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朱
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しゅ
ふりがな文庫
“
朱
(
しゅ
)” の例文
日光の
隠顕
(
いんけん
)
するごとに、
天
(
そら
)
の色はあるいは黒く、あるいは
蒼
(
あお
)
く、
濃緑
(
こみどり
)
に、
浅葱
(
あさぎ
)
に、
朱
(
しゅ
)
のごとく、雪のごとく、激しく異状を示したり。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
満面
朱
(
しゅ
)
を注いでの熱演は大河の蝉の鳴き声とは全く
対蹠的
(
たいしょてき
)
だったが、節まわしはさすがに堂に入ったもので、これも大喝采だった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
ソレは乗らぬことにして、その少し
先
(
さ
)
きに下駄屋が見えるから、下駄屋へ
寄
(
よっ
)
て下駄一足に傘一本
買
(
かっ
)
て両方で二
朱
(
しゅ
)
余り、三朱出ない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その
中
(
うち
)
に赤木は、「一体支那人は本へ
朱
(
しゅ
)
で
圏点
(
けんてん
)
をつけるのが皆うまい。日本人にやとてもああ円くは出来ないから、不思議だ。」
田端日記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
宗像博士は、満面に
朱
(
しゅ
)
を
注
(
そそ
)
いで、川手氏にというよりは、寧ろ我れと我が心に誓うもののように、烈しい決意を示すのであった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
吹針
(
ふきばり
)
の蚕婆は、ちょうどその時、三重の塔のいただきへのぼって、
朱
(
しゅ
)
の
欄干
(
らんかん
)
から向こうをみると、今しも、竹童ののった
大鷲
(
おおわし
)
が
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その話を妙善から、
直接
(
すぐ
)
に
祖父
(
じい
)
が聞いたんです。
或
(
ある
)
時
祖父
(
じい
)
が僕を連れて、その墓場へ見せに行った。見ると、ちゃんと
朱
(
しゅ
)
が入っている。——
□本居士
(新字新仮名)
/
本田親二
(著)
反絵の顔は
勃然
(
ぼつぜん
)
として
朱
(
しゅ
)
を浮べると、彼の
拳
(
こぶし
)
は反耶の
角髪
(
みずら
)
を打って鳴っていた。反耶は頭をかかえて倒れながら宿禰を呼んだ。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
窃におもんみるに曾某は、もと一飲賭の無頼、市井の小人、一言の合、栄、
聖眷
(
せいけん
)
を
膺
(
う
)
け、父は
紫
(
し
)
、児は
朱
(
しゅ
)
、恩寵極まりなし。
続黄梁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「殺されてもかまわん」と
生蕃
(
せいばん
)
は決心した。かれの赤銅色の顔の
皮膚
(
ひふ
)
は
緊張
(
きんちょう
)
してその厚いくちびるは
朱
(
しゅ
)
のごとく赤くなった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
「なにが
高
(
たけ
)
えものか。
時
(
とき
)
によったら、
安
(
やす
)
いくらいのもんだ。——だがきょうは
見
(
み
)
たところ、一
朱
(
しゅ
)
はおろか、
財布
(
さいふ
)
の
底
(
そこ
)
にゃ十
文
(
もん
)
もなさそうだの」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
丈
(
たけ
)
高く面
朱
(
しゅ
)
のようなる人なり。娘はこの日より
占
(
うらない
)
の術を得たり。異人は山の神にて、山の神の子になりたるなりといえり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
神前へのお
初穂料
(
はつほりょう
)
として金百
疋
(
ぴき
)
、道中の路用として
一人
(
ひとり
)
につき一
分
(
ぶ
)
二
朱
(
しゅ
)
ずつ、百六十軒の村じゅうのものが十九文ずつ出し合ってそれを分担した。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
青
(
せい
)
州に
朱
(
しゅ
)
老人というのがあって、薬を売るのを家業とし、常に妻と妾と犬とを連れて、南康県付近を往来していた。
中国怪奇小説集:11 異聞総録・其他(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
平次は木戸を押しあけ、
筵
(
むしろ
)
を払って驚きました。まだ検屍のすまぬ太吉の死骸は、薄湿りの大地の上に、
朱
(
しゅ
)
を浴びた
襤褸切
(
ぼろきれ
)
のように倒れていたのです。
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
などとさゝやく言葉がちら/\若い侍の耳に入るから、グッと込み上げ、
癇癖
(
かんぺき
)
に
障
(
さわ
)
り、
満面
(
まんめん
)
朱
(
しゅ
)
を注いだる如くになり、額に青筋を
顕
(
あら
)
わし、きっと詰め寄り
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
本堂から続いているらしい美しい
朱
(
しゅ
)
と緑との
欄干
(
らんかん
)
をもった
廻廊
(
かいろう
)
が、左手から中央へ向かってずーっと伸びて来ている。中央には階段があって、終っている。
鬼仏洞事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
箪笥
(
たんす
)
の小物入れから財布を出して来、中のものを膝の上へ振り落した、「——かぞえてちょうだい、二
分
(
ぶ
)
一
朱
(
しゅ
)
とちょっとあります、あたしのことは大丈夫よ」
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
河童
(
かっぱ
)
、天狗等のポピュラーなものから、前述、あかなめ、こだま、かあにょろ、
朱
(
しゅ
)
の盤、等の特殊な妖怪に至るまで皆、五体をそなえた現実的な姿をしている。
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
母が十七八の時に手写したと云う琴唄の
稽古本
(
けいこぼん
)
を見たことがあるが、それは半紙を四つ折りにしたものへ横に唄の詞を
列
(
つら
)
ね、
行間
(
ぎょうかん
)
に琴の
譜
(
ふ
)
を
朱
(
しゅ
)
で
丹念
(
たんねん
)
に書き入れてある
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
原田氏の
頸
(
くび
)
に、
打紐
(
うちひも
)
のような太い血管がうきあがり、顔は
朱
(
しゅ
)
を流したようにまっ赤になった。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
満面に
朱
(
しゅ
)
をそそぎ、今にもみんなに躍りかかって、わたしたちを
木
(
こ
)
っ
端
(
ぱ
)
みじんに八方へ投げ飛ばしそうな
剣幕
(
けんまく
)
を見せたが、令嬢がちらりと彼を見て、指を立てておどかすと
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
台に塗った
漆
(
うるし
)
は、三重吉の云ったごとく、いつの間にか黒味が
脱
(
ぬ
)
けて、
朱
(
しゅ
)
の色が出て来た。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして早くもその
燃
(
も
)
え立った白金のそら、
湖
(
みずうみ
)
の向うの
鶯
(
うぐいす
)
いろの原のはてから
熔
(
と
)
けたようなもの、なまめかしいもの、古びた黄金、
反射炉
(
はんしゃろ
)
の中の
朱
(
しゅ
)
、一きれの光るものが
現
(
あら
)
われました。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ことにその彩色が——彩色のうち、人目を奪う
紅
(
あか
)
と
朱
(
しゅ
)
の色が大したものです。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
呉須は非常にむつかしいのだそうで、これで当時一家をなしてる人はなかったようだ。赤絵という方は、
朱
(
しゅ
)
で
極々
(
ごくごく
)
細
(
こまか
)
く念入りに描いたもので、これには必ず
金
(
きん
)
が使ってあるのが普通だった。
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
各色の音楽的調和によりて
企
(
くわだ
)
てずして
自
(
おのず
)
から画面に空気の感情を起さしむるといへども、肉筆画にありては、
朱
(
しゅ
)
、
胡粉
(
ごふん
)
、
墨
(
すみ
)
等の顔料は皆そのままに独立して生硬なる色彩の乱雑を生ずるのみ。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「二
朱
(
しゅ
)
か。可哀そうだな。一
分
(
ぶ
)
はずんでおくんなせえ。なあおい
勘太
(
かんた
)
」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
おや、これは一
朱
(
しゅ
)
でございます、こんなに頂いていいのでしょうか。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
極性
(
ごくしょう
)
な
朱
(
しゅ
)
でござったろう、ぶちまけた
甕
(
かめ
)
充満
(
いっぱい
)
のが、時ならぬ
曼珠沙華
(
まんじゅしゃげ
)
が咲いたように、
山際
(
やまぎわ
)
に燃えていて、
五月雨
(
さみだれ
)
になって消えましたとな。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と——お粂も
気
(
け
)
どっていたのか、
朱
(
しゅ
)
の丸柱の影を交わして、ニッと凄いほど白い顔を、釘勘の方へ酬いたように見えましたが
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
林は奥へ往くにしたがって、
躑躅
(
つつじ
)
と皐月が多くなった。
朱
(
しゅ
)
、
紅
(
べに
)
、
白
(
しろ
)
といちめんに咲き乱れた花は美しかった。憲一はその花の間を
縫
(
ぬ
)
うて往った。
藤の瓔珞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
内から呉れた金が一
歩
(
ぶ
)
もあったか、その
外
(
ほか
)
に
和蘭
(
オランダ
)
の字引の
訳鍵
(
やくけん
)
と云う本を
売
(
うっ
)
て、
掻集
(
かきあつ
)
めた所で二
歩
(
ぶ
)
二
朱
(
しゅ
)
か三朱しかない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
朱凌谿は近づいた山田の姿を見、その声を聞くと、満面
朱
(
しゅ
)
を注いで、いきなり相手の顔に、パッと唾をはきかけた。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ムラムラと湧きあがってくる
焦燥感
(
しょうそうかん
)
を、グッと
抑
(
おさ
)
えつけ、
傍
(
かたわら
)
を見ると、年若い参謀は、満面を
朱
(
しゅ
)
にして、拳を握っていた。参謀長は、はッと気を取直した。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それから逃げて
私
(
わたくし
)
は一
分
(
ぶ
)
三
朱
(
しゅ
)
と二百五十六文、女は三朱と四十八文ばかり有ったので、其の
外
(
ほか
)
にはお花と線香を
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それでその「木」へ
一
(
ぼう
)
を彫って、
其処
(
そこ
)
だけ特に
朱
(
しゅ
)
を入れたんだそうです。それ
限
(
きり
)
、幽霊は出ては来なかった。
□本居士
(新字新仮名)
/
本田親二
(著)
かれは
日清戦争
(
にっしんせんそう
)
に出征して
牙山
(
がざん
)
の
役
(
えき
)
に敵の大将を銃剣で
刺
(
さ
)
したくだりを話すときにはその目が輝きその顔は昔のほこりにみちて
朱
(
しゅ
)
のごとく赤くなるのであった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
そいつァ
夢
(
ゆめ
)
に
牡丹餅
(
ぼたもち
)
だの。十
文
(
もん
)
と
踏
(
ふ
)
んだ
手
(
て
)
の
内
(
うち
)
が、三
両
(
りょう
)
だとなりゃァ一
朱
(
しゅ
)
はあんまり
安過
(
やすす
)
ぎた。三
両
(
りょう
)
のうちから一
朱
(
しゅ
)
じゃァ、
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
一
本
(
ぽん
)
、
抜
(
ぬ
)
くほどの
痛
(
いた
)
さもあるまいて
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
父追いかけて取りすくめ
膝
(
ひざ
)
の下に押しつけてみれば、色赤きこと
朱
(
しゅ
)
のごとく、両眼の他に
額
(
ひたい
)
になお一つの目あり、口広く耳に及び、上に歯二つ下に歯二つ生えていた。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
見るがいい、あの武家の
袂
(
たもと
)
の先には、ここからでも見えるくらい、
朱
(
しゅ
)
が付いてるだろう、あれが手習師匠の証拠だ、子供の手習を直すとき
朱硯
(
しゅすずり
)
に袂の先が入ったんだろう
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
太陽は入江の水平線へ
朱
(
しゅ
)
の一点となって没していった。
不弥
(
うみ
)
の
宮
(
みや
)
の
高殿
(
たかどの
)
では、
垂木
(
たるき
)
の
木舞
(
こまい
)
に
吊
(
つ
)
り
下
(
さ
)
げられた
鳥籠
(
とりかご
)
の中で、
樫鳥
(
かけす
)
が習い覚えた
卑弥呼
(
ひみこ
)
の名を一声呼んで眠りに落ちた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
好ましい
鬘
(
かずら
)
を子にあてがうためには、一
分
(
ぶ
)
二
朱
(
しゅ
)
ぐらいの金は惜しいとは思わなかった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その梁の
横
(
よこた
)
わった向うには、
黒煙
(
くろけむり
)
が濛々と巻き上って、
朱
(
しゅ
)
を
撥
(
はじ
)
いた火の粉さえ乱れ飛んでいるではございませんか。これが私の妻でなくて誰でしょう。妻の最期でなくて何でしょう。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女中に一
朱
(
しゅ
)
の祝儀をやった。かれは空腹のところへ無暗に飲んで食って、女中に
扶
(
たす
)
けられてようように二階を降りたが、もう正体もなく酔いくずれて、足も地につかないほどになっていた。
放し鰻
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
各色の音楽的調和によりて企てずして
自
(
おのず
)
から画面に空気の感情を起さしむるといへども、肉筆画にありては、
朱
(
しゅ
)
、
胡粉
(
ごふん
)
、
墨
(
すみ
)
等の
顔料
(
がんりょう
)
は皆そのままに独立して生硬なる色彩の乱雑を生ずるのみ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この漆はね、先生、
日向
(
ひなた
)
へ出して
曝
(
さら
)
しておくうちに
黒味
(
くろみ
)
が取れてだんだん
朱
(
しゅ
)
の色が出て来ますから、——そうしてこの竹は
一返
(
いっぺん
)
善く煮たんだから大丈夫ですよなどと、しきりに説明をしてくれる。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
審美書院
(
しんびしょいん
)
の自慢の
木版摺
(
もくはんずり
)
の色でみると、千年の間土に
埋
(
うも
)
れていて、今また陽光を浴びた八戒は、
鮮
(
あざや
)
かな
朱
(
しゅ
)
と黄色との着物を着て、一、二年前に描かれたような色彩のまま保存されていたのである。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「オヤ、火鉢のひきだしに、一
朱
(
しゅ
)
あったのかえ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
先頭の大将は、と見れば、
虎鬚
(
とらひげ
)
さかさまに立ち、目は百
錬
(
れん
)
の鏡に
朱
(
しゅ
)
をそそいだごとく、その叫ぶ声は雷にも似て一丈八尺の大矛をふり廻し
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朱
常用漢字
中学
部首:⽊
6画
“朱”を含む語句
朱塗
朱雀大路
朱欒
朱色
朱筆
朱雀
朱鞘
朱羅宇
朱泥
朱唇
朱門
朱砂
朱雀野
堆朱
朱漆
朱盆
朱房
朱実
黝朱
朱柄
...