つかわ)” の例文
権力に名をかり一事務員をつかわして執達吏の如き態度で私に辞表提出を強要するが如きことは、許すべからざる無礼であると私は思う。
数包みて禿かぶろつかわし、蚊屋の内に飛ばして、水草の花桶入れて心の涼しき様なして、都の人の野とや見るらむといひ様に、寝懸姿ねかけすがたの美しく
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
あくる日、髭そうろうの大尽は、かの五人の手下に言いふくめて、金銀綾錦あやにしきのたぐいの重宝をおびただしく持参させ、かの土塀の家につかわ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのうちに大毘古命おおひこのみことの親子をはじめ、そのほか方々へおつかわしになった人々が、みんなおおせつかった地方を平らげて帰りました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
谷田の奥さん例の達者なる英語にて通弁をしてつかわされ、富子さんの母上も私も笑ひ候に、富子さんは少しも笑はずにをられ候。
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
群集をもう一度見てつかわしもされずに、侯爵閣下は座席にり返って、あやまって何かのつまらぬ品物を壊したが、それの賠償はしてしまったし
てまえを都へおつかわしになると、曹操はかならずわたくしの歓心を迎えましょう。また万一には天子から官爵をくだし賜わるかも知れません。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち、彼が望みの宝をおつかわしになりましたに因って、是非に及ばず、誓言せいごんの通り、娘を波に沈めましたのでござります。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
密使みっし油蹈天ゆうとうてんをはるばる上海シャンハイつかわして、金博士の最新発明になる“人造人間戦車”の設計図を胡魔化ごまかしに行かせたのであった。
草薙くさなぎつるぎ景行天皇けいこうてんのう御時おんとき東夷とうい多くそむきて国々騒がしかりければ、天皇、日本武尊やまとたけるのみことつかわして之を討たしめ給う。みこと駿河するがの国に到りし時……
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
過日京師けいしへ差出し下され候由これまた謝し奉候。さて阿波へもつかわく先にこれり候五、六部も拙方へ御遣しの程ねがひ申上候云々。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
菊「はい、種々いろ/\頂戴致しましたが、わたくしいからお前持ってくが宜い、折角下すったのだからと申して皆あれつかわしました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「葦原の中心の國につかわしたホヒの神が久しく返事をしないが、またどの神を遣つたらよいだろうか」と仰せられました。
三人の魔女なぞをつかわすよりも、六牙象王ろくげのぞうおう味噌漬みそづけだの、天竜八部てんりゅうはちぶ粕漬かすづけだの、天竺てんじくの珍味をらせたかも知らぬ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
つまり負けたらば、何処どこ其処の寺には宝物ほうもつが沢山あるから、それを奪ってつかわすべしと云ったやり方である。
応仁の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その品物の内十徳(俗に蝦夷錦えぞにしきという、満州の官服なり)、青玉(俗に虫の巣という、満州の産)その外あり。日本よりつかわす物はなべおよび鉄類、海山獣の皮類なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
南江堂に可有之候。『明星みょうじょう』は当方へも新年に投稿可致旨いたすべきむね申来候。然し何もつかわすべきものも無之候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
よ、我なんじらをつかわすは、羊を狼のなかに入るるが如し。この故に、蛇の如くさとく、はとの如く素直なれ、人々に心せよ、それは汝らを衆議所にわたし、会堂にてむちうたん。
しかし、大実業家、又は相当の家柄から養女に望まれましたらば、そこへおつかわし下さる様。
壬申じんしんの日、王、やまいえぬと称し、東殿とうでんに出で、官僚の賀を受け、人をして昺と貴とを召さしむ。二人応ぜず。また内官をつかわして、とらわるべき者を交付するを装う。二人すなわち至る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
死後、鎮魂曲レクイエムはフランベルク伯爵が自分の名で夫人の死をいたむ鎮魂曲を発表するため、家扶かふつかわしてモーツァルトに代作を依頼したのだと解ったが、それはしかし後の祭であった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ワーフルという菓子かしき居たりしを先生見て、これは至極しごく面白おもしろし、予もこの器械きかい借用しゃくようして一ツやってたしとのことにつき、翌日これを老僕ろうぼくたせつかわしければ、先生おおいに喜び
一 女は我親の家をばつがず、舅姑の跡を継ぐ故に、我親よりも嫜を大切に思ひ孝行をなすべし。嫁して後は我親の家にゆくこともまれなるべし。まして他の家へは大方は使をつかわして音問いんもんなすべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
細き声またいわく、「自然の法則とは神の意なり。いかずちは彼の声にして嵐は彼の口笛なり、然り、死もまた彼の天使にして彼が彼の愛するものを彼の膝下しっかに呼ばんとする時つかわし賜う救使きゅうしなり」
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
すなわち剣を抜いて保食神を撃殺したまひき(中略)。是の後に天照大神た天熊大人をつかわして往いて看せたまふ。是の時に保食神まことすでみまかれり、唯し其の神の頂に牛馬化為れり云々(岩波文庫本)。
次には若い勇士のお前を、良うん令にしてつかわそう。10910
前文隈本くまもとの方へは、某頭をりこくりおり候えば、爪なりとも少々この遺書に取添え御つかわし下され候わば仕合せ申すべく候。
到頭清正公が姿を現しまして、『五郎、気の毒じゃが前世の因果と諦めて呉れ。後はねんごろにとむろうてつかわすぞ』と申しました。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこでホヒの神をつかわしたところ、この神は大國主の命にへつらいて三年たつても御返事申し上げませんでした。
松山城に城受取りの任を帯びて出向いておる内蔵助殿にとって、何かの参考にもなろうかと、そちをつかわすついでにお托し遊ばされたのじゃ。お墨付ではない。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天皇はついで大毘古命おおひこのみこと北陸道ほくろくどうへ、その子の建沼河別命たけぬかわわけのみこと東山道とうさんどうへ、そのほか強い人を方々へおつかわしになって、ご命令に従わない、多くの悪者どもをご征伐になりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
好まぬ酒も家業なれば是非もなく呑過して腹いたむる折々日本橋通一丁目反魂丹はんごんたん売る老舗しにせ(その名失念したり)に人をつかわして矢筈草あがなはせ土瓶どびんせんじて茶の代りに呑みゐたりき。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「ああエルサレム、エルサレム、予言者たちを殺し、つかわされたる人々を石にて撃つ者よ、牝鶏めんどりのそのひなを翼の下に集むるごとく、我なんじの子どもを集めんとしこと幾度いくたびぞや」
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
菊「はい、何だかも大層飲酔たべよってまいりまして、大変な機嫌でございましたが、もようやだまして部屋へりましたが、あれには余り酒をつかわされますといけませんから、加減をしておつかわし下さいまし」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一切の事は、追って書附かきつけにして、親署してつかわす。
さいわいに加賀町の名主田中平四郎がこれを知って、ひそかに竜池に告げた。竜池は急に諸役人に金をおくって弥縫びほうし、妾に暇をつかわし、別宅を売り、遊所通ゆうしょがよいを止めた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さっそくな貴所のお使いにむくいて、自分はその御返礼使にこれへつかわされたにすぎぬものと、前提して
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何卒なにとぞ右の儀、高等二学年修了以上の方々及び其父兄へ御懇話の上、一人にても二人にてもおつかわ被下くださらば、邦家ほうか中等教育の為め、光栄これにくもの無之候これなくそうろう頓首再拝とんしゅさいはい
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこでオモヒガネの神が申されるには、「アマツクニダマの神の子の天若日子あめわかひこりましよう」と申しました。そこでりつぱな弓矢ゆみや天若日子あめわかひこに賜わつてつかわしました。
それではいよいよ、天安河あめのやすのかわ河上かわかみの、あめ岩屋いわやにおります尾羽張神おはばりのかみか、それでなければ、その神の子の建御雷神たけみかずちのかみか、二人のうちどちらかをおつかわしになるほかはございません。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
おびのなかにきんぎんまたはぜにつな。たびふくろも、二枚にまい下衣したぎも、くつも、つえつな。よ、われなんじらをつかわすは、ひつじ豺狼おおかみのなかにるるがごとし。このゆえへびのごとくさとく、鴿はとのごとく素直すなおなれ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
すぐにお前達の領地界を広めてつかわす。
当地にちゃくそろてよりは、当家の主人たる弟又次郎の世話に相成り候。ついては某相果て候後、短刀を記念かたみつかわし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「もちろん、万全を期して、七月十五日までに着くよう、輸送せねばならん。……だがね、誰を輸送使としてつかわすか、その宰領の人選に、頭を悩ましておるんじゃよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああエルサレム、エルサレム、予言者たちを殺し、つかわされたる人々を石にて撃つ者よ、牝鶏めんどりのそのひなを翼の下に集むるごとく、我なんじの子らを集めんとしこと幾度ぞや、れど、汝らは好まざりき
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
この日にりよは酒井亀之進から、三右衛門の未亡人は大沢家から願に依っていとまつかわされた。りよが元の主人細川家からは、敵討の祝儀を言ってよこした。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
(少々はお手当を先につかわさぬと、登城の服装なども、おそらく持ち合すまいと察しられますが)
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
役者はおもいおもいの意匠をこらしたびらを寄せた。縁故のある華族の諸家しょけは皆金品をおくって、中には老女をつかわしたものもあった。勝久が三十一歳の時の事である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私事、おもと様御舟にて、船島へつかわさる可旨べきむね、仰せ被聞きけられ重畳ちょうじょうお心づかいの段、かたじけなくぞんじ奉候
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この女は西村与三郎のむすめ作であった。次で箱館から帰った頃からであろう、陸を娶ろうと思い立って、人をつかわして請うこと数度に及んだ。しかし渋江氏ではすなわち動かなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)