“袂:たもと” の例文
“袂:たもと”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花88
野村胡堂77
吉川英治59
岡本綺堂23
中里介山21
“袂:たもと”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸33.9%
文学 > 日本文学 > 小説 物語17.2%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行3.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
こちらが見てよくわかっているのにと思い、財布の銀貨をたもとの中で出し悩みながら、彼はその無躾ぶしつけに腹が立った。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
その下に熊笹くまざさの生い茂った吹井戸を控えて、一軒の茶見世が橋のたもとをさも田舎路いなかみちらしく見せていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
艦橋の上に立つ一将校たもと時計をいだし見て「一時間半は大丈夫だ。準備ができたら、まず腹でもこしらえて置くですな」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
それが、月見橋のたもとまででも平馬を送って行くということになって、四人、霧の中に提灯をともして、矢筈の森を後にした。
平馬と鶯 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さと言葉ことばらぬも、こひにはをんなさかしうして、そでたもとおほひしが
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝よくてうたもとわかつて、雪中せつちう山越やまごしにかゝるのを、名残なごりしく見送みおくると
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬鹿な顔をして、それを見ていた一人の男が、不意に、すっ頓狂とんきょうな声をだして、ふところやたもとをハタき始めた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
辞句も不明だし、諸所に、克明な筆で、塗りつぶしたり、書入れがしてある。いかにも怪しげな書簡だ。馬超はたもとへ入れて、
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これでしばらくお目にもかかれぬのだ。たもとを分つと申しては不吉ふきつめくが当分はまずお別れ……。陣中何もないが」
それだけのことを言ふのは、お夏に取つては精一杯の努力でせう。半分は口の中で、顏を隱したたもとの中へ消えてしまひます。
たもとの綻び一つ縫つて貰つても、身のまはりの世話を何かとして貰ふのを、身内ならばこそと、をり/\心で禮を云つてゐた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
それと見て遠くより声をかけ、正太はかけ寄りてたもとを押へ、美登利さん昨夕ゆふべは御免よと突然だしぬけにあやまれば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だが、賢い、すばやい、彼女の六感は、たちまち背後うしろの不安な空気を感じたらしかった。数寄屋橋のたもとまで来ると、
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「締めときますか。暑かありませんか」と聞いた。代助はたもとから手帛ハンケチを出して額をいていたが、やっぱり、
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これが、信長のめいにあたる、三人の姫たちとは知らないまでも、霧に濡れゆく六ツのたもとの可憐さにみな見送っていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お滝は初めて声を立てました。ひしと自分のたもとを噛みますが涙は頬を洗って、大きな前髪が、嵐のように揺れるのです。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
僕等は川蒸汽を下りて吾妻橋あづまばしたもとへ出、そこへ来合せた円タクに乗つて柳島やなぎしまへ向ふことにした。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「奥さんのたもとの中で鳴っているんだから、――ああ、Yちゃんのおもちゃだよ。鈴のついたセルロイドのおもちゃだよ。」
蜃気楼 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
百里遠来同好の友を訪ねて、早く退屈を感じたる予は、余りの手持無沙汰に、たもとを探って好きもせぬ巻煙草に火をつけた。
浜菊 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そうして、やっと笄橋こうがいばしたもとまで来ると、不意に左手の坂からくるまが駆け降りて来て私とすれ違った。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そしたら、あなたは、「うち、いややわ」と急に、たもとで、顔をかくし、笑い声をたてて、バタバタ駆けて行ってしまった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
二十の涎繰よだれくりは、今まで腮を押えていた手拭で涙を拭いた。お上さんもたもとから手拭を出してうれし涙を拭いた。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
どこへ席をとろうかと、四五十人の一座をずっと見廻した宗近君は、並んで右に立っている甲野さんのたもとをぐいと引いた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
早「あのー昨夜よんべねえ、わし貴方あんたたもとの中へ打投ぶっぽり込んだものを貴方ひらいて見たかねえ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二人ふたりは園遊会を辞して、くるまに乗つて、金杉橋かなすぎばしたもとにある鰻屋うなぎやあがつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのまま何気なく築地の八方館に帰ろうと思って木挽橋こびきばしたもとまで来たが、河向うを見るとハッと立停まった。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かう云つて男は敷島を一本たもとから出して口にくはへた。そして手を両方のたもとへ入れて燐寸マツチを捜して居る。
御門主 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
と二十一二の体の肥つた、血気の若者は、取られたたもとを振放つて、いきなり、重右衛門の横面よこつらを烈しく撲つた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
自宅では勉強が出来ないので円行寺橋えんぎょうじばしたもとにあった老人夫婦の家の静かな座敷を借りて下宿していた。
重兵衛さんの一家 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
鈴木松年氏はこの二三年来外へ出掛ける時には、いつも珠数じゆずを一つたもとの底へ投げ込んで置く事にめてゐる。
加代 美代ちやん……ちよつとこゝしばつて……あゝたもとが面倒臭いなあ。お父つあん、今度こそは、こゝにゐちや駄目よ。
人数にんずが襲いきたったので思わずおさえていたたもとゆるんだ、お夏の手を振放して、婆は蔵人に躍りかかった。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
久米君は手早く夏羽織なつばおりすそたもとをからげるや否や身軽く鉄条綱の間をくぐってむこうへ出てしまった。
羽織を脱いで、ていねいに畳みつけ、筆と紙をかりうけて、なにか一筆しるした物を、結び文にして、そのたもとの中へしのばせ、
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、礼をいって、それをたもとに納めたが、武蔵は、この男の正直な行為が、なぜか少しも自分の感激に触れないことに気づいた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょっとあたりを見廻して、たもとの八ツ口から出したのは、商人持あきんどもちのかわ財布、中身なかみを抜いて、
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうかと思うと、「女のくせに生意気だ、闇の夜を気をつけろ」なんて脅し文句を私のたもとに投げ入れる書生もありました。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
お蔦は思はずすがり付いたたもとを離しました。冷靜を裝ふ貫兵衞の顏には、踊り狂ふ七人の顏よりも物凄いものがあつたのです。
そこに坐って、濡れたたもとすそを乾かしていると、小雨の音はしなかったが、酒匂川のすさまじい河鳴が遠く聞えてくる。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
追えども追わせず、たもとをふり払って、一刀斎は、野面のづらの空の白雲のように、いずこともなく独り去ってしまった。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ややしばらく待っていると、勤行ごんぎょうを終った正兵衛は、水晶の念珠をたもとに納めて、静かにこっちへ向き直りました。
お袖を駕籠に乗せて帰る平次。この時ほどしおれているのを、ガラッ八はまだ見たこともありません。そっとたもとを引いて、
正月なので、仕事場には誰もいなかったし、近所の者も気づかなかった。市松は、顔いろを変えて橋のたもとへもどって来た。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
―――時平は国経がたもとの端を彼に渡して彼方かなたへ逃げて行ったのを知ると、無言でその袂を自分の方へしずかに引いた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
昔の永代えいたい橋の右岸のたもとから、左の方の河岸かしはどんな工合になって居たか、どうもく判らなかった。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこまで来ると、龍平の獄門首ごくもんくびがくわッと眼を見ひらいて、お蝶! と橋のたもとから呼び止めるような気がする。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何とすごからう。奴を捩伏ねぢふせてゐる中にあし掻寄かきよせてたもとへ忍ばせたのだ――早業はやわざさね」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「よござんすとも」と云った時、お延は急にたもとから手帛ハンケチを出して顔へ当てたと思うと、しくしく泣き出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生の書いてくれた紙片が、余のたもとに落ちてから、約十年の後に余は始めて先生の挙げたすべてを読む事が出来たのである。
みしめるにちからるだけ、かへつてあせするばかりであつたが、すそたもとこはばるやうに
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのとき、強い風のため、みどりのたもとから脱脂綿が吹き飛ばされると、コロコロところがって星尾の前に行ったのであろう。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
勘定を済まして笹屋を出る時、始めて丑松は月給のうちを幾許いくらたもとに入れて持つて来たといふことに気が着いた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
メレンスの半襟はんえり一かけ、足袋の一足、そっひとの女中のたもとにしのばせて、来年のえさにする家もある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
卯平うへいはぶらりとつてはかへりには駄菓子だぐわしすこたもとれてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と気丈な殿様なればたもとにて疵口きずぐちしっかと押えてはいるものゝ、のりあふれてぼたり/\と流れ出す。
やがて二刻ちかくたって、半之丞とくろがね天狗の現れたのは、江戸の東を流るる大川に架けられた両国橋のたもとだった。
くろがね天狗 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分はその書体を見ると、何故なぜ両国りやうごくの橋のたもとへ店を出してゐる甘酒屋あまざけやの赤い荷を思ひ出した。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
小さい橋のたもとに一台のポンプがいて、川の泥水にゴム管を浸してそれを注いでいたが、すこしの効力があるとも思われなかった。
死体の匂い (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お孝は法衣ころもの葛木に手を曳かれて、静々と火事場を通った。裂けたたもとも、さながら振袖を着たごとくであった。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
顔をおおって、お蓮さまは泣いている。小むすめのように、両のたもとで顔をかくし、身も世もなく肩をきざませているお蓮様――。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
家へはいると、安二郎は風呂銭を節約しまつしての行水ぎょうずいで、お君はたもとをたくしあげて背中を流していた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
〓雁がとどけし玉章たまづさは、小萩のたもとかるやかに、返辞へんじしおんも朝顔の、おくれさきなるうらみわび……
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
気のはりが少しゆるんで、次第にいて来る涙があふれそうになるので、たもとからハンカチイフを出して押えた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
狩野氏はかう言つて、いきなり俥の輪に手をかけた。そして蟻が物を運ぶやうにして、やつとこさで橋のたもとまで俥を担いで来た。
私どもも時宜によっては、たもとつらねて官職を辞し、ともに民間にいて永久に事を取るだけの決心でありますから。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
なぜならば人間至高の肉慾にして、超人には最後に残された唯一の肉慾、あの神秘感とたもとを分ってしまったからである。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
清岡は門人同様の村岡に命じて、君江が歌舞伎座へ見物に行った帰途、安全剃刀かみそりの刃で着物のたもとを切らせた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
――しかし、忠明が、肩を落しながらね上げた行平ゆきひらの切先もまた、小次郎のたもとを、五寸ほど切り飛ばしていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光悦こうえつ、山で喰べた麦菓子が、まだ、そなたのたもとに、すこし残っていたであろ。この子にやって下さらぬか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒のあいだに曹操は、蔡和、蔡仲からの諜報を、ちらと卓の陰で読んでいたが、すぐにたもとに秘めて、さり気なくいった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
久子は、うす暗い厨のすみへ駈け込むと、いそいでを下ろし、たすきをはずし、肩やたもとのチリを払ッていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
墓石の文字はもう判読できないが、多分この方が正確でしょうと云いながら、たもとから取り出してその写しを私に示すのであった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うむ、やはり余の儀ではない。御奉公に就いての事だが――」と、但馬守は、口に当てていた懐紙をたもとに落しながら、
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれなりとらずんはこのりにきやくあしとまるまじとおりきかけしてたもとにすがり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
素肌にただ一枚着けていた、今の切れと同じ様な柄の古びたあわせを脱ぐと、たもとの中の財布と変装用具とを落さぬ様にくるみ
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何で孤独がこわいものか、………と、いて自ら危惧きぐの念をあざけって、とう/\あの人のたもとの端を
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私は今、その六田の橋のたもとを素通りして、二股の道を左へ、いつも川下から眺めてばかりいた妹背山のある方へ取った。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
多少心もちのあかるくなった洋一は、顔は叔母の方へ近づけたまま、手はたもとの底にある巻煙草の箱を探っていた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たもとから手拭てぬぐいを取出し、涙を拭いながら店へ出て来ると、番頭は粂之助がいとまになって好い気味だと喜んで居る。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「課長、例の十字架に髑髏どくろ標章ひょうしょうの入った小布こぬのが、死体のたもとの中から出てきました」
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その言葉の終らないうちに、帆村は向うから飄々ひょうひょうとやってくる潮らしき人物のたもとおさえていた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
久「これじゃア屹度きっと女子おなごがおめえに惚れるだ、これを知れねえようにたもとの中へでもほうり込むだよ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
淋しい淋しい、夜の流れ――業平橋とは、名こそ美しけれ、野路をつないで架った橋のたもとで黒い影が待ちうけていて、
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
と玄関の敷台をり草鞋を穿こうとする、其の側へお徳はすり寄りたもとを控え、涙に目もとをうるましながら、
白雪 (じっと聞いて、聞惚ききほれて、火焔かえんたもとたよたよとなる。やがて石段の下を呼んで)姥、姥、あの声は?……
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そういいながら、小山は長い二つのたもとを両手でかかえ、そして裾を気にしながら、棺のなかにながながと横になった。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かくと聞けば、トラホーム、目の煩いと思ったは恥かしい。たもとに包んだ半紙のしずくは、まさに山茶花さざんかの露である。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのさきは水にくぐって、亀の子は、ばくりと紐をむ、ト袖口を軽くたもとを絞った、小腕こかいな白く雪を伸べた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひら/\とあをいなかからあかきれのこぼれてる、うつくしいとりたもと引張ひつぱつて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女もまたしきりにこちらを見ていたが、やがて老婆のたもとをつかまえて、その耳のそばへ口を持っていってささやいた。
阿繊 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
それから、旅籠代はたごだいや医者代を、駕屋が払っていたが、そのたもとを探ってみると、金と印籠いんろうが忍ばせてあった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いえいえ、それをおっしゃってくださるにはおよびませぬ」と、おしおは顔にたもとを押当てたまま、おろおろ泣きだしてしまった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
こと今朝けさ東雲しのゝめたもと振切ふりきつてわかれやうとすると、お名残なごりしや
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
警察の留置場にいたときよく、言問橋のたもとに住んでいる「青空一家」や三河島のバタヤ(屑買い)が引張られてきた。
独房 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
妙なもので一円でも素通りは出来ないのに、八銭に負けろといったら、負けましたから、二銭つりを取ってたもとに入れて帰りました。
この瓜に、朝顔の白い花がぱっと咲いた……結綿ゆいわたを重そうに、娘も膝にたもとを折って、その上へ一顆ひとつのせました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ながれが響いて、風が触って、かすかそよいだそのたもと、流は琴の糸が走るよう、風は落葉を誘うよう。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腹蔵ふくぞうなく大笑おおわらいをするので、桂木は気を取直とりなおして、そっづ其のたもとの端に手を触れた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お葉はその姿を見ると共に、有合ありあう小石を拾って投げ付けると、つぶては飛んで市郎のたもとに触れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あなたのような美しい女子が一人で行くことは、まるでたもとへ油を入れて火の中へ入るようなものだと、茶売りの老人は
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)