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仮初
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かりそめ
ふりがな文庫
“
仮初
(
かりそめ
)” の例文
旧字:
假初
しからざりし以前より、
渠
(
かれ
)
はこの僂麻質の持病に悩みて、
仮初
(
かりそめ
)
なる
俥
(
くるま
)
の上下にも、小幾、重子など、肩貸し、腰を抱きなどせしなり。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さるにても弓矢取る者の
仮初
(
かりそめ
)
にも乗るまじきは輿車ぞかし、思う仔細のある間、兎にも角にも藤の森まで参るようにと、輿を急がせた。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
血
(
ち
)
の
道
(
みち
)
のつよき
人
(
ひと
)
なれば
胸
(
むな
)
ぐるしさ
堪
(
た
)
えがたうて、
枕
(
まくら
)
に
小抱卷
(
こがいまき
)
仮初
(
かりそめ
)
にふし
給
(
たま
)
ひしを、
小間
(
こま
)
づかひの
米
(
よね
)
よりほか、
絶
(
た
)
えて
知
(
し
)
る
者
(
もの
)
あらざりき。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
しかし初冬が訪れると間もなくミチミは
仮初
(
かりそめ
)
の風邪から急性の肺炎に侵されるところとなり、それは一度快方に赴いて暫く杜を悦ばせた。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
仮初
(
かりそめ
)
にも人に
疵
(
きず
)
を付ける
了簡
(
りょうけん
)
はないから、
唯
(
ただ
)
一生懸命に
駈
(
か
)
けて、堂島五丁目の
奥平
(
おくだいら
)
の倉屋敷に
飛込
(
とびこん
)
でホット
呼吸
(
いき
)
をした事がある。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
又正しく彼女を取り扱うことの出来ないものが、
仮初
(
かりそめ
)
にも彼女に近づけば、彼女は見る見るそのやさしい存在から
萎
(
しお
)
れて行く。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
……もっともお手前の今度の
過失
(
あやまち
)
は、ほんの
仮初
(
かりそめ
)
の
粗忽
(
そこつ
)
ぐらいのものじゃが、それでもお手前のためには何よりの薬じゃったぞ
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
仮初
(
かりそめ
)
にも
一匹
(
いつぴき
)
の男子たる者が、
金銭
(
かね
)
の為に
見易
(
みか
)
へられたかと思へば、その無念といふものは、私は
一
(
い
)
……一生忘れられんです。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
吉野の北山でもゴンパチはイタズロと併存しているから、これもいたって
仮初
(
かりそめ
)
なる流行に始まるものと見てよかろうと思う。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「金銀は卑しきものとて手にも触れず、
仮初
(
かりそめ
)
にも物の
直段
(
ねだん
)
を知らず、
泣言
(
なきごと
)
を言はず、まことに
公家大名
(
くげだいみょう
)
の
息女
(
そくじょ
)
の如し」とは江戸の
太夫
(
たゆう
)
の讃美であった。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
... 最初から食物に出来ている胚乳ですから人が食べても
身体
(
からだ
)
の滋養分になるのです」と
仮初
(
かりそめ
)
の話にも小山の妻君感服し
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
これまで育て上げた
娘
(
こ
)
をほんの
仮初
(
かりそめ
)
の病で手もなく
奪
(
と
)
られましたことは、私に取っては二つの不幸でありました。
幕末維新懐古談:72 総領の娘を亡くした頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼女は
仮初
(
かりそめ
)
の扮装が
仇
(
あだ
)
となり、とうとう乞食の群に身を落す運命となった、乞食となり下った伯爵令嬢の不思議にも痛ましき身の上、それを細叙したならば
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのほどほどの人妻に成りたるものとやいはまし——
仮初
(
かりそめ
)
の筆すさび成りける枕の草紙をひもとき
侍
(
はべ
)
るに
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
仮初
(
かりそめ
)
ながら
知合
(
しりあい
)
となった
爺
(
じい
)
の耳へもあなたの
良
(
よい
)
評判を聞せて
貰
(
もら
)
い
度
(
た
)
い、然し何もあなたを
追立
(
おいたて
)
る訳ではないが、昨日もチラリト窓から
覗
(
のぞ
)
けば像も見事に出来た様子
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その後にある一間ばかりの丈の赤松の根元に二枚の板をもたせ置けるあり。こは前日の
野分
(
のわき
)
に倒れたるを母などが引き起して
仮初
(
かりそめ
)
の板を置きそれで支へるつもりなり。
明治卅三年十月十五日記事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
すなわちその正価というものが、中村屋では割引など
仮初
(
かりそめ
)
にも出来ないほんとうの正価に据えられているのであって、この正価販売への精進こそは我が中村屋の生命である。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
今まで
仮初
(
かりそめ
)
にも許嫁と云う約束を以て同じ屋根の下に暮して来たのが、忌々しい、併し夫よりも差し迫った問題は何うして此の松谷秀子を虎の顋から救い出すかと云うに在るのだ
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
一年
(
ひとゝせ
)
夏の頃、江戸より来りたる
行脚
(
あんぎや
)
の
俳人
(
はいじん
)
を
停
(
とゞめ
)
おきしに、
謂
(
いふ
)
やう、此国の所々にいたり見るに
富家
(
ふか
)
の
庭
(
には
)
には手をつくしたるもあれど、
垣
(
かき
)
はいづれも
粗略
(
そりやく
)
にて
仮初
(
かりそめ
)
に作りたるやうなり
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
「
酒
(
ささ
)
がこうしてついそれなりに、
雑魚寝
(
ざこね
)
の
枕
(
まくら
)
仮初
(
かりそめ
)
の、おや好かねえ
暁
(
あけ
)
の鐘——。」
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
これは夜の意識が
仮初
(
かりそめ
)
に到達した安心の
境
(
さかい
)
ではあるが、この境が幸に
黒甜郷
(
こくてんきょう
)
の近所になっていたと見えて、べろべろの神さんの相変らず
跳梁
(
ちょうりょう
)
しているにも拘らず、純一は頭を夜着の中に
埋
(
うず
)
めて
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だからこの世は無常である。無常から脱れられないのが二元に住むものの宿命である。だが凡てのそれらの無常なもの有限なものは、虚仮なのである。
仮初
(
かりそめ
)
なのである。本来の実相ではないのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
身のあらんかぎり思はず
仮初
(
かりそめ
)
の世にいつまでのうかれ心ぞ
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
今己の最後の
仮初
(
かりそめ
)
ならぬ一歩を引き留めたのだ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
紙の良きを
択
(
えら
)
び、筆の良きを択び、墨の良きを択び、彼は
意
(
こころ
)
してその字の良きを
殊
(
こと
)
に択びて、今日の今ぞ始めて
仮初
(
かりそめ
)
ならず写さんと
為
(
す
)
なる。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私は
予
(
かね
)
て申す通り一体の性質が
花柳
(
かりゅう
)
に
戯
(
たわぶ
)
れるなどゝ云うことは
仮初
(
かりそめ
)
にも身に犯した事のないのみならず、口でもそんな
如何
(
いかが
)
わしい話をした事もない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
いよいよ
呆
(
あき
)
れたる馭者は少しく身を
退
(
すさ
)
りて、
仮初
(
かりそめ
)
ながら、
狐狸変化
(
こりへんげ
)
のものにはあらずやと心ひそかに疑えり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
通らでも事は済めども言はば近道の
土手々前
(
どてでまへ
)
に、
仮初
(
かりそめ
)
の
格子門
(
かうしもん
)
、のぞけば
鞍馬
(
くらま
)
の
石燈籠
(
いしどうろ
)
に
萩
(
はぎ
)
の
袖垣
(
そでがき
)
しをらしう見えて、
椽先
(
ゑんさき
)
に巻きたる
簾
(
すだれ
)
のさまもなつかしう
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
然し彼はどんな事があっても
仕遂
(
しと
)
ぐべき事を仕遂げずにはおかなかった。その年が暮れに迫った頃お前達の母上は
仮初
(
かりそめ
)
の
風邪
(
かぜ
)
からぐんぐん悪い方へ向いて行った。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
師匠の
仮初
(
かりそめ
)
の楽しみが、偶然葬式の料となったことなども考えて見れば妙なことと思われます。
幕末維新懐古談:30 身を引いた時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
……のう……一存の取計らいとはいう条、
仮初
(
かりそめ
)
にも老中の許し状を所持致しておる人間じゃ。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それに刑事の話だと、その支那人の混血児らしく見える婦人は正式の細君ではなくて、
仮初
(
かりそめ
)
の
同棲者
(
どうせいしゃ
)
らしいのだと云うことであった。そして彼女の国籍が又
明瞭
(
めいりょう
)
を欠いていた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一年
(
ひとゝせ
)
夏の頃、江戸より来りたる
行脚
(
あんぎや
)
の
俳人
(
はいじん
)
を
停
(
とゞめ
)
おきしに、
謂
(
いふ
)
やう、此国の所々にいたり見るに
富家
(
ふか
)
の
庭
(
には
)
には手をつくしたるもあれど、
垣
(
かき
)
はいづれも
粗略
(
そりやく
)
にて
仮初
(
かりそめ
)
に作りたるやうなり
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
と今は
仮初
(
かりそめ
)
の話しにあらず。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それぢや祝盃の主意を変へて、
仮初
(
かりそめ
)
にもああ云ふ美人と
一所
(
いつしよ
)
に居て寝食を
倶
(
とも
)
にすると云ふのが既に
可羨
(
うらやまし
)
い。そこを祝すのだ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
父母は唯発案者にして決議者に非ず、之を本人に告げて可否を問い、
仮初
(
かりそめ
)
にも不同心とあらば決して
強
(
し
)
うるを得ず。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
旅籠屋
(
はたごや
)
に
取
(
と
)
つては
実際
(
じつさい
)
容易
(
ようい
)
な
事
(
こと
)
では
無
(
な
)
からう、——
仮初
(
かりそめ
)
に
宿
(
やど
)
つた
夫婦
(
ふうふ
)
が、
婦
(
をんな
)
は
生死
(
しやうし
)
も
行衛
(
ゆくゑ
)
も
知
(
し
)
れず、
男
(
をとこ
)
は
其
(
それ
)
が
為
(
ため
)
に、
殆
(
ほと
)
んど
狂乱
(
きやうらん
)
の
形
(
かたち
)
で、
夜昼
(
ひるよる
)
とも
無
(
な
)
しに
迷
(
まよ
)
ひ
歩行
(
ある
)
く……
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
一
(
ひと
)
とせ
下谷
(
したや
)
のほとりに
仮初
(
かりそめ
)
の
家居
(
いへゐ
)
して、
商人
(
あきびと
)
といふ名も恥かしき、
唯
(
ただ
)
いさゝかの物とり
並
(
なら
)
べて
朝夕
(
あさゆふ
)
のたつきとせし頃、
軒端
(
のきば
)
の
庇
(
ひさし
)
あれたれども、月さすたよりとなるにはあらで
あきあはせ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……神様、仏様の御恩は申すに及ばず、この世にてお世話様になりました方々や、
不束
(
ふつつか
)
なわたくしに
仮初
(
かりそめ
)
にも有難いお言葉を賜わりました方々様へは、これこの通り手を合わせまする。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
是
(
こ
)
れまで私は
部屋住
(
へやずみ
)
だから
外
(
ほか
)
に出るからと云て
届
(
とどけ
)
も
願
(
ねがい
)
も
要
(
い
)
らぬ、
颯々
(
さっさつ
)
と
出入
(
でいり
)
したが、今度は
仮初
(
かりそめ
)
にも一家の主人であるから願書を出さなければならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
仮初
(
かりそめ
)
に置いた
涼傘
(
ひがさ
)
が、
襤褸
(
ぼろ
)
法衣
(
ごろも
)
の袖に触れそうなので、
密
(
そっ
)
と手元へ引いて
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
仮初
(
かりそめ
)
にもかかる物を賜う事
鬼桃太郎
(新字新仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
昨日
(
きのふ
)
は
何方
(
いづかた
)
に
宿
(
やど
)
りつる
心
(
こゝろ
)
とてかはかなく
動
(
うご
)
き
初
(
そ
)
めては
中々
(
なか/\
)
にえも
止
(
と
)
まらずあやしや
迷
(
まよ
)
ふぬば
玉
(
たま
)
の
闇
(
やみ
)
色
(
いろ
)
なき
声
(
こゑ
)
さへ
身
(
み
)
にしみて
思
(
おも
)
ひ
出
(
い
)
づるに
身
(
み
)
もふるはれぬ
其人
(
そのひと
)
恋
(
こひ
)
しくなると
共
(
とも
)
に
恥
(
はづ
)
かしくつゝましく
恐
(
おそ
)
ろしくかく
云
(
い
)
はゞ
笑
(
わら
)
はれんかく
振舞
(
ふるま
)
はゞ
厭
(
いと
)
はれんと
仮初
(
かりそめ
)
の
返答
(
いらへ
)
さへはか/″\しくは
闇桜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
仮初
(
かりそめ
)
にも実父母を重んじて舅姑を軽んずる勿れ、一切万事舅姑の言うがまゝに従う可しと言う。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
仮初
(
かりそめ
)
に置いた
涼傘
(
ひがさ
)
が、
襤褸法衣
(
ぼろごろも
)
の
袖
(
そで
)
に触れさうなので、
密
(
そっ
)
と手元へ引いて
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
幼稚の時より男女の別を正くして
仮初
(
かりそめ
)
にも戯れたる事を見聞せしむ可らずと言う。即ち
婬猥
(
いんわい
)
不潔のことは目にも見ず耳にも聞かぬようにす可しとの意味ならん。至極の教訓なり。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
一 女子は
稚時
(
いとけなきとき
)
より男女の
別
(
わかち
)
を正くして
仮初
(
かりそめ
)
にも戯れたることを
見
(
み
)
聞
(
きか
)
しむべからず。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
男子の文章既に
斯
(
かく
)
の如し。
況
(
ま
)
して女子の談論に於てをや。
仮初
(
かりそめ
)
にも過激粗暴なる可らず。其顔色を和らげ其口調を緩かにし、要は唯条理を明にして丁寧反覆、思う所を述ぶるに在るのみ。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
仮
常用漢字
小5
部首:⼈
6画
初
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
“仮”で始まる語句
仮令
仮
仮面
仮借
仮名
仮髪
仮声
仮病
仮睡
仮寝