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陽炎
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かげろふ
ふりがな文庫
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陽炎
(
かげろふ
)” の例文
障子
(
しやうじ
)
を細目に開けて見ると、江戸中の櫻の
蕾
(
つぼみ
)
が一夜の中に
膨
(
ふく
)
らんで、
甍
(
いらか
)
の波の上に黄金色の
陽炎
(
かげろふ
)
が立ち舞ふやうな美しい朝でした。
銭形平次捕物控:142 権八の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
田圃でも日向のよい箇所は、所々土が雪より現はれます
陽炎
(
かげろふ
)
が立ちまする有様、陽気が土中より登りて湯気の如くに立ちのぼる。
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
と
云
(
い
)
つて、
小説
(
せうせつ
)
や
文學
(
ぶんがく
)
の
批評
(
ひひやう
)
は
勿論
(
もちろん
)
の
事
(
こと
)
、
男
(
をとこ
)
と
女
(
をんな
)
の
間
(
あひだ
)
を
陽炎
(
かげろふ
)
の
樣
(
やう
)
に
飛
(
と
)
び
廻
(
まは
)
る、
花
(
はな
)
やかな
言葉
(
ことば
)
の
遣
(
や
)
り
取
(
と
)
りは
殆
(
ほと
)
んど
聞
(
き
)
かれなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
銀鞍
(
ぎんあん
)
の
少年
(
せうねん
)
、
玉駕
(
ぎよくが
)
の
佳姫
(
かき
)
、ともに
恍惚
(
くわうこつ
)
として
陽
(
ひ
)
の
闌
(
たけなは
)
なる
時
(
とき
)
、
陽炎
(
かげろふ
)
の
帳
(
とばり
)
靜
(
しづか
)
なる
裡
(
うち
)
に、
木蓮
(
もくれん
)
の
花
(
はな
)
一
(
ひと
)
つ
一
(
ひと
)
つ
皆
(
みな
)
乳房
(
ちゝ
)
の
如
(
ごと
)
き
戀
(
こひ
)
を
含
(
ふく
)
む。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
隈
(
くま
)
なく晴れ上つた
紺青
(
こんじやう
)
の冬の空の下に、雪にぬれた家々の
甍
(
いらか
)
から
陽炎
(
かげろふ
)
のやうに水蒸気がゆらゆらと
長閑
(
のどか
)
に立ち上つてゐた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
▼ もっと見る
海には白帆が、その上には
菫色
(
すみれいろ
)
の雲が、じつと動かずにゐた。そこら一めんに
陽炎
(
かげろふ
)
がもえ、路のふちにはたんぽぽが、
黄金
(
こがね
)
のお
銭
(
あし
)
のやうに落ちてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
地上の花を暖い夢につつんでとろとろとほほゑましめる銀色の
陽炎
(
かげろふ
)
のなかにその夢の国の女王のごとく花壇にはここかしこに牡丹がさく、白や、紅や、紫や。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
陣営の野に笑へる
陽炎
(
かげろふ
)
、空を匿して笑へる歯、——おゝ古代! ——心は寧ろ笛にまで、堕落すべきなり。
地極の天使
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
私は朝湯の
陽炎
(
かげろふ
)
のやうに立ちあがる湯気の中に、うつとりした気持で、ごし/″\手足を洗つてゐた。
裸婦
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
彼のまはりには何時になつても、庭をこめた
陽炎
(
かげろふ
)
の中に、花や若葉が煙つてゐた。しかし静かな何分かの後、彼は又
蹌踉
(
よろよろ
)
と立ち上ると、執拗に鍬を使ひ出すのだつた。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見るとそれは
陽炎
(
かげろふ
)
のヴェイルを頭にかけた小さなものだつた。私の傍へ來るようにと招くと、直ぐに膝の上に來たのだよ。私はちつともそれに
對
(
むか
)
つて口をきかなかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
天幕の下で、地図と時計と空の一角とを交る交る見つめる偵察機隊長になりすました田丸浩平は、平坦な地肌を見せた広漠たる飛行基地の、砂塵と
陽炎
(
かげろふ
)
の中にもう自分を置いてゐた。
荒天吉日
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
陽炎
(
かげろふ
)
の影より淡き身を
憖
(
なまじ
)
ひ
生
(
い
)
き殘りて、
木枯嵐
(
こがらし
)
の風の宿となり果てては、我が爲に哀れを慰むる鳥もなし、家仆れ國滅びて六尺の身おくに處なく、天低く地薄くして昔をかへす夢もなし。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
潤
(
うるほ
)
ひのある眼で小池の
後姿
(
うしろすがた
)
を見詰めつゝ、お光は
斯
(
か
)
う言つて、帶の間から赤い裏のチラ/\と
陽炎
(
かげろふ
)
のやうに見える小ひさな紙入れを取り出し、白く光るのを一つ紙に包んで、
賽錢箱
(
さいせんばこ
)
に投げ込み
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
機屋
(
はたや
)
の窓にも、湖の上にも、
陽炎
(
かげろふ
)
がゆらゆらと燃えはじめました。
虹の橋
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
わが身世におもかげばかり
陽炎
(
かげろふ
)
のあるかなきかに消え残りつつ
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
青
草
(
ぐさ
)
の
氈
(
かも
)
の上に並んだ
積藁
(
わらによ
)
からは紫の
陽炎
(
かげろふ
)
が立つて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
陽炎
(
かげろふ
)
や名も知らぬ虫の白き飛ぶ
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
陽炎
(
かげろふ
)
とわれとわかぬか。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
立つ
陽炎
(
かげろふ
)
も身をそそる。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
陽炎
(
かげろふ
)
は夢ときえしを
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
陽炎
(
かげろふ
)
高
(
たか
)
さ二
萬尺
(
まんじやく
)
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
翌る日は、びつくりするやうな天氣、
陽炎
(
かげろふ
)
の中を泳ぐやうに、八五郎はこの報告を明神下の錢形平次のところへ持つて來たのです。
銭形平次捕物控:285 隠れん坊
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
脊戸
(
せど
)
に
干
(
ほ
)
した
雨傘
(
あまがさ
)
に、
小犬
(
こいぬ
)
がじやれ
掛
(
か
)
ゝつて、
蛇
(
じや
)
の
目
(
め
)
の
色
(
いろ
)
がきら/\する
所
(
ところ
)
に
陽炎
(
かげろふ
)
が
燃
(
も
)
える
如
(
ごと
)
く
長閑
(
のどか
)
に
思
(
おも
)
はれる
日
(
ひ
)
もあつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
……
竈
(
へツつひ
)
の
角
(
かど
)
に、らくがきの
蟹
(
かに
)
のやうな、
小
(
ちひ
)
さなかけめがあつた。それが
左
(
ひだり
)
の
角
(
かど
)
にあつた。が、
陽炎
(
かげろふ
)
に
乘
(
の
)
るやうに、すつと
右
(
みぎ
)
の
角
(
かど
)
へ
動
(
うご
)
いてかはつた。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
『蝶々』などの、ひら/\
陽炎
(
かげろふ
)
の上を舞ふ春の季節には、まだ五ヶ月も経たなければならなかつたし。
憂鬱な家
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
現
(
うつ
)
せ身の
陽炎
(
かげろふ
)
の影とも消えやらず、
現
(
うつゝ
)
かと見れば、夢よりも尚ほ淡き此の春秋の經過、例へば永の病に本性を失ひし人の、やうやく我に還りしが如く、瀧口は只〻恍惚として呆るゝばかりなり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
陽炎
(
かげろふ
)
の亡霊達が
起
(
た
)
つたり坐つたりしてゐるので
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
陽炎
(
かげろふ
)
や
簣
(
あじか
)
に土をめつる人
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
堤にもえし
陽炎
(
かげろふ
)
は
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
陽炎
(
かげろふ
)
の立ちつゝ。
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
もゆる
陽炎
(
かげろふ
)
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
平次は
漸
(
ようや
)
く本を閉ぢて、八五郎の方に向き直りました。
日向
(
ひなた
)
の梅は丁度咲ききつて、屋根に燃える
陽炎
(
かげろふ
)
が、うつら/\と眠りを誘ひます。
銭形平次捕物控:249 富士見の塔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は朝湯の
陽炎
(
かげろふ
)
のやうに立ちあがる湯気の中に、うつとりした気持で、ごし/″\手足を洗つてゐた。
小熊秀雄全集-15:小説
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
土間
(
どま
)
は
一面
(
いちめん
)
の
日
(
ひ
)
あたりで、
盤臺
(
はんだい
)
、
桶
(
をけ
)
、
布巾
(
ふきん
)
など、ありつたけのもの
皆
(
みな
)
濡
(
ぬ
)
れたのに、
薄
(
うす
)
く
陽炎
(
かげろふ
)
のやうなのが
立籠
(
たちこ
)
めて、
豆腐
(
とうふ
)
がどんよりとして
沈
(
しづ
)
んだ、
新木
(
あらき
)
の
大桶
(
おほをけ
)
の
水
(
みづ
)
の
色
(
いろ
)
は、
薄
(
うす
)
ら
蒼
(
あを
)
く
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そんな事を言ひ乍ら、三人は芝山内から
麻布
(
あざぶ
)
狸穴
(
まみあな
)
へ、ゆら/\ゆらぐ、街の
陽炎
(
かげろふ
)
を泳ぐやうに辿つて居たのです。
銭形平次捕物控:076 竹光の殺人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
『蝶々』などの、ひら/\
陽炎
(
かげろふ
)
の上を舞ふ春の季節には、まだ五ヶ月も経たなければならなかつたし。
小熊秀雄全集-15:小説
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
蘆
(
あし
)
の
上
(
うへ
)
をちら/\と
舞
(
ま
)
ふ
陽炎
(
かげろふ
)
に、
袖
(
そで
)
が
鴎
(
かもめ
)
になりさうで、
遙
(
はるか
)
に
色
(
いろ
)
の
名所
(
めいしよ
)
が
偲
(
しの
)
ばれる。
手輕
(
てがる
)
に
川蒸汽
(
かはじようき
)
でも
出
(
で
)
さうである。
早
(
は
)
や、その
蘆
(
あし
)
の
中
(
なか
)
に
並
(
なら
)
んで、
十四五艘
(
じふしごさう
)
の
網船
(
あみぶね
)
、
田船
(
たぶね
)
が
浮
(
う
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
主人の庄司三郎兵衞は、椽側からうら/\と
陽炎
(
かげろふ
)
の立ちのぼる、田圃の景色を眺めて居りました。四十五六の分別盛りで、金にも智惠にも事缺かぬ、立派な江戸の旦那衆です。
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
前栽
(
せんざい
)
の
強物
(
つはもの
)
の、
花
(
はな
)
を
頂
(
いたゞ
)
き、
蔓手綱
(
つるたづな
)
、
威毛
(
をどしげ
)
をさばき、
裝
(
よそほ
)
ひに
濃
(
こ
)
い
紫
(
むらさき
)
を
染
(
そめ
)
などしたのが、
夏
(
なつ
)
の
陽炎
(
かげろふ
)
に
幻影
(
まぼろし
)
を
顯
(
あら
)
はすばかり、
聲
(
こゑ
)
で
活
(
い
)
かして、
大路
(
おほぢ
)
小路
(
こうぢ
)
を
縫
(
ぬ
)
つたのも
中頃
(
なかごろ
)
で、やがて
月見草
(
つきみさう
)
、
待
(
まつ
)
よひ
草
(
ぐさ
)
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
まだ
菜
(
な
)
の花も咲かず蝶々も出ないのですが、路傍の
蓬
(
よもぎ
)
や
田芹
(
たぜり
)
が芽ぐんで、森の蔭、
木立
(
こだち
)
の中に、眞珠色の
春霞
(
はるがすみ
)
が棚引いて、まだ
陽炎
(
かげろふ
)
は燃えませんが、早春の
裝
(
よそほ
)
ひは申し分もありません。
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
こゝで、
夢
(
ゆめ
)
のやうに、と
云
(
い
)
ふものの、
實際
(
じつさい
)
は
其
(
それ
)
が
夢
(
ゆめ
)
だつた
事
(
こと
)
もないではない。けれども、
夢
(
ゆめ
)
の
方
(
はう
)
は、
又
(
また
)
……と
思
(
おも
)
ふだけで、
取
(
と
)
り
留
(
と
)
めもなく、すぐに
陽炎
(
かげろふ
)
の
亂
(
みだ
)
るゝ
如
(
ごと
)
く、
記憶
(
きおく
)
の
裡
(
うち
)
から
亂
(
みだ
)
れて
行
(
ゆ
)
く。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
……
前
(
さき
)
へ/\、
行
(
ゆ
)
くのは、
北西
(
きたにし
)
の
市
(
いち
)
ヶ
谷
(
や
)
の
方
(
はう
)
で、あとから/\、
來
(
く
)
るのは、
東南
(
ひがしみなみ
)
の
麹町
(
かうぢまち
)
の
大通
(
おほどほり
)
の
方
(
はう
)
からである。
數
(
かず
)
が
知
(
し
)
れない。
道
(
みち
)
は
濡地
(
ぬれつち
)
の
乾
(
かわ
)
くのが、
秋
(
あき
)
の
陽炎
(
かげろふ
)
のやうに
薄白
(
うすじろ
)
く
搖
(
ゆ
)
れつゝ、ほんのり
立
(
た
)
つ。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
親仁
(
おやぢ
)
の
掌
(
たなそこ
)
は
陽炎
(
かげろふ
)
を
掴
(
つか
)
んで、
客
(
きやく
)
は
霞
(
かすみ
)
を
吸
(
す
)
ふやうであつた。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
“陽炎”の意味
《名詞》
陽 炎(ヨウエン、かげろう、かぎろい)
「かげろう(陽炎)」の漢語表現。
(出典:Wiktionary)
陽
常用漢字
小3
部首:⾩
12画
炎
常用漢字
中学
部首:⽕
8画
“陽”で始まる語句
陽
陽気
陽光
陽氣
陽溜
陽脚
陽焦
陽火
陽射
陽暦