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藍
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あい
ふりがな文庫
“
藍
(
あい
)” の例文
ある親島から
支島
(
えだじま
)
へ、カヌウで渡った時、白熱の日の光に、
藍
(
あい
)
の透通る、澄んで静かな波のひと処、たちまち濃い
萌黄
(
もえぎ
)
に色が変った。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
藍
(
あい
)
を人工的に合成する法が出来て以来、人造藍の需要が増すにつれて天然藍の産額が減ずる傾向をもっているのは著しい現象である。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そこには笛をふいている
飴
(
あめ
)
屋もある。その飴屋の小さい屋台店の軒には、俳優の紋どころを墨や
丹
(
あか
)
や
藍
(
あい
)
で書いた
庵
(
いおり
)
看板がかけてある。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その他阿波には色々のものを数え得るでありましょうが、この国が天下にその名を成したのは何よりもまず「
藍
(
あい
)
」のためであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
とたんに
海騒
(
うみざい
)
のような観衆の
鳴
(
な
)
りはハタと
唾
(
つば
)
を呑んでやんだ。燕青の真白な肌に
藍
(
あい
)
と
朱彫
(
しゅぼり
)
のいれずみが花のごとく見えたからである。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
また神田とか八田とかいう地名は昔からいくらもありそうな地名であるが、摂津
有馬
(
ありま
)
郡
藍
(
あい
)
村大字
下相野
(
しもあいの
)
の同地名はその由来が少々違う。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
第三の
頭巾
(
ずきん
)
は白と
藍
(
あい
)
の
弁慶
(
べんけい
)
の
格子
(
こうし
)
である。
眉廂
(
まびさし
)
の下にあらわれた横顔は丸く
膨
(
ふく
)
らんでいる。その片頬の真中が
林檎
(
りんご
)
の熟したほどに濃い。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すみきった濃い
藍
(
あい
)
のいろにひろがった海ははるかのかなたまで
鷹揚
(
おうよう
)
なうねりをたたえ、しずかに渚にうちよせ、うちかえします。
人魚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
小十郎は自分と犬との影法師がちらちら光り
樺
(
かば
)
の幹の影といっしょに雪にかっきり
藍
(
あい
)
いろの影になってうごくのを見ながら溯って行った。
なめとこ山の熊
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ギラリと引抜いた一刀、佐次郎の顔は
藍
(
あい
)
のように見えます。たぶん激情に自制心を失う、不思議な変質者ででもあったでしょう。
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
葉子は窓を通して青から
藍
(
あい
)
に変わって行きつつある初夏の夜の景色をながめた。神秘的な穏やかさと深さとは脳心にしみ通るようだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
鬼灯色
(
ほおずきいろ
)
の日傘をさし、
亀甲
(
かめのこう
)
のような
艶
(
つや
)
をした
薔薇
(
ばら
)
色の肌をひらいて、水すましのように辷っては、不思議なうすい
藍
(
あい
)
ばんだ影を落していた。
ヒッポドロム
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
亀蔵はその時茶の
弁慶縞
(
べんけいじま
)
の木綿綿入を着て、木綿帯を締め、
藍
(
あい
)
の
股引
(
ももひき
)
を
穿
(
は
)
いて、脚絆を当てていた。懐中には一両持っていた。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
よほど
深
(
ふか
)
いものと
見
(
み
)
えまして、
湛
(
たた
)
えた
水
(
みず
)
は
藍
(
あい
)
を
流
(
なが
)
したように
蒼味
(
あおみ
)
を
帯
(
お
)
び、
水面
(
すいめん
)
には
対岸
(
たいがん
)
の
鬱蒼
(
うっそう
)
たる
森林
(
しんりん
)
の
影
(
かげ
)
が、くろぐろと
映
(
うつ
)
って
居
(
い
)
ました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
空は
愈々
(
いよいよ
)
青澄み、
昏
(
くら
)
くなる頃には、
藍
(
あい
)
の様に色濃くなって行った。見あげる山の端は、横雲の空のように、
茜色
(
あかねいろ
)
に輝いて居る。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
塩と砂糖と
藍
(
あい
)
よりほかになるべく物を買わない方針を執って来た自給自足の生活の中で、三千六百円もの大借がどうしてできたろうと思い
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
明子は青年の姿を
藍
(
あい
)
色の層をした水に映して眺めたとき、鼻を鳴らして慕ひ寄る一匹の小犬を
聯想
(
れんそう
)
した。実際小犬のやうに青年は潔白だつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ここらに多い屋敷々々の森が、
藍
(
あい
)
をとかしたような暮色を流しはじめて、空いちめんに点を打ったように
烏
(
からす
)
が群れていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
歌麿
(
うたまろ
)
なぞいやですが、
広重
(
ひろしげ
)
の富士と海の色はすばらしい。その
藍
(
あい
)
のなかに、とけこむ、ぼくの文章も青いまでに美しい。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
と云っている処へ参りましたのは、
藍
(
あい
)
の
衣服
(
きもの
)
に茶献上の帯をしめ、年齢は廿五歳で、実に美しい男で、
門
(
かど
)
へ立ちまして
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
絵
(
え
)
は、あまりうまくないな。けれどこの
藍
(
あい
)
の
色
(
いろ
)
がなかなかいい。いまどきのものに、こうした、
藍
(
あい
)
の
冴
(
さ
)
えた
色
(
いろ
)
は
見
(
み
)
られないな。まあ、いい
品
(
しな
)
だろう。
さかずきの輪廻
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
界隈によく姿を見せる、いつも
藍
(
あい
)
みじんを着て、銀鎖の守りかけを、胸にのぞかせているような、
癇性
(
かんしょう
)
らしい若者——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
他ならぬ若殿頼正で、死に瀕した
窶
(
やつ
)
れた顔、額の色は
藍
(
あい
)
のように
蒼
(
あお
)
く唇の色は土気を含み、昏々として眠っている。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
まっ赤に血走った眼、大きくふくれ上がった小鼻、
鮒
(
ふな
)
のようにひらいた唇、青ざめきって
藍
(
あい
)
色に死相をたたえた顔、その顔で彼女はニヤニヤと笑ったのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
細かい
藍
(
あい
)
の千筋の中に太い藤色の棒縞の入った秩父の
単衣
(
ひとえ
)
に、帯は白地に朝顔を染めた腹合せをしめていた。
四年間
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
娘の時、
藍
(
あい
)
から作って、母親と二人で染めたその藍の色がよく枯れて、大事に着たせいか、これから先もまだ何年着られるか分らないほどしっかりしている。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
廊下
(
ろうか
)
の
曲
(
まが
)
り
門
(
かど
)
のところで、正吉は大人の人に、はちあわせをした。誰かと思えば、それは
藍
(
あい
)
色の仕事服を着て、青写真を小脇に抱えているカコ技師であった。
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
見るものは
直
(
ただち
)
に
黄色
(
こうしょく
)
を帯びたる淡く軟かき
緑色
(
りょくしょく
)
とこれに対する濃き
緑
(
みどり
)
と
藍
(
あい
)
との調和に感じまた他の一作洲崎弁天海上眺望の図においては黄色と
橙色
(
とうしょく
)
との調和を
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
肌理
(
きめ
)
の細かい女のような皮膚の下から
綺麗
(
きれい
)
な血の色が、
薔薇色
(
ばらいろ
)
に透いて見える。黒褐色の服に雪白の
襟
(
えり
)
と
袖口
(
そでぐち
)
。濃い
藍
(
あい
)
色の絹のマントをシックに羽織っている。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
機
(
はた
)
屋の前には機回りの車が一二台置いてあって、物干しに並べてかけた紺糸が初夏の美しい日に照らされている。
藍
(
あい
)
の匂いがどこからともなくプンとして来る。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
お雪は、ぞっとするほど碧く澄んだ天地の中に、
呆
(
ぼん
)
やりとしてしまった。皮膚にまで
碧緑
(
あお
)
さが
滲
(
し
)
みこんでくるように、全く、
此処
(
ここ
)
の海は、岸に近づいても
藍
(
あい
)
色だ。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
お菊さんは
庖厨
(
かって
)
の出入口の前のテーブルにつけた椅子に腰をかけていた。出入口には
二条
(
ふたすじ
)
の白い
暖簾
(
のれん
)
がさがって、それが
藍
(
あい
)
色の
衣
(
きもの
)
を着たお菊さんの背景になっていた。
萌黄色の茎
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
珊瑚や海藻よりも、いっそう強い色をもっていて、赤、もも色、
紅
(
くれない
)
、黄、
橙
(
だいだい
)
、褐色、青、緑、紺、
藍
(
あい
)
、空色、黒など、まるで、ぬりたてのペンキのように光っている。
無人島に生きる十六人
(新字新仮名)
/
須川邦彦
(著)
白地に
藍
(
あい
)
の、
柄
(
がら
)
のわるい
浴衣
(
ゆかた
)
だ。型はもうすっかり
剥
(
は
)
げて、あっちこっちにつぎさえあててある。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
何とかいう芝居小屋の前に来たら役者に贈った
幟
(
のぼり
)
が沢山立って居た。この幟の色について兼ねて
疑
(
うたがい
)
があったから注意して見ると、地の色は白、
藍
(
あい
)
、渋色などの類、であった。
車上の春光
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
藍
(
あい
)
染附の、大きな皿は、ルイ王朝時代のものを模した奴で、これは、戦後の
作品
(
もの
)
ではない。疎開して置いたものに違いない。この皿は、昔のまんまだ、少くとも、これだけは。
神戸
(新字新仮名)
/
古川緑波
(著)
柔らかい白の
綾
(
あや
)
に薄紫を重ねて、
藍
(
あい
)
がかった
直衣
(
のうし
)
を、帯もゆるくおおように締めた姿で立ち「
釈迦牟尼仏弟子
(
しゃかむにぶつでし
)
」と名のって経文を
暗誦
(
そらよ
)
みしている声もきわめて優雅に聞こえた。
源氏物語:12 須磨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それでも彼は落胆しなかった。彼は動植物園の日当たりのいい片すみを借り受けて、「自費で」
藍
(
あい
)
の栽培を試みた。そのために、特産植物誌中の銅版を質屋に入れてしまった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
藍
(
あい
)
や
鶸
(
ひわ
)
や
朽葉
(
くちば
)
など
重
(
かさな
)
りあって
縞
(
しま
)
になった縁をみれば女の子のしめる
博多
(
はかた
)
の帯を思いだす。
小品四つ
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
海は
藍
(
あい
)
と、ガラス壜のような緑と、淡紅との
縞
(
しま
)
をなして、銀色にきらめく光の反射を、一面にたゆたわせながら、ものうげに滑らかにやすらっているし、海藻は日にひからびて
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
そこで
物部
(
もののべ
)
の
荒甲
(
あらかい
)
の大連、
大伴
(
おおとも
)
の
金村
(
かなむら
)
の連の兩名を遣わして、石井を殺させました。天皇は御年四十三歳、
丁未
(
ひのとひつじ
)
の年の四月九日にお隱れになりました。御陵は三島の
藍
(
あい
)
の
陵
(
みささぎ
)
です。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
道釈
(
どうしゃく
)
人物、花鳥、動物、
雲鶴
(
うんかく
)
、竜、
蔬菜
(
そさい
)
図、等が描かれてあります、その
群青
(
ぐんじょう
)
、朱、金銀泥、
藍
(
あい
)
、などの色調は、さも支那らしい色調であって、大変美しい効果のものであります
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
その地平線は白の地に、黄と少量の朱と、
藍
(
あい
)
と黒とを交ぜた雲と
霞
(
かすみ
)
とであった。その雲と霞は数条の太い
煤煙
(
ばいえん
)
で掻き乱されている。
鮮麗
(
せんれい
)
な電光飾の輝く二時間
前
(
ぜん
)
の名古屋市である。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
水のように
湧
(
わ
)
き出して私は物の哀れを知り初めるという少年のころに手飼いの
金糸雀
(
かなりや
)
の
籠
(
かご
)
の戸をあけて折からの秋の底までも
藍
(
あい
)
を
湛
(
たた
)
えた青空に二羽の小鳥を放してやったことがある。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
衣更えの気分 次に第二の句は「衣
更
(
が
)
え手につく
藍
(
あい
)
の
匂
(
にお
)
いかな」というのですが、この句は、つまり、「衣更え」と「手につく藍の匂い」という、二つに解剖してみる事ができます。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
その頭の下に敷いていたらしい黒い
頭巾
(
ずきん
)
と、
藍
(
あい
)
の合羽様のものをも、共に引きずって、そうして壁際にピタリと身を置いたかと思うと、今度は横向きに頬杖をして、以前の身構えで
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかもただ自然を見、自然を玩味し来ったかということをも十分に調べてみて、まず古人の門下生となり、しかして
藍
(
あい
)
より青い古人以上の立派なお弟子になる心掛けが肝要であります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
丁度大きな
藍
(
あい
)
の
瓶
(
かめ
)
をさかさまにして、それを下から覗いたような心もちである。しかもその瓶の底には、泡の集ったような雲がどこからか生れて来て、またどこかへ
翛然
(
ゆうぜん
)
と消えてしまう。
首が落ちた話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
町を
外
(
はず
)
れてまだ二里ほどの間は平坦な緑。I湾の濃い
藍
(
あい
)
が、それのかなたに拡がっている。
裾
(
すそ
)
のぼやけた、そして全体もあまりかっきりしない入道雲が水平線の上に静かに
蟠
(
わだかま
)
っている。——
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
今度私に
突合
(
つきあ
)
って、伊右衛門をするのは、高麗蔵さんですが、自分は何ともないが、妻君の目の下に
腫物
(
しゅもつ
)
が出来て、これが少し
膨
(
は
)
れているところへ、
藍
(
あい
)
がかった色の
膏薬
(
こうやく
)
を張っているので
薄どろどろ
(新字新仮名)
/
尾上梅幸
(著)
藍
常用漢字
中学
部首:⾋
17画
“藍”を含む語句
甘藍
伽藍
藍染川
藍色
藍鼠
藍染
藍靛
藍瓶
濃藍
藍本
花甘藍
藍染橋
碧藍
藍微塵
大伽藍
出藍
薄藍
藍玉
藍摺
藍玉屋
...