うり)” の例文
「おやおや、まあ。めずらしい大きなうりだこと、さぞおいしいでしょう。うちへってかえって、おじいさんと二人ふたりべましょう。」
瓜子姫子 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おなしきおなもんうりふたツの類型土器るゐけいどき各地かくちからるのである。それすうからかんがへても、大仕掛おほじかけもつ土器どき製造せいざうしたとへる。
それ、後家の後見、和尚のめい、芸者の兄、近頃女学生のお兄様、もっと新しく女優の監督にて候ものは、いずれもうりつる茄子なすである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おう……天目山てんもくざんであいはてた、父の勝頼、また兄の太郎信勝のぶかつに、さても生写いきうつしである……。あのいくさのあとで検分けんぶんした生首なまくびうり二つじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
をどつてうたうてかつしたのど其處そこうりつくつてあるのをればひそかうり西瓜すゐくわぬすんで路傍みちばたくさなかつたかはてゝくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さりながら慈悲深き弥陀尊みだそんはそのままには置き給わず、日影の東に回るや否、情ある佐太郎をつかわし給えり、彼はうり茄子なす南瓜かぼちゃ大角豆ささげ
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
こま/\した幾つかの小さな畑に区劃くくわくされ、豆やら大根やらきびやらうりやら——様々なものがごつちやに、ふうざまもなく無闇むやみに仕付けられた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
ソレカラ江戸市中七夕たなばたの飾りには、笹に短冊を付けて西瓜すいかきれとかうり張子はりことか団扇うちわとか云うものを吊すのが江戸の風である。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そのおそきとは三月にはじめて梅の花を見、五月のうり茄子なす初物はつものとす。山中にいたりては山桜のさかり四月のすゑ五月にいたる所もあるなり。
かみなりに家を焼かれてうりの花。そんな古人の句の酸鼻さんびが、胸に焦げつくほどわかるのだ。私は、人間の資格をさえ、剥奪はくだつされていたのである。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
「ほう、そういえば、房枝とあの奥様とは、どこか似ているじゃないか。似ているどころじゃない、そっくりうり二つだよ」
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あっちにもこっちにも子供がうりに飛びついたときのようなよろこびの声や何とも云いようない深いつつましいためいきの音ばかりきこえました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
今までは誰も気づかなかったが、この日の祭壇にもうり茄子なすの牛馬、もしくは初物の野菜果実などを供えることが、かなり著しく盆棚ぼんだなと似ている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
世の中には、顔でさえもうり二つの人があるくらいです。姿勢が似ていたからとて、迂濶うかつに判断を下すことはできません。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
でも、……その時殿下ではなくて、誰か殿下とうり二つの人間が、殿下を装ってビョルゲ夫人の相手をしたものがある……とそう考えて、その方面を
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
うりを投じて怒罵どばするの語、其中に機関ありといえども、又ことごと偽詐ぎさのみならず、もとより真情の人にせまるに足るものあるなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
きゝ將軍には覺なしとの御意合點參ず正く徳太郎信房公お直筆ぢきひつと墨附及びお證據のお短刀たんたうあり又天一樣には將軍の御落胤に相違なきは其御面部めんぶうり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また父親と縁側に東京仕入れのうりを二つ三つおけに浮かせて、皮を厚くむいて二人してうまそうに食っていることもある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
茄子畑なすばたけがあると思えば、すぐ隣に豌豆えんどうの畑があった。西洋種のうりの膚が緑葉のうろこの間から赤剥あかむけになってのぞいていた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
池は大きくはない、出来そこないのうりの様に狭き幅を木陰に横たえている。これも太古の池で中にたたえるのは同じく太古の水であろう、寒気がする程青い。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うりめば子等こども思ほゆ、くりめば況してしぬばゆ、何処いづくよりきたりしものぞ、眼交まなかひにもとなかかりて、安寝やすいさぬ」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ボンヤリ見ている私は手伝いたくてウズウズしている。小僧さんが天秤棒てんびんぼうたわむほど、かごに一ぱいの大きなうりを担いで来て、土橋どばしをギチギチ急いで渡ってた。
その一例をあげると、うりを取りあげて、「これが虎の先祖だそうですな」という。聞いている者はびっくりするか、ばかばかしいと思うかの二者にわかれる。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……瓜生ノ衛門、今更いまさらながら御父上から受けました四十年の御厚誼ごこうぎ、つくづくと身にみまする。……(涙して)しがないうり作りの山男を……これまでに……
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
つまり、その二軒の花屋の老いたる主人たちは、ほとんどうり二つとっていいほどの、兄弟なのであった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
うりつるには、瓜が実る筈だから、親に似るものかと思うとそうは行かない。遺伝学いでんがくのことは知らないが、犬や馬のように親に似たものは生れない。鬼子おにごばかりである。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
「そう云えば、僕もあの娘が連れて来てくれたんだが、俺ンとこと同じようなもンらしい、うり、トマト、茄子なすなえ売りますなんて、木のふだが出てるあそこなんだろう」
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
うり作りになりやしなまし」という歌を、美声ではなやかに歌っているのには少し反感が起こった。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と言って、その侍を十余人というもの、うり茄子なすをきるように、サックサックと斬り伏せたのが評判になると、弟子を連れてこれを検分に出向いたある剣術の先生が
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は今、玉藻がむいてくれたうりの露をすこしばかりすすって、死にかかった蛇のように蒲莚がまむしろの上にのた打っていた。それを慰めるのは玉藻がいつもの優しい声であった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三月にうりあり、四月に茄子なすあり、根葉果茎一として食卓の珍ならざるはなし。下働きの女中、給仕役の少女、各その職をりて事に当る。人も美しく、四辺あたりも清潔なり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
うりつる茄子なすびはならない。だけど、どうせ、育てるんじゃないんだから。」笹村も言っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
真赤なうりを割いたような綺羅子の可愛い口腔こうこうの中に、その種子のように生えそろっていたことです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わが亡き人とうり二つのすがたなのに、露月は今は我れにもあらず、只ひと目、あでなる君のかんばせを見まほしいものよと、思い切ってあとをつけはじめたのであります。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いままで、ごろごろとのんきにころがつてつみのない世間話せけんばなしをしてゐたうりが、一せいにぴたりとそのはなしをやめて、いきころしました。みんな、そしてねむつた眞擬ふりをしてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
中津川からもらったうりも新しい仏のために取って置こうとか、本谷というところへ馬買いに行ったものから土産みやげにと贈られた桃もき孫娘(お夏)の霊前に供えようとか
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
品のよい鼻、白皙はくせきの面、それは自分の介抱を受けながら、横死した青木じゅんうり二つの顔だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
下位子房かいしぼうのある花はすこぶる多く、キュウリ、カボチャなどのうり類、キキョウの花、ナシの花、ラン類の花、アヤメ、カキツバタなどの花の子房はみな下位でいずれも花の下
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
わたくしはこれを読んで、広瀬淡窓が神童を以て早熟のうりとなしたことを憶ひ出した。若し同一の論理を以て臨んだなら、露姫は温室の花であらう。これは常識の判断である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
珊瑚礁さんごしょうを作るような珊瑚のうちに、上記の噴泉塔とも類似し、またシャボテンのうちにうりのような格好で、縦に深くひだのはいったのがある、あれともいくらか似た形のものがある。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
初めてではあるが、大体見当はつくので、内側からスプーンでけずって食べ始めた。まくわうりの味を少し淡くしたようなものであったが、これがメロンの味かと思って注意して食べた。
寺田先生と銀座 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「似たとはおろかうり二つ」などといいますが、よく見れば、どこかきっと違っている所があるのです。単に、顔や形のみではなくて、人間の性質も気心も、また文字通り、千差万別です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「やっぱり半之丞の子だったですな。うり二つと言ってもかったですから。」
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこへ村の男が一人上手かみてから来て涼亭の中へ入って来る。竹で編んだ笠を着けて、手の付いたざるうりのような物を入れ、それを左のひじにかけているが、蒲留仙を見つけると皮肉な眼付をする。
と、ぷんとかすの匂いがする。そうっと粕をはいでみる。下のほうにすばらしいうりの奴がうまそうに色づいて隠れている。奥にはまだなにかいる様子だったが楽しみにしてわざと見ずに瓜をだす。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
俳句においてはまたうり類の花を夏季とし実を秋としているのであります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
うりをふたつに割ったよう、どっちからどう見てもまったく同じで、ほとんど区別のしようがないというのだから、江戸一、いや、日本一の美男がもうひとり出来たわけで、さすがに江戸は広い。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
軒に縄を渡して阿母さんがしたうり雷干かみなりぼしを見て居ると暈眩めまひがする。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
「長羅、なんじの顔はうりのように青ざめている。爾は猪と鶴とをくらえ。」
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
赤い林檎りんごが、象牙珠ぞうげだまのように光っていた。ある樹木は早くも、晩秋の燦爛さんらんたる衣をまとっていた。火の色、果実の色、熟したうりや、オレンジや、シトロンや、美味な料理や、焼肉などの、種々の色彩いろどり