げん)” の例文
げんさんは会社かいしゃにつとめて、ごくほがらかな性質せいしつでありましたが、さんはそれにくらべて口数くちかずすくない、うちきなところがありました。
クラリネットを吹く男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
東河、名ははうあざなは文平、一号は払石ふつせきである。書をげん東江に学んだ。泊民名は逸、碩翁と号した。亦書を善くした。魚来は未だ考へない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「てつ」はげんさんへ縁づいたのちも時々僕のうちへ遊びに来た。僕はそのころ「てつ」の話した、こういう怪談を覚えている。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
げんさんがきいたらうだらう氣違きちがひになるかもれないとて冷評ひやかすもあり、あゝ馬車ばしやにのつてとき都合つがふるいから道普請みちぶしんからしてもらいたいね
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母様かかさま痛いよ/\ぼう父様ととさまはまだえらないかえ、げんちゃんがつから痛いよ、ととの無いのは犬の子だってぶつから痛いよ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
げん中納言も院の御婿の候補者が続出するのを見ては、この人には間接でなく、あれほどにも明瞭めいりょうに御意のあるところをお見せになったのであるから
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
しばらくしてげんさんは、ガラスつぼから金平糖こんぺいとう一掴ひとつかみとりすと、そのうちの一つをぽオいとうえげあげ、くちでぱくりとけとめました。そして
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
この親房(神皇正統記の筆者)の北畠一門には、かつて近江伊吹山の下であえなく断罪にされたげん中納言具行ともゆきがある。
おのれもにがさぬぞとげん八へ突掛つきかゝるに源八はおもひも寄ぬことなればおどろ周章あわてみぎの手をいだして刄物はもの挈取もぎとらんとせし處を切先きつさきふかく二のうで突貫つきとほされヤアと躊躇たちろく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ああ、入ってみておくれな、げんちゃん。せっかくここまで来たんだもの、せめて焼灰やけはいでもみておかないと、わたしゃ御先祖ごせんぞさまに申しわけないからね」
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
若い無髯の土工夫は、飯場に着いてから、三日目に逃げ出さうと企てゝゐた、彼の逃走を感づいてゐたのは、モッコの相手である『げん』といふ男であつた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
そして最後に宇治の螢を引張り出して、「那処あそこの螢は大きいね。さやうさ、雀よりももつと大きかつたかな。何しろげん頼政の亡魂だといふんだからな。」
人物の一枯一栄一窮一達はすべて其行為の結果なり。故に行為は結果に対する源因となるなり。禍にかゝるも福を招くもそのげんを尋ぬれば、行為は明然之がいんをなす。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
夫 (小説を声高に読みはじめる)「芳町よしちやうで幅の利く顔役、弥太やたらうげん七が出先から子分に持たせてよこした手紙を見た女房おげんの顔の色がさつと変り……」
世帯休業 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
すると、母が私の手を引っ張って、私を殴った喧嘩大将のげんしゃんのうちへ行って、源公げんこうのおふくろに
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
げんだの、ろくだの、腕白わんぱくどもの多い中に、ぼうちやん/\と別ものにして可愛かわいがるから、姉はなし、此方こなたからもなついて、ちよこ/\と入つては、縫物ぬいもの交返まぜかえす、物差ものさしで刀の真似
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「すこし頼まれた仕事を急いでいますからね、……げんちゃん、お床を少し寄せますよ。」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
江戸から百十三里、伊賀国柳生の里の城主、柳生対馬守やぎゅうつしまのかみの弟で同姓どうせいげんろう
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
田圃向うの浜田のげんさんの母者ははじゃは、余のあざで特色ある人物の一人である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
げん、お前え何んかかツさんに用でもあるのか?」ときいた。
防雪林 (旧字旧仮名) / 小林多喜二(著)
そのお婿さんのげんさんにもまた同じだったのである。
三代のげん遠くして
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
すりのげんこう
奇面城の秘密 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おいげん……
通り雨 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
お高は往来ゆききの人のなきを見て、力ちやんお前の事だから何があつたからとて気にしてもゐまいけれど、私は身につまされてげんさんの事が思はれる
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「どうか、いえのことはあんじないで、おくにのためにはたらいてください。」と、近所きんじょ人々ひとびとが、げんさんにいいました。
クラリネットを吹く男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
千蔵も広島に小店こだなをかり教授とやら申ことに候。帰後はなしともつぶてとも不承候。げん直卿ちよくけい仍旧きうにより候。源十軽浮、時々うそをいふこと自若。直卿依旧きうにより候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あまりげんさんとよしさんがとしてばかりいると、「よし、おれがひとつやってせてやろかい。」といってたくなるのでしたが、それをがまんしていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
げん少納言さんがいられましたら、お目にかかって、お訪ねいたしました理由を申し上げます」
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
急に彼はまどった。むかしにはげん三位ざんみ頼政が菖蒲あやめまえを主上から賜わったというはなしはある。が、自分の上にそんな僥倖がめぐんで欲しいなどとは思いもしていなかった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕のうちには子守こもりのほかに「てつ」という女中が一人あった。この女中はのちに「げんさん」という大工のお上さんになったために「源てつ」という渾名あだなもらったものである。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
またげん中納言雅頼卿がらいのきょうのもとに使われている若侍が見たという夢は、実に不吉を極めた。
「ありがと、ございました。……おや君はゲンドンではないか」アメリカ人は、大きく目をひらいて、源一の顔をみつめた、源一は奉公していたお店で「げんどん」とよばれていた。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ハハハ、これではおたがいに浮ばれない。時に明日あすの晩からは柳原やなぎはらの例のところに○州屋まるしゅうや乾分こぶんの、ええと、だれとやらの手で始まるそうだ、菓子屋のげん昨日きのうそう聞いたが一緒いっしょに行きなさらぬか。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
罪ですネげんちゃんは(発端篇)
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たか往來ゆきゝひとのなきをて、りきちやんおまへことだからなにがあつたからとてにしてもまいけれど、わたしにつまされてげんさんのことおもはれる
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さんが、やすみのには、げんさんがかけなければならなかった。二人ふたりが、クラリネットをって、そとへいくようなは、ついにこなかったのでした。
クラリネットを吹く男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
海蔵かいぞうさんは、昨日きのうまではよくげんさんと、それをやったものでした。二人ふたり競争きょうそうをやって、けそこなったかずのすくないものが、相手あいてべつ菓子かしわせたりしたものでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
見付たる由コリヤげん次郎其妻の名は何とか申せしや源次郎私しさい幼名をさなゝは上臺千代と守り袋に書付かきつけ之あり千代平常申にはたしか越後邊のうまれのよし明暮あけくれ實の親をしたひ居りし故私主人へいとま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
串談じようだんはぬきにして結城ゆふきさん貴君あなたくしたとて仕方しかたがないからまをしますが町内ちやうないすこしははゞもあつた蒲團ふとんやのげん七といふひと
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これから、ぼくは、おとうさんと地球ちきゅうを一しゅうして、さんごじゅのしげったみなみしまかえるのだ。げんちゃん、ぼくたちのんでいる、みなみほうへ、きみもやっておいでよ。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんという都会ふうのことばだろう。石黒先生はこんなふうにはよばなかった。先生は、生徒の名を知りすぎていたから、「げんやい読め」とか、「てるン書け」とかいったのである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
大岡殿おほをかどのかれ何樣道理もつともなる申分なり然ど今一人に斬付きりつけたりとあるは是も敵なりやとたづねらるゝに瀬川せがはいな其者はげん八と申て同郷どうがうの者にてわたくしへ不義ふぎを申掛候而已のみならずわたくし親どもへもはなは迷惑めいわく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
菊の井のお力は土方の手伝ひを情夫まぶに持つなどと考違かんちがへをされてもならない、それは昔しの夢がたりさ、何の今は忘れてしまつてげんとも七とも思ひ出されぬ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
げんちゃん、また台風たいふうがくるって、ラジオでいったよ。いつくるかなあ、きょうのばんくるかもしれない。いまごろ二十キロのはやさで、うみうえいているんだね、すごいだろうな。」
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
仕方なく宰相はげん大夫判官季貞すえさだを通じて、言葉を伝えて貰う事にした。