)” の例文
所歓いろいて了ふし、旦那取だんなとりは為ろと云ふ。そんな不可いや真似まねを為なくても、立派に行くやうに私が稼いであるんぢやありませんか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
列に立つ女たちは、自分たちの列のどの場所でも、そのようにして素ばしこく姿をくらます野菜をきとめる可能はもっていない。
列のこころ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その一方では、鈴子未亡人と森川森之助は、かれた二つの水のように、急速に接近し始めて、離れがたいものになって行く様子でした。
そして、早熟ませた葉子への執着が、き切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい恍惚境エクスタシーだった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
が、階子段の下まで行くと、胸は迫って、涙はハラハラととめどなくぐるので、顔をおさえて火鉢の前へ引っ返したのである。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
仕合谷から折尾谷オリオダンの間、本流が大岩壁で両岸からかれて、ちょうど大門の扉を半開きにしたような趣きの所など、面白かった。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
すなわち城外の諸渓しょけいの水をきてそそぎ、一城のを魚とせんとす。城中ここに於ておおいに安んぜず。鉉曰く、おそるゝなかれ、われに計ありと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
御覧ごろうじませ、あの辺りの堤が、百五十間ほど切ってあります。足守の本流をかれた水は、彼処かしこからあふれこんでおりまする」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵将らの素志がこの社会の皮相なヨーロッパ化をきとめ、武士道を再興して人心を一新したいと願うところにあったとしても
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、たちまち鶏のむれが、一斉いっせいときをつくったと思うと、向うに夜霧をき止めていた、岩屋の戸らしい一枚岩が、おもむろに左右へひらき出した。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
... とく思量しあんして返答せよ」ト、あるいはおどしあるいはすかし、言葉を尽していひ聞かすれば。聴水は何思ひけん、両眼より溢落はふりおつる涙きあへず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
ひさしたゞよ羽目はめなびいて、さつみづつる、はゞ二間にけんばかりのむらさきを、高樓たかどのき、欄干らんかんにしぶきをたせてつたもえる、ふぢはななるたきである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いかにもお言葉通り海は飲み干しませうから、その代り海へ入つて来る世界中の河といふ河の水を、すつかりきとめて戴きたいと言つて。」
ベーリング海峡の海水をきとめると、そこから南の地方が暖流のために、にわかに温くなるのだ。いままで寒帯だった地方が温帯に化けるのだ。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
下手しもて空際そらぎわには高圧線の鉄塔が見える。大同電力のダムでかれた河流は百八十尺の高さにその水深を増したというのだ。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
左近はそう云いながら、しかしそこにはもうき止めることのできない、時代の流れのはげしさを認めざるを得なかった。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小屋は、田圃たんぼわきの流れをき止めた、せいぜい一坪ぐらいの池の上に、かやの屋根を葺き出して三方を藁で囲ってある。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
明けのつから暮の六つまで、人をいたり流したりしていましたが、これはもちろん、その時刻にしてはあまりに早過ぎることなのであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは外記のためであるということが判ったので、かねて機会を待っていた大菱屋ではこれを究竟くっきょうの口実にして、すぐに茶屋に通じて外記をいた。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
親爺が見番の役員なので、二人をき止めるために、どんな機関からくりをしていないとも限らず、気がめているのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「野原」や中洲にころげ落ちかゝつてゐた時とは! その時は、この溪流でさへくものもなく濁つた急流であつた。
伯母は涙きもへず「——長二や、——私や、かうしてお前とるいて居ながら、コツクリと死にたいやうだ——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
色々の色にこがれて居る山と山との間の深い谷底を清滝川きよたきがわが流れて居る。川下がきとめられて緑礬色りょくばんいろの水が湛え、褐色かっしょくの落葉が点々として浮いて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
是とてもめて引いてくるほどの流れが無ければ、小さな島々の住民にはまずくわだてられないことであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼女は、交通をかれている間に知らず識らず彼を恋い始めていたのではなかったか。そして此の歌こそはその恋愛の最初の表現ではなかったであろうか。
そうした行列の中を一台立派な高級自動車が人の流れにかれながらいるのを見ると、車の中には多分掛物でも入っているらしい桐の箱が一杯に積込まれて
震災日記より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ひて言へば、不自然な快活さだ。何かの理由で今までかれてゐた快活の翼が急に眼醒めざめたやうな。……伊曾は鋭いひとみで少女を見すゑながらさう直感した。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
「今日のみの縁とは? 墓にかるるあの世までもかわらじ」と男は黒きひとみを返して女の顔をじっと見る。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さればわが前に今影なしとも、こはたがひに光をかざる諸天に似てあやしむにたらず 二八—三〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
其の心のうちを推量致すと小主水も可愛そうになって堪りません、命までもと入揚いりあげております情人おとこは二階をかれて仕舞い、厭な客に身請されねばならぬのでげすから
溪間たにまの温泉宿なので日がかげり易い。溪の風景は朝遅くまでは日影のなかに澄んでいる。やっと十時頃溪向こうの山にきとめられていた日光が閃々せんせんと私の窓をはじめる。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
佐保川の水をき入れた庭の池には、遣り水伝いに、川千鳥のく日すら、続くようになった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
かの女は急に規矩男が不憫ふびんたまらなくなった。かの女のきとめかねるような哀憐あいれんの情がつい仕草に出て、規矩男の胸元についているイラクサの穂をむしり取ってやった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そして時々明るい顔を鈴のようにつらねた満員電車が、チン/\と緩やかにその流れをかつき且通し、自動車の警笛の音と共に交通巡査の手がくる/\と忙しく廻っていた。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
男女の間の情愛は肉をとおして後に開かれるのだと、今までの経験からもめている渡瀬には、これほどこうじてきた恐ろしい衝動をきとめる力はもうなくなりかけていた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
間断なくこの高原に作用をして、火山の泥流は更に水をき止めて、神苑のような田代池などいう後成的の湖水を作って、殊に秋ともなれば、湖畔の草を、さやさやと靡かせ
日本山岳景の特色 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
それから身を起して、何向なにむきも少し歩こうと思った。そして、水車のようなものがあると見え、流をいた処をわたって行った。人家は全く絶えて、すでに森が迫って来ている。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
早川の水がかれて淵を成すところ、激して飛瀑ひばくを成すところ、いずれもよき画題である。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
この私がもしも畜生なら彼奴きゃつは泥棒というものじゃ! 泥棒と云えばあの野郎め、俺にかれたその夜から裏手の石垣を掻き登り、お前のへやこっそりと忍んで行くということだが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
へどろの赭土あかつちさらして、洒し尽して何の濁りも立てずに、浅く走つて行く水は、時々ものにかれて、ぎらりぎらりとがらになくひらめいたり、さうかと思ふと縮緬ちりめんしわのやうに繊細に
つまりその滝の横に運河を掘ってその滝の上流をき止めて、滝壺の水を掻き干して、底の方に溜まっている四百億円の砂金をスコップで貨車へ積み込もうという曠古こうこの大事業だ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と、たか調しらべ荒鷲あらわしの、かぜたゝいてぶごとく、ひく調しらべ溪水たにみづの、いはかれてごとく、檣頭しやうとうはし印度洋インドやうかぜげんくだくるなみおとして、本艦々上ほんかんかんじやう暫時しばしなりまなかつた。
彼の眼はいろいろのものを見ながらはなはだつかみどころのない。キンカ糖の塔のように崩れた行先が眼の前に横たわった。この行先はひたすら広大にのみなりゆきて、彼の一切のみちき止めた。
白光 (新字新仮名) / 魯迅(著)
そして母親や女主人の方で二人の間をくようにすればするほど三野村の方で一層躍起になってお園が花にいっている出先までも附きまとうて商売の邪魔になるようなことをしたりするのであった。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
い止め兼ねる主君は、開拓主事である阿賀妻にたすけをもとめるにきまっていた。そのときそこでこの流れをきとめる力が彼に在り得たか?——むろん無かった。身をこわすより手はなかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
何かものをしゃべると云ったところで、それも矢張り独り言でもした時のこと位だろう。その長い間、たゞき止められる一方でいた言葉が、自由になった今、後から後からと押しよせてくるのだ。
独房 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
陛下の御歌は実に為政者の金誡である。「浅しとてせけばあふるゝ」せけばあふるる、実にその通りである。もし当局者が無暗むやみかなかったならば、数年前の日比谷焼打事件はなかったであろう。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
胸が塞がつて熱い大粒の泪がき切れず湧きあがるのであつた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
冬晴の芝山を越えそのかげに魚釣ると来れば落葉散りけり
渓をおもふ (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
いついつきあへぬおもひゆたかにてせちにあらなむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)