)” の例文
とさすがに手を控えて、例の衣兜へ突込んだが、お蔦の目前めさきを、(子をろ、子捉ろ。)の体で、靴足袋で、どたばた、どたばた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれなりとらずんば此降りに客の足とまるまじとお力かけ出して袂にすがり、何うでも遣りませぬと駄々をこねれば、容貌よき身の一徳
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫人は驚いてかごに乗ってゆき、かぎけて亭に入った。小翠ははしっていって迎えた。夫人は小翠の手をって涙を流し、つとめて前のあやまちを謝した。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
レオ・アフリカヌスがナイル河の鱷、カイロ府より上に住むは人を殺し、下に住むは人をらずといえるも、竜に善性と兇悪あるてふに似たり。
宮の肩頭かたさきりて貫一は此方こなたに引向けんとすれば、すままに彼はゆるく身をめぐらしたれど、顔のみは可羞はぢがましそむけてゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
られている女の手を振払って、一目散にもと来た道へ逃げ出したが、暗いのと慌てたのとで方角をあやまって、かの陥し穽に転げ込んだのである。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
下男共げなんどもて、かれ手足てあしり、小聖堂こせいだうはこつたが、かれいまめいせずして、死骸むくろだいうへ横臥よこたはつてゐる。つてつき影暗かげくらかれてらした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なんぢの Longing を空際に投げよ、空際より、爾が人間に為すべきの天職をり来れ、嗚呼あゝ文士、何すれぞ局促として人生に相渉るを之れ求めむ。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「エレベーター・ボーイだとか、小使こづかいの親爺だとか、色々なものをらえて、話を聞いていたのさ、お蔭であのビルディングのことは大分詳しくなった」
奥方をらえて天にらん! そもそも吾を誰とか思う! われは浮世の者ならず、八千魔界の壇上より
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
全くそれが、通り魔とでも申すのでしょうか。それとも、あの観覧車に不思議な魔力があって、それが、私をしっかとらまえて放さなかったのかも知れません。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と、手を差し出して女の手をらんばかりにしていうと、彼女はそれには答えず、「おかあはん、これすぐ持っていとくれやす」と、荒々しく風呂敷を包んでいる。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
と手をのばして菅笠の端をったが、それでも振払って逃げようとするはずみに笠の紐がぷつりと切れる。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
見らるる如く某は、このあたり猟師かりうどに事ふる、猟犬にて候が。ある時わしとって押へしより、名をば鷲郎わしろうと呼ばれぬ。こは鷲をりし白犬しろいぬなれば、鷲白わししろといふ心なるよし。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
将軍忽ち岸の草陰に隠れてくそをひる。これも何かの好紀念であろう。四人手をり躍り上りて万歳を三呼さんこ。ああ、かくして我々の痛快なる旅行はおわったのである。
しかじかのよしを語れば、此の法師鼻を高くして、これらの三三五蠱物まじものらをらんは何のかたき事にもあらじ。必ず三三六静まりおはせとやすげにいふに、人々心落ちゐぬ。
とうとう侍女達はその公主を肩に乗せ、臂をり、裾をからげ、くつを持って鞦韆の上に乗せた。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
眼に見えない侵入者だ、その胸倉をつて、戸の外に突き出さなければ気が済まないやうに、ムシヤクシヤ腹になつて、二階の狭い椽側えんがはに立ち上りながら、向ふを睨みつけ
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
或は(特別なる時勢の結果として)国民性全分の影其のものの頗る模糊もことしてらへがたきものあるにも因せざるか、(後に論じたるが如く)し後者に一面の理ありとせば
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
こうして海に入れば水の物にられぬとか、または草の中をあるいても蛇に巻付かれぬとかいうことを、かつては信じて真剣に実行する者があったので、後には再びただ少年少女だけの
大道だいどうのまん中で風にられた帽子を追つかけるのは、男子をとこが全力を尽してやるべき真面目な大事業だと言つたが、世の中に帽子ほどよく転がり、帽子ほどよくひとのと間違へられるものはない。
今や心狂ひたる軍人の鉄腕にようせられたる、繊細なる梅子の身は、鷹爪ようさうらはれたる雛雀すうじやくとも言はんか、仮令たとひ声を限りに叫べばとて何処いづこより、援助来らん、一点の汚塵をぢんだも留めたるなき一輪の白梅
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
我が り兼ねて
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
あれなりとらずんばこの降りに客の足とまるまじとお力かけ出してたもとにすがり、どうでも遣りませぬと駄々をこねれば、容貌きりようよき身の一徳
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うへへ五ほんめの、ひとのこつた瓦斯燈がすとうところに、あやしいものの姿すがたえる……それは、すべ人間にんげんかげる、かげつかむ、影法師かげぼふしくらものぢや。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
海を渡って少眠まどろむ内、諸竜にその珠を盗まれしが、眼覚めて、珠をとりかえさずばついに空しく帰らじと決心し、一の亀甲をって海水を汲みさんとした。
下男共げなんどもて、かれ手足てあしり、小聖堂こせいどうはこったが、かれいまだめいせずして、死骸むくろだいうえ横臥よこたわっている。ってつき影暗かげくらかれてらした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
深く今日の社界を学び、其奥底に潜める毒竜をらへ来つて、之を公衆の眼前に斬伐ざんばつせんとの志か、正太夫。
わたくしはもう苛々いらいらして来て、じいやの胸ぐらをらないばかりにして、無理無体に根ほり葉掘りの詮議をしますと、じいやもしまいには根負けがしたらしく
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
元より養ふ人なければ、食物も思ふにまかせぬにぞ、心ならずも鷲郎は、なれわざとて野山にかりし、小鳥などりきては、ようやくその日のかてとなし、ここに幾日を送りけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
「大変なことが起こりました!」娘の山吹はオロオロ声で、「あの、お殿様が、私をらえ……」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
此処なうちへ来て芸妓げいしゃねえって皿小鉢をほうって暴れるので、仕方がねえから、わし用があって此家こけえ来て居りやんしたが、見兼て仲へ這入った処が、わし胸倉アるから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なほ三八九念じ給へば、屏風のうしろより、三九〇たけばかりの小蛇こへびはひ出づるを、三九一是をもりて鉢にれ給ひ、かの袈裟をもてよくふうじ給ひ、そがままに輿に乗らせ給へば
「私の家におおきな白蛇しろへびが来て、わざわいをしようとしております、どうかってください」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
蒲田がかひなは電光の如くをどりて、猶言はんとせし貫一が胸先を諸掴もろつかみ無図むずりたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と、庭の中を人の歩いていくような気配がするので、窓からそっとのぞいた。見ると一人の男が細君のへやへ入っていくのであった。万は怪しいと思ったので刀をってそっといってのぞいた。
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
さあ何とで御座んす、と袂をらへてまくしかくる勢ひ、さこそは當り難うもあるべきを、物いはず格子のかげに小隱れて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
きますると、われらに、くだんかげもののはなしいてからは、またゝさへ、ひとみいて、われかげ目前めさきはなれぬ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
遠距離なる井の中に住んで毎度羊をくらいしが、最後に水汲みに来た少女をり懸りてあらわれ殺された由見ゆ。
重太郎は漸々だんだんに熱して来たらしい、又飛蒐とびかかってお葉の手をろうとするのを、母は再びさえぎった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
松女の腕をり引きずり引きずり、梯子を上るお葉の姿が、すぐに月光に照らされて見えた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大藏は四辺あたりを見て油断を見透みすかし、片足げてポーンと雪洞を蹴上けあげましたから転がって、灯火あかりの消えるのを合図にお菊の胸倉をって懐にかくし持ったる合口あいくちを抜く手も見せず
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
人々ぢ隠るるを、法師あざみわらひて、老いたるもわらはも必ずそこにおはせ、此のをろち只今りて見せ奉らんとてすすみゆく。閨房の戸あくるを遅しと、かのをろちかしらをさし出して法師にむかふ。
さあ何とで御座んす、と袂をらへてまくしかくる勢ひ、さこそは当り難うもあるべきを、物いはず格子のかげに小隠れて
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今夜こんや……こなたひにく……をんなかげらうと、かねてつけねらうてるによつて、きびし用心ようじんふか謹愼つゝしみをしますやう、こなたつうじて、こゝろづけがしたかつたのぢや。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
実際について観察すると、蛇が苺を食うでなくて、苺の蔭にひそまり返って水に渇した小鳥が目に立ちて、紅い苺を取りに来るところをるのらしいと(『飛騨史壇』二巻九号)。
「私の手をおりになりました。それを私は振り払って、逃げて来たのでございます」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と手をって引こうとしたが大力無双の市四郎が少しも動かず、引く途端に官棒でお打ちなすったのではありませんが、グッと引くはずみに市四郎の手先へ棒が当ると、市四郎がおこって
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
可哀想ではあるが、何時いつまでも際限はてしが無い。お葉はられたるたもとを払って
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さあなんとで御座ござんす、とたもとらへてまくしかくるいきほひ、さこそはあたがたうもあるべきを、ものいはず格子かうしのかげに小隱こかくれて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)