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杯
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さかずき
ふりがな文庫
“
杯
(
さかずき
)” の例文
すると、軽く膝を
支
(
つ
)
いて、
蒲団
(
ふとん
)
をずらして、すらりと向うへ、……
扉
(
ひらき
)
の前。——
此方
(
こなた
)
に劣らず
杯
(
さかずき
)
は重ねたのに、
衣
(
きぬ
)
の
薫
(
かおり
)
も
冷
(
ひや
)
りとした。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
杯
(
さかずき
)
のめぐるままに、人々の顔には
微醺
(
びくん
)
がただよう。——詩の話、
和歌
(
うた
)
の朗詠、興に入って尽きないのである。と、思い出したように
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お
杯
(
さかずき
)
の
数
(
かず
)
がだんだん
重
(
かさ
)
なるうちに、おかしららしい
鬼
(
おに
)
は、だれよりもよけいに
酔
(
よ
)
って、さもおもしろそうに
笑
(
わら
)
いくずれていました。
瘤とり
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
その前夜には、二人の弟もその妻たちも妹もそろって大森の両親のもとに
集
(
あつま
)
った。そうして一同が私のために盛んに
杯
(
さかずき
)
をあげてくれた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
気をかえようとして取り上げたのが、
杯
(
さかずき
)
ではなくて、火の消えた煙管でしたから、それが一層、七兵衛をめいらせるような気持にして
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
どのテーブルにもアペリチーフの
杯
(
さかずき
)
を前にした男女が仲間とお
喋
(
しゃべ
)
りするか、
煙草
(
たばこ
)
の煙を輪に吹きながら
往来
(
おうらい
)
を眺めたりしている。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「馬鹿! 一升餅くらいで、一里からの
雪路
(
ゆきみち
)
、吉田様まで、誰が行くものか。
俺
(
おれ
)
の欲しいの、餅なんかじゃねえ。銀の
杯
(
さかずき
)
を欲しいのだ。」
手品
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
夫婦のかための
杯
(
さかずき
)
はあったが、夫婦の語らいはなかった。で、お綾さんが里へ来て、その事をお母様へお話をしたものらしい。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
高橋信造は
此処
(
ここ
)
まで話して来て
忽
(
たちま
)
ち
頭
(
かしら
)
をあげ、西に傾く日影を
愁然
(
しゅうぜん
)
と見送って苦悩に
堪
(
た
)
えぬ様であったが、手早く
杯
(
さかずき
)
をあげて一杯飲み干し
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そして親類たちは、私とその男とを並べて座らせて、例の
三々九度
(
さんさんくど
)
の
杯
(
さかずき
)
というのを取り交わさせて、「おめでとう」と祝ってくれたのです。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そして、漁師が大きな魚をもってきたのをよろこんで、
高坏
(
たかつき
)
に盛った桃を与え、そのうえ
杯
(
さかずき
)
を与えて十分おのませになった。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
無限の残忍なる風に
橄欖
(
かんらん
)
の木立ちの震える頃、星をちりばめた大空のうちに、影をしたたらせ暗黒にあふれてる恐るべき
杯
(
さかずき
)
が前に現われた時
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「これは豚だな」「ええ豚でござんす」「ふん」と
大軽蔑
(
だいけいべつ
)
の調子をもって飲み込んだ。「酒をもう一杯飲もう」と
杯
(
さかずき
)
を出す。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
マリイは物語の
半
(
なかば
)
より色をたがへて、目は巨勢が唇にのみ注ぎたりしが、手に持ちし
杯
(
さかずき
)
さへ一たびは震ひたるやうなりき。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「槍には三位の
位
(
くらい
)
がある。いわば武器の王様だ。どいつだ、王様を馬鹿にするのは!」わめいているのは丸橋忠弥、朱塗りの
杯
(
さかずき
)
が膝の前にある。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
実にこの差別は
天地霄壌
(
てんちしょうじょう
)
もただならざる差別であって、ヨブは大苦難の
杯
(
さかずき
)
を飲みしために、
遂
(
つい
)
にかくの如き霊的進歩を
遂
(
と
)
ぐるに至ったのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
彼
(
かれ
)
は
微笑
(
びしょう
)
を
以
(
もっ
)
て
苦
(
くるしみ
)
に
対
(
むか
)
わなかった、
死
(
し
)
を
軽蔑
(
けいべつ
)
しませんでした、
却
(
かえ
)
って「この
杯
(
さかずき
)
を
我
(
われ
)
より
去
(
さ
)
らしめよ」と
云
(
い
)
うて、ゲフシマニヤの
園
(
その
)
で
祈祷
(
きとう
)
しました。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
右近は、
酒杯
(
さかずき
)
を持った手をわざとふるわせて見せた。
黄金
(
こがね
)
色の液体が
杯
(
さかずき
)
のふちからあふれ落ちて、右近の手をつたい、
肘
(
ひじ
)
から
膝
(
ひざ
)
へしたたっている。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかしやっとひと息ついたと思うと、今度は
三鞭酒
(
シャンパン
)
の
杯
(
さかずき
)
を挙げて立ち上らなければならなかった。それはこの晩餐の中でも最も苦しい何分かだった。
たね子の憂鬱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は飲んだくれだが、
杯
(
さかずき
)
も
徳利
(
とっくり
)
も持たず、ビールの栓ぬきも持っていない。部屋では酒も飲まないことにしていた。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
杯
(
さかずき
)
に触れなば思い起せよ、かつて、そは、King Hiero の
宴
(
うたげ
)
にて、森蔭深き
城砦
(
じょうさい
)
の、いと古びたる円卓子に、将士あまた招かれにし——私は
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
彼はお幸ちゃんの置いた一合
罎
(
びん
)
を
執
(
と
)
るなり、
己
(
じぶん
)
で
注
(
つ
)
いで飲み、また注いで飲んで、三ばい目の
杯
(
さかずき
)
を下に置いた。
雪の夜の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「僕にも近頃
流行
(
はや
)
るまがい物の名前はわからない。
贋物
(
にせもの
)
には大正とか改良とかいう形容詞をつけて置けばいいんだろう。」と唖々子は常に
杯
(
さかずき
)
を
放
(
は
)
なさない。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今となっては
如何
(
どう
)
やら一日位は延ばしても
好
(
い
)
いような心持になっている
中
(
うち
)
に、支度はズンズン出来て、さて改まって
父母
(
ちちはは
)
と別れの
杯
(
さかずき
)
の真似事をした時には
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
初めは風の音かと思っていましたが、それが何度も続くものですから、平助も少し気になりました。彼は
杯
(
さかずき
)
を前に置いて、表の方をふり返りながらたずねました。
正覚坊
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
総大将は若旦那の利太郎それに
幇間
(
ほうかん
)
芸者等の
末社
(
まっしゃ
)
が加わり春琴には佐助が附き添って行ったこと云うまでもない佐助はその日利太郎始め末社からちょいちょい
杯
(
さかずき
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
長十郎はその日一家四人と別れの
杯
(
さかずき
)
を
酌
(
く
)
み
交
(
かわ
)
し、母のすすめに任せて、もとより酒好きであった長十郎は更に杯を重ね、快く酔って、微笑を含んだまま
午睡
(
ごすい
)
をした。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
と叫んで、花田の前に立ちはだかり、
杯
(
さかずき
)
をカチンと合わせた。グッとほして、お互の肩を叩き合う。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それから、巫女たちの眼が、花の冠の
陰
(
かげ
)
でキラキラ光って、花の冠は黒っぽくしたいわ。
虎
(
とら
)
の皮や、
杯
(
さかずき
)
も、忘れないでちょうだい。——それに
金
(
きん
)
だわ、金をどっさりね
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
俊寛 今わしが流すこのあぶらのような涙をお前の歓楽の
杯
(
さかずき
)
に注ぎ込んで飲まさずにはおかぬぞよ。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
二階は貴衆両院議員の有志が懇親会とやら抜けるほどの騒ぎに引きかえて、下の小座敷は
婢
(
おんな
)
も寄せずただ
二人
(
ふたり
)
話しもて
杯
(
さかずき
)
をあぐるは山木とかの田崎と呼ばれたる男なり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
自分からもガラッ八を説いて、「いざ三三九度の
杯
(
さかずき
)
という時、
真物
(
ほんもの
)
の聟の錦太郎と入れ替らせるから」という条件で、
漸
(
ようや
)
く聟入りの偽首になることを承知させたのでした。
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
美
(
うつく
)
しい
女
(
おんな
)
たちは、
悲
(
かな
)
しい、やるせない
唄
(
うた
)
をうたいながら、
酒場
(
さかば
)
の
前
(
まえ
)
をあるいていました。
若者
(
わかもの
)
たちは、
夕焼
(
ゆうや
)
けのように
紅
(
あか
)
い、サフラン
酒
(
しゅ
)
の
杯
(
さかずき
)
を、
唇
(
くちびる
)
にあてて
味
(
あじ
)
わっていました。
砂漠の町とサフラン酒
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ひとりひとりの
食卓
(
しょくたく
)
の上には、お
皿
(
さら
)
や
杯
(
さかずき
)
の
食器
(
しょっき
)
がひとそろいならべてあって、それは、大きな金の箱にはいっている、さじだの、ナイフだの、フォークだので、こののこらずが
眠る森のお姫さま
(新字新仮名)
/
シャルル・ペロー
(著)
花魁の位牌と
杯
(
さかずき
)
をしてくれたらば、若草が成仏するだろう、
私
(
わし
)
の
怨
(
うらみ
)
も晴れるというのですが、是は田舎気質の婆さんだから
屹度
(
きっと
)
晴れるかも知れませんよ、お
呪咀
(
まじない
)
さえ利きますから
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
嘗
(
かつ
)
て
采女
(
うねめ
)
をつとめたことのある女が侍していて、左手に
杯
(
さかずき
)
を捧げ右手に水を盛った
瓶子
(
へいし
)
を持ち、王の
膝
(
ひざ
)
をたたいて此歌を吟誦したので、王の怒が解けて、楽飲すること終日であった
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
夏の暑い盛りだと下帯一つの丸裸で晩酌の膳の前にあぐらをかいて、
渋団扇
(
しぶうちわ
)
で蚊を追いながら実にうまそうに
杯
(
さかずき
)
をなめては子供等を相手にして色々の話をするのが楽しみであったらしい。
重兵衛さんの一家
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
御前へ
女二
(
にょに
)
の
宮
(
みや
)
のほうから
粉熟
(
ふずく
)
が奉られた。
沈
(
じん
)
の木の
折敷
(
おしき
)
が四つ、
紫檀
(
したん
)
の
高坏
(
たかつき
)
、藤色の
村濃
(
むらご
)
の
打敷
(
うちしき
)
には同じ花の折り枝が
刺繍
(
ぬい
)
で出してあった。銀の
陽器
(
ようき
)
、
瑠璃
(
るり
)
の
杯
(
さかずき
)
瓶子
(
へいし
)
は
紺瑠璃
(
こんるり
)
であった。
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
アウシュコルンは
驚惶
(
きょうこう
)
の
体
(
てい
)
で、コーンヤックの小さな
杯
(
さかずき
)
をぐっとのみ干して立ちあがった。長座した
後
(
あと
)
の第一歩はいつもながら格別に難渋なので、
今朝
(
けさ
)
よりも一きわ
悪
(
あ
)
しざまに前にかがみ
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
二人の前の
杯
(
さかずき
)
に、ゼラール中尉の注文によって注がれた酒は、地回りの葡萄酒で——収穫の僅かなベルギー産の葡萄から作ったものでかなり上品な味を持っていたが、パリに二年も留学して
ゼラール中尉
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そこには細君と一人の下男とが一つの
杯
(
さかずき
)
の酒を飲みあっていたが、その
状
(
さま
)
がいかにも
狎褻
(
おうせつ
)
であるから周は火のようになって怒り、二人を
執
(
とら
)
えようと思ったが、一人では勝てないと思いだしたので
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
ともかくも
御身
(
おんみ
)
の意見に任すべしと
諾
(
うべな
)
われなお重井にして当地に来りなば、宅に招待して親戚にも面会させ、その他の兄弟とも
余所
(
よそ
)
ながらの
杯
(
さかずき
)
させん
抔
(
など
)
、なかなかに勇み立たれければ、妾も安心して
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
私の
杯
(
さかずき
)
は大きくはないが、しかし私は……他人の杯で飲む。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「お
杯
(
さかずき
)
をさし上げて、失礼でござんせんければ——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「お父上様、お
杯
(
さかずき
)
をいただかしてくださいませ。」
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
おかしらの
鬼
(
おに
)
もお
杯
(
さかずき
)
を
左
(
ひだり
)
の手に
持
(
も
)
って、おもしろそうに
笑
(
わら
)
いながら
聞
(
き
)
いています。その
様子
(
ようす
)
は
少
(
すこ
)
しも
人間
(
にんげん
)
と
違
(
ちが
)
ったところはありません。
瘤とり
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
われら三人は、桃園に義を結んで、兄弟の
杯
(
さかずき
)
をかため、同年同日に生るるを求めず、同年同日に死なんと——誓い合った仲ではなかったか
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
待遇
(
もてな
)
すやうなものではない、
銚子
(
ちょうし
)
杯
(
さかずき
)
が出る始末、
少
(
わか
)
い女中が二人まで給仕について、寝るにも
紅裏
(
べにうら
)
の
絹布
(
けんぷ
)
の
夜具
(
やぐ
)
、
枕頭
(
まくらもと
)
で
佳
(
い
)
い
薫
(
かおり
)
の
香
(
こう
)
を
焚
(
た
)
く。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
出し抜けに呼びかけられた若者は
倔強
(
くっきょう
)
な
頸筋
(
くびすじ
)
を曲げてちょっとこっちを見た。すると小林はすぐ
杯
(
さかずき
)
をそっちの方へ出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今宵
(
こよい
)
は月の光を
杯
(
さかずき
)
に
酌
(
く
)
みて快く飲まん、思うことを語り尽くして声高く笑いたし、と二郎は
心地
(
ここち
)
よげに東の空を仰ぎぬ。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
杯
常用漢字
中学
部首:⽊
8画
“杯”を含む語句
一杯
酒杯
洋杯
三杯
硝子杯
乾杯
小杯
手杯
杯盤
杯盤狼藉
精一杯
杯事
大杯
幾杯
高脚杯
罰杯
床杯
腹一杯
朱杯
一杯機嫌
...