御出おいで)” の例文
どうも、そうさんもあんまり近頃ちかごろ御出おいででないし、わたし御無沙汰ごぶさたばかりしてゐるのでね、つい御前おまへこと御話おはなしをするわけにもかなかつたんだよ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「岸本様——只今ただいまここに参り居り候。久しぶりにて御話承りたく候。御都合よろしく候わば、このくるまにて御出おいでを御待ち申上げ候」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そうです。今日の様に晴天でなければ証拠はお目にかけられないのです。アア、それから御出おいでの時に必ずあの火繩銃を持って来て下さい」
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其様に出たければあなた一人で勝手に何処へでもおいでなさい、何処ぞへ仕事を探がしに御出おいでなさい、と突慳貪つっけんどんに云うンです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ず然れども去年十二月五日何れより御出おいでなされ候や御侍士樣御一人私し方へ御越にて文藏に何ぞ不審なる儀はなきやと御尋ねゆゑ早速さつそく文藏へうけたまは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
奧樣おくさまのお出來できなされたところたり、ぴつたりと御出おいでのとまつたところたり、まだ/\一層もつとかなしいゆめ枕紙まくらかみがびつしよりにつたこともござんす
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「K氏も御出おいでの事と存じ候えば」とか何とか、書いてある。Kが、僕の友人である事は云うまでもない。——僕は、ともかくも、招待に応ずる事にした。
野呂松人形 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
九歳の美しいすゞ子夫人を伴って御出おいでになった時、白面の画工に過ぎなかった私は、この有名な芸術家にお逢い出来たことをどんなに感激したかわかりませんでした。
泉鏡花先生のこと (新字新仮名) / 小村雪岱(著)
諸侯方しよこうがたまで御出おいでになり、わづかのうちに新梅屋敷しんうめやしきの名、江都中えどぢうに知られ、それのみならず先生々々せんせい/\たてこがしに、七草考なゝくさかう都鳥考みやこどりかうのと人に作らせて、我名わがなにて出版せしゆゑ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
直様すぐさま参り申候処、御役人御出おいで有之其許方そのもとかた慶蔵けいぞうと申候寺男てらおとこ召使ひ候事有之候哉との御尋おたずねなり。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
... どっちみち今日のめぐみ御為おために悪いことはございません。」と座蒲団ざぶとんねて、「これは早朝から御邪魔申しました。それではなりたけお早く御出おいで下さいまし、一足御先へ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いよいよ御機嫌よく、御悦申上候。相かはらず来月十九日納会相催し候まゝ、何とぞ/\御ばゝ様御同道にて御出おいで願ひ上候。遠方ゆえ御出なくば、御詠にてもいたゞき度、此段申上候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
さあ御出おいでと取る手、振り払わば今川流、握りしめなば西洋流か、お辰はどちらにもあらざりし無学の所、無類珍重ちんちょう嬉しかりしと珠運後に語りけるが、それも其時そのときうそなりしなるべし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
別荘の番人がとりあえず私を奥へ案内して、「あなたが御出おいでの事はすで主人しゅじんの方から沙汰がございました、つきましてはの通りの田舎でございますが、悠々ゆるゆる御逗留なすって下さいまし」
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
又重ねて手紙を寄越して、老母と姉が東京に出たいと云うが上京してもよろしかろうかといって来たから、颯々さっさつ御出おいでなさい、私方に嫌疑けんぎもなんにもない、公然と出て御出おいでなさいと返辞へんじをすると
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
『それにしても、お宅のは?……御出おいでになる所は分つて居るのですか』
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
それからお父さんは伯父さんから手紙が来た時又面倒な八釜やかましやが御出おいでになるんだなといった事、けれどもお母さんは聾耳つんぼは滞在中の雑用ぞうようを払うから、伯母さんよりか始末が善いといった事
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いずれも二十から四十疋まで群れて、沙漠や高原を疾く走る。オナッガは人を見れば驚き走り、安全な場に立ち留まり、振り返って追者を眺め、人近づけばまた走り、幾度となくここまで御出おいでを弄す。
一 なげくさを如何いかな御人おひと御出おいであつた、出た御人は心ありがたい
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
御母おつかさんも一処に御出おいでなさいな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
またあなたなんざあその面白い事にぶつかろうぶつかろうと苦労して御出おいでなさる御様子だが、大学を卒業しちゃもう駄目ですよ。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御本家の御女中方が灰色の麻袋を首に掛けて、桑の嫩芽しんめを摘みに御出おいでなさる時も、奥様は長火鉢にもたれて、東京の新狂言の御噂さをなさいました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かひあつたから是で一ぱいやりやせうまづ何は兎もあれ私しのたく御出おいでなせへと門口かどぐちからこゑかけければ文右衞門は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのお孃樣と聞まするは何時いつ枕邊ここ御出おいでたるお人か、いかにも其通りと言はれて、さらば夢にも非ざりけり
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
如何だね、自賛じゃないが、働きも此位やればまず一人前はたっぷりだね。それにお隣に澄まして御出おいで御前ごぜん如何どうだ。如何に無能か性分か知らぬが、君の不活動も驚くじゃないか。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あなたは亀屋かめや御出おいでなされた御客様わたくしの難儀を見かねて御救おすくい下されたはまことにあり難けれど、到底とてものがれぬ不仕合ふしあわせと身をあきらめては断念あきらめなかった先程までのおろかかえって口惜くちおしゅう御座りまする
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「それも御出おいで匇々そうそうにねえ。何と申し上げていかわかりませんわ。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
其処そこ御出おいででしたか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
どうも、宗さんもあんまり近頃は御出おいででないし、私も御無沙汰ごぶさたばかりしているのでね、つい御前の事は御話をする訳にも行かなかったんだよ
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
皆さんの方から又、用事でもあつて穢多の部落へ御出おいでになりますと、煙草たばこ燐寸マッチんで頂いて、御茶はありましても決して差上げないのが昔からの習慣です。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
進めされば秀盛先生はこの近邊きんぺんにも御弟子これ有よしにて時々御指南に御出おいでなされて滯留たうりうせつ毎度まいど私方わたくしがたにて御宿おやどを申上夫ゆゑ大先生の御咄おはなしに貴方樣の御噂おうはさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さなくて卒爾うちつけふみなどまゐらせたるを如何いかいとはしとおぼしながらかへしせざらんもなさけなしとてれよりはそれとなく御出おいでのなきか此頃このごろのおうたこゝろ如何いかしげるわかいまこそはらけれど時節じせつ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
聞いて見ると、先刻さつき一返御出おいでになりましたが、此案排ぢや、どうせ午過ひるすぎだらうつて又御帰りになりましたといふ答である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『就きましては、有志の者が寄りまして御祝の印ばかりに粗酒を差上げたいと存じますが——いかゞでせう、今晩三浦屋迄御出おいでを願へませうか。郡視学さんも、何卒どうかまあ是非御同道を。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それでも鉄道が通ふやうに成りましたら度々御出おいであそばして下さりませうか、そうならば嬉しけれどと言ふ、我れとても行きたくてゆく故郷ふるさとでなければ、此処ここに居られる物なら帰るではなく
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御出おいででやす。御這入んなさい」と友達見た様に云ふ。小使にいて行くとかどがつて和土たゝきの廊下をしたりた。世界が急に暗くなる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れでも鐵道てつだうかよふやうにりましたら度〻たび/\御出おいであそばしてくださりませうか、そうならばうれしけれどゝふ、れとてもきたくてゆく故郷ふるさとでなければ、此處こゝられるものならかへるではなく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『瀬川さん。そんなら準備したくして御出おいでなすつて下さい。今直に御飯にいたしますから。これから御出掛なさるといふのに、生憎あいにく何にも無くて御気の毒ですねえ——塩鮭しほびきでも焼いて上げませうか。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それであなたは平生森本さんと御懇意の間柄でいらっしゃるんだから、あなたに伺ったら多分どこに御出おいでか分るだろうと思って上ったような訳で。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
れでもわたしそのやうな悋氣沙汰りんきさたまうすのでは御座ござりませぬ、今日けふ會席くわいせきにぎやかに、種々いろ/\方々かた/″\御出おいでなかれとて世間せけんきこえぬもく、このやうのお人達ひとたちみな貴郎あなたさまの御友達おともだちかとおもひますれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あれ、叔父さんは最早もう帰って御出おいでたそうな」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
昨日きのふわたくしさがして御出おいでだつたさうですが、何か御用ですか」と聞いた。すると野々宮君は、少し気の毒さうな顔をして
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「お俊姉様——兄様が御出おいでたぞなし」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
のう、なんでしょう。——ああ新潟県で思い出した。この間あなたが御出おいでのときちがいに出て行った男があるでしょう」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「代さん、あなたは不断ふだんからわたくしを馬鹿にして御出おいでなさる。——いゝえ、厭味いやみを云ふんぢやない、本当の事なんですもの、仕方がない。さうでせう」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なに何時いつでもおそいのだが、昨夕ゆふべのは勉強ぢやなくつて、佐々木さんと久しく御話をして御出おいでだつたのだといふ答である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると年嵩としかさな男は思い出したように、「そうそう先刻さっき市蔵いちぞう(須永の名)から電話で話がありました。しかし今夜御出おいでになるとは思いませんでしたよ」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「代さん、あなたは不断から私を馬鹿にして御出おいでなさる。——いいえ、厭味いやみを云うんじゃない、本当の事なんですもの、仕方がない。そうでしょう」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うですか、能くわかりませんが。なんでもさうかるさうでもない様でした。然し平岡さんが明日あした御出おいでになられる位なんだから、たいしたことぢやないでせう」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そんなに弱っちゃ不可いけない。昔の様に元気に御成んなさい。そうしてちっと遊びに御出おいでなさい」と勇気をつけた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)