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惜
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おし
ふりがな文庫
“
惜
(
おし
)” の例文
母とお重が別れを
惜
(
おし
)
むように浮かない顔をするのが、かえって
厭
(
いや
)
であった。彼らは自分の自由行動をわざと妨げるように感ぜられた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小芝居
(
こしばい
)
や、
素人
(
しろうと
)
まじりの改良文士劇や、女役者の一座の中で衰えさせてしまうのかと、その人の芸が
惜
(
おし
)
くって、静枝は思わず涙ぐんだ。
市川九女八
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
……もの
惜
(
おし
)
みをするようで
可厭
(
いや
)
だから、ままよ、いくらでも飲みなさい。だが、いまの一合たっぷりを、もう一息にやったのかい。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それに二三日、
負傷
(
けが
)
をする者がありますから、
猶更
(
なおさら
)
、此の礁は竜王様がおるとか、竜王様の
惜
(
おし
)
みがかかっておるとか申しまして」
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ただ
惜
(
おし
)
い事には今一歩といふ処まで来て居ながら
到頭
(
とうとう
)
輪の内を
脱
(
ぬ
)
ける事が出来なかつたのは時代の然らしむるところで仕方がない。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
彼が今に至ってこの種の語を発するは、彼のために
惜
(
おし
)
むべき至りである。
否
(
いな
)
彼がかかる語を発したというのは
甚
(
はなは
)
だ疑わしきことである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
某は家にいたのに、
来
(
きた
)
り診することを
肯
(
がえん
)
ぜなかった。常吉はこの時父のために憂え、某のために
惜
(
おし
)
んで、心にこれを
牢記
(
ろうき
)
していた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
作右衞門どんも
旧来
(
きゅうれえ
)
の馴染ではア
何
(
ど
)
うか止め
度
(
た
)
いと思うが、敵を討ちに行くてえのだから止められねえッて
名残
(
なごり
)
イ
惜
(
おし
)
がってるでがんす
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
いつの間にかお辻が丹念に蓄へて置いた
珊瑚
(
さんご
)
の根掛けや珠珍の
煙草
(
たばこ
)
入れ、大切に掛け
惜
(
おし
)
んでゐた
縞縮緬
(
しまちりめん
)
の丹前、娘達の別れがたみの人形
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「あなたみたように眺めて楽む気もないくせに、どうしてあんなに
惜
(
おし
)
いのでしょう。渋くて渋くて喰べられないっていうのに。」
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
如何に高等にして上品な芸術であっても人間の本当の要求のなくなったものは何によらず、
惜
(
おし
)
んで見てもさっさと亡びて行く傾向がある。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
愈
(
いよい
)
よ
今夕
(
こんせき
)
、侯の
御出立
(
ごしゅったつ
)
と
定
(
き
)
まり、私共はその原書を
撫
(
なで
)
くり
廻
(
まわ
)
し誠に親に
暇乞
(
いとまごい
)
をするように
別
(
わかれ
)
を
惜
(
おし
)
んで
還
(
かえ
)
したことがございました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
私は彼らがこの言葉によって何を意味しようとしておるかを認識し、また彼らの意味することが事実であることを承認することを
惜
(
おし
)
まない。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
お年は十九なのでした。誰も
惜
(
おし
)
まぬ人はありません。その小さいお姫様をよく育ててと、御熱心なのは涙ぐましいようでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
千金を
惜
(
おし
)
まずして
奇玩
(
きがん
)
をこれ
購
(
あがな
)
うので、
董元宰
(
とうげんさい
)
の旧蔵の
漢玉章
(
かんぎょくしょう
)
、
劉海日
(
りゅうかいじつ
)
の旧蔵の
商金鼎
(
しょうきんてい
)
なんというものも、皆杜九如の手に落ちた位である。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
宴は別状なく終って、十時頃には客は大抵帰ってしまい、主人側の人達と二三の客が、夏の夜の興を
惜
(
おし
)
んで座に残っていた。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
どうかして舞台で
旨
(
うま
)
い事をしたのを、劇評家が見て、あれは好く導いて発展させたら、立派なものになるだろうにと、
惜
(
おし
)
んで遣ることもある。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
……おお
怖
(
こ
)
わ! あんな別嬪さんを、まあ
惜
(
おし
)
いこと……そういえば思い当る事があります。誰にも
仰言
(
おっしゃ
)
っては困りますがね。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
去り行く青春を
惜
(
おし
)
む心である。これは空中の日の歩みを一つの所に
留
(
とど
)
めて動くなと望むに
斉
(
ひと
)
しい気持であると自嘲した。
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
恰度
(
ちょうど
)
仏教の中でのように、あらゆる動物はみな生命を
惜
(
おし
)
むこと、我々と少しも変りはない、それを一人が生きるために
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
これを一読するに
惜
(
おし
)
むべし論者は
幕末
(
ばくまつ
)
外交の
真相
(
しんそう
)
を
詳
(
つまびらか
)
にせざるがために、
折角
(
せつかく
)
の評論も全く事実に
適
(
てき
)
せずして
徒
(
いたずら
)
に一篇の
空文字
(
くうもんじ
)
を
成
(
な
)
したるに過ぎず。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
これをもって方今士君子、唐楽・猿楽にては
面白
(
おもしろ
)
からず、俗楽は卑俚に
堪
(
た
)
えずとして、ほとんど楽の一事を
放擲
(
ほうてき
)
するに至る。これまた
惜
(
おし
)
むべきなり。
国楽を振興すべきの説
(新字新仮名)
/
神田孝平
(著)
一端口外した自家意中の計画をさえも容易に
放擲
(
ほうてき
)
して少しも
惜
(
おし
)
まなかったのはちょっと類の少ない負け嫌いであった。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
これなども山𤢖の女性であったに相違ないが、
徒爾
(
いたずら
)
に腐らして
了
(
しま
)
ったのは
惜
(
おし
)
い事であった。同じく西遊記に山𤢖の事も記してあったと記憶している。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もう
晩
(
おそ
)
かったが、玄渓の家を出ると、涼しさに、夏の月夜を足はそぞろになって、
微酔
(
びすい
)
を蚊帳につつむのが
惜
(
おし
)
まれた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また、自分の出来ることなら人に対しても、随分物をやることなどに
惜
(
おし
)
みはしなかった。けれどしみじみと物事を考うるというような女ではなかった。
凍える女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
いよいよ帰るという日になって、
伯母
(
おば
)
は大変名残りを
惜
(
おし
)
んだが、伯父の方は案外平気だった。「
何処
(
どこ
)
にいるのも同じこった。来年の休みにはまた来い」
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
然るに城中はすでに食尽き、
援兵
(
えんぺい
)
の来る望みもない。……元来天下の衆に先立ち、
草創
(
そうそう
)
の功を志す以上、節に当り義に臨んでは、命を
惜
(
おし
)
むべきではない。
赤坂城の謀略
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼
(
かれ
)
は
其
(
そ
)
の
減
(
へ
)
つて
行
(
ゆ
)
くのを
更
(
さら
)
に
惜
(
おし
)
いとは
思
(
おも
)
はなかつたが、
然
(
しか
)
し
彼
(
かれ
)
は
自分
(
じぶん
)
が
居
(
ゐ
)
る
内
(
うち
)
は
容易
(
ようい
)
に
罎
(
びん
)
の
分量
(
ぶんりやう
)
が
減
(
へ
)
らないのに
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
主人一人の翫具には三百円五百円の金を
惜
(
おし
)
まずして家族一同が生活上の道具には一円二円の金を惜むのかね。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
土方人足の村で恐れられるも
尤
(
もっとも
)
である。然しながら何ものも有たぬ彼等も、まだ
生命
(
いのち
)
と云うものを有って居る。彼等は生命を
惜
(
おし
)
む。此れが彼等の弱点である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
稽古の娘が来ると立たせたり向うへ向かせたりして「けい/\がよく出来た」と云ひ、稽古の間も「大層幅が出て来た」といひ「よう/\、
惜
(
おし
)
い」とほめるなど
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
彼れは佐藤の妻の自分から突然離れたのを怒ったりおかしく思ったり
惜
(
おし
)
んだりしていた。仁右衛門が取合わないので彼女はさすがに小屋の中には這入らなかった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
惜
(
おし
)
い
哉
(
かな
)
山が低い為に、この雪は昼夜共に溶けているから、十月中旬初雪の降る迄には、大部分は消失するであろうけれども、九月下旬尚お利根の右俣左俣の奥には
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「それは
惜
(
おし
)
かったネ、素晴らしい
葬送行進曲
(
ヒューネラル・マーチ
)
だったよ。
山北
(
やまきた
)
さんなんか、ポロポロ泣いて居た——」
葬送行進曲
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
香織
(
かおり
)
はそれを
両手
(
りょうで
)
にささげ、『たとえお
別
(
わか
)
れしても、いつまでもいつまでも
姫
(
ひめ
)
さまの
紀念
(
かたみ
)
に
大切
(
たいせつ
)
に
保存
(
ほぞん
)
いたします……。』と
言
(
い
)
いながら、
声
(
こえ
)
も
惜
(
おし
)
まず
泣
(
な
)
き
崩
(
くず
)
れました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
拭掃除
(
ふきさうじ
)
も
面倒也
(
めんどうなり
)
、お
茶拵
(
ちやごしら
)
へも
面倒也
(
めんどうなり
)
内職婦人
(
ないしよくふじん
)
の時を
惜
(
おし
)
むこと、金を
惜
(
おし
)
むよりも
甚
(
はなはだ
)
しく
候
(
そろ
)
。
煮染
(
にしめ
)
の
行商
(
ぎやうせふ
)
はこれが
為
(
ため
)
に
起
(
おこ
)
りて、
中々
(
なか/\
)
の
繁昌
(
はんじやう
)
と聞き
及
(
およ
)
び
申候
(
まうしそろ
)
文明的
(
ぶんめいてき
)
に
候
(
そろ
)
(二十日)
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
灯火管制の用意に
黒色
(
こくしょく
)
電灯カバーを作ったり、
押入
(
おしいれ
)
を改造して、防毒室を設けたり、配電所に特別のスイッチを
設
(
もう
)
けたりして、骨身を
惜
(
おし
)
まないのは、感心にたえなかった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
其の時聴衆
咸
(
みな
)
言って
謂
(
い
)
えらく、
斯
(
か
)
ばかりの佳作を一節切の
噺
(
はな
)
し
捨
(
ずて
)
に為さんは
惜
(
おし
)
むべき事ならずや、
宜敷
(
よろし
)
く足らざるを補いなば、
遖
(
あっぱ
)
れ席上の呼び物となるべしとの勧めに
基
(
もとづ
)
き
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):01 序
(新字新仮名)
/
条野採菊
(著)
「さても情深き殿たち
哉
(
かな
)
。かかる殿のためにぞならば、
捨
(
すつ
)
る命も
惜
(
おし
)
くはあらず。——妾が自害は黄金ぬしが、御用に立たん
願
(
ねがい
)
に侍り」「さては今の物語を」「
爾
(
なんじ
)
は残らず……」
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
後悔して
後
(
の
)
ち百姓となり、無事に一生を送りしと、僕上野に遊んだ際、この穴を見たが
惜
(
おし
)
いかな、土地の名を
聞洩
(
ききもら
)
した、何でも
直
(
じ
)
き上に寺のある、往来の
左方
(
ひだり
)
だと記憶している。
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
私は父の影が見えなくなると
直
(
す
)
ぐ前日
拵
(
こし
)
らへた
亭
(
ちん
)
へかけ込んで、声を
惜
(
おし
)
まず
泣叫
(
なきさけ
)
び升た。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
以来は三度の食事も
省略
(
しょうりゃく
)
するほどに時を
惜
(
おし
)
み、夜も眠らず、
眠気
(
ねむけ
)
がさせば眼に
薄荷
(
はっか
)
までさして、試験の準備に余念ない三千ちかくの青年が、第一高等学校の試験場に
群
(
むらが
)
り来たり
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
一貫
(
いっかん
)
して
絶讃
(
ぜっさん
)
の言葉を
惜
(
おし
)
まなかったことによっても、またその多くの『
怪談
(
かいだん
)
』に出て来る日本の女性が、ちょうど彼の妻を
聯想
(
れんそう
)
させるごとき貞婦であり、旧日本的なる婦道の美徳や
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
正岡を宗とせる歌人俳人中にも、絵画に対し時間と銭とを
惜
(
おし
)
まぬだけの嗜好を持って居る人が幾人あろうか、先生の趣味嗜好が多くの歌人俳人と何ほどその厚薄を異にして居ったか
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
……と、ぼくの、とくにこれを
惜
(
おし
)
むのは、“大増”を惜むのではなく、仲見世に於けるその位置の、大きな榎の立ち並んだありし日のふぜいの、ついに永久に失われたのを哀しむのである。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
況
(
いはん
)
やあの作品にさへ三歎の声を
惜
(
おし
)
まなかつた鑑賞上の神秘主義者などは勿論無上の
法悦
(
はふえつ
)
の為に即死を遂げたのに相違あるまい。クロオデル大使は紋服の為にこの位損な目を見てゐるのである。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「そりゃ
惜
(
おし
)
いね。学校へ寄附しとけば植物学の教授に役に立つのだろう」
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
何時
(
いつ
)
しかその
俳優
(
やくしゃ
)
と娘との間には、浅からぬ関係を生じたのである、ところが
俳優
(
やくしゃ
)
も旅の身
故
(
ゆえ
)
、娘と
種々
(
いろいろ
)
名残を
惜
(
おし
)
んで、やがて、
己
(
おのれ
)
は金沢を出発して、その
後
(
のち
)
もまた旅から旅へと廻っていたのだ
因果
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
「もっと
上
(
かみ
)
です。
惜
(
おし
)
いことしました、ゆっくり御案内できないで」
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
惜
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“惜”を含む語句
可惜
口惜
愛惜
最惜
負惜
名残惜
残惜
骨惜
惜気
不惜身命
哀惜
殘惜
物惜
口惜涙
惜別
惜氣
口惜紛
惜哉
愛好惜
惜毛
...