくも己がごふにあらざればなり。 四三—四五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
一體いつたい散々さん/″\不首尾ふしゆびたら/″\、前世ぜんせごふででもあるやうで、まをすもはゞかつてひかへたが、もうだまつてはられない。たしか横濱よこはまあたりであつたらうとおもふ。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
パウリスタへ集まつた学生達はいつ迄待つても主人役の二人が見えないので、ごふを煮やしてぶつぶつぼやいてゐる処へ、幽霊のやうに小川氏が入つて来た。
それわしごふふかくてさとれないのだとつて、毎朝まいてうかはやむかつて禮拜らいはいされたくらゐでありましたが、のちにはあのやうな知識ちしきになられました。これなどもつとれいです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
して居ては家業に出る事もならず此方のあごて仕舞ぞや此罪このつみは皆お前の亭主へ懸て行よく/\のごふつくばりなりと己等が迷惑めいわくまぎれに種々はづかしめければ是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
社長の川崎は、主筆ばかりが讃められて自分は殆ど縁の下の力持ち同樣なのにごふを煮やしたのだらう。雜誌の披露會を東壽司に於いて思つたよりも張り込んだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
彼は例の老細君が、自分の娘にさう言はせて居るのだと気がついて、この度し難い女にごふを煮やした。
病悪は眼に見ゆるものにて、これ、己れの道しるべを見る如し。心の悪は眼には見えず、手にはとらへがたく、これこそ、地獄の悪なり。ごふとや云はん。病悪は軽し。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
大阪の骨董商山中氏の店を一寸ちよつと訪ねて見たが今は日本品よりも支那の骨董品を主として売つて居る。日本の如何いかゞはしい美術品が売行うれゆかなくなつたのは自ごふ自得であらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
祖母はいつも『ごふやれ業やれ』と呟いてゐた。私もこのごろになつて、句作するとき(恥かしいことには酒を飲むときも同様に)『ごふだな業だな』と考へるやうになつた。
草木塔 (新字旧仮名) / 種田山頭火(著)
悪業といふは、悪は悪いぢゃ、ごふとは梵語ぼんごでカルマというて、すべて過去になしたることのまだむくいとなってあらはれぬを業といふ、善業悪業あるぢゃ。こゝでは悪業といふ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「得意ざきへ物買に行ごとく、用事ばかり申上候事、思召も恥入候。然ども外にはいたしかた無之、無拠よんどころなく御頼申上候。これまた前世より之ごふなどと思召、御わきまへ被下度奉願上候。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
つく/″\静かに思惟しゆゐすれば、我憲清のりきよと呼ばれし頃は、力を文武の道につからし命を寵辱のちまたに懸け、ひそかに自ら我をばたのみ、老病死苦のゆるさぬ身をもて貪瞋痴毒とんじんちどくごふをつくり
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
お座敷の取做とりなしなどについて、何か言つて聞かせても、いつもうつむいて何時までも黙つてゐる子が一人あるのに、かね/″\ごふを煮やしてゐた矢先きなので、咲子のてきぱきしたのが
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
同じ哀れを身にになうて、そを語らふ折もなく、世を隔て樣を異にして此の悲しむべき對面あらんとは、そも又何のごふ、何の報ありてぞ。我は世に救ひを得て、御身はきに心をやぶりぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ことに朝飯の知らせに來た例の小僧が、滯在は出來ぬが今日山を下るのなら早う來て飯を食ひなされ、と言つたのにごふを煮やし、早速引き上げることに決心して、早速其處を飛び出した。
比叡山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
暫くしてから春三郎は餘り鼠の荒れるのにごふを煮やして
冬夜さり鼠のごふも果てけらしてんまなこじきに和むか
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
けれどもそれでも、ごふ(?)が深くて
きはみなき輪廻りんねごふのわづらひは
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
とかくにごふは了りたり。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
修羅を行くごふの焔
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふかごふとぞおそれたる
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「何もそれ程にごふを煮やす事は無え。あんな間抜な野郎でも、鼠小僧と名乗つたばかりに、大きな面が出来たことを思や、鼠小僧もさぞ本望だらう。」
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ごふが深いから死にやしません、ほんのかすり傷で、首筋を引つ掻いただけですが、騷ぎが大きいから、阿倍川町中夜討をかけられたほどの騷動ですよ」
天守てんしゆ主人あるじは、御身おみ内儀ないぎ美艶あでやかいろ懸想けさうしたのぢや。もない、ごふちから掴取つかみとつて、ねやちか幽閉おしこめた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「馬鹿!」——「不孝者め!」——「先祖代々のごふさらし!」などと、非常な權威を以つて糺明きうめいする。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
先刻さつきからこんな問答にごふを煮やしてゐた森村市左衛門氏は、「大森さん」と言つて衝立つゝたち上りながら
贔屓ひいきなさるゝかと言しかば越前守殿大いにいかられナニ婦人ふじんを贔屓するとは不屆の一言天地てんち自然しぜん淨玻璃じやうはりかゞみたて邪正じやしやうたゞごふはかりを以て分厘ふんりんたがはず善惡を裁斷する天下の役人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二九万乗ばんじようの君にてわたらせ給ふさへ、三〇宿世すくせごふといふもののおそろしくもそひたてまつりて、罪をのがれさせ給はざりしよと、世のはかなきに思ひつづけて涙わき出づるがごとし。
大日向さまは、地獄よりこの人々すくひ給はんとて、娑婆しやばごふを人間に与へ給ふなり。他力をたのみて、真実報土のこゝろなくば、この人々地獄への往生をとぐるものなり。法蓮華経ほふれんげきやう……。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
維幾も後にはごふを煮やして、下総へひそかに踏込んで、玄明と一合戦して取挫とりひしいで、叩きるか生捕るかしてやらうと息巻いた。維幾も常陸介、子息為憲もきかぬ気の若者、官権実力共に有る男だ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ごふ権衡はかりは公園にお茶屋ちやゝりまして、其処そこ据付すゑつけてりますが、みなさんがぼく地獄ぢごくてから体量えたなどゝつてよろこんでります、浄玻璃じやうはりの鏡は、ストウブをきますうへかざつてあります
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ごふのかげ、輪廻りんね千歳ちとせ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
輪廻りんゑごふの音づれか。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
諳誦す、ごふ輪廻りんねを。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
實は戀患ひ組の一人で一番深く思ひ詰めてゐた——三之助とお艶が綱を渡つて逢引してゐるのを見てごふを煮やし
もだくるしみ、泣き叫びて、死なれぬごふなげきけるが、漸次しだいせいき、こん疲れて、気の遠くなり行くにぞ、かれが最も忌嫌いみきらへるへび蜿蜒のたるも知らざりしは、せめてもの僥倖げうかうなり
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
キプリングは幾日経つても返事が来ないので、とうとごふを煮やして隣へ出かけて往つた。
うらに知らるるごふかた
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
錢形平次の出現で、自分の見込みを根底から引つくり返されたのごふをにやして、この邊から新しい攻め手でお君を取つて押へ、自分の面目を立てようといふのでせう。
私は散々迷つた揚句あげく、お湯へ行くといふことにして、町内を半刻も歩き、思案に余つて庭からそつとこの窓の外へ來ると、お才は窓にもたれて、私の來るのが遲いのにごふを煮やし