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かわ
ふりがな文庫
“
交
(
かわ
)” の例文
ぎっしり詰った三等車に眠られぬまま、スチームに曇るガラス窓から、見えぬ
外
(
と
)
の
面
(
も
)
を
窺
(
うかが
)
ったり、乗合と一、二の言を
交
(
かわ
)
しなどする。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
截刻部
(
せっこくぶ
)
の頭を真ッ黄色にした男工が振り向いて云った。みんな
交
(
かわ
)
る交る、顔をしかめながら、短い言葉で、その出征者へ話しかけた。
工場新聞
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
二人の美人は、無言で
挨拶
(
あいさつ
)
を
交
(
かわ
)
した。青木さんは、既に卑屈な泣きべそみたいな顔になっている。もはや、勝敗の数は明かであった。
グッド・バイ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこへは病気のまだ好くならぬ未亡人の外、りよを始、親戚一同が集まって来て、先ず墓参をして、それから離別の
盃
(
さかずき
)
を
酌
(
く
)
み
交
(
かわ
)
した。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「この小屋が
手頃
(
てごろ
)
。こん夜からわしもここに泊るから、おまえ達も気のどくだが、二、三人ずつ
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
る看護にここへ泊ってくれい」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
僕等三人はしばらくの
間
(
あいだ
)
、
何
(
なん
)
の言葉も
交
(
かわ
)
さずに茫然と玄関に
佇
(
たたず
)
んでいた、伸び放題伸びた
庭芝
(
にわしば
)
だの
干上
(
ひあが
)
った古池だのを眺めながら。
悠々荘
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いまだ少年であった私が
縦
(
たと
)
い翁と直接話を
交
(
かわ
)
すことが出来なくとも、一代の
碩学
(
せきがく
)
の
風貌
(
ふうぼう
)
を
覗
(
のぞ
)
き見するだけでも大きい感化であった。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
この句の作られた時から今日までもまだその野中の石には、いつも入り
交
(
かわ
)
り立ち交り旅人は休んでいるような心持がするのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
のう
吉
(
きち
)
ちゃん。たとえ一
夜
(
や
)
の
枕
(
まくら
)
は
交
(
かわ
)
さずとも、あたしゃおまえの
女房
(
にょうぼう
)
だぞえ。これ、もうし
吉
(
きち
)
ちゃん。
返事
(
へんじ
)
のないのは、
不承知
(
ふしょうち
)
かえ
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
覚悟したれば身を
交
(
かわ
)
して、案のごとく
踵
(
かかと
)
をあげたる、彼が
足蹴
(
あしげ
)
をば
外
(
そら
)
してやりたり。蒲団持ちながら座を立ちたれば、
拳
(
こぶし
)
の
楯
(
たて
)
に
差翳
(
さしかざ
)
して。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小供のとき家に五六十幅の
画
(
え
)
があった。ある時は床の間の前で、ある時は蔵の中で、またある時は
虫干
(
むしぼし
)
の折に、余は
交
(
かわ
)
る交るそれを見た。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あるひは両国花火の
屋形船
(
やかたぶね
)
に
紺絞
(
こんしぼ
)
りの
浴衣
(
ゆかた
)
も涼し
気
(
げ
)
に
江戸三座
(
えどさんざ
)
の
大達者
(
おおだてもの
)
打揃
(
うちそろ
)
ひて
盃
(
さかずき
)
を
交
(
かわ
)
せるさまなぞあまりに見飽きたる心地す。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
第一
人
(
ひと
)
の女房とこんなもん取り
交
(
かわ
)
しといて、その女房の亭主の前いれいれいしいに見せつけながら、それに対する一言のいい訳もせんと
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それかと言って器用に身を
交
(
かわ
)
すだけの
術
(
すべ
)
もなく、信じないながらにわざと信じているようなふうをして、苦悩の
泥濘
(
でいねい
)
に足を取られていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
川北先生と道夫とは、まだそう決めるのは早すぎることを
交
(
かわ
)
る交る説いた。そして先生よりも道夫の方がそれを熱心にいいはったのだった。
四次元漂流
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「いらっしゃいまし」「お待ち遠さま」「有難う存じます」の声々——それに混じって食堂じゅうに色んな日本語が縦横に走り
交
(
かわ
)
している。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
多「左様で御ざりやすか、御近所に居りましても碌にお言葉も
交
(
かわ
)
しませんで、何分不調法者で、此の
後
(
ご
)
ともお心安く願います」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お雪は二番目のお菊を抱きながら会釈する、お種は車の上からアヤして見せる、
碌
(
ろく
)
に言葉を
交
(
かわ
)
す暇もなく、汽車は動き出した。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それができ上れば、吉良の意に任す——それまでは、枕を
交
(
かわ
)
すことはできない、と、糸重が、難題として、吉良に持ちかけた扇子なのだった。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
平次は十手と青銭と
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
る飛ばして、わずかに身を防ぎましたが、相手の武家は思いの外の使い手で、平次も次第に圧迫されるばかりです。
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、ボールは思う通りには、バウンドしなかった。でも、段違に
上手
(
じょうず
)
な譲吉は、相手の少年を
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
る、幾度も負かした。
大島が出来る話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そんな会話を
交
(
かわ
)
しながら、いつの間にか私たちの歩いている山手のこのへんの異人屋敷はどれもこれも古色を帯びていて、なかなか情緒がある。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼の母が人形を差し出すと幸子は祖母の顔と人形とを
暫
(
しばら
)
く
交
(
かわ
)
り
番
(
ばん
)
こに眺めていてから、そろそろと人形の方へ手を出した。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
いうまでもなくこの三人の者は常々不和の仲で、途上で
出遇
(
であ
)
っても
碌々
(
ろくろく
)
挨拶
(
あいさつ
)
も
交
(
かわ
)
したことのないほどの間柄なのである。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
るさまざまの色の電光が射し込んで、床に
置
(
お
)
かれた
石膏
(
せっこう
)
像
(
ぞう
)
や黒い
寝台
(
しんだい
)
や引っくり
返
(
かえ
)
った
卓子
(
テーブル
)
やらを照らしました。
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
一人一人とゆつくり挨拶を
交
(
かわ
)
すひまはもちろんない。父は想像以上に年をとり、母は、反対に、まだしやんとしていた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
長々と地面に
引擦
(
ひきず
)
った燃立つような
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
の
長襦袢
(
ながじゅばん
)
の裾に、白い
脛
(
すね
)
と、白い素足が
交
(
かわ
)
る交る月の光りを反射しいしい、彼の眼の前に近付いて来た。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼女はしまいには殆ど
眩惑
(
めまい
)
さえかんじてきた。
嘔気
(
はきけ
)
と目まいと前のめりとが、
交
(
かわ
)
る交る迫ってきた。淵がだんだん目の前にせり上ってくるのだった。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そこで
盃
(
さかずき
)
を
取
(
と
)
り
交
(
かわ
)
して、
手
(
て
)
を
懸
(
か
)
け
合
(
あ
)
つて、今日までも
鎭
(
しず
)
まつておいでになります。これらの歌は
神語
(
かむがたり
)
と申す
歌曲
(
かきよく
)
です。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
夫婦がそんな問答を
交
(
かわ
)
しているところへ、ある知人から花が届けられてきた。病人へではなく、小説書きの老妻の方へであった。花は高貴な
蘭
(
らん
)
である。
日めくり
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
高橋氏に話すと快諾してくれましたので、形ばかりの
結納
(
ゆいのう
)
を取り
交
(
かわ
)
し、明治八年の十一月七日に、九尺二間の我家で結婚の式を
挙
(
あ
)
げたのでありました。
幕末維新懐古談:23 家内を貰った頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
町の特殊な美しさも、静かな夢のような閑寂さも、かえってひっそりと気味が悪く、何かの恐ろしい秘密の中で、暗号を
交
(
かわ
)
しているように感じられた。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そこで別れの
接吻
(
ベエゼ
)
などしてから、お
互
(
たが
)
いに、片手をあげては、スカアルの小さくなるまで、合図を
交
(
かわ
)
していました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「幸い、乗り捨てなさんしたあのお駕籠、あれへお乗りなすったら、わたしたちが
交
(
かわ
)
る交る
舁
(
かつ
)
いでお上げ申して、ともかくも人家のあるところまで……」
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
双方とも私の口から
噂
(
うわさ
)
を聞合っていた仲なので、名前を云った丈けで、お互に名前以上の
種々
(
いろいろ
)
なことが分ったらしく、二人は意味ありげな挨拶を
交
(
かわ
)
した。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
良心に恥ずる所なしとはいいながら、何とやら、
面伏
(
おもぶ
)
せにて同志とすら言葉を
交
(
かわ
)
すべき勇気も
失
(
う
)
せ、穴へも入りたかりし一昼夜を過ぎて、
漸
(
ようや
)
く神戸に着く。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
その
際
(
さい
)
私達
(
わたくしたち
)
の
間
(
あいだ
)
に
交
(
かわ
)
された
問答
(
もんどう
)
の
中
(
なか
)
には、
多少
(
たしょう
)
皆様
(
みなさま
)
の
御参考
(
ごさんこう
)
になるところがあるように
思
(
おも
)
われますので、
序
(
ついで
)
にその
要点
(
ようてん
)
だけここに
申
(
もう
)
し
添
(
そ
)
へて
置
(
お
)
きましょう。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
梢から梢へ、姿を見せぬ小鳥たちが互いに
啼
(
な
)
き
交
(
かわ
)
しながら移動して行くらしく、また遠くで野生の鶏がするどい声でつづけざまに
啼
(
な
)
いた。大気は爽快であった。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
尾張町へ来ると客は
殆
(
ほと
)
んど入れ
交
(
かわ
)
った。が、乗って来る客の半分は依然買物に来た婦人達であった。
其中
(
そのなか
)
に彼は先刻資生堂で卓を同じくした婦人を
見付
(
みつけ
)
出した。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
氏は毎朝、六時に起きて、家族と共に朝飯前に、
静座
(
せいざ
)
して聖書と
仏典
(
ぶってん
)
の研究を
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
るいたして
居
(
お
)
ります。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
新しい黒地の着物を着て、二人とも
膨
(
ふく
)
れた袋を手に提げている。急いでいた。話をするのに、めいめいが、
交
(
かわ
)
る交る相手の意見に賛成することしか考えていない。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
御機嫌
(
ごきげん
)
よろしゅうと言葉
後
(
じり
)
力なく送られし時、跡ふりむきて今
一言
(
ひとこと
)
交
(
かわ
)
したかりしを邪見に唇
囓切
(
かみしめ
)
て
女々
(
めめ
)
しからぬ
風
(
ふり
)
誰
(
たが
)
為
(
ため
)
にか
粧
(
よそお
)
い、急がでもよき足わざと早めながら
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
長十郎はその日一家四人と別れの
杯
(
さかずき
)
を
酌
(
く
)
み
交
(
かわ
)
し、母のすすめに任せて、もとより酒好きであった長十郎は更に杯を重ね、快く酔って、微笑を含んだまま
午睡
(
ごすい
)
をした。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
それで
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
る其処まで行って足を掛けて見るが、荷が無ければ
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、荷があっては素早く行動しないと落ちそうなので、長次郎さえも行きかけて止めてしまう。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
もちろん各楽章の
排列
(
はいれつ
)
は転倒し、また変形しているとはいえ、二つの主題が
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
るに起伏出没していることまで、何とソナータの形式に似通っていることであろう。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
僕は母に
交
(
かわ
)
って
此方
(
こちら
)
に来て、母は今、横浜の宅に居ますが、里子は両方を
交
(
かわ
)
る/″\介抱して、
二人
(
ふたり
)
の不幸をば
一人
(
ひとり
)
で正直に解釈し、たゞ/\
怨霊
(
おんりょう
)
の
業
(
わざ
)
とのみ信じて
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「そんな事はありませんや。どこかへ
交
(
かわ
)
しているんでしょう。なにしろ呼んで見ましょう」
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
私共
(
わたくしども
)
も二三
人宛
(
にんづゝ
)
は
休息時間
(
きうそくじかん
)
を
廢
(
はい
)
しても、
交
(
かわ
)
る/″\
行
(
い
)
つて
働
(
はたら
)
きますぞ、すると
海底戰鬪艇
(
かいていせんたうてい
)
の
竣工
(
しゆんこう
)
する
頃
(
ころ
)
には、
鐵檻
(
てつおり
)
の
車
(
くるま
)
も
出來上
(
できあが
)
つて、
私共
(
わたくしども
)
は
直
(
す
)
ぐ
其
(
そ
)
れに
乘込
(
のりこ
)
んで、
深山
(
しんざん
)
の
奧
(
おく
)
へ
行
(
い
)
つて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
二人の青年記者の顔を
交
(
かわ
)
りばんこに見比べていたが、やがてその一人に近づいて
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
それが一般の評判になったので、
表向
(
おもてむき
)
の罪人にこそならないけれども、御親類御一門も皆その奥様を
忌嫌
(
いみきら
)
って、
誰
(
たれ
)
も快く交際する者もなく、
果
(
はて
)
は
本夫
(
おっと
)
の殿様さえも
碌々
(
ろくろく
)
に
詞
(
ことば
)
を
交
(
かわ
)
さぬ
位
(
くらい
)
。
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
“交”の意味
《名詞》
(コウ)付き合い、交わり。
(コウ)年月や季節の変わり目。
(出典:Wiktionary)
交
常用漢字
小2
部首:⼇
6画
“交”を含む語句
交際
交換
入交
交互
交々
交渉
交代
交叉
取交
交情
打交
交趾
眼交
交尾
交錯
交誼
情交
人交
目交
飛交
...