まし)” の例文
私も、その頃阿母おふくろに別れました。今じゃ父親おやじらんのですが、しかしまあ、墓所はかしょを知っているだけでも、あなたよりましかも知れん。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何にもくれなかったよりはましだ、こう思って、あきらめるともなしにあきらめるうちに、いつか又ごろりと横になって寝てしまいました。
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
加へ新規しんき建添たてそへなどし失費もいとはず人歩をまして急ぎければわづかの日數にて荒増あらまし成就じやうじゆしたれば然ばとて一先歸國すべしと旅館へは召し連下男一人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
聞かない方がましかも知れませんよ。それから、——今は話せないんだから、そのつもりでいて下さい。適当の時機が来なくっちゃ話さないんだから
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まち独立どくりつ立派りっぱ病院びょういん維持いじされようはいとか、とにかくわるいながらも病院びょういんのあるのはいよりもましであるとかと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかしそう云っては生硬になるのがいやです。家常茶飯と云うと、また套語とうごきらいがある。それでも生硬なのよりはましだと思うのは、私だけの趣味なのです。
山々の雪は里地さとちよりもきゆる㕝おそけれども、春陽しゆんやう天然てんねんにつれて雪解ゆきげに水まして川々に水難すゐなんうれひある事年々なり。
大島仁藏翁おほしまじんざうをう死後しご權藏ごんざう一時いちじ守本尊まもりほんぞんうしなつたていで、すこぶ鬱々ふさいましたが、それも少時しばしで、たちまもと元氣げんき恢復くわいふくし、のみならず、以前いぜんましはたらしました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
車屋にめた賃銭を払おうとしたら、骨を折ったからましを呉れという。余所の車は風を切って飛ぶように走る中を、のそのそと歩いて来たので、ちッとも骨なんぞ折っちゃいない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一 女は我親の家をばつがず、舅姑の跡を継ぐ故に、我親よりも嫜を大切に思ひ孝行をなすべし。嫁して後は我親の家にゆくこともまれなるべし。まして他の家へは大方は使をつかわして音問いんもんなすべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は今日けふは昼も夜も何も食べなかつた。独逸ドイツの国境でボオイは私をれて行つて十五円程のまし切符を買はせた。マウリス氏はこの時もその影を見て又何か事がおこつたかと降りて来てれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
又「成程増田屋でましを付けるのは榊原の家来で榊原を名乗るようなもので」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんにも持たずに出た方がましだと云ふ。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一年ましに強く利くのだからな。
然りといへども繁華はんくわの日夜にましけるゆゑ少々つゞのうつたへはふん/\としてさらにやむことなしさればこそ奉行ぶぎやうは是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まち獨立どくりつ立派りつぱ病院びやうゐん維持ゐぢされやうはいとか、かくわるいながらも病院びやうゐんるのはいよりもましであるとかと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
山々の雪は里地さとちよりもきゆる㕝おそけれども、春陽しゆんやう天然てんねんにつれて雪解ゆきげに水まして川々に水難すゐなんうれひある事年々なり。
御坊様おばうさま血気けつきはやつて近道ちかみちをしてはなりましねえぞ、草臥くたびれて野宿のじゆくをしてからが此処こゝかつしやるよりはましでござるに。はい、けてかつしやれ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
先の日汝が手を合せ、親の敵の討てるよう剣術を教えてくだされと、頼まれた時のせつなさは百倍ましであったるぞ、定めて敵を討ちたいだろうが、我が首を切る時はたちまち主殺しの罪に落ちん
「案外丈夫そうだ。まアこれでもい、無いよりかましだろう。その内大工を頼んで本当に作らすことに仕よう」と言って「竹でこしらえても木戸は木戸だ、ハ、ハハハハ」と笑いながら屋内うちへ入った。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
まし種々いろ/\に手をかへいひよるゆゑをつと喜八と申者あるうちは御心に從ひては女の道たち申さずと一すんのがれに云拔いひぬけけるを或時粂之進ちやくま持來もちきたる其手をらへ是程までに其方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「真とに毒ですよ、冷えると悪いから立っていらっしゃい、立っていらっしゃいよ。その方がましですよ。」
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
数日処をうつさず、一日暴風ばううに水まして光りし物所をうしなふ、のち四五町川下に光りある物螢火けいくわの如し。
ほんとにどくですよ、えるとわるいからつていらつしやい、つていらつしやいよ。そのはうましですよ。」
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
数日処をうつさず、一日暴風ばううに水まして光りし物所をうしなふ、のち四五町川下に光りある物螢火けいくわの如し。
「さあ、どうぞ、旦那様、奥様、これへお掛け遊ばして、いえ、もう汚いのでございますが、お立ちなすっていらっしゃいますより、ちっとはましでございます。」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……こっちの木の葉より、羽団扇はうちわの毛でもちっとはましだろうと思うから、お酌をしますとね、(聞け——娘。)と今度はお酌のおかげで、狐が娘になったんですがね。
心ゆかしにこれを上げよう、これでもここらにちらばった落葉朽葉よりいくらかまし、志は松の葉だ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うやらお前様めえさまよりましだんべいで、出来できこと助言じよごんべい、ところ手伝てつだふべい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さきへ死ぬ方がまだましだ、あの子は男だからこらえるでしょう、……後へ残っちゃ、私はおんなで我慢が出来ないって言ったんですとさ。……ちょいとどうしましょう。私、涙が出てよ。……
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、がつてではない。あぢはとにかく、もののなまぬるいよりははうましだ。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれども、淡泊たんぱくで、無難ぶなんで、第一だいいち儉約けんやくで、君子くんしふものだ、わたしすきだ。がふまでもなく、それどころか、椎茸しひたけ湯皮ゆばもない。金魚麩きんぎよぶさへないものを、ちつとはましな、車麩くるまぶ猶更なほさらであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
世界に二人と無い夫だと思え。早瀬よりえらい男だ。学問も出来る、名も高い、腕も有る、あれよりは年も上だ。脊も高い、腹もたしかだ、声もおおきい、酒も強い、借金も多い、男ぶりもあれよりましだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きっとそうときまりませんから、もしか、死んでそれっきりになってはなさけないんですもの。そのくらいなら、生きていて思い悩んで、わずらって、段々消えてきます方が、いくらかましだと思います。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
八郎に取っても、お久という人の一類と交渉を持たなくてはならないのなら、むしろ野三昧の人足の方がましかも知れない。いわんや、亡者を焼く烈々たる炎には、あの雪のはだが脂を煮ようものを。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あわせぢやけれどの、れた上衣うわぎよりはましでござろわいの、ぬしも分つてある、あでやかな娘のぢやで、お前様にちょういわ、其主そのぬしもまたの、お前様のやうな、わか綺麗きれいな人と寝たら本望ほんもうぢやろ、はゝはゝはゝ。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けがらはしいよくのあればこそうなつたうへ蹰躇ちゆうちよをするわ、そのかほこゑけば、渠等かれら夫婦ふうふ同衾ひとつねするのにまくらならべて差支さしつかへぬ、それでもあせになつて修行しゆぎやうをして、坊主ばうずてるよりは余程よほどましぢやと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
浅草へ行って蔵前辺に屋台店でも出してみよう、煮込おでんのつゆを吸っても、かつえて死ぬにはましだという、祖父の繰廻しで、わずか残った手廻てまわりの道具を売ってうごきをつけて、その俵町の裏長屋へ越して
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いえ、思ったより、昨夜ゆうべよりはちっとましですよ。」
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じゃ青大将の方がましだったんだ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(でも水の上よりはましですわ。)
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)