迅速じんそく)” の例文
落葉おちばには灰際はひぎはから外側そとがはつたひてがべろ/\とわたつた。卯平うへい不自由ふじいう火箸ひばし落葉おちばすかした。迅速じんそく生命せいめい恢復くわいふくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
(よろしい。お味方へ加わろう。秀吉公へ、よしなに取り次いでもらいたい。そして、迅速じんそくに、大軍をこの方面へ、お向けあれ)
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼に対する態度をまだよく定めていない自分には、彼の来かたがむしろ早すぎるくらい、現われようが今度は迅速じんそくであった。
手紙 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一つ一つの迅速じんそくな熱情の精が、いかなる時でも、それ自身の明瞭な像をその顔の鏡に映さなかった、というのではない。
石を投るもの、竹竿で叩き落そうとするもの、みんなが狡猾こうかつな顔つきをして、緊張した手足を迅速じんそくに動かしていた。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
それはあらゆる障害物を踏みつぶし、押し流し、打ちこわしつつ、緩慢のようでありながら極めて迅速じんそくに、計り知れない力をもって襲いかかるようであった。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いま弦月丸げんげつまるは一時間じかんに十二三海里ノツト速力そくりよくをもつて進航しんかうしてるのに、そのあとふてくも迅速じんそく接近せつきんしてるとは、じつ非常ひじやう速力そくりよくでなければならぬ。
かれ書見しよけんは、イワン、デミトリチのやうに神經的しんけいてきに、迅速じんそくむのではなく、しづかとほして、つたところ了解れうかいところは、とゞまり/\しながらんでく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
見るまに駈け出した五つの駕籠、早くも朝寒の雨にのまれて、通り魔の行列のように、いずくともなく消えてしまったが、それは実に驚くべき迅速じんそくな訓練であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
地下三メートルの所にある舗石の面に足をおろすこと、それだけのことを彼は、あたかも狂乱のうちになすかのように、巨人の力とわし迅速じんそくさとをもってなし遂げた。
けものを見ても分かる、とら獅子ししくまなどのごとき猛獣は年々その数が減じつつある。もし統計を取ることが出来れば、彼らの減少率のはなはだ迅速じんそくなることを示すであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「私は、先生が、御依頼した事件につき、非常に迅速じんそくに、しかも結論を簡単明瞭めいりょうに、探しだして下さるという評判を承って、大いに喜んで参ったような次第なのですが……」
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
然し私の生長は、お前が思う程迅速じんそくなものではない。私はお前のように頭だけ大きくしたり、手脚てあしだけ延ばしたりしただけでは満足せず、その全体に於て動き進まねばならぬからだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
……鷹揚おうやうに、しか手馴てなれて、迅速じんそく結束けつそくてた紳士しんしは、ためむなしく待構まちかまへてたらしい兩手りやうてにづかりと左右ひだりみぎ二人ふたりをんなの、頸上えりがみおもふあたりを無手むずつかんで引立ひつたてる、と
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
迅速じんそく勇敢な決意を要する意外な場合にぶつかると、彼らはもうなすすべを知らない。
炎々えんえんたる火光と黒煙のあいだに父は非常な迅速じんそくさをもって帳簿箱に油を注いでいる、石油のにおいは窒息ちっそくするばかりにはげしく鼻をつく、そうしてすさまじい勢いをもって煙を一ぱいにみなぎらす
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しそうなのが、ここに二人いる。迅速じんそくに持って来酒きさけまッせ
大坂表からは、秀吉直筆の迅速じんそく飛札ひさつが、すでに越後にとどいていた。上杉景勝としても、これを地方の一紛争と軽く見てはいられない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この拍子に応じて三十人の抜き身がぴかぴかと光るのだが、これはまたすこぶる迅速じんそくなお手際で、拝見していても冷々ひやひやする。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乾燥かんさうした藁束わらたば周圍しうゐねぶつて、さらそのほのほ薄闇うすぐらいへうちからのがれようとして屋根裏やねうらうた。それが迅速じんそくちから瞬間しゆんかん活動くわつどうであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれ書見しょけんは、イワン、デミトリチのように神経的しんけいてきに、迅速じんそくむのではなく、しずかとおして、ったところ了解りょうかいところは、とどまとどまりしながらんでく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
より迅速じんそくではあるが——イスラエルの女は、全ヨーロッパを通じて、住んでる国土の肉体的および精神的の風潮を、しばしば大袈裟おおげさに採用するが——それでもなお、民族固有の面影を
勿論もちろんかゝる構造かうざうで、きわめて重量じゆうりようのある鐵車てつしやことだから、速力そくりよくてんおいてはあま迅速じんそくにはかぬ、平野へいやならば、一時間いちじかん平均へいきんマイル以上いじやう進行しんかうすること出來できるであらうが、勾配かうばいはげしい坂道さかみちでは
いろいろな別働隊が組織され、各隊は迅速じんそくに、行動に移った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
司馬懿しばい仲達軍のこのときの行軍は、二日行程の道のりを一日に進んで行ったというから、何にしても非常に迅速じんそくなものだったにちがいない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おどろくべき迅速じんそくあし空間くうかんを一直線ちよくせんに、さうしてわづか障害物しやうがいぶつであるべきこずゑすべてをしつけしつけはやしえて疾驅しつくしてるのはいまもうすぐである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あなたは前後八ヶ月の日子につしつひやして思ひ立つた翻譯を成就じやうじゆしたとつてむしその長きに驚ろかれるやうだが、私はかへつてその迅速じんそくなのに感服したいのです。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひとゆめにもらない海賊島かいぞくたうといふのがあるさうだ、無論むろん世界地圖せかいちづにはこと出來でき孤島こたうであるが、其處そこには獰猛どうまう鬼神きじんあざむ數百すうひやく海賊かいぞく一團體いちだんたいをなして、迅速じんそく堅固けんごなる七さう海賊船かいぞくせんうかべて
この軍勢も、その武者幽霊の影ではないか、いかにも、まぼろしの魔軍まぐんのごとく、天颷てんぴょうのごとく、迅速じんそくな足なみだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の胸には云うべき事がまだ残っているのに、彼の頭は自分の思わく通り迅速じんそくに働らいてくれなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「だけど案外、その達者があてにならない例は、世間でよく見ることだからね。だから坊さんがいうじゃないか。無常迅速じんそく、人の命は露みたいなもンだって」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つは物の大小形状及びその色合などについて知覚が明暸めいりょうになりますのと、この明暸になったものを、精細に写し出す事が巧者にかつ迅速じんそくにできる事だと信じます。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ずいぶん迅速じんそくといわねばならない。光秀の司令も行動も、決して戦機をはずしてはいなかったのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここで、できるだけ迅速じんそくに、かつ機密に、毛利との和睦わぼくを取りきめねばならぬが。……彦右衛門、御辺はきょうも、恵瓊えけいと会っていたろうが、どうだな、先のはらは」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時の迅速じんそく陣替じんがえばかりでなく、総じて甲州勢の大兵が、信玄の指揮ひとつで、実にあざやかに動くのを見て、家康はあとで、敵ながら実に見事であったと嘆賞して
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初めのうち、光秀はまだ、そう左右の者へいっていたほど、そのことについて、味方の物見が頻々ひんぴんと報じて来るような秀吉の迅速じんそくな行動は、頭から信じきれないような容子ようすだった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この迅速じんそくを欠いたのは、信忠の罪ではなく、ここに却って六百余という兵数があったための遅れである。六十人の兵が狼狽ろうばいするよりは六百の兵が一度にあわてる混雑のほうが大きい。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
迅速じんそくこそ、この場合、唯一の大事ということを、一兵卒にいたるまで知っていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄蕃允げんばのじょうが会わぬというのをって会って、縷々るる、お旨を伝えて来ましたが——結局、大垣にある秀吉がこの方面へ駈け向って来るには、ぜひとも、一両日は要し、また迅速じんそくに来たところで
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の迅速じんそくな手配を求めている重要な書簡を襟に縫いこんでいたのである。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それも迅速じんそく極まるもので、日頃の訓練にもまさるこの一斉な外面だけを眺めては士卒個々の心のなかに、前にいったような、遅疑ちぎ、不安、驚愕きょうがくなどがさわいでいるとは一見思われない程ですらある。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、城方の侍大将、今福いまふく又右衛門は、頃を計って、城中へ迅速じんそくに退いた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやもう実に迅速じんそくも迅速、われら凡人どもには、一代でも到底成しあたうまいと思われることを、ここわずかな年月としつきによくもやり通して来られたものと、われら家臣どもも驚嘆きょうたんしているほどなのだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、恐れうろたえた民心をつかんで、信長は、迅速じんそく
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほとんど目にもとまらないほど迅速じんそくになってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)