)” の例文
旧字:
十歳を越えてなお夜中やちゅう一人で、かわやに行く事の出来なかったのは、その時代に育てられた人のの、敢て私ばかりと云うではあるまい。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
掛茶屋、船頭などに聞くと、「あのなら、今しがた立派な様子をした西洋人にれられて、橋を渡って江の島の方へ行きましたよ」
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし一歩門外もんそとへ出れば、最う浮世の荒い風が吹く。子供の時分の其は、何処にも有るいじめッという奴だ。私の近処にも其が居た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これはまさしく男のなりき。同じ村山口なる佐々木氏にては、母人ひとり縫物ぬいものしておりしに、次の間にて紙のがさがさという音あり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
父はの手の化ものを見ると青くなって震えた。小遣銭をなまで持たせないその児の、盗心ぬすみごころを疑って、怒ったよりは恐れたのである。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それこそ本当の獅子が獅子の乳へでも狂い寄るように、お綱のたもとがほころびるほど、両方から、むしゃぶりついてきたのである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父親ちちおや相当そうとうたか地位ちい大宮人おおみやびとで、狭間信之はざまのぶゆき母親ははおやはたしか光代みつよ、そして雛子ひなこ夫婦ふうふなか一粒種ひとつぶだねのいとしだったのでした。
かぞどしの二つにしかならないおとこであるが、あのきかない光子みつこさんにくらべたら、これはまたなんというおとなしいものだろう。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
芸妓屋おきやと親元は泣きの涙で怨んでいるが、泣く地頭じとうに勝たれない。ソレッキリの千秋楽になっている……ソイツも正にその通りだ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一分間ののち、一人の婦人が小さな女のを連れて客間にはいって来た。これがアリョーシャの母親のオリガ・イワーノヴナであった。
小波瀾 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
せめてはそののなつかしい追憶のために、その子の声に生きうつしのロオラに逢いたいと思いはしないだろうかということです。
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
あのが居ないとこんなにもつまらないものか知らん、これが恋愛の初まりなのではないか知らん、と、その時始めて考えました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
極端なことには五十に近い鄒七嫂まで人のあとにいて潜り込み、その上十一になる女のを喚び入れた。阿Qは不思議でたまらない。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
は母のふところにあり、母の袖かしらおほひたればに雪をばふれざるゆゑにや凍死こゞえしなず、両親ふたおや死骸しがいの中にて又こゑをあげてなきけり。
東京の悪戯いたづら斎藤緑雨りよくうは右に森先生の西洋の学を借り、左に幸田先生の和漢の学を借りたものの、つひに批評家の域にはいつてゐない。
家は大越在おおごえざいで、十五歳になる娘と九歳になる男のがある。初めて会った時と打ち解けて話し合った時と感じはまるで違っていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
いえわしは無理に金をもれえに来た訳じゃねえから金はいらねえが、ほかのお客には出ねえ若草だから、伊之助さんがのきまってるが
むかし小野浅之丞あさのじようといふ少年があつた。隣家となりの猫が度々たび/\大事なひなを盗むので、ある日築山つきやまのかげで、吹矢で猫をねらうちにした。
支那しな帝使を西班牙スペイン帝使のしもに座せしめ、わがたり友たる西帝せいていの使を、賊たり無頼の徒たる支那帝の使の下にせしむるなかれといしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「あの玉ちゃんというは七つになりますかえ。わたしも店の前に遊んでいるのを見たことがある。色白の綺麗な坊やでしたね」
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
相手がたがひ巴里パリイツ子同士、流行はやり同士であり、其れが右様みぎやうの事情のもとに行ふ決闘であり、その上当日の決闘ぶりが非常に壮烈であつたので
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ケリッヒ家の庭をめぐらしてる壁に沿って行くと、悪戯いたずらの時分にその広庭をのぞき込むためよじ登った、見覚えのある標石があった。
患者は五歳になる男のであった。彼が先方の家へついたときは、その児は痙攣けいれんを起して意識を失い、その唇も青ざめて居た。
初往診 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
学校に入り歌俳句も作り候を許され候わが弟は、あのやうにしげ/\妻のこと母のこと身ごもり候のこと、君と私との事ども案じこし候。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
越して行く先から先の近所の人達も当然それを怪しみもせず、おとうさんを女の扱ひにし、おかあさんを男の児と見做みなして仕舞ひました。
秋の夜がたり (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
蝉取竿せみとりざおを持った子供があちこちする。虫籠を持たされたは、時どき立ち留まっては籠の中を見、また竿の方を見ては小走りにいてゆく。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
彼は、女房の手を離れて、い出して来た五人目の女のを、片手であやしながら、窓障子のすきから見える黒い塀を見ていた。
(新字新仮名) / 徳永直(著)
おあいは、路傍の、石の上に腰をかけて、背から、乳飲児をおろして乳を含めた。は、乳房にしがみついて乳を吸いはじめた。
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
万作は「のうばば。お光ちょうは変なだのう、久しゅう歌わねえからどうしたんべいと思ったら、ひょっくら歌い出したのう」
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
にくまれ世にはびこる」ということわざがあるが、わが輩はこれを顛倒てんとうして、世にはびこる者はにくまれるということも、また真実まことであると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
お前達はほんとにおもしろいだ。明日からまたきのこをたくさんはやしてあげよう。だがわしはもう決して出て来ないよ。
お山の爺さん (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
さてはわがこはがらないのか、ちつともこはいとおもつてゐない。このには、あたしのおそろしい白栲しろたへが、御主おんあるじのそれとおなじにえるのだ。
あなたのようなちゃきちゃきのパリっで自由主義の紳士が、どうしてそんなに坊主どもの思わくを気になさるんでしょう。
もとより一ぷくつゐの中に育ちて他人交ぜずの穏かなる家の内なれば、さしてこのを陰気ものに仕立あげる種は無けれども
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「今入れているじゃありませんか、性急せわしないだ」と母は湯呑ゆのみ充満いっぱいいでやって自分の居ることは、最早もう忘れたかのよう。二階から大声で
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おもに近所の子供らで、武士の子も、町人の子も、職人のもあった。一空さまにとって、そういう区別はないのであった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
産れた女のが、少しずつ皮膚の色がげて白くなって来るまでには大分間があった。くしゃくしゃした目鼻立ちも容易に調ととのって来なかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この歌の結句は、「崩岸辺あずへから駒のあやはども人妻ひとづまろをまゆかせらふも」(巻十四・三五四一)(目ゆかせざらむや)のに似ている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
物置の前では十五になる梅子うめこが、今鶏箱とりばこからひなを出して追い込みに入れている。雪子ゆきこもおもいかにもおもしろそうに笑いながら雛を見ている。
奈々子 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
始終子供にばかかかっていれば生活が出来ないから、拠無よんどころなくこのかしつけ、ないたらこれを与えてくれと、おもゆをこしらえて隣家の女房に頼み
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
清元きよもと倉太夫の子だというがそれはもらいっで、浜町花屋敷の弥生やよいの女中をしていた女が、わらの上から貰った子を連れて嫁入ったのだとも言った。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あのの一生にどの位利益があつたか知れませんよ、さうして其立派な善行を行ふ機会を何ととりかへたかといへば………
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
それが、おしの変形児稚市ちごいちだったのである。が、それを見ると、滝人は吾がまでも使い、夫の死に何かの役目を勤めさせようとするのであろう。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
泉鏡花氏の書いたものによると、「正月はどうこまで、からから山のしいたまで……」という童謡を「故郷のらは皆師走しわすに入って、なかば頃からぎんずる」
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
……来栖勘兵衛、有賀又兵衛といやア、泣くも黙る浪人組の頭、あっしゃア、そのお頭の配下だったんですからねえ。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
レムは、年齢のわりに身体からだの小さな、非常に病身なで、そのせいかまだ学校へも行かずに、うちにぶらぶらしていた。
一人の小さな男のは、ペガッサスの飛んでいるところだといって、思い切り変てこな恰好をして跳ね廻り、そのあとを、彼の学校友達の一人が
お月様は、幹子ののうちに輝いた。それは恰度ちょうど、「のみっちゃんおやすみ」と言っているように見えました。
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
父親と母親とは、両方から与一の顔をみつめながら、熱心に我がの口から出る驚くべき物語にきき入っていました。
少年探偵呉田博士と与一 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
ことに四六佳婿むこがねあてなるをほの聞きて、我がも日をかぞへて待ちわぶる物を、今のよからぬことを聞くものならば、四七不慮すずろなる事をや仕出しいださん。