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陰気
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いんき
ふりがな文庫
“
陰気
(
いんき
)” の例文
旧字:
陰氣
「どうも
上方流
(
かみがたりゅう
)
で余計な所に
高塀
(
たかべい
)
なんか築き
上
(
あげ
)
て、
陰気
(
いんき
)
で困っちまいます。そのかわり二階はあります。ちょっと
上
(
あが
)
って御覧なさい」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それから、
男
(
おとこ
)
たちが、
鐘
(
かね
)
つき
堂
(
どう
)
へ
上
(
あ
)
がって、
鐘
(
かね
)
をつくのです。やがて、
陰気
(
いんき
)
な
鐘
(
かね
)
の
音
(
ね
)
は、
遠
(
とお
)
くまで
波
(
なみ
)
を
打
(
う
)
ってひびいてゆくのでした。
娘と大きな鐘
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その谷に
注
(
そそ
)
ぐ川はビエーヴル川であるから、この谷はパリの
郊外
(
こうがい
)
ではいちばんきたない
陰気
(
いんき
)
な所だと言いもし、
信
(
しん
)
じられもしていた。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
陰気
(
いんき
)
な
燈火
(
ともしび
)
の下で
大福帳
(
だいふくちやう
)
へ
出入
(
でいり
)
の
金高
(
きんだか
)
を書き入れるよりも、
川添
(
かはぞ
)
ひの
明
(
あかる
)
い二階
家
(
や
)
で
洒落本
(
しやれほん
)
を読む
方
(
はう
)
がいかに
面白
(
おもしろ
)
かつたであらう。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「あなたは、
僕
(
ぼく
)
があなたを愛するのが厭なんです——それなんです!」と、わたしは思わずカッとなって、
陰気
(
いんき
)
な調子で叫んだ。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
▼ もっと見る
その時霧は大へん
陰気
(
いんき
)
になりました。そこで諒安は霧にそのかすかな
笑
(
わら
)
いを
投
(
な
)
げました。そこで霧はさっと明るくなりました。
マグノリアの木
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「猫の鳴き声なんか、
陰気
(
いんき
)
じゃありません? それよりか、ここには友愛塾
音頭
(
おんど
)
というのがありますから、あたしそれをご
披露
(
ひろう
)
しますわ。」
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
朝からどんより
曇
(
くも
)
っていたが、雨にはならず、低い雲が
陰気
(
いんき
)
に垂れた競馬場を黒い秋風が黒く走っていた。午後になると急に暗さが増して行った。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
びッくりさせる、
不粋
(
ぶすい
)
なやつ、ギャーッという五
位
(
い
)
鷺
(
さぎ
)
の声も時々、——妙に
陰気
(
いんき
)
で、うすら寒い
空梅雨
(
からつゆ
)
の晩なのである。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寺男はちょうちんに
灯
(
ひ
)
をいれて、そのあとをつけていきました。その夜は、雨もよいの
陰気
(
いんき
)
なくらい
晩
(
ばん
)
でありました。
壇ノ浦の鬼火
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
天性
(
てんせい
)
陰気
(
いんき
)
なこの人は、人の目にたつほど、
愚痴
(
ぐち
)
も
悔
(
く
)
やみもいわなかったものの、
内心
(
ないしん
)
にはじつに長いあいだの、
苦悶
(
くもん
)
と
悔恨
(
かいこん
)
とをつづけてきたのである。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
鉄道線路の下に掘られてある横断用の地下道のあのくらい
陰気
(
いんき
)
な、そしてじめじめしたいやな気持を思い出す。また
炭坑
(
たんこう
)
の中のむしあつさを思い出す。
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
夫
(
おっと
)
がはたけからかえってきました。そして、このありさまをのこらず見ると、すっかり
陰気
(
いんき
)
になって、それから
間
(
ま
)
もなく、この人も死んでしまいました。
子どもたちが屠殺ごっこをした話
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
きっと、お日さまのいないあいだに、夜が地上をこんなにつめたく、
陰気
(
いんき
)
にしてしまったからなんだろうか。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
国中は貧乏になり、人々は
陰気
(
いんき
)
になりました。それで王様も非常に困られて、
位
(
くらい
)
を王子に
譲
(
ゆず
)
られました。
お月様の唄
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
少々
(
しょうしょう
)
陰気
(
いんき
)
くさい
話
(
はなし
)
で、おききになるに、あまり
良
(
よ
)
いお
気持
(
きもち
)
はしないでございましょうが、
斯
(
こ
)
う
言
(
い
)
った
物語
(
ものがたり
)
も
現世
(
げんせ
)
の
方々
(
かたがた
)
に、
多少
(
たしょう
)
の
御参考
(
ごさんこう
)
にはなろうかと
存
(
ぞん
)
じます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
この
村
(
むら
)
には
何
(
なに
)
かお
祭
(
まつ
)
りでもあるのかね。だいぶにぎやかなようじゃあないか。だがその中で一けん、
大
(
たい
)
そう
陰気
(
いんき
)
に
沈
(
しず
)
みこんだ
家
(
いえ
)
があったが、あれは
親類
(
しんるい
)
に
不幸
(
ふこう
)
でもあったのかね。
しっぺい太郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
いもみの木の森のあいだ、ロクセン湖の
陰気
(
いんき
)
な岸辺近くに、古いブレタの
僧院
(
そういん
)
があります。わたしの光は
壁
(
かべ
)
の
格子
(
こうし
)
をとおって、広い
円天井
(
まるてんじょう
)
の部屋へすべりこんで行きました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
耶蘇教は
我
(
が
)
強
(
つよ
)
く、仏教は
陰気
(
いんき
)
くさく、神道に
湿
(
しめ
)
りが無い。
彼
(
かの
)
大なる
母教祖
(
ははきょうそ
)
の
胎内
(
たいない
)
から生れ出た、陽気で簡明
切実
(
せつじつ
)
な平和の天理教が、
土
(
つち
)
の人なる農家に多くの信徒を
有
(
も
)
つは尤である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
手もしびれたか、きゆつと軌む……水口を開けると、茶の間も、
框
(
かまち
)
も、だゝつ広く、大きな穴を四角に並べて
陰気
(
いんき
)
である。引窓に射す、何の影か、薄あかりに一目見ると、唇がひッつゝた。
夜釣
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
処
(
ところ
)
へ
風
(
かぜ
)
を
冐
(
ひ
)
いた人が
常磐津
(
ときはづ
)
を語るやうな
声
(
こゑ
)
でオー/\といひますから、
何
(
なん
)
だかと
思
(
おも
)
つて
側
(
そば
)
の人に聞きましたら、
彼
(
あ
)
れは
泣車
(
なきぐるま
)
といつて
御車
(
みくるま
)
の
軌
(
きし
)
る
音
(
おと
)
だ、と
仰
(
おつ
)
しやいましたが、
随分
(
ずゐぶん
)
陰気
(
いんき
)
な
物
(
もの
)
でございます。
牛車
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
陰気
(
いんき
)
充満
(
じゆうまん
)
して雲
深
(
ふか
)
き
山間
(
やまあひ
)
の
村落
(
そんらく
)
なれば雪の
深
(
ふかき
)
をしるべし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
兄弟
(
きょうだい
)
のようすはわからなかったのです。その
日
(
ひ
)
から、
山
(
やま
)
では、
母親
(
ははおや
)
の
子供
(
こども
)
を
呼
(
よ
)
ぶ
声
(
こえ
)
がさびしく、
陰気
(
いんき
)
に、
毎日
(
まいにち
)
のように
聞
(
き
)
かれました。
兄弟のやまばと
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
今日は
陰気
(
いんき
)
な
霧
(
きり
)
がジメジメ
降
(
ふ
)
っています。木も草もじっと
黙
(
だま
)
り
込
(
こ
)
みました。ぶなの木さえ
葉
(
は
)
をちらっとも動かしません。
貝の火
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
おじいさんがかわいがりすぎたせいだ、とおとうさんはよくいいましたが、そうばかりではなく、あんまり
陰気
(
いんき
)
な家の中にそだったためかもしれません。
あたまでっかち
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
鉄道線路
(
てつどうせんろ
)
の下に掘られてある
横断
(
おうだん
)
用の地下道の、あのくらい
陰気
(
いんき
)
な、そしてじめじめしたいやな気持を思い出す。また
炭坑
(
たんこう
)
の中のむしあつさを思い出す。
三十年後の東京
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ひどくつかれて、そこらのものは
残
(
のこ
)
らず
陰気
(
いんき
)
に思われた。この光と音のあふれた大きなパリでは、わたしはまるっきり
独
(
ひと
)
りぼっちであることをしみじみ感じた。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
人物は、正直そうに見えて
策
(
さく
)
があり、それに神経質なところもあって、気にくわないことがあると、いつまでも
陰気
(
いんき
)
に押しだまっているといったふうであった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
『
私
(
わたくし
)
はこんな
陰気
(
いんき
)
くさい
所
(
ところ
)
は
厭
(
いや
)
でございます。でもここは
何
(
なん
)
ぞ
縁由
(
いわれ
)
のある
所
(
ところ
)
でございますか?』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
つまり、このダンスは、冬の強い風が
一
(
ひと
)
ひら一ひらの雪をもてあそぶのに
似
(
に
)
ていますが、なんとなく
陰気
(
いんき
)
くさくて、おもしろみがありません。見ているほうがまいってしまいました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
あぶら
蝋燭
(
ろうそく
)
の燃えさし、欠けたナイフやフォーク、
陰気
(
いんき
)
くさいヴォニファーチイ、
尾羽
(
おは
)
うち
枯
(
か
)
らした小間使たち、当の公爵夫人の立居振舞い——そんな
奇怪
(
きかい
)
千万な暮しぶりなんかには
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
どことなく、きょうのこの
家
(
や
)
は
陰気
(
いんき
)
だった。伊織にも、感じられる。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その地下室はもとどこかの事務所らしかったが、久しく人の姿を見うけない。それが
妙
(
みょう
)
に
陰気
(
いんき
)
くさいのだ。また、大学病院の建物も橋のたもとの
附属
(
ふぞく
)
建築物だけは、置き忘れられたようにうら
淋
(
さび
)
しい。
馬地獄
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
陰気
(
いんき
)
な
百萬遍
(
ひやくまんべん
)
の声が
却
(
かへ
)
つてはつきり
聞
(
きこ
)
えるばかり。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「
糟谷
(
かすや
)
の
奥
(
おく
)
さんは
陰気
(
いんき
)
な人ねい」
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
煙突
(
えんとつ
)
は、いつもは、
黙
(
だま
)
って、
陰気
(
いんき
)
な
顔
(
かお
)
をしてふさいでいたのですが、このときばかりは、なんとなく、うれしそうにはしゃいでいました。
煙突と柳
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
何の
返事
(
へんじ
)
も聞えません。
黒板
(
こくばん
)
から
降
(
ふ
)
る
白墨
(
はくぼく
)
の
粉
(
こな
)
のような、
暗
(
くら
)
い
冷
(
つめ
)
たい
霧
(
きり
)
の
粒
(
つぶ
)
が、そこら
一面
(
いちめん
)
踊
(
おど
)
りまわり、あたりが俄にシインとして、
陰気
(
いんき
)
に陰気になりました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そして事実は、結局、返事を書かない決心をしたのと同じ結果になり、それがいよいよかれの気持ちを不安にし、かれを
陰気
(
いんき
)
な沈黙に
誘
(
さそ
)
いこんでいったのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
あとは、おとうさんとおかあさんとおじいさんの三人きりでしたから、がらんとした広い暗い家の中にいると、人はどこにいるかわからないほどで、まったく
陰気
(
いんき
)
だったのです。
あたまでっかち
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
帆村の探偵事務所は、
丸
(
まる
)
の
内
(
うち
)
にあったが、
今時
(
いまどき
)
流行
(
はや
)
らぬ
煉瓦建
(
れんがだて
)
の
陰気
(
いんき
)
くさい建物の中にあった。びしょびしょに
濡
(
ぬ
)
れたような階段を二階にのぼると、そこに彼の事務所の
名札
(
なふだ
)
が下げてあった。
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ドン修道院の
鐘
(
かね
)
の
音
(
ね
)
が、時おり、
穏
(
おだ
)
やかに
陰気
(
いんき
)
に
響
(
ひび
)
いてきた。——わたしはじっと坐って、見つめたり聞き入ったりしているうちに、何かしら名状しがたい感じで、胸がいっぱいになるのだった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
わたしたちが通って行く道は
喪中
(
もちゅう
)
のようにしずんでさびしかった。あれきって
陰気
(
いんき
)
な野原の上にただ北風のはげしいうなり声が聞こえた。雪片が小さなちょうちょうのように目の前にちらちらした。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
河
(
かわ
)
の
中
(
なか
)
に、
魚
(
うお
)
が、
冬
(
ふゆ
)
の
間
(
あいだ
)
じっとしていました。
水
(
みず
)
が、
冷
(
つめ
)
たく、そして、
流
(
なが
)
れが
急
(
きゅう
)
であったからであります。
水
(
みず
)
の
底
(
そこ
)
は、
暗
(
くら
)
く、
陰気
(
いんき
)
でありました。
魚と白鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
どうだ、この
頁岩
(
けつがん
)
の
陰気
(
いんき
)
なこと。全くいやになっちまうな。おまけに海も暗くなったし、なかなか、
流紋玻璃
(
りゅうもんはり
)
にも
出
(
で
)
っ
会
(
く
)
わさない。それに今夜もやっぱり野宿だ。
楢ノ木大学士の野宿
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
陰気
(
いんき
)
な、
不明瞭
(
ふめいりょう
)
なことばが、その
怪影
(
かいえい
)
の口から発せられた。
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そうしてマチアはますます
陰気
(
いんき
)
になった。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
「こう
毎日
(
まいにち
)
、
空
(
そら
)
が
曇
(
くも
)
って、
陰気
(
いんき
)
ではしかたがありません。おじいさん、なにか、
愉快
(
ゆかい
)
な
幸福
(
こうふく
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うえ
)
となることは、できないものでしょうか。」
幸福の鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ところが
茲
(
ここ
)
にごく偏狭な
陰気
(
いんき
)
な考の人間の一群があって、動物は
可哀
(
かあい
)
そうだからたべてはならんといい、世界中にこれを
強
(
し
)
いようとする。これがビジテリアンである。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そして
見
(
み
)
るからに、なんとなく
陰気
(
いんき
)
な
船
(
ふね
)
であって、その
船
(
ふね
)
の
名
(
な
)
さえ
書
(
か
)
いてなければ、もとよりどこの
国
(
くに
)
の
船
(
ふね
)
ともわからなかったのでありました。
カラカラ鳴る海
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「うやまいを受けることは、あなたもおなじです。なぜそんなに
陰気
(
いんき
)
な顔をなさるのですか。」
マリヴロンと少女
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
陰
常用漢字
中学
部首:⾩
11画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“陰気”で始まる語句
陰気臭