)” の例文
そして午前の二時か三時、遲くも四時には起き上つて書齋に坐る。そのために其處には小さな爐が切つてあり、毎晩火がけてある。
たべものの木 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
いちどわがへ戻ってくわを持ち出し、夜もすがら裏藪うらやぶのあたりを歩いていたが、やがて、西久保の山へ上って、その金をけていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝けた佐倉炭さくらずみは白くなって、薩摩五徳さつまごとくけた鉄瓶てつびんがほとんどめている。炭取はからだ。手をたたいたがちょっと台所まできこえない。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三人は、木炭のけられた火鉢ひばちをはさんで、菓子をつまんだ。こういうことは、ボーイ長は、いまだかつて経験しなかったことだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
それよりさき立派な、黄手きでの鞍馬石をもらつてゐるのだが、それは、グツとけこんで、中庭の玄關にでもまはさうとある。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
新吉は黒い指頭ゆびさきに、臭い莨をつまんで、真鍮しんちゅう煙管きせるに詰めて、炭の粉をけた鉄瓶てつびんの下で火をけると、思案深い目容めつきをして、濃い煙をいていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
前にとこを取り、桐の胴丸がたの火鉢へ切炭きりずみけ、其の上に利休形の鉄瓶がかゝって、チン/\と湯がたぎって居りまする。
姉様はこの中にれられたな、と思いながら、姉さん、姉さん、とつちに口をつけて呼んでみても返事がないから、はッと思って、泣伏して、耳をこう。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其亡き骸は、大和の国を守らせよ、と言う御諚ごじょうで、此山の上、河内から来る当麻路の脇におけになりました。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
少し隔たつた處に極く小さい十字架が立つてゐて、前に鉢植のヂェラニウムが鉢ごとけられてゐる。
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
火鉢の灰かきならし炭火体よくけ、芋籠より小巾こぎれとり出し、銀ほど光れる長五徳を磨きおとしを拭き銅壺の蓋まで奇麗にして、さて南部霰地なんぶあられの大鉄瓶を正然ちやんとかけし後
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
はいって見ると、そこは湯殿のようにゆかたたきにした部屋だった。その部屋のまん中には、つぼけたような穴が三つあって、そのまた穴の上には、水道栓が蛇口じゃぐちを三つ揃えていた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
吉田寅次郎がお処刑しおきになって、首が上ったろう、そうしてお前たちと、あそこの角んところへ胴中どうなかけたろう、そうすると、お前、その翌日だったか、もう長州ざむれえがやって来て
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしてそれを苺の木の根元にけた。見つかることは決してあるまい。私はその苺の木の実を毎日食うのだ。実際、人はその手段さえ解ったら、存分に生活を享楽することが出来るだろう。
狂人日記 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
奧方おくがた火鉢ひばち引寄ひきよせて、のありやとこゝろみるに、よひ小間使こまづかひがまいらせたる、櫻炭さくらなかばはひりて、よくもおこさでけつるはくろきまゝにてえしもあり、烟管きせる取上とりあげて一二ふく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
家は三ほどの小ぢんまりした建てかたで、男手ひとつだというのに、さっぱりと掃除もゆきとどき、長火鉢に茶だんす——その長火鉢には、ちゃんと火がけてあり、鉄瓶てつびんも炭をたせば
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
さうなれば僕も山のいも二三日にさんにちけていて竹葉ちくえう神田川かんだがは却売おろしうりをする。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
火鉢には桜炭さくらずみかつて、小さな鉄瓶てつびんからは湯気を吐いて居る。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「あれうそだっただよ、ツルあ何もけやせんだっただ」
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「三枚一ヶ所にけてある筈はない。向うを搜せ」
そして大蔵と約束したとおり、えんじゅの木の下にけてある鉄砲を持ちだして、秀忠将軍を一発のもとに撃つ日を待っているにちがいない。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お茶の運び工合から蒲団の直しよう、煙草盆の火のけ方、取次ぎのしかた、光沢拭巾つやぶきんのかけ方などを、少しシャがれたような声で舌速したばやに言って聴かせた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
池上の堤で命召されたあのお方のむくろを、罪人にもがりするは、災の元と、天若日子あめわかひこの昔語りに任せて、其まま此処におはこびなされて、おけになったのが、此塚よ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
かたわらの茶棚の上へ、出来て来たのを仰向あおむいてのせた、立膝で、煙草盆たばこぼんを引寄せると、引立ひったてるように鉄瓶をおろして、ちょいと触ってみて、けてあった火を一挟み。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
清「詰らねえ事を云ってるな、少し頼みがあるが、襤褸ぼろ蒲団ふとんと小さな火鉢ひばち炭団たどんけて貸してくれねえか、それを人に知れねえ様に彼処あすこ明店あきだなへ入れて置いてくれ」
仕切りの唐紙からかみめてくれたり、さあ御手をお出しなさいと云って、佐倉さくらけた火鉢ひばちを勧めてくれたりするうちに、一時昂奮こうふんした彼の気分はしだいに落ちついて来た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
火鉢の灰かきならし炭火ていよくけ、芋籠いもかごより小巾こぎれとりいだし、銀ほど光れる長五徳ながごとくみがきおとしを銅壺どうこふたまで奇麗にして、さて南部霰地なんぶあられ大鉄瓶おおてつびんをちゃんとかけし後
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そんな——炭火のけられた、茶の道具の並んだ盆や、名前も知らない非常にうまい菓子を食べ、お茶を飲み、ゆっとりとした、——気分を味わうことができたのであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
前には桐の火鉢を置いて、それには炭火がよくけてあります。そこへ坐って憮然ぶぜんとしていた能登守のかおには、なんとなく屈托の色が見えます。なんとなく心の底に心配が残っているもののようです。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いくら無住同様な寺にせよ、らんや建具は手当り次第、まきにしているし、大小便をしたあなに土さえけて行こうとした様子もない。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笹村が前の家から持って来たはぎの根などを土にけていると、お銀は外へ長火鉢などを見に出て行った。古い方は引っ越すとき屑屋くずやの手に渡ってしまった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
大「左様かすぐに茶の良いのを入れて莨盆たばこぼん、に火をけて、いか己が出迎うから……いや是は/\どうか見苦しい処へ何とも恐入りました、どうか直にお通りを……」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「御寒うございましょう」と云って、囲炉裏の中に深くけてあった炭を灰の下から掘り出した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さむいので、すみをどつさりおまをしあげたものですから、先生樣せんせいさまはおかへりがけに、もう一度いちどよくけなよ、とたしか御注意ごちういあそばしたのでございますものを、ついわたくし疎雜ぞんざいで。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そういうたぐいの風説は、いわゆる埋言まいげんの計と申して、他国から敵対国へ来ている者が、そっと火だねをけて行った場合が相応に多いもの。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
是から衣服きものを着替えて座蒲団の上に坐ると、お烟草盆に火をけて出る、茶台に載せてお茶が出る。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
窓の外に大きなかめけてある。我々の汗やあかが例の酸っぱい水といっしょになって、朝に晩に流れ込んでいるのだから、時々み出さなければあふれるほど溜ってしまう。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
首垂うなだれたり、溜息ためいきをしたり、しわぶいたり、堅炭かたずみけた大火鉢に崩折くずおれてもたれたり、そうかと思うと欠伸あくびをする、老若の患者、薬取がひしと詰懸けている玄関を、へい、御免ねえ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのまんじゅうの上にのせてある一ツの石こそ、前の年、この禅定寺峠で、犠牲的な死をとげた唐草銀五郎の空骸むくろけた跡の目じるし。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と是から枕元へ下女が煙草盆へ切炭をけて持って来ますと、腹這はらんばいになって長い烟管きせるで煙草をむこと/\おおよそ十五六服喫まんければ眼が判然はっきり覚めないと見えます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御寒おさむ御座ございませう」とつて、圍爐裏ゐろりなかふかけてあつたすみはひしたからした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
えんじゅの木の下にけてあるという鉄砲を掘り出して、将軍を狙撃するなどという大それたことは、彼には出来なかったのである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何処どこへ隠したか、何処へ置いて来たか、穴でも掘ってけてあるのではないか、床下ゆかしたにでも有りはしないか、何しろ彼奴あいつの手に証書を持たして置いては、千円ってもたもつ金ではない
まないた引摺ひきずっていては一足ひとあしごとにあとしざるようで歯痒はがゆくなる。それを一町ほど行って板囲いたがこいの小屋の中をのぞき込むと、温泉があった。大きい四角なおけふちまで地の中にんだと同じようなふねである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今、お芳の立っているうしろの墓地には、まだ雪が深かった正月ごろ、村のお千代後家がけられた生新しい記憶がある。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それよりは、おやかた様、おととし、お坊さんをたくさん呼んで御供養なすった戦死者塚が途中方々にあったでしょ。そこへけてやればよい」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠いむかし——武神ぶしん日本武尊やまとたけるのみこと東征とうせいのお帰りに、地鎮じちんとして鉄甲てっこうけておかれたというその神地しんちは、いま、えんばかりな紅葉もみじのまッさかりだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、伊織は拒んで、折角八分ぐらいまで掘り下げた穴へ、まわりの土を足で寄せ落し、元のようにけてしまった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おい猿。これから毎朝、おれたちがお厩の馬を、草を喰わせに曳き出したら、その後、すぐ厩を掃除して、馬糞を向うの竹やぶのあなけるのだぞ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ことしの冬は、ひどくお寒いではないか。このように火をけこんでおいては、手先ばかりで、体がぬくもらぬ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)