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ふりがな文庫
“
覚
(
さま
)” の例文
旧字:
覺
兄貴がお人好しで蛇を拝んだり、
白蟻
(
しろあり
)
の糞を拝んだりしているからだ。兄貴の眼を
覚
(
さま
)
すには、あの蛇からどうかしなくちゃならない。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何時間
経
(
た
)
ったのか、何日経ったのか、一郎次には分りませんでした。ふと、目を
覚
(
さま
)
すと、自分は、立派な御殿の中に寝ていました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
がたぴしする戸ばかりをあつかい慣れている彼れの手の力があまったのだ。妻がぎょっとするはずみに
背
(
せなか
)
の赤坊も眼を
覚
(
さま
)
して泣き出した。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
五時頃から滿と健はもう目を
覚
(
さま
)
して、互いの
床
(
とこ
)
の中から出す手や足を引張り合つたり、
爆
(
は
)
ぜるやうな呼び声を立てたりして居た。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
われわれは自身に存在の観念しか与え得ないが、その無窮なるものはわれわれのうちに本質の観念を
覚
(
さま
)
させるのではあるまいか。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
彼は始めて空想の夢を
覚
(
さま
)
して、及ばざる
身
(
み
)
の
分
(
ぶん
)
を
諦
(
あきら
)
めたりけれども、一旦
金剛石
(
ダイアモンド
)
の強き光に焼かれたる心は幾分の知覚を失ひけんやうにて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼らは何物にも
覚
(
さま
)
されずに、幾年月かをそこに眠る。しかし他日その
墓窟
(
はかあな
)
の開ける日が——人の知るごとく——めぐって来る。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
車内にチラホラ目を
覚
(
さま
)
している組の連中は、この二人の美しい対照に、さり気ない視線をこっそり送っては
欠伸
(
あくび
)
を噛みころしていたのだった。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
戸の
透間
(
すきま
)
も明るく成った。一番早く眼を
覚
(
さま
)
すものは子供で、まだ母親が知らずに眠っている間に、
最早
(
もう
)
床の中から
這出
(
はいだ
)
した。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
夜半滝のような大雨の屋根を打つ音にふと目を
覚
(
さま
)
すとどこやら家の内に
雨漏
(
あまもり
)
の
滴
(
したた
)
り落るような
響
(
ひびき
)
を聞き寝就かれぬまま起きて
手燭
(
てしょく
)
に火を点じた。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
相「ウンそうだ、初めて逢うのに無理にめんめを
覚
(
さま
)
さして泣顔ではいかんから、だが大概にしてこゝへ連れて抱いて来い」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「やあ、目を
覚
(
さま
)
したら
密
(
そっ
)
と見べい。おらが、いろッて泣かしちゃ、仕事の邪魔するだから、
先刻
(
さっき
)
から辛抱してただ。」と、かごとがましく身を
曲
(
くね
)
る。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いっぺん
汚
(
きた
)
ない爺さんが
泥鰌
(
どじょう
)
のような奴をあたじけなく
頸筋
(
くびすじ
)
へ垂らしていたのを見て、ひどく興を
覚
(
さま
)
したせいだろう。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だがその小魚たちは加奈子の眼の知覚を呼び
覚
(
さま
)
して加奈子はその次の
蕎麦
(
そぱ
)
屋に気がつき、その次の薬屋に気がつく。
豆腐買い
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
まだ家族のものは、床を離れぬ早朝であったので、一同その声にハッと眼を
覚
(
さま
)
したが、久しく忘れていた、いまわしい記憶が、ふと心の隅に
甦
(
よみがえ
)
って来た。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「し、知れたこと、新九郎の後追いかけて、
彼奴
(
きゃつ
)
の迷夢を
覚
(
さま
)
してくれる。醒めぬものなら、兄が情けで一刀両断」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と祥雲氏はぱつちり眼を
覚
(
さま
)
して
横
(
よこ
)
つ
腹
(
ぱら
)
を押へた。禿げた頭にはいつの間にかびつしより汗を掻いてゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
遮二無二
(
しゃにむに
)
に
噛
(
かじ
)
り付いてくる少年の
前額
(
おでこ
)
に
掌
(
て
)
をかけて、力任せに
押除
(
おしの
)
けようと
踠
(
もが
)
いているうちに、浅田の夢は破れて、
蚊帳
(
かや
)
を外した八畳の間にぽっかりと目を
覚
(
さま
)
した。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
女も眼を
覚
(
さま
)
して
起上
(
おきあが
)
ると見る間に、一人は消えて一人は残り、何に
驚
(
おど
)
ろいて
起
(
おき
)
たのかと
聞
(
きか
)
れ、実は
斯々
(
これこれ
)
と
伍什
(
いちぶしじゅう
)
を語るに、女
不審
(
いぶかし
)
げにこのほども或る客と
同衾
(
どうきん
)
せしに
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
王子が
眼
(
め
)
を
覚
(
さま
)
したのを見て、
老人
(
ろうじん
)
はハハハと
声高
(
こわだか
)
く
笑
(
わら
)
いました。王子は
恐
(
おそ
)
れもしないで
尋
(
たず
)
ねました。
強い賢い王様の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
ひるの
中
(
うち
)
は
頻
(
しき
)
りに
寐反
(
ねがえ
)
りを打って、シクシク
泣
(
ない
)
ていたのが、夜に
入
(
い
)
ってから少しウツウツしたと思って、フト眼を
覚
(
さま
)
すと、僕の枕元近く奥さまが来ていらっしゃって
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
送り
漸
(
よう
)
やく築地に着きたるは夜も早や十時頃なり直ちに施寧の家に入り母と少しばかり話しせし末例の如く金起と共に二階に上り一眠りして妾は二時頃一度目を
覚
(
さま
)
したり
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
早う目を
覚
(
さま
)
しや。いやさ、正気に帰りおれと申すにな。やれ、女子よ。(女の背を打つ。)
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
憤慨の念燃ゆるばかり、
遂
(
つい
)
に
巾幗
(
きんこく
)
の身をも打ち忘れて、いかでわれ奮い起ち、優柔なる当局および
惰民
(
だみん
)
の眠りを
覚
(
さま
)
しくれでは
已
(
や
)
むまじの心となりしこそ
端
(
はし
)
たなき限りなりしか。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
平八郎は夢を
揺
(
ゆ
)
り
覚
(
さま
)
されたやうに
床几
(
しやうぎ
)
を
起
(
た
)
つて、「
好
(
よ
)
い、そんなら
手配
(
てくばり
)
をせう」と云つた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
イワン、デミトリチはふと
眼
(
め
)
を
覚
(
さま
)
し、
脱然
(
ぐったり
)
とした
様子
(
ようす
)
で
両
(
りょう
)
の
拳
(
こぶし
)
を
頬
(
ほお
)
に
突
(
つ
)
く。
唾
(
つば
)
を
吐
(
は
)
く。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
翌朝私が眼を
覚
(
さま
)
すと、例の小僧が
家
(
うち
)
へ
馳込
(
かけこ
)
んで来て、また
河岸
(
かし
)
のあの
柏
(
かしわ
)
へ
首縊
(
くびくくり
)
がある
死神
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
「その時、どうして御新造は、大きな声でも立てて皆んなを呼び
覚
(
さま
)
さなかったので」
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やっと眼を
覚
(
さま
)
した——らしく見せた——探偵は
敷島
(
しきしま
)
に火を
点
(
つ
)
けながら
訊
(
き
)
いた。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「あ、いたた、いたた、いたた。」びつくりした横着きうりは 目を
覚
(
さま
)
して、大きな声をはり上げました。気の毒な事に、横着きうりは 真中から ポツキンと二つに 折れてしまひました。
きりぎりす の かひもの
(新字旧仮名)
/
村山籌子
(著)
牝鶏の朝の唄に驚いて、親鶏の翼の下に寝ていた黄いろい
雛
(
ひな
)
も、軒の下の
鳩
(
はと
)
も、赤い小牛も、牧場の小屋の中へ眠っていた小羊までが眼を
覚
(
さま
)
しました。それでも太郎の眼は覚めませんでした。
朝
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
女と私は看板後あいびきの約束を結び、ともかく中也だけは吉原へ送りこんでこなければならぬ段となったが、ノビてしまうと容易なことでは目を
覚
(
さま
)
さず、もとより洋服をきせうる段ではない。
二十七歳
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その余の人々はこの声に
睡
(
ねむり
)
を
覚
(
さま
)
しただ打ち驚くばかりなりしといえり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
尼の
嫉妬
(
やきもち
)
はその時代として前代未聞、宿の者もまた興を
覚
(
さま
)
していた。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
かくてまたその眠れる精神が目を
覚
(
さま
)
してくるのではあるまいか。
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
朝に成って
反
(
かえ
)
って気の
緩
(
ゆる
)
んだ岸本はいくらかでも寝て行こうとした。一眠りして眼を
覚
(
さま
)
すと、その度に彼は巴里が近くなって来たことを感じた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
客「成程明方までにはお廻りに成りましょうから、それまで目を
覚
(
さま
)
して待ってましょう、あなたは青くはありませんね」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
男子側から如何に多くの婦人問題を出されても、婦人自身に目を
覚
(
さま
)
さねばこの問題の正しい解決は
著
(
つ
)
かないであろう。
婦人と思想
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
折から空高くさし
昇
(
のぼ
)
っているお月様の光でその男を見ますと、それは武士らしいいかにも強そうな男でした。その男は、二郎次が目を
覚
(
さま
)
したのを見ると
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今も言おう、この時言おう、口へ出そうと思っても、朝、目を
覚
(
さま
)
せば俺より前に、
台所
(
だいどころ
)
でおかかを掻く音、夜寝る時は俺よりあとに、あかりの下で針仕事。
湯島の境内
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただ一度、出発後五日目の夜に、悪夢のあと急に眼を
覚
(
さま
)
した時、眠りながら彼女のことを考えていて、その考えのために眼が覚めたことを、彼は気づいた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
同時にこれ人間が神の意志に
戻
(
もと
)
り、自然の法則に反抗する力ある事を示すものと思はれ候。人間を夜の暗さより救ひ、死の眠りより
覚
(
さま
)
すものはこの燈火に候。
夜あるき
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そうして
昔
(
むか
)
し兄と自分と
将棋
(
しょうぎ
)
を指した時、自分が何か
一口
(
ひとくち
)
云ったのを
癪
(
しゃく
)
に、いきなり将棋の駒を自分の額へぶつけた騒ぎを、新しく自分の記憶から呼び
覚
(
さま
)
した。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
姝
(
きれい
)
な女の家へ往って、その女と一晩中歓楽に
浸
(
ひた
)
っていた秀夫は、不思議な人の声に眼を
覚
(
さま
)
した。
牡蠣船
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼
(
かれ
)
はその
後
(
のち
)
読書
(
どくしょ
)
を
為
(
な
)
す
中
(
うち
)
にも、
睡眠
(
ねむり
)
に
就
(
つ
)
いてからも、イワン、デミトリチのことが
頭
(
あたま
)
から
去
(
さ
)
らず、
翌朝
(
よくちょう
)
眼
(
め
)
を
覚
(
さま
)
しても、
昨日
(
きのう
)
の
智慧
(
ちえ
)
ある
人間
(
にんげん
)
に
遇
(
あ
)
ったことを
忘
(
わす
)
れることが
出来
(
でき
)
なかった
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「蔵の中へ入れてお金を唸らせて置くなんて、随分勿体ないことでは御座いませんか、さア、参りましょう、私は、大判小判を
身体
(
からだ
)
中に浴びて、この火のような心持を
覚
(
さま
)
し度いのです」
黄金を浴びる女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
微曇
(
ほのぐも
)
りし空はこれが為に
眠
(
ねむり
)
を
覚
(
さま
)
されたる
気色
(
けしき
)
にて、
銀梨子地
(
ぎんなしぢ
)
の如く無数の星を
顕
(
あらは
)
して、鋭く
沍
(
さ
)
えたる光は
寒気
(
かんき
)
を
発
(
はな
)
つかと
想
(
おも
)
はしむるまでに、その
薄明
(
うすあかり
)
に
曝
(
さら
)
さるる夜の
街
(
ちまた
)
は
殆
(
ほとん
)
ど氷らんとすなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
叫喚
(
あっ
)
と云って
慄
(
ふる
)
え出し、
飲
(
のん
)
だ酒も一時に
醒
(
さめ
)
て、
最
(
も
)
う
最
(
も
)
うこんな
家
(
うち
)
には片時も居られないと、
襖
(
ふすま
)
を
蹴
(
け
)
ひらき
倉皇
(
そうこう
)
表へ
飛出
(
とびだ
)
してしまい
芸妓
(
げいぎ
)
も客の
叫喚
(
さけび
)
に驚いて目を
覚
(
さま
)
し、幽霊と
聞
(
きい
)
たので青くなり
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
鐉の音は彼を
覚
(
さま
)
した。彼は頭を上げた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私が眼を
覚
(
さま
)
して見るとお前がいないから、是は新吉さんは愛想が尽きて、私が
種々
(
いろ/\
)
な事を云って困らせるから、お前が逃げたのだと思って気が付くと
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
覚
常用漢字
小4
部首:⾒
12画
“覚”を含む語句
目覚
幻覚
感覚
発覚
寝覚
眼覚
不覚
覚書
正覚坊
御覚
覚束
嗅覚
覚醒
正覚
触覚
覚悟
見覚
錯覚
自覚
覚明
...