ぱら)” の例文
はつと気がいて眼をけて見ると、四辺あたりには朝の光りが一杯に射し込んでゐた。よこぱらを押へてみたが、もう痛みは無くなつてゐた。
その上軌道レールの上はとにかく、両側はすこぶるぬかっている。それだのに初さんはちゅうぱらでずんずん行く。自分も負けない気でずんずん行く。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宇治山田の米友は、そのいずれなるに拘らず、髑髏についた泥のもう少し手軽く落つべくして落ちないのにちゅうぱらで、ゴシゴシと洗っている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
微温湯ぬるまゆだから其儘そのまゝゴツクリむと、からぱらへ五六十りやう金子かねもち這入はいつたのでげすからゴロ/\/\と込上こみあげてた。源
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「わたしもヴォルデマールさんも、つまらないむかぱらを立てたものだわ。あなたは、皮肉を言うのが楽しみなのね……たんとおっしゃるがいいわ」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
吉次はまた、かッぱららしい。社家はどこやらと、知らぬような事を云ったくせに、すたすた大股に彼方へ歩いてゆく。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから村の人たちもあの男が行ったら、さすがのおにどももどてっぱらっこぬかれたり、首っ玉を引っこかれたりしてしまうだろうと話し合った。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
すきつぱらの貴族があわてて魚の骨を咽喉に立てたりしたやうな場合には、パツュークが実に巧みに拳で背中を叩いて
チャリ敵の伝兵衛、大して度胸もない癖に、すぐむかぱらをたてる性質だから、たちまち河豚提灯ふぐちょうちんなりにつらふくらし
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
漁師りょうしはまだ手足をのばして、ねていました。すると、おかみさんはひじで漁師のよこぱらをつっついて、いいました。
かうえまめとれるなんておめえはうはえゝのよなあ、はうぢや土手どてちかくでるもなあ、畦豆くろまめつこえて土手どてちうぱらしちややうだが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それゆえ、そのとおり、とりはからわぬにおいては、この宮中につかえるたれかれのこらず、夕食ののち、よこぱらをふむことにいたすから、さようこころえよ。
いませたる傘屋かさや先代せんだいふとぱらのおまつとて一代いちだい身上しんじやうをあげたる、女相撲をんなずまふのやうな老婆樣ばゝさまありき、六年前ろくねんまへふゆこと寺參てらまゐりのかへりに角兵衞かくべゑ子供こどもひろふて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その古い色を見ると、木村の父のふとぱらな鋭い性格と、波瀾はらんの多い生涯しょうがい極印ごくいんがすわっているように見えた。木村はそれを葉子の用にと残して行ったのだった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それから途中、全然記憶がけているのですが、イヤというほどよこぱら疼痛とうつうを覚えたので、ハッと気がついてみますと、私は妙なところにっているのです。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「な、なにを言うんだ。人をぺこぺこのきっぱらにさせておいて……け、けしからん。じつにけしからん」
お前さんのどうぱらを中心に、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、裾野中探して歩かなけりゃあならねえ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
次郎は、相手の言葉つきが次第しだいにあらっぽくなるのに気がついた。しかし、もうそんなことに、むかっぱらをたてるようなかれではなかった。かれは物やわらかに
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
剣のことなら、他流たりゅうにまですべて通じているから、今その小柄がツーイと流れて、石燈籠のどうぱらへぶつかってねかえったのを見ると、丹波、まっ青になった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『オブローモフ』にむかっぱらを立てて、あんな「別に複雑でも何でもない、ダース幾らの小っぽけな性格を、社会的タイプにまで引上げてやるのは勿体もったいなさすぎる」
チェーホフの短篇に就いて (新字新仮名) / 神西清(著)
それは気持きもちが悪かった。何かよこぱらへんしわくちゃになったと思うと——やがてそのうちにシャツがやぶれて、もみくたになったという感覚かんかくが、もっとはっきりして来た。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
考えるとコッチはマダ無名の青年で、突然紹介状もなしに訪問したのだから一応用事を尋ねられるのが当然であるのに、さも侮辱されたように感じてむかぱらを立てた。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「ま、何處どこまで根性こんじやうがねぢくれてゐるのでせう。」と思ひながら、近子はちらと白い眼をひらめかせ、ブイと茶の間の方へ行ツてしまツた。遂々とう/\むかツぱらを立てゝしまツたので。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
恋に上下の差別がないから仇に上下の差別はない、学士神月梓である。むかッぱらたちの八ツ当りで
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まだ朝飯にありつかないんで、——あわてて飛出したが、すきぱらに小石川は遠すぎましたよ」
あんまり面目ないから今まで誰にも話さずにいたんだが……ホラ……吾輩と君とで慶北丸の横ッぱらを修繕してしまうと、君は直ぐに綱にブラ下ってデッキに引返したろう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところで「その大地主さんて人は人を助けるのにふとぱらになれそうな人だとお前さんは思うかね?——お前さんの話だと、その人も困った羽目になってるということだが。」
「冗談じゃあねえや。怪我けがでもしたらどうするんだ。」これはまだ、平吉が巫山戯ふざけていると思った町内のかしらが、ちゅうぱらで云ったのである。けれども、平吉は動くけしきがない。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
俺のコップを眺めながらそんなことを思い付くなんて、まるでこの焼酎がメチルみたいじゃないかと、やっとその時そう気がついて、蟹江はすこしちゅうぱらな調子で反問しました。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「何をいやァがる。」田代はちゅうぱらで「小倉君、分ってるか、君には?」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ひとよこぱらでも蹴破けやぶつてれようかな。
ぐわうとすきぱらを掻きまは
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「えツもう食べたつて。さうかなあ。」とこの偉大な歴史家は両手でもつてぺこ/\になつたよこぱらを押へてみるらしかつたが
どこへ行ったやら影も形も見えないので、主人はちゅうぱらで、それから日のカンカンさすまで寝込んでしまうと
今日けふ何故なぜ学校がつこうかないんだ。さうしてあさぱらからいちごなんぞをつて」と調戯からかふ様に、しかる様に云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左様さやうであらう、ソラ此器これ脈搏みやくはくくんだ、うだグウ/\るだらう。登「エヘヽヽヽくすぐつたうござりますな、左様さやうよこぱら器械きかいをおあてあそばしましては。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おかみさんは、むかっぱらをたてていた。と、みると男は、にわかにものやわらかいようすになり
あたしの嫌いななア持って廻って、厭がらせの散々さんざぱら、出て行けがしにあつかわれることさ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今もそうで、旅のうらない師というこの若い女を引き入れているところへ、ちょっと一目いちもくおかなければならない玄心斎の白髪あたまが、ぬうっと出たので、源三郎、ちゅうぱらだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すきぱらの人に食はせねえつて法はありませんやね。で、その男にも串を渡したもんで。
こっちもちゅうぱらになっているところへ、ボートがノーマ号に出かけることになったが、こいつがまた虎船長から、はっきりめられてしまったので、どうせ怒られついでだとおもって
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、いきなり鉄杖をやりのようにしごいて、大瓶おおがめの横ッぱらへガンと勢いよくッかけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、おかあさんヤギは、このばけものの、どてっぱらを切りはじめました。ところが、おかあさんが、ひとはさみ切ったかと思うと、もうそこには、子ヤギが一ぴき頭をつきだしました。
ちゅうぱらでずいと立つと、不意に膝かけの口が足へからんだので、かめばい
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ついむかぱらをお立てなすったんでしょう。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ビスマルクはかう言つて、胃の腑と愛国心との継ぎ目でも示すやうに、心もち椅子の上に反りながら両手でよこぱらを押へた。
喜「ン畜生変な物を飲ましやアがって、横ッぱらえぐるように、鳩尾骨みぞおち穿ほじるような、ウヽ、あゝ痛え」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さんざっぱらひやかされて、さあ御帰り、用はないからと云う段になって、もう御免蒙ごめんこうぶりますと立ち上ったようなものだ。こっちは馬鹿気ばかげている。あっちは得意である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、動くと、一発。よこぱらへ、お見舞い申しますぞ」青年は、おちついて云った。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
月夜つきよかげ銀河ぎんが絶間たえま暗夜やみにもくまある要害えうがいで、途々みち/\きつねたぬきやからうばられる、と心着こゝろづき、煙草入たばこいれ根附ねつけきしんでこしほねいたいまで、したぱらちからめ、八方はつぱうくばつても、またゝきをすれば
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)