トップ
>
欺
>
あざむ
ふりがな文庫
“
欺
(
あざむ
)” の例文
おつぎは
勘次
(
かんじ
)
の
敏捷
(
びんせふ
)
な
目
(
め
)
を
欺
(
あざむ
)
くには
此
(
これ
)
だけの
深
(
ふか
)
い
注意
(
ちうい
)
を
拂
(
はら
)
はなければならなかつた。それも
稀
(
まれ
)
なことで
數
(
かず
)
は
必
(
かなら
)
ず
一
(
ひと
)
つに
限
(
かぎ
)
られて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
しかもけっして
既成
(
きせい
)
の
疲
(
つか
)
れた
宗教
(
しゅうきょう
)
や、
道徳
(
どうとく
)
の
残滓
(
ざんし
)
を、色あせた
仮面
(
かめん
)
によって
純真
(
じゅんしん
)
な
心意
(
しんい
)
の
所有者
(
しょゆうしゃ
)
たちに
欺
(
あざむ
)
き
与
(
あた
)
えんとするものではない。
『注文の多い料理店』新刊案内
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
幅広き道路の両側に商家らしきが飛び/\に並んで居る様は新開地の市街たるを
欺
(
あざむ
)
かない。馬車は喇叭の音勇ましく此間を駈けた。
空知川の岸辺
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
秀夫は
欺
(
あざむ
)
かれたような気がして興味もなくなったので、料理を喫ってしまって帰って来たが、どうしても不思議でたまらなかった。
牡蠣船
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
勘定奉行
大橋近江守
(
おおはしおうみのかみ
)
殿を
欺
(
あざむ
)
き、
本多伯耆守
(
ほんだほうきのかみ
)
殿にまで御迷惑をかけ、百姓共の
強訴
(
ごうそ
)
を拒んで、大公儀の御眼を
昏
(
くら
)
ます不届千万の処置振り
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
もし世間の云うように、妻が私を
欺
(
あざむ
)
いているのなら、ああ云う、子供のような無邪気な顔は、決して出来るものではございません。
二つの手紙
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
不随意筋ばかりで出来てるような
寝台車掌
(
コントロルウ
)
! あの男は、確かにクイリナアレの廻し者です! 私の
読心術
(
テレパセイ
)
は、決して私を
欺
(
あざむ
)
きません。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ソシテ世ニモ珍シイ
廻
(
めぐ
)
リ合セト云ウベキハ、陰険ナ四人ガ互イニ
欺
(
あざむ
)
キ合イナガラモ力ヲ
協
(
あわ
)
セテ一ツノ目的ニ向ッテ進ンデイルヿデアル。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「貴様の如き
黄口児
(
こうこうじ
)
になんでこの袁紹が
欺
(
あざむ
)
かれようぞ。いかに嘘を構えても、謀叛心はもはや歴然だ。成敗して陣門にさらしてくれる」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
目覚しいのは、そこに生えた、森を
欺
(
あざむ
)
くような水芭蕉で、沼の片隅から
真蒼
(
まっさお
)
な柱を立てて、峰を割り空を裂いて、ばさばさと影を落す。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とかく我々が思わぬことを聞いたり見たりすると、一時
案外
(
あんがい
)
の驚きに打たれて、その人が
故意
(
こい
)
に我を
欺
(
あざむ
)
けりと判断することがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
と鬼を
欺
(
あざむ
)
く文治もそゞろに
愛憐
(
あいれん
)
の涙に暮れて、お町を
抱
(
かゝ
)
えたまゝ暫く
立竦
(
たちすく
)
んで居りまする。お町は
漸
(
ようや
)
く気も落着いたと見えまして
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
以て役人を
欺
(
あざむ
)
く段
不屆
(
ふとゞき
)
千萬なり其の申分甚だ
暗
(
くら
)
く且又
裾
(
すそ
)
の血而已に有らず庭のとび石に
足痕
(
あしあと
)
あるは既に捕手の役人より申立し如く其血を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
而
(
しか
)
してその間になんらの陰険なる野心もなく、またなんら選挙人を
欺
(
あざむ
)
くこともなく、公明正大の
裡
(
うち
)
に第一回の総選挙は行われたのである。
選挙人に与う
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
イワノウィッチの感じは、彼をまったく
欺
(
あざむ
)
かなかった。ある晩、彼は馬車を雇って、リザベッタが楽屋から出るのを迎えていた。
勲章を貰う話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
○北上川の中古の大洪水に白髪水というがあり、白髪の
姥
(
うば
)
を
欺
(
あざむ
)
き餅に似たる焼石を食わせし
祟
(
たたり
)
なりという。この話によく似たり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一個々玉を
欺
(
あざむ
)
く
礫
(
こいし
)
の上を琴の相の手弾く様な音立てゝ、金糸と閃めく
日影
(
ひかげ
)
紊
(
みだ
)
して
駛
(
はし
)
り行く水の清さは、まさしく溶けて流るゝ水晶である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ツァンニー・ケンボに
欺
(
あざむ
)
かれてロシアは真に仏教国でその皇帝は
菩提薩陲
(
ボーデサッタ
)
、
塵謌薩陲
(
マハーサッタ
)
であると信じて居るという話を致しますと
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
菜の花は
疾
(
と
)
くに通り過して、今は山と山の間を行くのだが、雨の糸が
濃
(
こまや
)
かでほとんど霧を
欺
(
あざむ
)
くくらいだから、
隔
(
へだ
)
たりはどれほどかわからぬ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人々は、それが蝋細工と分っても、そんなもので、どうして長い間、
世人
(
せじん
)
を
欺
(
あざむ
)
くことが川来たのかと、不思議にたえなかった。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自分の感じてることについて、心から自分を
欺
(
あざむ
)
いていた。かくて彼らの恋愛の大部分は、まったく書物から来たものであった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
人間て自分の事をめいめい好きなようにするもので、誰よりも一番うまく自分を
欺
(
あざむ
)
きおおせたものが、一ばん愉快に暮らしていくわけです。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
これよりして、我足は日として四井街に向はざることなく、
偶〻
(
たま/\
)
識る人に逢ふことあれば、散歩のゆくてはヰルラ、アルバニなりと
欺
(
あざむ
)
きつ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
しかし不幸にも現代はかかる聖賢の声を用いる事を恐れている。しかし吾々はかかる偉大な古人の教えが吾々を
欺
(
あざむ
)
かない事を信じねばならぬ。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「決して
善
(
い
)
いことじゃない。親友を
欺
(
あざむ
)
いているんだから、気が咎めるよ。
寧
(
むし
)
ろ直ぐに打ち明けて頼む方がいゝかも知れない」
田園情調あり
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
好機
逸
(
いっ
)
すべからずとて、
遂
(
つい
)
に母上までも
欺
(
あざむ
)
き参らせ、親友の招きに応ずと言い
繕
(
つくろ
)
いて、一週間ばかりの
暇
(
いとま
)
を乞い、翌日家の
軒端
(
のきば
)
を立ち
出
(
い
)
でぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
わたくしは
隱岐
(
おき
)
の島にいてこの國に渡りたいと思つていましたけれども渡るすべがございませんでしたから、海の
鰐
(
わに
)
を
欺
(
あざむ
)
いて言いましたのは
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
さすがに怒った寄せ手の勢は、
欺
(
あざむ
)
かれるとは夢にも知らず、先陣にあたった五百余人、馬乗り放して
歩
(
かち
)
だちとなり、喚いて門内へ駈け込んだ。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と何の苦もなく釿もぎ取り捨てながら上からぬっと出す顔は、八方
睨
(
にら
)
みの
大眼
(
おおまなこ
)
、一文字口怒り鼻、
渦巻
(
うずまき
)
縮れの
両鬢
(
りょうびん
)
は不動を
欺
(
あざむ
)
くばかりの
相形
(
そうぎょう
)
。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
欺
(
あざむ
)
くに詞なければ、
実
(
じつ
)
をもて
告
(
つ
)
ぐるなり。必ずしもあやしみ給ひそ。吾は
九三
陽世
(
うつせみ
)
の人にあらず、
九四
きたなき
霊
(
たま
)
のかりに
形
(
かたち
)
を見えつるなり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
されどかのグアスコニア
人
(
びと
)
が未だ貴きアルリーゴを
欺
(
あざむ
)
かざるさきにその徳の光は、
銀
(
かね
)
をも
疲
(
つかれ
)
をも心にとめざる事において現はれむ 八二—八四
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
私はただ人間、そして人間性というものの必然の生き方をもとめ、自我自らを
欺
(
あざむ
)
くことなく生きたい、というだけである。
デカダン文学論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
わたくしも、初めて、女として生れ甲斐があったということを、今こそ
欺
(
あざむ
)
かずに申し上げることができるのでございます。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
僕の如きも現に
欺
(
あざむ
)
かれて居た
一人
(
いちにん
)
のだ、そりや君、酒は飲む
放蕩
(
はうたう
)
はする、篠田の偽善程恐るべき者は無い、現に其の
掩
(
おほ
)
ふべからざる明証の一は
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「紳士」という偽善の体面を持たぬ方が、第一に世を
欺
(
あざむ
)
くという心に
疚
(
やま
)
しい事がなく、社会の真相を
覗
(
うかが
)
い、人生の誠の涙に触れる機会もまた多い。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
投者
(
ピッチャー
)
は打者に向って球を投ずるを常務と
為
(
な
)
す。その
正投
(
ピッチ
)
の方、
外曲
(
アウトカーブ
)
、
内曲
(
インカーブ
)
、
墜落
(
ドロップ
)
等種々ありけだし打者の眼を
欺
(
あざむ
)
き悪球を打たしめんとするにあり。
ベースボール
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
〔譯〕君子は自ら
慊
(
こゝろよ
)
くし、小人は自ら
欺
(
あざむ
)
く。君子は自ら
彊
(
つと
)
め、小人は自ら
棄
(
す
)
つ。上
達
(
たつ
)
と下
達
(
たつ
)
とは、一の
自
(
じ
)
の字に
落在
(
らくざい
)
す。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
恋に酔っている女性ほど、他の男に対して無慾に見えるものはない。おぬいさんの無邪気らしさに
欺
(
あざむ
)
かれかけたのはあまりばからしいことだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
から、
強
(
あなが
)
ちそればかりを怒ッた訳でもないが、
只
(
ただ
)
腹が立つ、まだ何か
他
(
た
)
の事で、おそろしくお勢に
欺
(
あざむ
)
かれたような心地がして、訳もなく腹が立つ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私の妻に會ふやうに招きます! 私が
欺
(
あざむ
)
かれてどんな人間を
娶
(
めと
)
つたかお目にかけます、そして私がその契約を破つて
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
私は破邪の剣を振って悪者と格闘するよりは、頬の赤い村娘を
欺
(
あざむ
)
いて一夜寝ることの方を好むのである。理想にも、たくさんの種類があるものである。
デカダン抗議
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
また少女の姿は、初めて
逢
(
あ
)
ひし人を動かすに
余
(
あまり
)
あらむ。
前庇
(
まえびさし
)
広く飾なき
帽
(
ぼう
)
を
被
(
か
)
ぶりて、年は十七、八ばかりと見ゆる
顔
(
かん
)
ばせ、ヱヌスの古彫像を
欺
(
あざむ
)
けり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
彼は教授の
留
(
と
)
めるのも聞かず、
勇躍
(
ゆうやく
)
飛んで出ると、スイッチを
真暗
(
まっくら
)
の中に
探
(
さぐ
)
ってパッと
灯
(
ひ
)
をつけた。たちまち
室内
(
しつない
)
は昼を
欺
(
あざむ
)
くように
煌々
(
こうこう
)
たる光にみちた。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
滿船
(
まんせん
)
を
照
(
てら
)
す
其
(
その
)
光
(
ひかり
)
は
白晝
(
はくちう
)
を
欺
(
あざむ
)
かんばかり、
其
(
その
)
光
(
ひかり
)
の
下
(
した
)
に
一個
(
いつこ
)
の
異樣
(
ゐやう
)
なる
人影
(
ひとかげ
)
現
(
あら
)
はれて、
忽
(
たちま
)
ち
檣桁
(
しやうかう
)
高
(
たか
)
く
信號旗
(
しんがうき
)
が
上
(
あが
)
つた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
なぜなら、自然のみが、どこに行っても、
莞爾
(
かんじ
)
として、遊子を
懐
(
ふところ
)
にいれて
欺
(
あざむ
)
かないからだ。しかし、変らないというばかりでは、このことは説明されない。
彼等流浪す
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
雪を
欺
(
あざむ
)
くとか玉の肌とかいふのはこんなのを指すのであらうかと、まだ物心のつかぬ少年の私も、何となく一種眩しい思ひなしに
窃
(
ぬす
)
み見ることも出来なかつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
紫の野郎帽子に額を隠し、優にやさしい女姿、——小刻みに歩み行く、﨟たけたこの
青年俳優
(
わかおやま
)
の、星を
欺
(
あざむ
)
く瞳の、何と
俄
(
にわ
)
かに凄まじい殺気を帯びて来たことよ!
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と、自分の計画が、
何
(
ど
)
の程度大岡を
欺
(
あざむ
)
き得たかを知りたさに、と同時に、それは、越前守の器量を試す事にもなるという意味から、聞くと、越前は、微笑して
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
または
悪辣
(
あくらつ
)
な売淫周旋業者と売淫業者との巧弁悪計に
欺
(
あざむ
)
かれて身を売るというような原因も加っている。
私娼の撲滅について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
一時の
豪気
(
ごうき
)
は以て
懦夫
(
だふ
)
の
胆
(
たん
)
を
驚
(
おどろ
)
かすに足り、一場の
詭言
(
きげん
)
は以て少年輩の心を
籠絡
(
ろうらく
)
するに足るといえども、
具眼卓識
(
ぐがんたくしき
)
の
君子
(
くんし
)
は
終
(
つい
)
に
欺
(
あざむ
)
くべからず
惘
(
し
)
うべからざるなり。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
欺
常用漢字
中学
部首:⽋
12画
“欺”を含む語句
詐欺
欺騙
詐欺師
欺罔
欺瞞
欺誑
虚欺
詐欺賭博
欺瞞者
欺撃
欺討
欺詐
詐欺漢
詐欺物
被欺
野天詐欺
詐欺的
自己欺瞞
詐欺罪
素人欺瞞
...