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慌
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あわたゞ
ふりがな文庫
“
慌
(
あわたゞ
)” の例文
こう書いてある手紙の端を持ったまゝ、瑠璃光は自分の身を疑うが如く、たゞ
上
(
うわ
)
の空で、ところ/″\の文言を
慌
(
あわたゞ
)
しく読み散らした。
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼
(
かれ
)
がふと
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
したやうに
狹
(
せま
)
い
戸口
(
とぐち
)
を
開
(
あ
)
けて
明
(
あか
)
るい
外
(
そと
)
の
埃
(
ほこり
)
に
目
(
め
)
を
蹙
(
しが
)
めて
出
(
で
)
て
行
(
い
)
つた
時
(
とき
)
與吉
(
よきち
)
は
慌
(
あわたゞ
)
しく
飯臺
(
はんだい
)
の
蓋
(
ふた
)
をした
處
(
ところ
)
であつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
五来氏は巴里の料理屋で見たやうに、
慌
(
あわたゞ
)
しく応接室に入つて来た。そしてしげしげ有島氏の顔を見てゐたが、急にしんみりした調子になつて
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
板為切
(
いたじきり
)
の向側からは返事が聞えない。矢張単調な祈祷の声がしてゐる。それと
慌
(
あわたゞ
)
しげに立ち振舞ふ物音がするだけである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
と、
聲
(
こゑ
)
も
出
(
で
)
ないまで、
舌
(
した
)
も
乾
(
かわ
)
いたか、
息
(
いき
)
せはしく、
男
(
をとこ
)
は
慌
(
あわたゞ
)
しく、
懷中
(
ふところ
)
へ
手
(
て
)
を
突込
(
つゝこ
)
んだが、
顏
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
は
血
(
ち
)
が
褪
(
あ
)
せて
颯
(
さつ
)
と
變
(
かは
)
つた。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
雲は極から極へ、團一團と
慌
(
あわたゞ
)
しく續けざまに流れて行つた。そして、この七月の日に青空の一かけも見えないのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
どこか近くの部屋の中で人の爭つてゐるらしいけはひが、
慌
(
あわたゞ
)
しく、又妙にひつそりと私の耳を脅しました。
地獄変
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
信一郎は、その裡の誰かゞ、
屹度
(
きつと
)
瑠璃子に違ひないと思ひながら、一人から他へと、
慌
(
あわたゞ
)
しい眼を移した。が、たゞいら/\する
丈
(
だけ
)
で、ハツキリと確める術は、少しもなかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
跡をも見ず飛ぶが如くに
我家
(
わがや
)
に立帰り、
慌
(
あわたゞ
)
しく
拳
(
こぶし
)
をあげて
門
(
かど
)
の戸を
打叩
(
うちたゝ
)
き
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と彼女は
慌
(
あわたゞ
)
しく廻る身の轉變に思ひを
唆
(
そゝ
)
られてか潤んだ聲で言つた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
其
(
そ
)
の
間
(
あひだ
)
に
空
(
そら
)
を
渡
(
わた
)
る
凩
(
こがらし
)
が
俄
(
にはか
)
に
哀
(
かな
)
しい
音信
(
おどづれ
)
を
齎
(
もたら
)
した。
欅
(
けやき
)
の
梢
(
こずゑ
)
は、どうでもう
此
(
こ
)
れまでだといふやうに
慌
(
あわたゞ
)
しく
其
(
そ
)
の
赭
(
あか
)
く
成
(
な
)
つた
枯葉
(
かれは
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
投
(
な
)
げつけた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼の光輝ある太陽は、今
慌
(
あわたゞ
)
しく沈まうとしてゐる。彼からの先日の手紙は、私に人間らしい涙を流させた、而も私の心は聖なる
歡
(
よろこ
)
びにみたされた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
どこか近くの部屋の中で人の争つてゐるらしいけはひが、
慌
(
あわたゞ
)
しく、又妙にひつそりと私の耳を脅しました。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
汽車
(
きしや
)
はたゞ、
曠野
(
あらの
)
の
暗夜
(
やみ
)
を
時々
(
とき/″\
)
けつまづくやうに
慌
(
あわたゞ
)
しく
過
(
す
)
ぎた。あとで、あゝ、あれが
横濱
(
よこはま
)
だつたのかと
思
(
おも
)
ふ
處
(
ところ
)
も、
雨
(
あめ
)
に
濡
(
ぬ
)
れしよびれた
棒杭
(
ぼうぐひ
)
の
如
(
ごと
)
く
夜目
(
よめ
)
に
映
(
うつ
)
つた。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
七月三十一日午後六時
過
(
すぎ
)
の事、阪神電車の梅田停留場から神戸行の電車に乗込んだ。
鈴
(
ベル
)
が鳴つて電車がこれから出かゝらうとした時、席の真中程から
慌
(
あわたゞ
)
しく
衝立
(
つゝた
)
ち上つた若い男がある。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
女は
慌
(
あわたゞ
)
しげに、無言で衣物を着た。そして毛皮を羽織つて寝台に腰を掛けた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
「よう、おとつゝあ」おつぎの
節制
(
たしなみ
)
を
失
(
うしな
)
つた
慌
(
あわたゞ
)
しさが
勘次
(
かんじ
)
を
庭
(
には
)
に
走
(
はし
)
らせた。
勘次
(
かんじ
)
は
戰慄
(
せんりつ
)
した。
柹
(
かき
)
の
木
(
き
)
の
下
(
した
)
には
冷
(
つめ
)
たい
卯平
(
うへい
)
が
横
(
よこ
)
たはつて
居
(
ゐ
)
たのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
口々
(
くち/″\
)
に
言
(
い
)
ひ
交
(
かは
)
して、
寂然
(
しん
)
とした
道
(
みち
)
ながら、
往來
(
ゆきき
)
の
慌
(
あわたゞ
)
しい
町
(
まち
)
を、
白井
(
しらゐ
)
さんの
家族
(
かぞく
)
ともろともに
立退
(
たちの
)
いた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私と向ひあつてゐた侍は
慌
(
あわたゞ
)
しく身を起して、
柄頭
(
つかがしら
)
を片手に抑へながら、
屹
(
きつ
)
と良秀の方を睨みました。それに驚いて眺めますと、あの男はこの景色に、半ば正気を失つたのでございませう。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は
慌
(
あわたゞ
)
しく腕で私を抱いた。「有難い。」と彼は叫んだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
鄰村
(
となりむら
)
で
空臼
(
からうす
)
を
磨
(
す
)
るほどの
音
(
おと
)
がすればしたで、
慌
(
あわたゞ
)
しく
起
(
た
)
つて、
兩方
(
りやうはう
)
の
空
(
そら
)
を
窺
(
うかゞ
)
はないでは
居
(
ゐ
)
られない。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
聲
(
こゑ
)
も
震
(
ふる
)
へ、
身
(
み
)
も
慄
(
をのゝ
)
いて、
私
(
わたし
)
たち
二十人
(
にじふにん
)
餘
(
あま
)
りを
慌
(
あわたゞ
)
しく
呼寄
(
よびよ
)
せて、あの、
二重
(
にぢう
)
三重
(
さんぢう
)
に、
白
(
しろ
)
い
膚
(
はだ
)
に
取圍
(
とりかこ
)
ませて、
衣類
(
きもの
)
衣服
(
きもの
)
の
花
(
はな
)
の
中
(
なか
)
に、
肉身
(
にくしん
)
の
屏風
(
びやうぶ
)
させて、
一
(
ひと
)
すくみに
成
(
な
)
りました。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼
(
かれ
)
は
慌
(
あわたゞ
)
しく
窓
(
まど
)
を
開
(
ひら
)
いて、
呼吸
(
いき
)
のありたけを
口
(
くち
)
から
吐出
(
はきだ
)
すが
如
(
ごと
)
くに
月
(
つき
)
を
仰
(
あふ
)
ぐ、と
澄切
(
すみき
)
つた
山
(
やま
)
の
腰
(
こし
)
に、
一幅
(
ひとはゞ
)
のむら
尾花
(
をばな
)
を
殘
(
のこ
)
して、
室内
(
しつない
)
の
煙
(
けむり
)
が
透
(
す
)
く。それが
岩
(
いは
)
に
浸込
(
しみこ
)
んで
次第
(
しだい
)
に
消
(
き
)
える。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
兄
(
あに
)
じやに
見着
(
みつ
)
かつた
上
(
うへ
)
からは
安穩
(
あんのん
)
に
村
(
むら
)
には
居
(
を
)
られぬ、と
思
(
おも
)
ふと、
寺
(
てら
)
の
和尚
(
をしやう
)
まで
一所
(
いつしよ
)
に
成
(
な
)
つて、
今
(
いま
)
にも
兩親
(
りやうしん
)
をはじめとして、ドヤ/\
押寄
(
おしよ
)
せて
來
(
き
)
さうに
思
(
おも
)
はれ、さすがに
小助
(
こすけ
)
は
慌
(
あわたゞ
)
しく
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
今はハヤ
須臾
(
しゆゆ
)
の
間
(
ま
)
も忍び
難
(
がた
)
し、臆病者と笑はば笑へ、恥も外聞も
要
(
い
)
らばこそ、予は
慌
(
あわたゞ
)
しく書斎を出でて奥座敷の
方
(
かた
)
に
駈行
(
かけゆ
)
きぬ。
蓋
(
けだ
)
し松川の
臥戸
(
ふしど
)
に身を投じて、味方を得ばやと
欲
(
おも
)
ひしなり。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
今朝
一時
(
いつとき
)
に十一と、
慌
(
あわたゞ
)
しく起出でて鉢を
抱
(
いだ
)
けば
花菫
(
はなすみれ
)
野山に満ちたる
装
(
よそほひ
)
なり。
草あやめ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わたし
)
たちは
七丁目
(
なゝちやうめ
)
の
終點
(
しうてん
)
から
乘
(
の
)
つて
赤坂
(
あかさか
)
の
方
(
はう
)
へ
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た……あの
間
(
あひだ
)
の
電車
(
でんしや
)
は
然
(
さ
)
して
込合
(
こみあ
)
ふ
程
(
ほど
)
では
無
(
な
)
いのに、
空
(
そら
)
怪
(
あや
)
しく
雲脚
(
くもあし
)
が
低
(
ひく
)
く
下
(
さが
)
つて、
今
(
いま
)
にも
一降
(
ひとふり
)
來
(
き
)
さうだつたので、
人通
(
ひとどほ
)
りが
慌
(
あわたゞ
)
しく、
一町場
(
ひとちやうば
)
二町場
(
ふたちやうば
)
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
少年
(
せうねん
)
を
呼
(
よ
)
んだのは
豪
(
えら
)
いが、
些
(
ち
)
と
慌
(
あわたゞ
)
しさうな
言語
(
ものいひ
)
で
人参
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
思沈
(
おもひしづ
)
んだのが、
急
(
きふ
)
に
慌
(
あわたゞ
)
しげに
云
(
い
)
つて
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
慌
(
あわたゞ
)
しく
肩
(
かた
)
を
引
(
ひ
)
くと
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
民也
(
たみや
)
は
急
(
きふ
)
に
慌
(
あわたゞ
)
しく
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
慌
常用漢字
中学
部首:⼼
12画
“慌”を含む語句
恐慌
慌忙
大慌
大恐慌
匆慌
唯慌
愴慌
慌忙惑
慌惚
慌狼狽
慌立
慌者等奴
慌騒
慌騷