たすか)” の例文
わたし見たやうな、どうでもいゝものがやけど一ツしないでたすかつて、ねえ、お前さん、何一ツ不自由のない旦那方があの始末だからね。
買出し (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
山の手はたすかったことが判ったが、とにかく惨澹さんたんたる東京の被害実状が次々に報ぜられた。復一は一応東京へ帰ろうかと問い合せた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
所がその家に所謂いわゆる浮浪の徒が暴込あばれこんで、東条は裏口から逃出してやったすかったと云うようなけで、いよ/\洋学者の身がはなはあやうくなって来て油断がならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「が、しかし、水に溺れましたか、あるいは身投の婦人が苦しさのあまり、たすかりたさにとも申すような……」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雪中をする人陰嚢いんのう綿わたにてつゝむ事をす、しかせざれば陰嚢いんのうまづこほり精気せいきつくる也。又凍死こゞえしゝたるを湯火たうくわをもつてあたゝむればたすかる事あれども武火つよきひ熱湯あつきゆもちふべからず。
たすかり給ひしとはなしければ隱居は今迄面白く聞居きゝゐたりしが彦兵衞がはなしを耳にもいれず勝手へたつて何やらん外の用事をして居るゆゑ彦兵衞もほんやめ煙草たばこのんで色々咄を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……父がごれんみんをもって命をたすかり、降参人こうさんにんとなっておん旗本に加わったのは、おのれの命ひとつが惜しかったからではない、このきみこそ天下の仕置たるべき人
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「とてもあの娘は吾儕われわれの力には及びませんでしたッて。医者がもう見放してしまった病人ですぜ。それが貴方、家族の人達の非常な熱心な祈祷きとうの力でたすかったんですからね」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夫人おくさん其樣そん事處ことどころでありません、貴女あなた少年せうねんとは如何どうしてもたすからねばなりません、わたくしまない/\。』とさけんで見渡みわたすと此時このとき第二だいに端艇たんていりた、第三だいさん端艇たんていりた
「わしもはあ、そんならなんぼたすかるかもれあんせんが、お内儀かみさんとこささうつてわけにもがねえで」と勘次かんじみだれた頭髮かみてゝびるやうな容子ようすをしていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何人もこの恵みを受けずして、一つだに美しき作を産むことは出来ぬ。ある僧がいいしように、たすかる者一人だになく、助けられる者のみがあるのである。工藝の美は恩寵の美である。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
わたくし共はもとより命の無いところを、貴方のお蔭ばかりでたすかつてを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
投げたりしてみんなたすかったんだからね
僕らはたすかる?
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたし見たような、どうでもいいものが、やけど一ツしないでたすかって、ねえ、お前さん、何一ツ不自由のない旦那方があの始末だからね。
買出し (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それからもしのお雑巾ざうきん次手ついでにづツぷりおしぼんなすつてくださるとたすかります、途中とちう大変たいへんひましたのでからだ打棄うつちやりたいほど気味きみわるうございますので
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かけなば兄弟のいのちたすかる共嘉川の家は滅亡めつばうならんにより此上は最早是非もなし心にそまぬ事なれ共すけ十郎郷右衞門ら兩人をつみおと主家しゆかの滅亡をすくはんとよんどころなく愚案ぐあん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてある日用ありて二里ばかりの所へゆきたる留守るす隣家りんかの者あやまちて火をいだしたちまちのきにうつりければ、弥左ヱ門がつま二人ふたり小児こどもをつれて逃去にげさり、いのち一ツをたすかりたるのみ
其事そのこと、おまへはゝとは、これ永遠えいゑんわかれとなるかもれませんが、さひはひにおまへ生命いのちたすかつたなら、これからときに、始終しじうその言葉ことばわすれず、誠實まことひととならねばなりませんよ。
真個ほんとうにそうなりましたら、どうしましょう。お庇様かげさまたすかりましてございますよ。ありがとう存じます。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてある日用ありて二里ばかりの所へゆきたる留守るす隣家りんかの者あやまちて火をいだしたちまちのきにうつりければ、弥左ヱ門がつま二人ふたり小児こどもをつれて逃去にげさり、いのち一ツをたすかりたるのみ
のが漸々やう/\我家へ歸りてむね撫下なでおろし誠に神佛の御蔭おかげにてたすかりたりと心の内に伏拜ふしをがみ吉之助には火事にて驚きたりといつはり彼の八十兩の金は戸棚とだなすみに重箱有りける故其中へいれおきすでやすまんとする時表の戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
圍者かこひもの相談さうだんとおぼしけれど、りて詮議せんぎおよばず。まだ此方こつちたすかりさうだと一笑いつせうしつゝ歸途きとく。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いのちたすかりたるのち春暖しゆんだんにいたればはれやまひとなり良医りやういしがたし。凍死こゞえしゝたるはまづしほいりぬのつゝみしば/\へそをあたゝめ稿火わらびよわきをもつて次第しだいあたゝむべし、たすかりたるのちやまひはつせず。
……この両方ふたかただって、おなじく手拭浴衣一枚で、生命をたすかって、この蚊帳を板にした同然な、節穴と隙間だらけのバラックに住んでいるのに、それでさえそう言った。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「この足手纏あしてまといさえございませねば、貴方お一方はおたすかり遊ばすのに訳はないのでございます。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こころみ手水鉢ちょうずばちの水を柄杓ひしゃくで切ってしずくにして、露にして、目白鳥のくちばしを開けて含まして、えりをあけて、はだにつけて暖めて、しばらくすると、ひくひくと動き出した。ああたすかりました。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひゞきで、いまところへ、熱湯ねつたう湧出わきだいた。ぢやがさ、天道てんだうひところさずかい。生命いのちだけはたすかつても、はうまうの分別ふんべつなんだところ温泉をんせんさかつてたで、うやら娑婆しやばかたちつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
田舎寺のお小僧さんで、やっぱり朝稽古に通う、おなじ年頃の仲よしの友だちが来かかって、抱起したのでたすかって、胸を痛めもしませんだが、もう一息で、ねむりながら川へ流れます処。
まけ家中うちぢう無事ぶじなものは一人ひとりかつた。が不思議ふしぎわしだけがたすかりました。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからもしそのお雑巾次手ついでにずッぷりおしぼんなすって下さるとたすかります、途中とちゅうで大変な目にいましたので体を打棄うっちゃりりたいほど気味が悪うございますので、一ツ背中をこうと存じますが
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これでおたすかんなすればよし、さもないと僕が手伝をして殺したも同然だ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)