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杖
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つえ
ふりがな文庫
“
杖
(
つえ
)” の例文
陸
(
おか
)
の麦畑の間にある
路
(
みち
)
から、
中脊
(
ちゅうぜい
)
の
肥満
(
ふと
)
った
傲慢
(
ごうまん
)
な顔をした長者が、
赤樫
(
あかがし
)
の
杖
(
つえ
)
を
引摺
(
ひきず
)
るようにしてあるいて来るところでありました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
若君のお刀は伝家の宝刀、ひとの手にふれさせていい
品
(
しな
)
ではありませぬ。また、
拙者
(
せっしゃ
)
の
杖
(
つえ
)
は
護仏
(
ごぶつ
)
の
法杖
(
ほうじょう
)
、
笈
(
おい
)
のなかは
三尊
(
さんぞん
)
の
弥陀
(
みだ
)
です。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一人は細い
杖
(
つえ
)
に
言訳
(
いいわけ
)
ほどに身をもたせて、
護謨
(
ゴム
)
びき靴の右の
爪先
(
つまさき
)
を、
竪
(
たて
)
に地に突いて、左足一本で細長いからだの中心を
支
(
ささ
)
えている。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その晩月が出るのを待って、三人は
八幡様
(
はちまんさま
)
へ出かけました。次郎七と五郎八とは
縄
(
なわ
)
を持ち、老人は
南天
(
なんてん
)
の木の枝を
杖
(
つえ
)
についていました。
狸のお祭り
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
綱
(
つな
)
の
家来
(
けらい
)
が
門
(
もん
)
のすきまからのぞいてみますと、
白髪
(
しらが
)
のおばあさんが、
杖
(
つえ
)
をついて、
笠
(
かさ
)
をもって、
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
に
立
(
た
)
っていました。
家来
(
けらい
)
が
羅生門
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
▼ もっと見る
老婆は、
蛙股
(
かえるまた
)
の
杖
(
つえ
)
にあごをのせて、もう一度しみじみ、女のからだを見た。さっき、犬が食いかかったというのは、これであろう。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「では……」と云って、自然木の
杖
(
つえ
)
を突いて、やや皮肉な笑いをうかべ、もういちど、「それでは」と云って、そうして去っていった。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
其処
(
そこ
)
でもう
所詮
(
しよせん
)
叶
(
かな
)
はぬと
思
(
おも
)
つたなり、これは
此
(
こ
)
の
山
(
やま
)
の
霊
(
れい
)
であらうと
考
(
かんが
)
へて、
杖
(
つえ
)
を
棄
(
す
)
てゝ
膝
(
ひざ
)
を
曲
(
ま
)
げ、じり/\する
地
(
つち
)
に
両手
(
りやうて
)
をついて
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その意見に反対しようものなら、すぐに
杖
(
つえ
)
を振り上げた。大世紀(訳者注 ルイ十四世時代)のころのようになぐりつけまでした。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
遠くで梟が鳴いています。いずれ本屋でしょうが、どんな御本がお気に入ったのかと思いました。御手には
杖
(
つえ
)
ばかりのようでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
その
中
(
なか
)
にもなおわずかにわが曲りし
杖
(
つえ
)
を
留
(
とど
)
め、疲れたる歩みを休めさせた処はやはりいにしえの
唄
(
うた
)
に残った
隅田川
(
すみだがわ
)
の両岸であった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
薄汚
(
うすぎた
)
ない
法衣
(
ころも
)
を着て、背には袋へ入れた琵琶を
頭高
(
かしらだか
)
に背負っているから琵琶法師でありましょう。
莚張
(
むしろば
)
りの中へ
杖
(
つえ
)
を突き入れると
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ある時分家に遊びに来て
帰途
(
かえりみち
)
、墓守が縁側に腰かけて、納屋大小家幾棟か有って居ることを誇ったりしたが、
杖
(
つえ
)
を忘れて帰って了うた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
杖
(
つえ
)
がつきものになっている魔法使いはたいていばあさんかじいさんであるが、しかし彼らの杖はだいぶ使用の目的が違っていて
ステッキ
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼は我が児以上に春琴の身を案じたまたま
微恙
(
びよう
)
で欠席する等のことがあれば直ちに
使
(
つかい
)
を道修町に走らせあるいは自ら
杖
(
つえ
)
を
曳
(
ひ
)
いて
見舞
(
みま
)
った。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
フィールスがはいってきて、自分の
杖
(
つえ
)
を横手のドアのそばに立てかける。ヤーシャも客間からはいって来て、ダンスを見物する。
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
塩田は散歩するに友を
誘
(
いざな
)
わぬので、友が
密
(
ひそか
)
に跡に附いて行って見ると、竹の
杖
(
つえ
)
を指の腹に立てて、本郷
追分
(
おいわけ
)
の
辺
(
へん
)
を
徘徊
(
はいかい
)
していたそうである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
村の人が大勢出て見ると、若い法師が
杖
(
つえ
)
をもって田の水口に立ち、
溝
(
みぞ
)
の水をかきまわしているのが、月の光でよく見えました。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そのうちに、おまんも
杖
(
つえ
)
をついて裏二階の方から
通
(
かよ
)
って来た。いよいよ輝きを加えたこの継母の髪の白さにも彼の頭はさがる。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ただ気違いじみた
空威張
(
からいば
)
りから、手にした
杖
(
つえ
)
で、ちょうど愛妻の死骸が内側に立っている部分の煉瓦細工を、強くたたいた。
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
まるで背中の所で二つに折れたみたいに、腰が曲っていて、歩くにも、
杖
(
つえ
)
にすがって、鍵のように折れ曲って、首だけで向うを見て歩くのよ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
大八車
(
だいはちぐるま
)
が続けさまに
田舎
(
いなか
)
に向いて帰って行く小石川の夕暮れの中を、葉子は
傘
(
かさ
)
を
杖
(
つえ
)
にしながら思いにふけって歩いて行った。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
火鉢の縁に
臂
(
ひじ
)
をもたせて、両手で頭を押えてうつむいている吉里の前に、
新造
(
しんぞ
)
のお熊が
煙管
(
きせる
)
を
杖
(
つえ
)
にしてじろじろと見ている。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
村方
(
むらかた
)
の家々にては
慌
(
あわ
)
てゝ戸を閉じ子供は泣く、老人は
杖
(
つえ
)
を棄てゝ
逃
(
にげ
)
るという始末で、いやもう
一方
(
ひとかた
)
ならぬ騒ぎでございます。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
我
(
おれ
)
は火の玉の兄きがところへ遊びに行たとお吉帰らば云うておけ、と
草履
(
ぞうり
)
つっかけ出合いがしら、
胡麻竹
(
ごまだけ
)
の
杖
(
つえ
)
とぼとぼと
焼痕
(
やけこげ
)
のある
提灯
(
ちょうちん
)
片手
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私
(
わたくし
)
がある
日
(
ひ
)
海岸
(
かいがん
)
で
遊
(
あそ
)
んで
居
(
お
)
りますと、
指導役
(
しどうやく
)
のお
爺
(
じい
)
さんが
例
(
れい
)
の
長
(
なが
)
い
杖
(
つえ
)
を
突
(
つ
)
きながら
彼方
(
むこう
)
からトボトボと
歩
(
ある
)
いて
来
(
こ
)
られました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
お前は
家
(
うち
)
の一人息子、わたしにとってもドゥーニャにとっても、お前はこの世のすべてです、
杖
(
つえ
)
とも柱とも頼むほどです。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
シュルツとクンツとは、報知を心の中でくり返し考えながら、
上
(
うわ
)
の空の言葉をかわしていた。突然クンツは立ち止まって、
杖
(
つえ
)
で地面をたたいた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
B えええ、
杖
(
つえ
)
をついてやっと歩く位の年寄だから牛乳壜はもとより、お爺さんはそこへ転んだのですって。Cさんはびっくりして抱起しながら
大きな手
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
なにしろ、前が見えないのに、どんどん進んでいくのだから、まるで眼の見えない人が、
杖
(
つえ
)
なしで、
崖
(
がけ
)
のうえをはしっているようなものであった。
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
面会に来たのは
杖
(
つえ
)
をつき、腰の半ば曲った老婆であった。黄色い日の弱々しく流れた庭の一隅に、影法師をおとして二人は向い合って立っている。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
父親の親類というのはどこにもなく、
生命
(
いのち
)
の綱とも
杖
(
つえ
)
とも柱とも頼んでいた弟に死なれてからは本当の母ひとり娘ひとりのたよりない
境涯
(
きょうがい
)
であった。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
黄昏
(
たそがれ
)
の暗さに大槻の
浴衣
(
ゆかた
)
を着た後姿は小憎らしいほどあざやかに、細身の
杖
(
つえ
)
でプラットホームの
木壇
(
もくだん
)
を
叩
(
たた
)
いている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
ことに水夫らにとっては、まるで盲人が
杖
(
つえ
)
をかついで、文字どおり盲滅法に走っているように思われるのであった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
あくる朝、わたしは早く起きて、庭の木で
杖
(
つえ
)
を一本作ると、城門の外へ出て行った。ちょっと散歩をして、うさ晴らしをしてやれ、と思ったのである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
しかし、わたしはお別れに臨んで、悪魔の
杖
(
つえ
)
によって隠されたる原因をはっきりと申し上げておきたく存じます。
錯覚の拷問室
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
宮内はまだ、そこに死んでいるのではなかった、大刀を
杖
(
つえ
)
に、棟を
跨
(
また
)
いで突っ起ったが、乱髪を一とふり振った。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
いちばん年上の男は
腰帯
(
こしおび
)
に
水筒
(
すいとう
)
を下げ、頭のそばにはパン種のはいらないパンをいれた
袋
(
ふくろ
)
をもっていましたが、この男が
杖
(
つえ
)
で砂の上に正方形をえがいて
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
不意に
辷
(
すべ
)
り
転
(
こ
)
けた すると頭の上にあった荷物が横になって片手で上げにゃあならんようになった。もう
杖
(
つえ
)
は間に合わぬようになってずんずん流された。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
わが玉の緒の断えんばかり悲しい時に命の
杖
(
つえ
)
とすがった事のあるおはまである。ほかの事ならばわが身の一部をさいても慰めてやらねばならないおはまだ。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
もし彼らを失ったら、永きこの世の旅に誰か堪え得るであろう。遍路の
杖
(
つえ
)
には「
同行二人
(
どうぎょうににん
)
」と記してあるが、工藝をかかる旅の同行と云い得ないであろうか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
合戦の
勢
(
いきおい
)
がまた
盛返
(
もりかえ
)
したとの注進も
洞
(
うつ
)
ろ心に聞きながし、わたくしは
薙刀
(
なぎなた
)
を
杖
(
つえ
)
に北の
御階
(
みはし
)
にどうと腰を
据
(
す
)
えたなり、夕刻まではそのまま動けずにおりました。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
何しろ周三は、其の
際
(
さい
)
氣
(
き
)
がせきゝてゐて、失敗の製作までも
回護
(
かは
)
ふだけ心に
餘裕
(
よゆう
)
がなかツた。雖然奈何なる道を行くにしても
盲者
(
めくら
)
は
杖
(
つえ
)
を持ツことを忘れない。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
その先達に
初歩
(
ふみはじめ
)
を
教
(
おそ
)
わってこの道に入りましてから、今年でもう十六年になりますが、
杖
(
つえ
)
とも思うは実にこの
書
(
ほん
)
で、一日もそばを放さないのでございますよ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
若
(
わか
)
い
椿
(
つばき
)
の、
柔
(
やわ
)
らかい
葉
(
は
)
はすっかりむしりとられて、みすぼらしい
杖
(
つえ
)
のようなものが
立
(
た
)
っていただけでした。
牛をつないだ椿の木
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
〽
杖
(
つえ
)
にすがりてよろよろと、本の
藁屋
(
わらや
)
へかえりけり、
百年
(
ももとせ
)
の
姥
(
うば
)
と聞こえしは、小町が果ての名なりけり……
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
親鸞 良寛、ちょっと私の
笈
(
おい
)
を見てくれ。最前
杖
(
つえ
)
があたった時に変な音がしたのだが、もしかすると……
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
杖
(
つえ
)
を突いて、ヨボヨボ歩いている可哀そうな姿を見ると、
大抵
(
たいてい
)
の
家
(
いえ
)
では買ってやるようでありました。
納豆合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
岸に沿って
彎曲
(
わんきょく
)
している防波堤の石に腰かけて
杖
(
つえ
)
をたらせばその先の一、二寸はらくに海水にひたる。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
そこからは腰の痛みの軽い日は、
杖
(
つえ
)
に
縋
(
すが
)
りながらでも、笠寺観音から、あの附近に断続して残っている低い家並に松株が挟まっている旧街道の面影を尋ねて歩いた。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“杖”の解説
杖(つえ)は、体を支え、歩行の助けとするために用いられる細長くまっすぐな、手で持つのに適した道具。長くて自分の腰の高さ程度のもので、木製、竹製である場合が多い。稀に象牙や金属で作られることもある。杖は権威の象徴とされたほか、蛇や獣を追い払う道具さらに武器としても使われた。また、白杖は視覚障害者の安全の確保のためにも用いられる。
(出典:Wikipedia)
杖
漢検準1級
部首:⽊
7画
“杖”を含む語句
洋杖
頬杖
撞木杖
竹杖
錫杖
虎杖
金剛杖
松葉杖
粥杖
息杖
側杖
仕込杖
弓杖
頤杖
杖柱
禅杖
遊杖
卯杖
刀杖
桛杖
...