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墨染
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すみぞめ
ふりがな文庫
“
墨染
(
すみぞめ
)” の例文
墨染
(
すみぞめ
)
の衣を着た坊さんが、
網代笠
(
あじろがさ
)
を片手に杖ついて、富士に向って休息しているとすれば、問わずして富士見
西行
(
さいぎょう
)
なることを知る。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
時に後ろの方に當り
生者必滅
(
しやうじやひつめつ
)
會者定離
(
ゑしやじやうり
)
嗚呼
(
あゝ
)
皆是
前世
(
ぜんせ
)
の
因縁
(
いんえん
)
果報
(
くわはう
)
南無阿彌陀佛と唱ふる聲に安五郎は
振返
(
ふりかへ
)
り見れば
墨染
(
すみぞめ
)
の衣に
木綿
(
もめん
)
の
頭巾
(
づきん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
なんとなく里恋しく、魯智深は
墨染
(
すみぞめ
)
の衣に紺の
腰帯
(
ようたい
)
をむすび、
僧鞋
(
くつ
)
を新たにして、ぶらと
文殊院
(
もんじゅいん
)
から
麓道
(
ふもと
)
のほうへ降りていった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夕立雲
(
ゆふだちぐも
)
が
立籠
(
たちこ
)
めたのでもなさゝうで、
山嶽
(
さんがく
)
の
趣
(
おもむ
)
きは
墨染
(
すみぞめ
)
の
法衣
(
ころも
)
を
襲
(
かさ
)
ねて、
肩
(
かた
)
に
紫
(
むらさき
)
の
濃
(
こ
)
い
袈裟
(
けさ
)
した、
大聖僧
(
だいせいそう
)
の
態
(
たい
)
がないでもない。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
やがては
墨染
(
すみぞめ
)
にかへぬべき
袖
(
そで
)
の色、
発心
(
ほつしん
)
は腹からか、坊は親ゆづりの勉強ものあり、
性来
(
せいらい
)
をとなしきを友達いぶせく思ひて、さまざまの
悪戯
(
いたづら
)
をしかけ
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
そして、その
墨染
(
すみぞめ
)
の袖に沁みている
香
(
こう
)
の
匂
(
におい
)
に、遠い昔の
移
(
うつ
)
り
香
(
が
)
を再び想い起しながら、まるで甘えているように、母の
袂
(
たもと
)
で涙をあまたゝび押し
拭
(
ぬぐ
)
った。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
かれの片眼をつつんでいる
繃帯
(
ほうたい
)
などは、なんの眼障りにもならなかった。そのときの
墨染
(
すみぞめ
)
は今の幸四郎であった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
然し
墨染
(
すみぞめ
)
の夕に咲いて、
尼
(
あま
)
の様に冷たく澄んだ色の黄、
其
(
その
)
香
(
か
)
も幽に冷たくて、夏の夕にふさわしい。
花弁
(
はなびら
)
の一つずつほぐれてぱっと開く音も聴くに面白い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
丁度
墨染
(
すみぞめ
)
の麻の衣の禅匠が役者のような
緋
(
ひ
)
の衣の坊さんを
大喝
(
だいかつ
)
して三十棒を
啗
(
くら
)
わすようなものである。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
胸に燃ゆる情の
焔
(
ほのほ
)
は、他を燒かざれば其身を
焚
(
や
)
かん、まゝならぬ
戀路
(
こひぢ
)
に世を
喞
(
かこ
)
ちて、秋ならぬ風に散りゆく露の
命葉
(
いのちば
)
、或は
墨染
(
すみぞめ
)
の
衣
(
ころも
)
に
有漏
(
うろ
)
の身を
裹
(
つゝ
)
む、さては
淵川
(
ふちかは
)
に身を棄つる
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
妾
(
しょう
)
も
一旦
(
いったん
)
は悲痛の余り
墨染
(
すみぞめ
)
の
衣
(
ころも
)
をも着けんかと思いしかど、福田実家の冷酷なる、亡夫の存生中より、既にその意の得ざる処置多く、病中の費用を
調
(
ととの
)
うるを名として、
別家
(
べっけ
)
の際
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
根が
胆
(
きも
)
ッ玉の
太
(
ふて
)
え奴でげすから、追々その道の水に染まるにつれまして度胸がすわり、仲間うちでは相応に顔が売れてまいる、坂本の勘太てえば、あの
墨染
(
すみぞめ
)
勘太かと申すぐらいで。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
水鉄のおじさんはと見れば、
墨染
(
すみぞめ
)
の衣を着て
浅黄縮緬
(
あさぎちりめん
)
の
頭巾
(
ずきん
)
を
冠
(
かむ
)
り、片手に花桶片手に
念珠
(
ねんじゅ
)
、すっかり
苅萱道心
(
かるかやどうしん
)
になり澄ましていたが、私を見ると、「や、石童丸が来た、来た。」と云った。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
四十ばかりの
漢
(
をとこ
)
でした、
頭
(
あたま
)
には
浅黄
(
あさぎ
)
のヅキンをかぶり、
身
(
み
)
には
墨染
(
すみぞめ
)
のキモノをつけ、
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
もカウカケにつヽんでゐました、その
眼
(
め
)
は、
遠
(
とほ
)
い
国
(
くに
)
の
藍
(
あを
)
い
海
(
うみ
)
をおもはせるやうにかヾやいてゐました。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
我事
(
わがこと
)
すでに
了
(
おわ
)
れりとし主家の結末と共に
進退
(
しんたい
)
を決し、たとい身に
墨染
(
すみぞめ
)
の
衣
(
ころも
)
を
纒
(
まと
)
わざるも心は全く
浮世
(
うきよ
)
の
栄辱
(
えいじょく
)
を
外
(
ほか
)
にして
片山里
(
かたやまざと
)
に
引籠
(
ひきこも
)
り静に
余生
(
よせい
)
を送るの
決断
(
けつだん
)
に出でたらば、世間においても真実
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
「色の
褪
(
さ
)
めた
墨染
(
すみぞめ
)
の木綿を来て居る人間は土手に一人しか居ない筈だ」
銭形平次捕物控:174 髷切り
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それは、二十年の春を、つい此の間迎えたばかりの呉子さんが、早や
墨染
(
すみぞめ
)
の未亡人という形式に
葬
(
ほうむ
)
られて、来る日来る夜を、
寂滅
(
じゃくめつ
)
と
長恨
(
ちょうこん
)
とに、止め度もない
泪
(
なみだ
)
を
絞
(
しぼ
)
らねばならなかったことだった。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
男のことであるから割合に若々しく、
墨染
(
すみぞめ
)
の
法衣
(
ころも
)
に
金襴
(
きんらん
)
の
袈裟
(
けさ
)
を掛け、外陣の講座の上に顕はれたところは、
佐久小県辺
(
さくちひさがたあたり
)
に多い世間的な僧侶に比べると、
遙
(
はる
)
かに高尚な宗教生活を送つて来た人らしい。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「そうしてあなたの
墨染
(
すみぞめ
)
でね」
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
肩に赤十字ある
墨染
(
すみぞめ
)
の小羊よ
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
やがては
墨染
(
すみぞめ
)
にかへぬべき
袖
(
そで
)
の
色
(
いろ
)
、
發心
(
はつしん
)
は
腹
(
はら
)
からか、
坊
(
ぼう
)
は
親
(
おや
)
ゆづりの
勉強
(
べんきよう
)
ものあり、
性來
(
せいらい
)
をとなしきを
友達
(
ともだち
)
いぶせく
思
(
おも
)
ひて、さま/″\の
惡戯
(
いたづら
)
をしかけ
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と云って、
墨染
(
すみぞめ
)
の袖を、ゆったりと合わせた。——さて聞けば、堂裏のそのくずれ塀の穴から、前日、穂坂が、くらがり坂を抜けたのを見たのだという。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「お世話になりました。お情けで子たちもこのように、元気づいて参りました。
墨染
(
すみぞめ
)
と尋ねて行けば、これから訪う家も、何とか知れましょう。……お暇を」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
菊五郎の
墨染
(
すみぞめ
)
、染五郎の宗貞で、この
浄瑠璃
(
じょうるり
)
一幕が素晴らしい人気を呼んだのであるが、団十郎の関兵衛に対して菊之助の小町は殆んど
遜色
(
そんしょく
)
のない出来であるというので
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
晩桜
(
おそざくら
)
と云っても、
普賢
(
ふげん
)
の
豊麗
(
ほうれい
)
でなく、
墨染
(
すみぞめ
)
欝金
(
うこん
)
の奇を
衒
(
てら
)
うでもなく、
若々
(
わかわか
)
しく
清々
(
すがすが
)
しい美しい
一重
(
ひとえ
)
の桜である。次郎さんの
魂
(
たましい
)
が花に咲いたら、取りも直さず此花が其れなのであろう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「色の
褪
(
さ
)
めた
墨染
(
すみぞめ
)
の木綿を着て居る人間は土手に一人しか居ない筈だ」
銭形平次捕物控:174 髷切り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
打越
(
うちこえ
)
て柴屋寺へと
急
(
いそぎ
)
ける(柴屋寺と言は柴屋宗長が
庵室
(
あんしつ
)
にして今
猶
(
なほ
)
在
(
あり
)
と)既に其夜も
子刻
(
こゝのつ
)
の
拍子木
(
ひやうしぎ
)
諸倶
(
もろとも
)
家々の
軒行燈
(
のきあんどん
)
も早引て
廓
(
くるわ
)
の中も
寂寞
(
ひつそり
)
と
往來
(
ゆきゝ
)
の人も
稀
(
まれ
)
なれば
時刻
(
じこく
)
も丁度
吉野屋
(
よしのや
)
の
裏口
(
うらぐち
)
脱
(
ぬけ
)
て
傾城
(
けいせい
)
白妙名に
裏表
(
うらうへ
)
の
墨染
(
すみぞめ
)
の衣を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
肩に赤十字ある
墨染
(
すみぞめ
)
の小羊よ
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
尤
(
もっと
)
も、
御堂
(
みどう
)
のうしろから、左右の
廻廊
(
かいろう
)
へ、山の幕を
引廻
(
ひきまわ
)
して、
雑木
(
ぞうき
)
の枝も
墨染
(
すみぞめ
)
に、
其処
(
そこ
)
とも
分
(
わ
)
かず
松風
(
まつかぜ
)
の声。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
有髪
(
うはつ
)
のころは、京鎌倉にも少ない美人と、人のよう申せしを、
幼心
(
おさなごころ
)
にも覚えておる。
墨染
(
すみぞめ
)
すがたは、その麗人をどう変えたやら、見るも一興か。ま、通してみい」
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三十年二月興行の「
関
(
せき
)
の
扉
(
と
)
」のごとき、染五郎の宗貞は最も若輩なるが故にやや見劣りがしたが、団十郎の黒主、菊五郎の
墨染
(
すみぞめ
)
——それらを単に
巧
(
うま
)
かったとか面白かったとか言っても
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
墨染
(
すみぞめ
)
の
麻
(
あさ
)
の
法衣
(
ころも
)
の
破
(
や
)
れ/\な
形
(
なり
)
で、
鬱金
(
うこん
)
も
最
(
も
)
う
鼠
(
ねずみ
)
に
汚
(
よご
)
れた布に——すぐ、分つたが、——
三味線
(
しゃみせん
)
を一
挺
(
ちょう
)
、
盲目
(
めくら
)
の
琵琶背負
(
びわじょい
)
に
背負
(
しょ
)
つて居る、
漂泊
(
さすら
)
ふ
門附
(
かどづけ
)
の
類
(
たぐい
)
であらう。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「おや、女郎衆の頭数が一人足らないじゃないか。いないのは一体誰だえ。——
几帳
(
きちょう
)
さんか、
墨染
(
すみぞめ
)
さんか。ああそこに、二人ともいるね。おかしいねえ、誰だろう?」
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
笹
(
ささ
)
の才蔵はうしろへ身をはね、白い
槍
(
やり
)
の
穂先
(
ほさき
)
が
墨染
(
すみぞめ
)
の
袖
(
そで
)
をぬって、慈音のきき手をくるわせた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いかな日にも、はあ、真夏の炎天にも、この森で一度雨の降らぬ事はねえのでの。」清水の
雫
(
しずく
)
かつ迫り、
藍縞
(
あいじま
)
の
袷
(
あわせ
)
の
袖
(
そで
)
も、森林の陰に
墨染
(
すみぞめ
)
して、
襟
(
えり
)
はおのずから寒かった。
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
墨染
(
すみぞめ
)
の伯父さまでございましたか。わたくしはまた、六波羅の手先か、この辺の野武士でも来て、やにわに和子さまを
奪
(
と
)
り上げたかと、気も
萎
(
な
)
えてしもうたのでございました」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卓子台
(
ちゃぶだい
)
の上は冬の花野で、
欄間越
(
らんまごし
)
の小春日も、
朗
(
ほがら
)
かに青く明るい。——客僧の
墨染
(
すみぞめ
)
よ。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今では、
墨染
(
すみぞめ
)
の里に、かなりな家構えして、何不自由なく伯母も暮していると聞いていたので、頭殿からうけたご恩に対しても——と、ただ一つの身の寄る辺と頼って来たのであった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
向うを、
墨染
(
すみぞめ
)
で一人
行
(
ゆ
)
く
若僧
(
にゃくそう
)
の姿が、
寂
(
さび
)
しく、しかも何となく
貴
(
とうと
)
く、正に、まさしく
彼処
(
かしこ
)
におわする……天女の
御前
(
おんまえ
)
へ、われらを導く、つつましく、謙譲なる、一個のお取次のように見えた。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
墨染
(
すみぞめ
)
の
法衣
(
ころも
)
を
刎
(
は
)
ねて、
諸肌
(
もろはだ
)
ぬげば、ぱッと酒気に
紅
(
くれない
)
を染めた智深が七尺のりゅうりゅうたる筋肉の背には、
渭水
(
いすい
)
の
刺青師
(
ほりものし
)
が百日かけて彫ったという百花鳥のいれずみが、春らんまんを
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と出家は
法衣
(
ころも
)
でずいと立って、
廂
(
ひさし
)
から指を出して、
御堂
(
みどう
)
の山を左の
方
(
かた
)
へぐいと指した。立ち方の
唐突
(
だしぬけ
)
なのと、急なのと、
目前
(
めさき
)
を
塞
(
ふさ
)
いだ
墨染
(
すみぞめ
)
に、
一天
(
いってん
)
する
墨
(
すみ
)
を流すかと、
袖
(
そで
)
は障子を包んだのである。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
架
(
か
)
の裏に、色の青白い、
痩
(
や
)
せた
墨染
(
すみぞめ
)
の若い出家が一人いたのである。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“墨染”の解説
墨染(すみぞめ)は、京都市伏見区の地名。
(出典:Wikipedia)
墨
常用漢字
中学
部首:⼟
14画
染
常用漢字
小6
部首:⽊
9画
“墨染”で始まる語句
墨染桜
墨染櫻