萬一もし)” の例文
新字:万一
勘次かんじはおしな病氣びやうきかゝつたのだといふのをいて萬一もしかといふ懸念けねんがぎつくりむねにこたへた。さうして反覆くりかへしてどんな鹽梅あんばいだといた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見合みあはせ文藏樣は只一人の御子と云那程までに御執心ごしふしんの事なれば彼女を請出うけいだし御よめになされて然べし欠替かけがへのなき御子の事萬一もし不了簡抔ふれうけんなどあらば何となされ候やこゝの所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もとよりひと約束やくそくおぼえなくしてみさほてやうもなけれど、何處どこともらずみたるおもひは此身このみあるかぎわすがたければ、萬一もしかの教授けうじゆさまたつつまにとおほせのあらば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もつて早立せし故萬一もしもの事でも有りしかと立たり居たりする體は實心じつしんとこそみえにけれやゝあつて申けるは病中にて難儀には候へども捨置すておかれねばすぐおしてもまかり出んと支度したく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
奇麗きれいよめさんをもらつてれてあるくやうにるのだがなあ、おいらはなんでも奇麗きれいのがきだから、煎餅せんべいやのおふくのやうな痘痕みつちやづらや、まきやのお出額でこのやうなのが萬一もしようなら
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
る時は必ず其眞僞しんぎあらはるゝとむべなる哉然れ共萬一もし庸人ようじんの奉行となりて強情がうじやう奸曲かんきよくの者を調べるに於てを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いとおぼしめさばお取極とりきくださりませ、此家こゝ貴郎あなたのおうち御座ござりまするものなんとなりおぼしめしのまゝにとやすらかにはひながら、萬一もしそのにてりたらばと無情つれなきおもひ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此思このおもつうじさへせば此心このこヽろやすかるべしとねがふはあさし、入立いりたつまヽによくさりて、はてなきものこひなりとかや、さとしはじめての艷書ふみこヽろをいためて、萬一もしりもせばつみれのみならず
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
らちもなく万年青おもとあらひ、さては芝生しばふつてひろ姿すがたわれながらられたていでなく、これを萬一もし學友ともなどにつけられなばと、こヽろ笹原さヽはらをはしりて、門外もんぐわい用事ようじ兎角とかくいとへば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
煎餅やのお福のやうな痘痕みつちやづらや、薪やのお出額でこのやうなが萬一もし來ようなら、直さま追出して家へは入れて遣らないや、己らは痘痕あばたしつつかきは大嫌ひと力を入れるに、主人あるじの女は吹出して
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其方そなたらば重疊ちようでうよろこびなれど萬一もしいよ/\出來できものならば、いまよりもらうてこゝろまかせし教育きやういくをしたらばとれをあけくれこゝろがくれども、いまだにきも見當みあたらず、としたてばれも初老はつおひの四十のさか
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
萬一もしにそぐなはぬことならばとあんじられまして、此事このことをおもふに今宵こよひさびしきことてもちてもあられぬほどのなさけなさより、ふてはならぬとぞんじましたれど、此樣このやう申上まうしあげ仕舞しまひました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さはへどりがたきがなかなれば令孃ひめにもわろむしなどありて、其身そのみきたくおやりたけれど嫁入よめいりのせき落花らつくわ狼藉らうぜき萬一もしづかへば、むすめはぢはぢ流石さすが子爵ししやくどのくして
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さることなれど御病氣ごびやうきにでも萬一もしならばとりかへしのなるべきならずぬし誰人たれびとえぞらねど此戀このこひなんとしてもかなまゐらせたしぢやうさまほどの御身おんみならば世界せかいもなくうれひもなく御心安おこゝろやすくあるべきはず
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ゑがかぬもおなじこと御覽ごらんはずもあらねば萬一もしやのたのみもきぞかしわらはるゝからねどもおもそめ最初はじめより此願このねがかなはずは一しやう一人ひとりぐすこゝろきにおく月日つきひのほどにおもひこがれてねばよしいのちしも無情つれなくて如何いかるは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
便たよりまつ一日ひとひ二日ふたひうれしきやうなづかひな八重やへ遠慮ゑんりよらぬものゝまたすかとおもはるゝもはづかしくじつとこらゆる返事へんじ安否あんぴもしやとおもへば萬一もしやになるなり八重やへ大丈夫だいじやうぶ受合うけあへどそれやすめのことばなるべしふみとても御受取おうけとりになりしやならずや其塲そのばそのま〻御突おつもどしになりたるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)