ぎし)” の例文
「もうじきわし停車場ていしゃじょうだよ」カムパネルラがこうぎしの、三つならんだ小さな青じろい三角標さんかくひょうと、地図とを見くらべていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それむかぎしいたとおもふと、四邊あたりまた濛々もう/\そらいろすこ赤味あかみびて、ことくろずんだ水面すゐめんに、五六にん氣勢けはひがする、さゝやくのがきこえた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、かわにとびこんでこうぎしげようか、やぶなかにもぐりこんで、姿すがたをくらまそうか、と、とっさのあいだにかんがえたのであります。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そしてやっと、水勢のゆるいとろへかかった時、向こうぎしへはいあがって見ると、ああなんということだ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少年たちは、その岩山の岸に、上陸できるような場所はないかと、注意ぶかく見はっていましたが、みな削ったようなきりぎしばかりで、どこにもそんな場所は見あたりません。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
振返つて見ると高台にはもうが多くついて瞬間に火の都となつた様に思はれる。自分等はルウヴル宮の横の橋を渡つて北ぎしで見物する事にしたが、待つて居るのに丁度ちやうど程よい場所がない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
うつかりすつとちゝぎしまでへえるやうなふかばうえつとこぢやどうしたつて晩稻おくいねでなくつちやれるもんぢやねえな、それから役場やくば役人やくにん講釋かうしやくすつからふかばうぢやうだつちはなししたら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ことに樂浪郡らくろうぐん役所やくしよのあつたところは、今日こんにち平壤へいじようみなみ大同江だいどうこうむかぎしにあつて、ふる城壁じようへきのあともありますが、支那しなから派遣はけんせられた役人やくにんがこゝにとゞまつて朝鮮ちようせんをさめてゐたのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
まったくこうぎしの野原に大きなまっ赤な火がもやされ、その黒いけむりは高く桔梗ききょういろのつめたそうな天をもがしそうでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
で、ぬまは、はなしいて、おかんがへにるほどおほきなものではないのです。うかとつて、むかぎしとさしむかつてこゑとゞくほどはちひさくない。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
不幸な子供のたましいをとむらいながら、可愛御堂かわいみどう堂守どうもり生涯しょうがいをおわろうと思っていた菊村宮内きくむらくないも、むかしの主人であり、ふるさとの兵である北国勢ほっこくぜいが、すぐむこぎし木之本きのもとでやぶれ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家は皆それ程高くなくて、それの上半分は霧の中にぼやけてしまつて居る。帆柱が際立つた黒い木立こだちのやうに見えて両ぎしにそれぞれ寄りかたまつて居た。ひらひらと横長い旗が動いて居るのも見えた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「たしかにさようとぞんぜられます。今朝けさヒームキャのこうぎしでご説法せっぽうのをハムラの二人の商人しょうにんおがんでまいったともうします」
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
たゝつたな——裏川岸うらがし土藏どざうこしにくついて、しよんぼりとつたつけ。晩方ばんがたぢやああつたが、あたりがもう/\として、むかぎしも、ぼつとくらい。をりから一杯いつぱい上汐あげしほさ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そしてそこは、黄河のほとりの——黄土層の低いぎしであった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時こうぎしちかくの少し下流かりゅうの方で、見えない天の川の水がぎらっと光って、はしらのように高くはねあがり、どおとはげしい音がしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わしそのまゝらしたが、の一だん婦人をんな姿すがたつきびて、うすけぶりつゝまれながらむかぎししぶきれてくろい、なめらかな、おほきいし蒼味あをみびて透通すきとほつてうつるやうにえた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「来るよ、きっと。大ていむこぎしのあの草の中から出て来ます。兵隊だってだれだって気持きもちのいい所へは来たいんだ。」
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大手筋おほてすぢ下切おりきつた濠端ほりばたに——まだ明果あけはてない、うみのやうな、山中さんちゆうはら背後うしろにして——朝虹あさにじうろこしたやうに一方いつぱうたにから湧上わきあがむかぎしなる石垣いしがきごしに、天守てんしゆむかつてわめく……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬のひづめそこ砂利じゃりをふむ音と水のばちゃばちゃはねる音とが遠くの遠くのゆめの中からでも来るように、こっちぎしの水の音をえてやって来ました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ところ小船こぶねは、なんときか、むかぎしからこのきし漕寄こぎよせたものゝごとく、とも彼方かなたに、みよしあし乗据のつすえたかたちえる、……何処どこ捨小船すてをぶねにも、ぎやくもやつたとふのはからう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからしばらくたって、ふと私は川のむこぎしを見ました。せいの高い二本のでんしんばしらが、たがいによりかかるようにして一本の腕木うでぎでつらねられてありました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
御意ぎよい、」と一同いちどう川岸かはぎし休息きうそくする。むかぎしへのそ/\とたものがあつた。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むかぎしまたやますそで、いたゞきはう真暗まつくらだが、やまからその山腹さんぷくつきひかりらしされたあたりからは大石おほいし小石こいし栄螺さゞえのやうなの、六尺角しやくかく切出きりだしたの、つるぎのやうなのやらまりかたちをしたのやら
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)