)” の例文
貞世はさびしそうな恨めしそうな顔をまっにして葉子のほうを振り向いた。それを見ただけで葉子はすっかり打ちくだかれていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
まつなお顔をした、小さい赤ん坊のすゞちやんは、一人で赤いおふとんの中に、すや/\とねてゐました。お父さまは、よろこんで
ぽつぽのお手帳 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
はしわたると、みずがさらさらといって、いわげきして、しろくだけていました。ところどころにある、つたうるしがになっていました。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうとうおかまが上までけました。その時分じぶんには、山姥やまうばもとうにからだじゅうになって、やがてほねばかりになってしまいました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
アラムハラドが斯う言う間タルラは顔をまっにしていましたがおしまいは少し青ざめました。アラムハラドがすぐ言いました。
ひたいのまん中に、一つ、まっな目がありました。それはちょうど、石炭がもえている時のように、ぎらぎら光っていました。
これだけいって、こし般若丸はんにゃまるをひきいたが、その刀身とうしんは、いきなりまっにひかって見えた。うしろのほのおはもう高い火柱ひばしらとなっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松本は頭をかきながら、タツ達の方を向くと、トリが——あたしも……と云って、丸いふくれたっぺたをにした。
工場新聞 (新字新仮名) / 徳永直(著)
のみならず咄嗟とっさに思い出したのは今朝けさ滔々とうとうと粟野さんに売文の悲劇をべんじたことである。彼はまっになったまま、しどろもどろに言いわけをした。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
マーキュ 出來できた。此上このうへ洒落競しゃれくらべぢゃぞ。これ、足下おぬしそのうすっぺらなくつそこは、いまこと/″\って、はて見苦みぐるしいあししゃらうぞよ。
「きれいな魚がいますよ。ラツールさん。あっ、まっなのがいる。紫色のも、赤と青のしまになっているのも……」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まっにふくれたほっぺたをして、すやすやと、いかにもかわいらしい姿で休んでいるところへ来て
上からは火事のの光、横からは常夜燈の蒼白い光、そいつに照らされた薪十郎の姿、胸が窪んで肩が落ち、腰から下に力がなく、痩せ細ってまるで亡霊である。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
第一だいいちをんなどもが寄着よりつかない。おてうしが一二本いちにほん遠見とほみ傍示ばうじぐひのごと押立おつたつて、廣間ひろまはガランとしてごとし。まつになつた柳川やながはが、なるお羽織はおり……これが可笑をかしい。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くやしさにをにのやうなかほがいよいよをにのやうにみにくく、まつになりました。ぶるぶると身震みぶるひしながら「うむむ、うむむ」となにはうとしてもへないでもだえてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そこにも、沢山の人足の人たちが、まっに焼けたストーブのまわりに、集まっていた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「口惜しかろう。」と云えば、になって怒り出す。お酒だと云って、水を飲ませたり、三味線だと云って、箒を抱かせたり、其の度毎に女達はきゃッきゃッと笑い転げます。
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
近江屋「なに、それはもつと小さい丸いので、ぶら提灯ぢやうちんといふのだが、あれは神前しんぜん奉納ほうなふするので、周囲まはりあかつぶして、なかくろで「うをがし」と書いてあるのだ、周囲まはりなかくろ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ころころと横地半九郎の膝の方へ転がって行った。南瓜かぼちゃのような物で、一面に毛でおおわれている。博多弓之丞が、その乱髪に手をかけて掴み上げた。ぶらげてみると、一眼でわかった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たちまち二人ともぎごちなく、はにかんで、になる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
まっなからだの上したへ手と足とがとびだして
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
黄金きんのかみの毛 まっなほぺた
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
まつになつて
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
「あのねこは、ペンキのだよ。」と、ていた子供こどもたちがいっていると、ペンキから、かおにして、若者わかものがとびしました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
おかがってきょろきょろまわしていますと、そこのまつの木のえだにまっかおをして、まっなおしりをしたものがまたがっていました。
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それは六寸ぐらいあるふなをとって、顔をまっにしてよろこんでいたのです。それからみんなとって、わあわあよろこびました。
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
岡はじながらもその目から自分の目をそらす事ができないようにまともに愛子を見て見る見る耳たぶまでをまっにしていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
すると、そこにまっな顔をして、ゆうゆうとさけを飲んでいた豪放ごうほうらしいさむらいがある。一同をながめると、莞爾かんじとしてむかえながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああねむったい。なんだかまっなものが、もうッと、まぶたの上へかぶさるような気がします。しばらくごめん下さい。」
ぶくぶく長々火の目小僧 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
すきとおって水晶すいしょうのようなのもありました。まっな色をしていて、ぱちぱちと火花をちらしているのもありました。
ロミオ はて、ぐるしいはぢ駄洒落だじゃるとは足下おぬしのこと。それ、もう、うすっぺらな智慧ちゑそこえるわ!
正吉がそういって料理番のキンちゃんをからかうと、キンちゃんは顔をまっにして
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
へえゝ……くろうまけましたな、成程なるほどらしい色で……れは。近江屋「彼家あれ宮松みやまつといふ茶屋ちややよ。梅「へえゝ……これは甃石しきいしでございませう。近江屋「おや/\よくわかつたね。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
大声に孫娘の名を呼びつつ、避難民のあひだを探しまはる。日暮にちぼ。遂に松のかげに横はる。隣りは店員数人をつれたる株屋。空は火事の煙の為、どちらを見てもまつなり。鸚鵡、突然「ナアル」といふ。
「オイ、ボースン、気をつけないと、まっになっておこってるぜ」
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
そして、に、名残なごり地平線ちへいせんめていますのが、しだいしだいに、なみあらわれるように、うすれていったのでありました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、すぐむくむくふとったかわいらしいしました。そこで二人ふたりはしばらくかおをしていました。そのうちきこりはふいと
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
戸板のすぎの赤みが鰹節かつおぶししんのように半透明にまっに光っているので、日が高いのも天気が美しく晴れているのも察せられた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
で——まッ逆光線ぎゃっこうせんの夕やけにらされている小太郎山こたろうざんの上、陣馬じんばはらいちめんは、不可思議ふかしぎ自然美しぜんびにもえあがっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すんぐらいあるふなをとって、顔をまっにしてよろこんでいたのだった。「だまってろ、だまってろ。」しゅっこが云った。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
或ときウイリイが、こやしを車につんでいますと、その中から、まっにさびついた、小さな鍵が出て来ました。ウイリイはそれを母親に見せました。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
アラジンはまっになっておこりました。そしてすぐ家へ帰って、まほうのランプをとり出してこすりました。すると、じきにあのおばけが出て来て、何をいたしましょうかと聞きました。
お面はすっぽりとぬけて、下から三根夫のまっひたいがあらわれた。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼はまっになってせり売りの商人のように怒鳴りまくった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
なかには、なのや、紫色むらさきいろがかったのや、うつくしいのもあれば、もういろのあせてしまって、からからにかわいたのもありました。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うらの山へくと、あまんじゃくはするするとかきの木によじのぼって、になったかきを、おいしそうにってはべ、ってはべしました。
瓜子姫子 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それから今度こんどは風がきたちまち太陽は雲をはずれチュウリップのはたけにも不意ふいに明るくしました。まっな花がぷらぷらゆれて光っています。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして自分で出かけて行って、しなもあろう事かまっ毛布もうふを一枚買って帰って来た。葉子はとうとうを折って最終列車で東京に帰る事にした。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
鳥の食いのこした山柿が、晩秋の空に、まっだった。峰の雲には、石切りののみの音が、冷やかに、こだましていた。
トゥロットは、まつな顔になりました。まつたくそれにちがひないので、いひぬけをすることも出来ません。しかし、トゥロットの顔は、ふいにかゞやいて来ました。
乞食の子 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)