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百合
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ゆり
ふりがな文庫
“
百合
(
ゆり
)” の例文
三人の王女は草の上に
坐
(
すわ
)
つて、ふさ/\した金の髪を、
貝殻
(
かひがら
)
の
櫛
(
くし
)
ですいて、忘れなぐさや、
百合
(
ゆり
)
の花を、一ぱい、飾りにさしました。
湖水の鐘
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
おれは
昨夜
(
ゆうべ
)
あの
混血児
(
あひのこ
)
の女が
抛
(
はう
)
りこんだ、
薔薇
(
ばら
)
や
百合
(
ゆり
)
の花を踏みながら、わざわざ玄関まで下りて行つて、電鈴の
具合
(
ぐあひ
)
を調べて見た。
窓
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「うん。そうだろう。わしは
正※知
(
しょうへんち
)
に
百合
(
ゆり
)
の花をささげよう。
大蔵大臣
(
おおくらだいじん
)
。お前は林へ行って
百合
(
ゆり
)
の花を
一茎
(
ひとくき
)
見つけて来てくれないか」
四又の百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ここにも夜店がつづき、
祠
(
ほこら
)
の横手の
稍
(
やや
)
広い空地は、植木屋が一面に並べた
薔薇
(
ばら
)
や
百合
(
ゆり
)
夏菊などの鉢物に時ならぬ花壇をつくっている。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「あの、お母さんが起きられるようになったら、アルマイトの弁当箱、買ってくれるん。ふたに
百合
(
ゆり
)
の花の絵がついとる、べんと箱」
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
▼ もっと見る
御主
(
おんあるじ
)
耶蘇様
(
イエスさま
)
は
百合
(
ゆり
)
のやうにお
白
(
しろ
)
かつたが、
御血
(
おんち
)
の
色
(
いろ
)
は
真紅
(
しんく
)
である。はて、
何故
(
なぜ
)
だらう。
解
(
わか
)
らない。きつと
何
(
なに
)
かの
巻物
(
まきもの
)
に
書
(
か
)
いてある
筈
(
はず
)
だ。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
雑木山の
裾
(
すそ
)
や、柿の樹の傍や
厩
(
うまや
)
の横手や、藪の下や、
桐畑
(
きりばたけ
)
や片隅にぽつかり大きな
百合
(
ゆり
)
や
葵
(
あふひ
)
を咲かせた農家の庭の前などを通つて。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼
(
かれ
)
は、その
後
(
のち
)
、いろいろの
経験
(
けいけん
)
をし、また
苦労
(
くろう
)
をしました。たまたま、この
公園
(
こうえん
)
にきて
百合
(
ゆり
)
の
花
(
はな
)
を
見
(
み
)
て、
昔
(
むかし
)
のことを
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
したのです。
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
百合
(
ゆり
)
と
山査子
(
さんざし
)
の匂いとだけ判って、あとは私の
嗅覚
(
きゅうかく
)
に慣れない、何の花とも判らない強い薬性の匂いが入れ混って
鬱然
(
うつぜん
)
と
刺戟
(
しげき
)
する。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
味噌汁と
百合
(
ゆり
)
の根とは更に別の鉢に、それからそれを料理したその容器のままで膳に出す、最も美事な
羹
(
あつもの
)
は、蓋のある皿を充していた。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
三千代は何にも答えずに
室
(
へや
)
の中に這入て来た。セルの
単衣
(
ひとえ
)
の下に
襦袢
(
じゅばん
)
を重ねて、手に大きな白い
百合
(
ゆり
)
の花を三本ばかり提げていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ソロモンの栄華も一輪の
百合
(
ゆり
)
の花に及ばないという古い言葉が、今の自分には以前とは少しばかりちがった意味に聞き取られるのである。
からすうりの花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「美術館のティ・ルームだァ? ショバが広くて結構だよ……飯島あたりに巣をつくっているが、君は
百合
(
ゆり
)
のひとなんだろう?」
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
クロバーも
百合
(
ゆり
)
もチュウリップも三色
菫
(
すみれ
)
も御意のままに、この春の花園は、アパートの屋根裏にも咲いて、私の胃袋を済度してくれます。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そして微かな身震いが彼女の
華奢
(
きゃしゃ
)
な体の周りに震える。ナポリの穏やかな空気が草地の
香
(
かおり
)
高い銀の
百合
(
ゆり
)
の周りに震えるように。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
須磨の浜で、ゆくりなく受取った
百合
(
ゆり
)
の花の一葉の端書、それがこうした運命になろうとは夢にも思い知らなかったのである。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
彼らは
鷲
(
わし
)
に対して不正であったが、吾人は
百合
(
ゆり
)
の花に対して不正である。かくて人は常に酷遇すべき何かを欲するのであるか。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
露置く
百合
(
ゆり
)
の花などの
仄
(
ほのか
)
に風を迎へたる如く、その
可疑
(
うたがはし
)
き婦人の
面
(
おもて
)
は
術無
(
じゆつな
)
げに挙らんとして、又
慙
(
は
)
ぢ
懼
(
おそ
)
れたるやうに
遅疑
(
たゆた
)
ふ時
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その翌日から妻の顔は急に水々しい
水蜜
(
すいみつ
)
のような
爽
(
さわや
)
かさを加えて来た。妻は絶えず、窓いっぱいに傾斜している山腹の
百合
(
ゆり
)
の花を眺めていた。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
涼風一陣吹到る
毎
(
ごと
)
に、ませ
籬
(
がき
)
によろぼい懸る夕顔の影法師が
婆娑
(
ばさ
)
として舞い出し、さてわ
百合
(
ゆり
)
の葉末にすがる露の
珠
(
たま
)
が、忽ち
蛍
(
ほたる
)
と成ッて飛迷う。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
其
(
それ
)
も、
此
(
こ
)
の
婦
(
をんな
)
のために
氣
(
き
)
が
狂
(
くる
)
つたものだと
聞
(
き
)
く。……
薔薇
(
ばら
)
は、
百合
(
ゆり
)
は、ちら/\と、
一
(
いち
)
の
橋
(
はし
)
を——
二
(
に
)
の
橋
(
はし
)
を——
三
(
さん
)
の
橋
(
はし
)
を。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
掩
(
おお
)
い冠さったような
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の下には、清水が
溢
(
あふ
)
れ流れている。その横にある高い土蔵の壁は日をうけて白く光っている。
百合
(
ゆり
)
の花の
香
(
におい
)
もして来る。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その青年は貧しくて破れた服を着ていたけれど、ひるまず天来の快活をもって理想を説き、盛んに議論し自らを空の
雲雀
(
ひばり
)
や野の
百合
(
ゆり
)
と比べました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
またいらいらするような暑い夏の日に、昼のお茶に行って見れば、床の間の薄暗い涼しい所にかかっている
花瓶
(
かびん
)
には、一輪の
百合
(
ゆり
)
を見るであろう。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
妻は
下総国
(
しもうさのくに
)
佐倉の城主
堀田
(
ほった
)
相模守
正愛
(
まさちか
)
家来
大目附
(
おおめつけ
)
百石
岩田十大夫
(
いわたじゅうたゆう
)
女
(
むすめ
)
百合
(
ゆり
)
として
願済
(
ねがいずみ
)
になったが、実は
下野
(
しもつけ
)
国
安蘇郡
(
あそごおり
)
佐野
(
さの
)
の浪人
尾島忠助
(
おじまちゅうすけ
)
女
(
むすめ
)
定
(
さだ
)
である。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
腰
(
こし
)
もあらはの
梣
(
とねりこ
)
よ、
草叢
(
くさむら
)
から
生
(
は
)
へた汚れた夢のやうだ。
生
(
いのち
)
の無い影の
中
(
なか
)
に咲きたいといふ
狂氣
(
きちがひ
)
の
百合
(
ゆり
)
のやうでもある。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
『まあ
見事
(
みごと
)
な
百合
(
ゆり
)
の
花
(
はな
)
……。』
私
(
わたくし
)
は
覚
(
おぼ
)
えずそう
叫
(
さけ
)
んで、
巌間
(
いわま
)
から
首
(
くび
)
をさし
出
(
だ
)
していた
半開
(
はんかい
)
の
姫百合
(
ひめゆり
)
を
手折
(
たお
)
り、
小娘
(
こむすめ
)
のように
頭髪
(
かみ
)
に
挿
(
さ
)
したりしました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
また山間には、
百合
(
ゆり
)
の高さ三十尺なるものあり。動物カンガルーの高さ五尺、目方二十四貫目なるものありと聞く。
南半球五万哩
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「
百合
(
ゆり
)
ちゃん、あの男と
撚
(
よ
)
りを戻そうなんて弱気になっちゃだめよ。いっそ方針を変えて、一年や二年遊んで暮らせるだけ
搾
(
しぼ
)
り取っておやりなさいよ」
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
黒百合谷
(
くろゆりだに
)
の
百合
(
ゆり
)
の精か
星月夜
(
ほしづきよ
)
のこぼれ星かとうたがうだろう——ほどに
気
(
け
)
だかい美少女が、手にしていた横笛を、山千鳥の
啼
(
な
)
くかとばかり強く吹いた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芝地
(
しばち
)
のまん中には、赤や黄や白の薄い
絹
(
きぬ
)
の
衣
(
ころも
)
を着、
百合
(
ゆり
)
の花の
冠
(
かんむり
)
をかぶった、一人の女が立っていました。そして王子を見て、
微笑
(
ほほえ
)
んで手招きしました。
お月様の唄
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
源起きいで誰れぞと問うに、島まで渡したまえというは女の声なり。
傾
(
かたぶ
)
きし月の光にすかし見ればかねて見知りし大入島の
百合
(
ゆり
)
という小娘にぞありける。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
勝太郎は鍵を作らせることを隱す氣もなかつたから、これは直ぐ判つたに違ひない、——檜木風之進が鍵の型を取つたことはお
百合
(
ゆり
)
に聽いたことだらう。
銭形平次捕物控:231 鍵の穴
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
然しそれを
百合
(
ゆり
)
の花若しくは
薔薇
(
ばら
)
の花に譬えることはしない限りでない。その点に於て彼は明かに馬鹿でないことが出来る。十分に智者でさえあり得る。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
桑がいいから桑、
百合
(
ゆり
)
がいいから百合、
除虫菊
(
のみとりぎく
)
がいいから除虫菊——いいものに移るのはいいが、その時の調子で、眼先の景気だけに取られるのはよくない
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
張出窓での
百合
(
ゆり
)
花やトマトの栽培、野菜類の生食、ベトオフエンの第六交響楽レコオドへの
惑溺
(
わくでき
)
といふやうな事は皆この要求充足の変形であつたに相違なく
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
夏祭の日には、家々の軒に、あやめや、
菖蒲
(
しょうぶ
)
や、
百合
(
ゆり
)
などの草花を挿して置くので、それが雨に濡れて茂り、町中が
忽
(
たちま
)
ち
青々
(
せいせい
)
たる草原のようになってしまう。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その根もとにゆらゆらとなびいているのは、これも蕾の
百合
(
ゆり
)
の花であったが、十日ほどたったら蕾を破ろう。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
百合
(
ゆり
)
の山野にあるものはすでに実になっており、食用の鬼百合ばかりが村々に多かった。どういうわけでか農家では、これを畠の中に少しずつ離して
栽
(
う
)
えている。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
田の
畔
(
くろ
)
に
赭
(
あか
)
い
百合
(
ゆり
)
めいた
萱草
(
かんぞう
)
の花が咲く頃の事。ある日太田君がぶらりと東京から遊びに来た。暫く話して、
百草園
(
もぐさえん
)
にでも往って見ようか、と主人は云い出した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
明子はこの神聖な特権に死にものぐるひで
縋
(
すが
)
りついた。彼女の
額
(
ひたい
)
には
蒼白
(
あおじろ
)
い神聖さが
百合
(
ゆり
)
の花を開いた。まだ恋愛は新たな気息を盛りかへさなければならなかつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
お部屋へ戻って、机のまえに坐って頬杖つきながら、机の上の
百合
(
ゆり
)
の花を眺める。いいにおいがする。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
交通の便もなく、明治以来の文化にも縁のないこの山村では、出るものとては
百合
(
ゆり
)
とかチュリップとか
西瓜
(
すいか
)
くらいのもので、水田というものもきわめてまれであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ジュリアの遺骸は、彼女と仲のよかった
舞姫
(
まいひめ
)
たちが、何処からともなく持ってくる白い
百合
(
ゆり
)
やカーネイションやマガレットの花束で、見る見るうちに
埋
(
うず
)
もれていった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ヨーギ。天王寺さ行って、
糯米
(
もちごめ
)
買って
来
(
こ
)
うちゃ。
兄
(
あん
)
つあんさ、
百合
(
ゆり
)
ぶかしでもして
食
(
か
)
せべし。」
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
あぶら
火
(
び
)
の
光
(
ひかり
)
に
見
(
み
)
ゆる
我
(
わ
)
が
縵
(
かづら
)
さ
百合
(
ゆり
)
の花の
笑
(
ゑ
)
まはしきかも 〔巻十八・四〇八六〕 大伴家持
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
微風
(
そよかぜ
)
が吹くと、
百合
(
ゆり
)
の匂いが青空に昇って行くのよ。そして、皆いつでもその匂いを吸っているのよ。小さい子達は花の中を駈け廻って、笑ったり、花輪を造ったりしているの。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
「しかしとも角僕はその
百合
(
ゆり
)
の花を一つ買はせて貰ひ度いものですね。いけませんか。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
この梅干あえに交ぜるとようございますし、
百合
(
ゆり
)
を煮て交ぜると大層美味しくなります
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
座間は
浄
(
きよ
)
らかな
百合
(
ゆり
)
の花をみるように、しばしマヌエラの顔を
恍惚
(
こうこつ
)
とながめていた。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
“百合”の意味
《名詞》
百合(ヒャクゴウ)
ユリ科の植物の総称。ゆり。
漢方薬の生薬の一つ。ユリ科オニユリ、ササユリ、ヤマユリなどの鱗茎を蒸して乾燥したもの
(隠語、俗語)女性同士の関係。
(出典:Wiktionary)
百
常用漢字
小1
部首:⽩
6画
合
常用漢字
小2
部首:⼝
6画
“百合”で始まる語句
百合花
百合子
百合若
百合根
百合香
百合の花
百合圃
百合江
百合形
百合枝