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児
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こ
ふりがな文庫
“
児
(
こ
)” の例文
旧字:
兒
十歳を越えて
猶
(
なお
)
、
夜中
(
やちゅう
)
一人で、
厠
(
かわや
)
に行く事の出来なかったのは、その時代に育てられた人の
児
(
こ
)
の、敢て私ばかりと云うではあるまい。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
掛茶屋、船頭などに聞くと、「あの
児
(
こ
)
なら、今しがた立派な様子をした西洋人に
伴
(
つ
)
れられて、橋を渡って江の島の方へ行きましたよ」
呪の金剛石
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし一歩
門外
(
もんそと
)
へ出れば、最う浮世の荒い風が吹く。子供の時分の其は、何処にも有る
苛
(
いじ
)
めッ
児
(
こ
)
という奴だ。私の近処にも其が居た。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
これは
正
(
まさ
)
しく男の
児
(
こ
)
なりき。同じ村山口なる佐々木氏にては、母人ひとり
縫物
(
ぬいもの
)
しておりしに、次の間にて紙のがさがさという音あり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
父は
児
(
こ
)
の手の化ものを見ると青くなって震えた。小遣銭をなまで持たせないその児の、
盗心
(
ぬすみごころ
)
を疑って、怒ったよりは恐れたのである。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
それこそ本当の
児
(
こ
)
獅子が
牝
(
め
)
獅子の乳へでも狂い寄るように、お綱の
袂
(
たもと
)
がほころびるほど、両方から、むしゃぶりついてきたのである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
父親
(
ちちおや
)
は
相当
(
そうとう
)
高
(
たか
)
い
地位
(
ちい
)
の
大宮人
(
おおみやびと
)
で、
名
(
な
)
は
狭間信之
(
はざまのぶゆき
)
、
母親
(
ははおや
)
の
名
(
な
)
はたしか
光代
(
みつよ
)
、そして
雛子
(
ひなこ
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
の
仲
(
なか
)
の
一粒種
(
ひとつぶだね
)
のいとし
児
(
こ
)
だったのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
数
(
かぞ
)
え
歳
(
どし
)
の二つにしかならない
男
(
おとこ
)
の
児
(
こ
)
であるが、あのきかない
気
(
き
)
の
光子
(
みつこ
)
さんに
比
(
くら
)
べたら、これはまた
何
(
なん
)
というおとなしいものだろう。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
芸妓屋
(
おきや
)
と親元は泣きの涙で怨んでいるが、泣く
児
(
こ
)
と
地頭
(
じとう
)
に勝たれない。ソレッキリの千秋楽になっている……ソイツも正にその通りだ。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一分間ののち、一人の婦人が小さな女の
児
(
こ
)
を連れて客間にはいって来た。これがアリョーシャの母親のオリガ・イワーノヴナであった。
小波瀾
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
せめてはその
児
(
こ
)
のなつかしい追憶のために、その子の声に生きうつしのロオラに逢いたいと思いはしないだろうかということです。
オカアサン
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
あの
児
(
こ
)
が居ないとこんなにもつまらないものか知らん、これが恋愛の初まりなのではないか知らん、と、その時始めて考えました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
極端なことには五十に近い鄒七嫂まで人のあとに
跟
(
つ
)
いて潜り込み、その上十一になる女の
児
(
こ
)
を喚び入れた。阿Qは不思議でたまらない。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
児
(
こ
)
は母の
懐
(
ふところ
)
にあり、母の袖
児
(
こ
)
の
頭
(
かしら
)
を
覆
(
おほ
)
ひたれば
児
(
こ
)
は
身
(
み
)
に雪をば
触
(
ふれ
)
ざるゆゑにや
凍死
(
こゞえしな
)
ず、
両親
(
ふたおや
)
の
死骸
(
しがい
)
の中にて又
声
(
こゑ
)
をあげてなきけり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
東京の
悪戯
(
いたづら
)
つ
児
(
こ
)
斎藤
緑雨
(
りよくう
)
は右に森先生の西洋の学を借り、左に幸田先生の和漢の学を借りたものの、
畢
(
つひ
)
に批評家の域にはいつてゐない。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
家は
大越在
(
おおごえざい
)
で、十五歳になる娘と九歳になる男の
児
(
こ
)
がある。初めて会った時と打ち解けて話し合った時と感じはまるで違っていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
いえ
私
(
わし
)
は無理に金を
貰
(
もれ
)
えに来た訳じゃねえから金はいらねえが、
他
(
ほか
)
のお客には出ねえ若草だから、伊之助さんがの
児
(
こ
)
と
定
(
きま
)
ってるが
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
むかし小野
浅之丞
(
あさのじよう
)
といふ少年があつた。
隣家
(
となり
)
の猫が
度々
(
たび/\
)
大事な
雛
(
ひな
)
つ
児
(
こ
)
を盗むので、ある日
築山
(
つきやま
)
のかげで、吹矢で猫を
狙
(
ねら
)
ひ
討
(
うち
)
にした。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
支那
(
しな
)
帝使を
西班牙
(
スペイン
)
帝使の
下
(
しも
)
に座せしめ、
吾
(
わが
)
児
(
こ
)
たり友たる
西帝
(
せいてい
)
の使を、賊たり無頼の徒たる支那帝の
使
(
し
)
の下に
坐
(
ざ
)
せしむる
勿
(
なか
)
れと
云
(
い
)
いしと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「あの玉ちゃんという
児
(
こ
)
は七つになりますかえ。わたしも店の前に遊んでいるのを見たことがある。色白の綺麗な坊やでしたね」
半七捕物帳:56 河豚太鼓
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
相手が
互
(
たがひ
)
に
巴里
(
パリイ
)
ツ子同士、
流行
(
はやり
)
ツ
児
(
こ
)
同士であり、其れが
右様
(
みぎやう
)
の事情の
下
(
もと
)
に行ふ決闘であり、
其
(
その
)
上当日の決闘
振
(
ぶり
)
が非常に壮烈であつたので
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
ケリッヒ家の庭をめぐらしてる壁に沿って行くと、
悪戯
(
いたずら
)
っ
児
(
こ
)
の時分にその広庭をのぞき込むためよじ登った、見覚えのある標石があった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
患者は五歳になる男の
児
(
こ
)
であった。彼が先方の家へついたときは、その児は
痙攣
(
けいれん
)
を起して意識を失い、その唇も青ざめて居た。
初往診
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
学校に入り歌俳句も作り候を許され候わが弟は、あのやうにしげ/\妻のこと母のこと身ごもり候
児
(
こ
)
のこと、君と私との事ども案じこし候。
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
越して行く先から先の近所の人達も当然それを怪しみもせず、おとうさんを女の
児
(
こ
)
扱ひにし、おかあさんを男の児と
見做
(
みな
)
して仕舞ひました。
秋の夜がたり
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
蝉取竿
(
せみとりざお
)
を持った子供があちこちする。虫籠を持たされた
児
(
こ
)
は、時どき立ち留まっては籠の中を見、また竿の方を見ては小走りに
随
(
つ
)
いてゆく。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
彼は、女房の手を離れて、
這
(
は
)
い出して来た五人目の女の
児
(
こ
)
を、片手であやしながら、窓障子の
隙
(
すき
)
から見える黒い塀を見ていた。
眼
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
おあいは、路傍の、石の上に腰をかけて、背から、乳飲児を
下
(
おろ
)
して乳を含めた。
児
(
こ
)
は、乳房にしがみついて乳を吸いはじめた。
凍える女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
万作は「のう
媼
(
ばば
)
。お光ちょうは変な
児
(
こ
)
だのう、久しゅう歌わねえからどうしたんべいと思ったら、ひょっくら歌い出したのう」
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「
憎
(
にく
)
まれ
児
(
こ
)
世にはびこる」という
諺
(
ことわざ
)
があるが、わが輩はこれを
顛倒
(
てんとう
)
して、世にはびこる者は
憎
(
にく
)
まれるということも、また
真実
(
まこと
)
であると思う。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
お前達はほんとにおもしろい
児
(
こ
)
だ。明日からまたきのこをたくさんはやしてあげよう。だがわしはもう決して出て来ないよ。
お山の爺さん
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
さてはわが
身
(
み
)
を
恐
(
こは
)
がらないのか、ちつとも
恐
(
こは
)
いと
思
(
おも
)
つてゐない。この
児
(
こ
)
の
眼
(
め
)
には、あたしの
恐
(
おそ
)
ろしい
白栲
(
しろたへ
)
が、
御主
(
おんあるじ
)
のそれと
同
(
おな
)
じに
見
(
み
)
えるのだ。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
あなたのようなちゃきちゃきのパリっ
児
(
こ
)
で自由主義の紳士が、どうしてそんなに坊主どもの思わくを気になさるんでしょう。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
もとより一
腹
(
ぷく
)
一
対
(
つゐ
)
の中に育ちて他人交ぜずの穏かなる家の内なれば、さしてこの
児
(
こ
)
を陰気ものに仕立あげる種は無けれども
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「今入れているじゃありませんか、
性急
(
せわし
)
ない
児
(
こ
)
だ」と母は
湯呑
(
ゆのみ
)
に
充満
(
いっぱい
)
注
(
つ
)
いでやって自分の居ることは、
最早
(
もう
)
忘れたかのよう。二階から大声で
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
おもに近所の子供らで、武士の子も、町人の子も、職人の
児
(
こ
)
もあった。一空さまにとって、そういう区別はないのであった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
産れた女の
児
(
こ
)
が、少しずつ皮膚の色が
剥
(
は
)
げて白くなって来るまでには大分間があった。くしゃくしゃした目鼻立ちも容易に
調
(
ととの
)
って来なかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この歌の結句は、「
崩岸辺
(
あずへ
)
から駒の
行
(
ゆ
)
こ
如
(
の
)
す
危
(
あや
)
はども
人妻
(
ひとづま
)
児
(
こ
)
ろをまゆかせらふも」(巻十四・三五四一)(目ゆかせざらむや)のに似ている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
物置の前では十五になる
梅子
(
うめこ
)
が、今
鶏箱
(
とりばこ
)
から
雛
(
ひな
)
を出して追い込みに入れている。
雪子
(
ゆきこ
)
もお
児
(
こ
)
もいかにもおもしろそうに笑いながら雛を見ている。
奈々子
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
始終子供に
斗
(
ばか
)
り
掛
(
かか
)
っていれば生活が出来ないから、
拠無
(
よんどころな
)
くこの
児
(
こ
)
を
寐
(
ね
)
かしつけ、
泣
(
ない
)
たらこれを与えてくれと、おもゆを
拵
(
こしら
)
えて隣家の女房に頼み
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
清元
(
きよもと
)
倉太夫の子だというがそれは
貰
(
もら
)
いっ
児
(
こ
)
で、浜町花屋敷の
弥生
(
やよい
)
の女中をしていた女が、
藁
(
わら
)
の上から貰った子を連れて嫁入ったのだとも言った。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
あの
児
(
こ
)
の一生にどの位利益があつたか知れませんよ、さうして其立派な善行を行ふ機会を何ととりかへたかといへば………
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
それが、
唖
(
おし
)
の変形児
稚市
(
ちごいち
)
だったのである。が、それを見ると、滝人は吾が
児
(
こ
)
までも使い、夫の死に何かの役目を勤めさせようとするのであろう。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
泉鏡花氏の書いたものによると、「正月はどうこまで、からから山の
下
(
しいた
)
まで……」という童謡を「故郷の
児
(
こ
)
らは皆
師走
(
しわす
)
に入って、
半
(
なかば
)
頃から
吟
(
ぎん
)
ずる」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
……来栖勘兵衛、有賀又兵衛といやア、泣く
児
(
こ
)
も黙る浪人組の頭、あっしゃア、そのお頭の配下だったんですからねえ。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
レムは、年齢のわりに
身体
(
からだ
)
の小さな、非常に病身な
児
(
こ
)
で、そのせいかまだ学校へも行かずに、うちにぶらぶらしていた。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
一人の小さな男の
児
(
こ
)
は、ペガッサスの飛んでいるところだといって、思い切り変てこな恰好をして跳ね廻り、そのあとを、彼の学校友達の一人が
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
お月様は、幹子の
眼
(
め
)
のうちに輝いた。それは
恰度
(
ちょうど
)
、「
好
(
よ
)
い
児
(
こ
)
のみっちゃんおやすみ」と言っているように見えました。
夜
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
父親と母親とは、両方から与一の顔をみつめながら、熱心に我が
児
(
こ
)
の口から出る驚くべき物語にきき入っていました。
少年探偵呉田博士と与一
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
ことに
四六
佳婿
(
むこがね
)
の
麗
(
あて
)
なるをほの聞きて、我が
児
(
こ
)
も日をかぞへて待ちわぶる物を、今のよからぬ
言
(
こと
)
を聞くものならば、
四七
不慮
(
すずろ
)
なる事をや
仕出
(
しい
)
ださん。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
児
常用漢字
小4
部首:⼉
7画
“児”を含む語句
嬰児
孩児
女児
幼児
小児
赤児
児童
男児
童児
児女
児戯
遺児
私生児
稚児
混血児
迷児
狗児
乳児
天児屋根命
児曹
...