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覗
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のぞ
ふりがな文庫
“
覗
(
のぞ
)” の例文
二十年の学校生活に
暇乞
(
いとまごい
)
をしてから以来、何かの機会に『老子』というものも一遍は
覗
(
のぞ
)
いてみたいと思い立ったことは何度もあった。
変った話
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
人が出入りするのを見かけたこともなく、いつ
覗
(
のぞ
)
いても、店のなかは
仄
(
ほの
)
くらくしずまりかえっていて、チラとも人影が動かなかった。
キャラコさん:09 雁来紅の家
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
また、時には少年の着るような薄色の
襲
(
かさね
)
を
覗
(
のぞ
)
かした好みを見せれば、次の夕方には、もう一人の男もそれに似合うた衣を
纏
(
まと
)
うていた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
下の深淵へ
覗
(
のぞ
)
く様にして出張っている
大蝦蟇形
(
おおがまがた
)
の岩があった。それに乗って直芳が下を見た時に、思わず知らず口走ったのであった。
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「氣の毒だが案内してくれ。大名や金貸しには俺だつて附き合ひ度くねえが、笹野の旦那の頼みがあるから、ちよいと
覗
(
のぞ
)
いて見よう」
銭形平次捕物控:302 三軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
ちょいと
覗
(
のぞ
)
いてみると、
曰
(
いわ
)
く「世界お
伽噺
(
とぎばなし
)
、
法螺
(
ほら
)
博士物語」、曰く「カミ先生
奇譚集
(
きたんしゅう
)
」、曰く「特許局
編纂
(
へんさん
)
——永久運動発明記録全」
不沈軍艦の見本:――金博士シリーズ・10――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
勘作は起きあがって笊の中を
覗
(
のぞ
)
いた。大きな二尺ばかりの鯉が四
疋
(
ひき
)
と、他に
鮒
(
ふな
)
や
鮠
(
はや
)
などが
数多
(
たくさん
)
入っていた。勘作は驚いて眼を
睜
(
みは
)
った。
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
俺は音をたてないように、室の中を歩きまわり、壁をたゝいてみ、窓から外をソッと
覗
(
のぞ
)
いてみ、それから廊下の方に聞き耳をたてた。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
子
(
し
)
のたまわくだ。なにしてやがるかと思って、
破
(
やぶ
)
けた窓の障子から
覗
(
のぞ
)
くとね、ポンポチ米を
徳久利
(
とっくり
)
で
舂
(
つ
)
きながら勉強してやがるんだ。
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「
今日
(
こんにち
)
は、」と、声を掛けたが、フト
引戻
(
ひきもど
)
さるるようにして
覗
(
のぞ
)
いて見た、
心着
(
こころづ
)
くと、自分が
挨拶
(
あいさつ
)
したつもりの
婦人
(
おんな
)
はこの人ではない。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
Nはいたるところの収容所を訪ね廻って、重傷者の顔を
覗
(
のぞ
)
き込んだ。どの顔も悲惨のきわみではあったが、彼の妻の顔ではなかった。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
私は、半分
自棄
(
やけ
)
でリオへ来て、話に聴いたナイトクラブとはどんなところだろうと、なんだか
覗
(
のぞ
)
くような気持で『恋鳩』へゆきました
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
今まで無邪気に天空で戯れていた少年が人のいない周囲を
見廻
(
みまわ
)
し、ふと下を
覗
(
のぞ
)
いたときの、泣きだしそうな孤独な恐怖が
洩
(
も
)
れていた。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
幽霊のような
裾
(
すそ
)
を引いて、するすると入って来て、後ろから白雲の模写ぶりを
覗
(
のぞ
)
きにかかりましたけれども、白雲はいっこう平気で
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
男でも日曜は新しい青いワイシャツの胸に真白な
手巾
(
ハンケチ
)
を
覗
(
のぞ
)
かせている。教会は彼らにとって誠に楽しい
倶楽部
(
クラブ
)
、ないし演芸場である。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それを明るい電燈が黙つて上から照して居た……。彼は突然、彼の目を上げて光を
覗
(
のぞ
)
いた。それは電燈ではない。ランプの光である。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
母親は東京へ来てから、まだろくろく寄席一つ
覗
(
のぞ
)
いたことがなかった。田舎にいた時の方が、まだしも面白い目を見る機会があった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
心配
(
しんぱい
)
さうに
木々
(
きゞ
)
の
間
(
あひだ
)
を
覗
(
のぞ
)
き
廻
(
まは
)
つてゐましたが、
軈
(
やが
)
て
其頭
(
そのあたま
)
の
眞上
(
まうへ
)
にあつた
小
(
ちひ
)
さな
尖
(
とが
)
つた
木
(
き
)
の
皮
(
かは
)
に、ひよいと
眼
(
め
)
が
着
(
つ
)
きました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
まして、わたしに何も請求したわけではない。人の顔を穴のあくほど
見据
(
みす
)
える、例の
図々
(
ずうずう
)
しい女でもない。彼女は中を
覗
(
のぞ
)
いても見ない
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
だから木の香や刃物の香が新らしいうちは、人の家だと思うから、
覗
(
のぞ
)
いて見ようともしない。
一向
(
いっこう
)
平気なのは雀ぐらいなものである。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
何だかまた現実世界に
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
り込まれるような気がして、少しく失望した。長蔵さんは自分が黙って橋の
向
(
むこう
)
を
覗
(
のぞ
)
き込んでるのを見て
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
優しい手を、ソロリと肩へ廻し、髪を根くずれさせてうっ伏している娘の顔をさし
覗
(
のぞ
)
いた。と、お綱はその時はじめてびっくりした。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
畦間
(
うねま
)
を
作
(
つく
)
りあげてそれから
自分
(
じぶん
)
も
忙
(
いそが
)
しく
大豆
(
だいづ
)
を
落
(
おと
)
し
初
(
はじ
)
めた。
勘次
(
かんじ
)
は
間懶
(
まだる
)
つこいおつぎの
手
(
て
)
もとを
見
(
み
)
て
其
(
そ
)
の
畝
(
うね
)
をひよつと
覗
(
のぞ
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
大村が活動写真は目に毒だと云ったことなどを思い出す。お
負
(
まけ
)
に隣席の商人らしい風をした男が、無遠慮に横から
覗
(
のぞ
)
くのも気になる。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
雪子は、大嶋の二枚
襲
(
がさね
)
の裾からメリヤスのパッチを
覗
(
のぞ
)
かせながら長椅子に掛けて見物している貞之助に、軽く目礼をしてから云った。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
他の人に
見咎
(
みとが
)
められなば一大事と二足三足
去
(
さり
)
掛
(
かけ
)
しが又振返りさし
覗
(
のぞ
)
き
嗚呼
(
あゝ
)
我ながら
未練
(
みれん
)
なりと心で心を
勵
(
はげ
)
ましつゝ思ひ極めて立去けり
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
妹娘のお絹はこどものように、姉のあとについて一々、姉のすることを
覗
(
のぞ
)
いて来たが、今は台俎板の傍に立って笊の中の蔬菜を見入る。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
西村は
鷹揚
(
おうよう
)
にうなずいて、封筒の中味を読み始めた。北川はそのうしろから、さも主人の身の上を気づかう
恰好
(
かっこう
)
で、手紙を
覗
(
のぞ
)
いている。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いったいこの額の景色の裏側には、どんな世界が秘密に隠されているのだろうと。私は幾度か額をはずし、油絵の裏側を
覗
(
のぞ
)
いたりした。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
女は
上唇
(
うわくちびる
)
と
下唇
(
したくちびる
)
とを堅く結んで、
暫
(
しばら
)
く男の様子を見ていたが、その額を押さえている手を引き
退
(
の
)
けて、隠していた顔を
覗
(
のぞ
)
き込んだ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
眼鏡をかけたそのたるんだような顔でこっちを
覗
(
のぞ
)
いて、「どなたですか、どなたですか」などとうさん臭そうに云うだけであった。
桑の木物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
わたしは父の顔を
覗
(
のぞ
)
きこみながら、
何時
(
いつ
)
もの頼みを持ちかけました。が、父は承知するどころか、相手になる
景色
(
けしき
)
もございません。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
風が
激
(
はげ
)
しくなり、
足下
(
あしもと
)
の
雲
(
くも
)
がむくむくと
湧
(
わ
)
き立って、
遙
(
はる
)
か下の方に
雷
(
かみなり
)
の音まで
響
(
ひび
)
きました。王子はそっと下の方を
覗
(
のぞ
)
いてみました。
強い賢い王様の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それでもやはり彼は、約束の時間よりもすこし遅れてやってきた友人がひょいとそれを
覗
(
のぞ
)
き込んだ時には、それを裏返えしにした。
ルウベンスの偽画
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
が、君の窓はすっかり開け放しになっているんで、庭から廻って、
覗
(
のぞ
)
いて見ると、
灯
(
あか
)
りは満々と
点
(
つ
)
けッ放して、君の姿も見えないんだ。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
栓をとって
覗
(
のぞ
)
いてみると、半分程あるらしいので、彼は人の好さそうな笑いを浮かべ、湯呑茶碗についで、ごくんごくんと飲んだ。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
世間の
双生児
(
ふたご
)
には
珍
(
めづ
)
らしい一つの
胞衣
(
えな
)
に包まれて居たのでしたよ、などとこんな話を口の中でした
瑞樹
(
みづき
)
の顔を
覗
(
のぞ
)
かうとするのでしたが
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
半七は表から
覗
(
のぞ
)
いてみると、今しきりに呶鳴っているのは、三十五六の
赭
(
あか
)
ら顔の大男で、その風俗はここらの
馬子
(
まご
)
と一と目で知られた。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三人の子供が折りかさなって、国訳『
大唐西域記
(
だいとうさいいきき
)
』を
覗
(
のぞ
)
き込んで、「三蔵法師玄奘
奉詔訳
(
ほうしょうやく
)
」という字に眼を光らせて、息をのんでいる。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
いまだ少年であった私が
縦
(
たと
)
い翁と直接話を
交
(
かわ
)
すことが出来なくとも、一代の
碩学
(
せきがく
)
の
風貌
(
ふうぼう
)
を
覗
(
のぞ
)
き見するだけでも大きい感化であった。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
必ずちょっと店先を
覗
(
のぞ
)
いて、もしや、東の横綱が無いかしら、と思わず懸命に捜してみるようになってしまっているにちがいない。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何
(
なに
)
として
今日
(
けふ
)
はと
頸
(
うなじ
)
を
延
(
の
)
ばす
心
(
こゝろ
)
は
同
(
おな
)
じ
表
(
おもて
)
のお
高
(
たか
)
も
路次口
(
ろじぐち
)
顧
(
かへり
)
みつ
家内
(
かない
)
を
覗
(
のぞ
)
きつ
芳
(
よし
)
さまはどうでもお
留守
(
るす
)
らしく
御相談
(
ごさうだん
)
すること
山
(
やま
)
ほどあるを
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
私は念のために彼女の部屋を
覗
(
のぞ
)
いて見ました、なるほど、とても大きなダブルベッド位なものが八畳一杯に拡がっているのでした
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「あんたはとうとう裸を見られたんですってよ。」お初ちゃんが笑いながら鬢窓に
櫛
(
くし
)
を入れている私の顔を鏡越しに
覗
(
のぞ
)
いてこう云った。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
ゆうべの
夢見
(
ゆめみ
)
が
忘
(
わす
)
れられぬであろう。
葉隠
(
はがく
)
れにちょいと
覗
(
のぞ
)
いた
青蛙
(
あおがえる
)
は、
今
(
いま
)
にも
落
(
お
)
ちかかった三
角頭
(
かくとう
)
に、
陽射
(
ひざ
)
しを
眩
(
まば
)
ゆく
避
(
さ
)
けていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
小さな眼をきょろつかして、バスひきの譜面台を
覗
(
のぞ
)
き込んでは、楽譜の表題が待ち受けてる曲のそれであるかどうか見ようとした。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は本堂の立っている崖の上から
摺鉢
(
すりばち
)
の底のようなこの上行寺の墓地全体を
覗
(
のぞ
)
き見る有様をば、其角の墓
諸共
(
もろとも
)
に忘れがたく思っている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
とそれを
覗
(
のぞ
)
きにかゝつた。その大学生は幼稚園この
方
(
かた
)
まだ褒美といふものを貰つた事が無かつたので、
甚
(
ひど
)
くそれが珍しかつたのだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「これ、
温順
(
おとな
)
しく寝てるものを、そうッとして置くが可い」とお種は壁に寄せて寝かしてある一番
幼少
(
ちいさ
)
い銀造の顔を
覗
(
のぞ
)
きに行った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
三次が、大声を揚げて呶鳴り散らしていると、おもての戸が開け放しになっていて、
家内
(
なか
)
が見える。通りかかった人がふと
覗
(
のぞ
)
き込んで
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
覗
漢検準1級
部首:⾒
12画
“覗”を含む語句
覗見
差覗
覗込
垣覗
覗眼鏡
覗機関
明巣覗
股覗
覗窓戸
覗目鏡
覗得
覗口
覗出
覗入
見覗
藪覗
付覗
窺覗
盲目覗
盗人覗
...