四方しはう)” の例文
四方しはう山の中に立ちたる高さ三百尺の一孤邱いつこきう、段々畠の上にちとの橄欖の樹あり、土小屋つちごや五六其ひたひに巣くふ。馬上ながらに邱上きうじやうを一巡す。
それを石橋いしばしわたしとでしきり掘出ほりだしにかゝつた、すると群雄ぐんいう四方しはうよりおこつて、ひゞきの声におうずるがごとしです、これ硯友社けんいうしや創立さうりつ導火線だうくわせんつたので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いまにも自分じぶんんでゐる宿しゆくが、四方しはうやまからながれてあめなかかつて仕舞しまひさうで、心配しんぱいでならなかつたとはなしをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まだ方角はうがくたしかでない。旅馴たびなれた野宿のじゆく覺悟かくごで、かすか黒雲くろくもごとひくやま四方しはうつゝんだ、はひのやうな渺茫べうばうたる荒野あらのあしにまかせて辿たどること二里にりばかり。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まはりの五ひきも一ぺんにぱつと四方しはうへちらけやうとしましたが、はじめの鹿しかが、ぴたりととまりましたのでやつと安心あんしんして、のそのそもどつてその鹿しかまへあつまりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
悠然いうぜん車上しやじようかまんで四方しはう睥睨へいげいしつゝけさせる時は往来わうらいやつ邪魔じやまでならない右へけ左へけ、ひよろひよろもので往来わうらい叱咜しつたされつゝ歩く時は車上しやじようの奴やつ癇癪かんしやくでならない。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
とてしたいて歎息たんそくこゑらすに、どうもなんとも、わし悉皆しつかい世上せじやうことうとしな、はゝもあのとほりのなんであるので、三方さんばう四方しはうらちことつてな、第一だいいち此娘これせまいからではあるが
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
四方しはうより花吹き入れてにほの海 芭蕉
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
四方しはうかへりみはしさりて行方しれず。
二つのちやぶ台の四方しはうに見ながら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
友はみな或日あるひ四方しはうに散りきぬ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
宗助そうすけ何處どこつて、宜道ぎだうのゐるところをしへてもらはうかとかんがへながら、だれとほらないみち眞中まんなかつて四方しはう見回みまはした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さて我楽多文庫がらくたぶんこの名がやうや書生間しよせいかんに知れわたつて来たので、四方しはうから入会を申込まをしこむ、社運隆盛といふことば石橋いしばし口癖くちぐせのやうに言つてよろこんでたのは此頃このころでした
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
鹿しかはそれからみんなばらばらになつて、四方しはうからとちのだんごをかこんであつまりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
猶子いうし屏風びやうぶて、には牡丹叢ぼたんさうおほひ、ひとうかゞふことをゆるさず。ひとなかにあり。くわ四方しはうり、ふかおよび、ひろひとれてす。たゞ紫粉むらさきこべに白粉おしろいもたらしるのみ。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あのやうな良人をつとなに不足ふそくつるぎ刃渡はわたりするやうな危險あぶな計較たくみをするのやら、可愛かあいさうにあのひと仲町なかまちねえさんまでを引合ひきあひにして三方さんばう四方しはううそかためて、此足このあしはまあ何處どこ
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
望遠鏡めがねつゝ四方しはうから
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
山田やまだ出嫌でぎらひであつたが、わたし飛行自由ひぎやうじざいはうであるから、四方しはうまじはりむすびました、ところ予備門よびもんないあまねたづねて見ると、なか/\斯道しだう好者すきしや潜伏せんぷくしてるので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さうかといつて、この情熱じやうねつつくほどはげしい活動くわつどうには無論むろん出會であはなかつた。かれたかみやくつて、いたづらにむづがゆかれ身體からだなかながれた。かれ腕組うでぐみをして、ながら四方しはうやまながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
四方しはうよる鬼神きじんをまねき
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
星が四方しはうの桟敷に
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
立留たちとゞまつて四方しはうきつてあ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
常に四方しはういましめて
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)