目出度めでた)” の例文
そして最後に、幽里子と東野が目出度めでたく結婚したということも、私の好きなハッピーエンドでこの物語を結ばせて貰う喜びの一つです
ところが日清にっしん戦争、連戦連勝、軍隊万歳、軍人でなければ夜も日も明けぬお目出度めでたいこととなって、そして自分の母といもととが堕落した。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
もっともその時に万一、私が過去の経歴を思い出していたら、話はソレッ切りで、目出度めでたし目出度しになっていたかも知れません。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そいつは目出度めでたい。だが、奥さんが無事なことは、さっきからわかっているじゃないか。まさか殺されているんじゃないだろう」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
僕と彼のあいだに支那公チンキイロン・ウウのしっぷ・ちゃん契約が目出度めでたく成立して、二人が酒場タベルナを出たとき、おどろいたのは、六
無事に御山を済せて目出度めでたいと喜んだ昔に較べると、これは馬上の将軍が敵国を征服して、鞍に倚って睥睨する時の態度にもたとえられよう。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
去年も端午たんごの客の多いのに人は目出度めでた目出度と嬉貌うれしがおすれど、拙者は先の先が気遣いでたまらんから、始終稽古場へかがんで
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
前言ぜんげん前行ぜんこうただたわぶれのみと、双方打解けて波風なみかぜなく治まりのついたのは誠に目出度めでたい、何もとがめ立てするにも及ばぬようだが、私には少し説がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
喜「どう致しまして、此の上の喜びはございません、お町様、こんなお目出度めでたい事はござりませんな、お喜び申上げます」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これは大正三年の元日の心持で、三年の秋には大正天皇の御即位式がある、その目出度めでたい年だということを元日に特に思い浮かべたのであります。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「御苦労だったなぁ……」「何しろ凱旋で目出度めでたい」「これも陛下の御威光のいたす所じゃ」などと、恐縮している父に、云って聞かせて帰った。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
にや人倫五常の道にそむきてかへつて世に迎へられ人に敬はるるけいらが渡世たつきこそ目出度めでたけれ。かく戯れたまひし人もし深き心ありてのことならんか。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
熟々つら/\かんがふるにてんとんびありて油揚あぶらげをさらひ土鼠もぐらもちありて蚯蚓みゝずくら目出度めでたなか人間にんげん一日いちにちあくせくとはたらきてひかぬるが今日けふ此頃このごろ世智辛せちがら生涯しやうがいなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
三日三晩村中呼んでの飲明のみあかしだの、「目出度めでた〻〻〻めでた若松様わかまつさまよ」の歌で十七の嫁入荷物を練込ねりこむなぞは、大々尽だいだいじんの家の事、大抵は万事手軽の田舎風
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まあそんなにいわなくてもいいわ、今日はさいわい町の祭日だ、さあ目出度めでたい。お前も斯様そんなに達者で大きくなって来てくれた。今日はゆるりと一杯鯛の刺身で飲むべえ。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それで私は、私たちで、その半分でも出来るだけ早く都合して、そっちを解決して、出来ることならお父さんに達ちゃんのお目出度めでたを見せてあげたいと思います。
この頃は全然すつかりフロックがとまつた? ははははは、それはお目出度めでたいやうな御愁傷のやうな妙な次第だね。然し、フロックが止つたのはあきらかに一段の進境を示すものだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
首尾直りの上からは目出度めでたいのであるが、家族等はとかく国を離れることを厭がり、江戸に居てさえ帰りたい帰りたいといっていたほどであるから、今度の京上りも
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
町々の人は少年を歓迎かんげいし始めた。少年の姿を見ると目出度めでたいと言って急いで羽織袴はおりはかまうやうやしく出迎でむかえるような商家の主人もあった。華々はなばなしい行列で停車場へ送ったりした。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
『それはお目出度めでたう』僕は西洋流に握手して『男のお子さんですか? お二人とも御健在ですか』
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
故郷の奴らは、どうせあの山国、ほかへ出たことのない人間ばかり、本気になって目出度めでたがることだろうが……嫌だなあ、またあの山国で暮すのは、考え出してもぶるぶるだ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「濫費日」や「嘘つき日」や「怠け日」はあまり聞えはよくないかもしれないが、実はこれらの特定日の存在は平日の節約勤勉真面目を表白するとすれば目出度めでたい事である。
雑記(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かくて十一歳の少女と十五歳の少年とは主従の上に今また師弟のちぎりを結びたるぞ目出度めでた
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たゞ本國ほんごく大祭日たいさいじつばかりではない、吾等われらためには、終世しうせい紀念きねんともなるき、海底戰鬪艇かいていせんとうてい首尾しゆびよく竣成しゆんせいして、はじめてうみうか當日たうじつであれば、その目出度めでたさも格別かくべつである。
結婚後十数年経って、初めて子供の出来た例は乏しくないのだから、少しも不思議はないどころか、大変目出度めでたいと思うのだが、何故二川がその事を僕に隠したのか、鳥渡解せないのだ。
それが合成して目出度めでたく出来上ったものは、一見ゴムみたいなものでありながら、弾力のない、くだらぬものでしかなかった、という、まあそんな訳ですが、失礼ですが、あなたの場合
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
不開室あかずのまの怪異とばかり想ひなし、かつ恐れ且あやしみながら、元来泣声ある時は、目出度めでたきことの兆候きざしなり、と言伝いひつたへたりければ、「いづれも吉兆にさふらひなむ」と主人を祝せしぞおろかなりける。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
祝言しうげんの座にしやうぜられぬ仁兵衛ではあるが、いつも厚くきやうせられ調法におもはれた。仁兵衛は持前の謡をうたひ、目出度めでたや目出度を諧謔かいぎやくで収めて結構な振舞ふるまひを土産に提げて家へ帰るのであつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
まア、いくらでも、お目出度めでたくめそめそしたけりゃ、するがいいよ。——
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
お正月ァ目出度めでた
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
世間では男子が生れると大造目出度めでたがり、女の子でも無病なればず/\目出度めでたいなんて、おのずから軽重があるようだが、コンな馬鹿気ばかげた事はない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
豪勢な飾電灯シャンデリア、壁はモーリス風の金唐草に、樫板の腰張り古色目出度めでたく、ルノアールの水の垂れそうな果物の絵が、食卓の上の、世界の珍果を集めた
向嶋にてこのたぐひの茶屋といへば入金いりきん繁昌はんじょう久しきものにして蜆汁しじみじるの味またいつまでも変らぬこそ目出度めでたけれ。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
婚礼も目出度めでたく済んだ。田舎いなかは秋晴ぬぐうが如く、校長細川繁の庭では姉様冠あねさまかぶりの花嫁中腰になって張物をしている。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
目出度めでたうございます。乙「はい、お目出度めでたうございます。甲「昨日さくじつ御年頭𢌞ごねんとうまはりでございましたか。 ...
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その女の目出度めでたい元日を待ちながらも、また一歳ひとつ年を取るという淋しい心持を言ったのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「かしら、文ちゃんを折檻せっかんするのはよしたらどうです。目出度めでたい日だ。勘弁かんべんしておやりなさい」
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこへ単身徒歩で登場して牛に直面し、機を見て急所へ短剣エストケの一撃を加えて目出度めでた仕留しとめるのが、3のマタドウル・デ・トウロスだ。このとどめをさす役が、闘牛中の花形エスパダなのである。
今日もたった今まで飲んだところだ。明日あした明後日あさっても……大方死ぬまで飲むんだろう。今からもまた、お前のお金で飲んで来ようと思うんだ。これでお仕舞い……目出度めでたし目出度しかね。ハハハ。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
すなは大佐等たいさらためにはこの朝日島あさひじま上陸じようりくしてから五度目ごたびめの——わたくし日出雄少年ひでをせうねんとのためには三度目さんどめの、紀元節きげんせつ祝日いはひのひむかふるとともに、目出度めでた試運轉式しうんてんしき擧行きよかうまでの、よろこばしきはこびにいたつたころ
榮燿ええうくらすやに相見あひみさふらふ、さるにても下男げなん下女げぢよどもの主人しゆじんあしざまにまをし、蔭言かげごとまをさぬいへとてはさらになく、また親子おやこ夫婦ふうふ相親あひしたしみ、上下しやうか和睦わぼくして家内かない波風なみかぜなく、平和へいわ目出度めでたきところはまれさふらふ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「学位売買事件」というあまり目出度めでたからぬ名前の事件が新聞社会欄のにぎやかで無味な空虚の中に振りかれた胡椒こしょうのごとく世間の耳目を刺戟した。正確な事実は審判の日を待たなければ判明しない。
学位について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その互ひの工合わるさ——かういふ目出度めでたい席には禁物の工合わるさをどうかして水に流さうと、自分よりも四十も若い男に向つて、いろ/\と愛想あいそを述べたのだが、あまりのムツツリした不作法に
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
精一杯手短かな言葉に代表さしていえば、「お目出度めでたき人」という小説か脚本かを書いた武者小路氏のごとく、皮肉でも反語でもなく、勿論何らの漫罵でもなく、思切って「オメデタイ」ことである。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、過ぎた正月をし直したいばかり目出度めでたがった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目出度めでた凱旋がいせんしとくれよ」
工場新聞 (新字新仮名) / 徳永直(著)
二人はいそいそとその仕度したくを急いでおりますが、我々岡焼党おかやきとうは、一応言葉の上では目出度めでたがり乍ら、心の中では甚だ面白くない毎日を送っていたのです。
氏は新政府に出身してただに口をのりするのみならず、累遷るいせん立身りっしんして特派公使に任ぜられ、またついに大臣にまで昇進し、青雲せいうんこころざしたっし得て目出度めでたしといえども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分もう一度そういう程度まで立戻る事が出来たとしたら、どんなに万々歳なお目出度めでたかりける次第であろう……。惆悵ちゅうちょうとしてさかずきを傾くる事二度ふたた三度みたび。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
貴殿あなた何處どこ御出身ごしゆつしんですか』と突然とつぜん高等商業かうとうしやうげふ出身しゆつしんなにがしいまある會社くわいしや重役ぢゆうやくおぼえ目出度めでた一人ひとりをとこ小介川文學士こすけがはぶんがくしとなりすわつて新來しんらいきやくひかけた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)