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堰
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せ
ふりがな文庫
“
堰
(
せ
)” の例文
所歓
(
いろ
)
は
堰
(
せ
)
いて了ふし、
旦那取
(
だんなとり
)
は為ろと云ふ。そんな
不可
(
いや
)
な
真似
(
まね
)
を為なくても、立派に行くやうに私が稼いであるんぢやありませんか。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
列に立つ女たちは、自分たちの列のどの場所でも、そのようにして素ばしこく姿をくらます野菜を
堰
(
せ
)
きとめる可能はもっていない。
列のこころ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その一方では、鈴子未亡人と森川森之助は、
堰
(
せ
)
かれた二つの水のように、急速に接近し始めて、離れ
難
(
がた
)
いものになって行く様子でした。
奇談クラブ〔戦後版〕:08 音盤の詭計
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、
早熟
(
ませ
)
た葉子への執着が、
堰
(
せ
)
き切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい
恍惚境
(
エクスタシー
)
だった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
が、階子段の下まで行くと、胸は迫って、涙はハラハラととめどなく
堰
(
せ
)
き
上
(
あ
)
ぐるので、顔を
抑
(
おさ
)
えて火鉢の前へ引っ返したのである。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
▼ もっと見る
仕合谷から
折尾谷
(
オリオダン
)
の間、本流が大岩壁で両岸から
堰
(
せ
)
かれて、ちょうど大門の扉を半開きにしたような趣きの所など、面白かった。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
乃
(
すなわ
)
ち城外の
諸渓
(
しょけい
)
の水を
堰
(
せ
)
きて
灌
(
そそ
)
ぎ、一城の
士
(
し
)
を魚とせんとす。城中
是
(
ここ
)
に於て
大
(
おおい
)
に安んぜず。鉉曰く、
懼
(
おそ
)
るゝ
勿
(
なか
)
れ、
吾
(
われ
)
に計ありと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
御覧
(
ごろう
)
じませ、あの辺りの堤が、百五十間ほど切ってあります。足守の本流を
堰
(
せ
)
かれた水は、
彼処
(
かしこ
)
からあふれこんでおりまする」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
敵将らの素志がこの社会の皮相なヨーロッパ化を
堰
(
せ
)
きとめ、武士道を再興して人心を一新したいと願うところにあったとしても
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
が、たちまち鶏の
群
(
むれ
)
が、
一斉
(
いっせい
)
に
鬨
(
とき
)
をつくったと思うと、向うに夜霧を
堰
(
せ
)
き止めていた、岩屋の戸らしい一枚岩が、
徐
(
おもむ
)
ろに左右へ
開
(
ひら
)
き出した。
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
... とく
思量
(
しあん
)
して返答せよ」ト、あるいは
威
(
おど
)
しあるいは
賺
(
すか
)
し、言葉を尽していひ聞かすれば。聴水は何思ひけん、両眼より
溢落
(
はふりおつ
)
る涙
堰
(
せ
)
きあへず。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
廂
(
ひさし
)
に
漾
(
たゞよ
)
ひ
羽目
(
はめ
)
に
靡
(
なび
)
いて、
颯
(
さつ
)
と
水
(
みづ
)
に
落
(
お
)
つる、
幅
(
はゞ
)
二間
(
にけん
)
ばかりの
紫
(
むらさき
)
を、
高樓
(
たかどの
)
で
堰
(
せ
)
き、
欄干
(
らんかん
)
にしぶきを
立
(
た
)
たせて
散
(
ち
)
つたも
見
(
み
)
える、
藤
(
ふぢ
)
の
花
(
はな
)
なる
瀧
(
たき
)
である。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「いかにもお言葉通り海は飲み干しませうから、その代り海へ入つて来る世界中の河といふ河の水を、すつかり
堰
(
せ
)
きとめて戴きたいと言つて。」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ベーリング海峡の海水を
堰
(
せ
)
きとめると、そこから南の地方が暖流のために、
俄
(
にわ
)
かに温くなるのだ。いままで寒帯だった地方が温帯に化けるのだ。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
下手
(
しもて
)
の
空際
(
そらぎわ
)
には高圧線の鉄塔が見える。大同電力のダムで
堰
(
せ
)
かれた河流は百八十尺の高さにその水深を増したというのだ。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
左近はそう云いながら、しかしそこにはもう
堰
(
せ
)
き止めることのできない、時代の流れのはげしさを認めざるを得なかった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
小屋は、
田圃
(
たんぼ
)
わきの流れを
堰
(
せ
)
き止めた、せいぜい一坪ぐらいの池の上に、
萱
(
かや
)
の屋根を葺き出して三方を藁で囲ってある。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
明けの
六
(
む
)
つから暮の六つまで、人を
堰
(
せ
)
いたり流したりしていましたが、これはもちろん、その時刻にしてはあまりに早過ぎることなのであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それは外記のためであるということが判ったので、かねて機会を待っていた大菱屋ではこれを
究竟
(
くっきょう
)
の口実にして、すぐに茶屋に通じて外記を
堰
(
せ
)
いた。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
親爺が見番の役員なので、二人を
堰
(
せ
)
き止めるために、どんな
機関
(
からくり
)
をしていないとも限らず、気が
揉
(
も
)
めているのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「野原」や中洲にころげ落ちかゝつてゐた時とは! その時は、この溪流でさへ
堰
(
せ
)
くものもなく濁つた急流であつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
伯母は涙
堰
(
せ
)
きも
敢
(
あ
)
へず「——長二や、——私や、
斯
(
かう
)
してお前と
歩
(
あ
)
るいて居ながら、コツクリと死にたいやうだ——」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
色々の色に
焦
(
こが
)
れて居る山と山との間の深い谷底を
清滝川
(
きよたきがわ
)
が流れて居る。川下が
堰
(
せ
)
きとめられて
緑礬色
(
りょくばんいろ
)
の水が湛え、
褐色
(
かっしょく
)
の落葉が点々として浮いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
是とても
堰
(
せ
)
き
止
(
と
)
めて引いてくるほどの流れが無ければ、小さな島々の住民にはまず
企
(
くわだ
)
てられないことであった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼女は、交通を
堰
(
せ
)
かれている間に知らず識らず彼を恋い始めていたのではなかったか。そして此の歌こそはその恋愛の最初の表現ではなかったであろうか。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そうした行列の中を一台立派な高級自動車が人の流れに
堰
(
せ
)
かれながらいるのを見ると、車の中には多分掛物でも入っているらしい桐の箱が一杯に積込まれて
震災日記より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
強
(
し
)
ひて言へば、不自然な快活さだ。何かの理由で今まで
堰
(
せ
)
かれてゐた快活の翼が急に
眼醒
(
めざ
)
めたやうな。……伊曾は鋭い
眸
(
ひとみ
)
で少女を見すゑながらさう直感した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
「今日のみの縁とは? 墓に
堰
(
せ
)
かるるあの世までも
渝
(
かわ
)
らじ」と男は黒き
瞳
(
ひとみ
)
を返して女の顔を
眤
(
じっ
)
と見る。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さればわが前に今影なしとも、こはたがひに光を
堰
(
せ
)
かざる諸天に似てあやしむにたらず 二八—三〇
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
其の心の
中
(
うち
)
を推量致すと小主水も可愛そうになって堪りません、命までもと
入揚
(
いりあ
)
げております
情人
(
おとこ
)
は二階を
堰
(
せ
)
かれて仕舞い、厭な客に身請されねばならぬのでげすから
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
溪間
(
たにま
)
の温泉宿なので日が
翳
(
かげ
)
り易い。溪の風景は朝遅くまでは日影のなかに澄んでいる。やっと十時頃溪向こうの山に
堰
(
せ
)
きとめられていた日光が
閃々
(
せんせん
)
と私の窓を
射
(
い
)
はじめる。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
佐保川の水を
堰
(
せ
)
き入れた庭の池には、遣り水伝いに、川千鳥の
啼
(
な
)
く日すら、続くようになった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
かの女は急に規矩男が
不憫
(
ふびん
)
で
堪
(
たま
)
らなくなった。かの女の
堰
(
せ
)
きとめかねるような
哀憐
(
あいれん
)
の情がつい仕草に出て、規矩男の胸元についているイラクサの穂をむしり取ってやった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして時々明るい顔を鈴のようにつらねた満員電車が、チン/\と緩やかにその流れを
且
(
かつ
)
堰
(
せ
)
き且通し、自動車の警笛の音と共に交通巡査の手がくる/\と忙しく廻っていた。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
男女の間の情愛は肉をとおして後に開かれるのだと、今までの経験からも
決
(
き
)
めている渡瀬には、これほど
嵩
(
こう
)
じてきた恐ろしい衝動を
堰
(
せ
)
きとめる力はもうなくなりかけていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
間断なくこの高原に作用をして、火山の泥流は更に水を
堰
(
せ
)
き止めて、神苑のような田代池などいう後成的の湖水を作って、殊に秋ともなれば、湖畔の草を、さやさやと靡かせ
日本山岳景の特色
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
それから身を起して、
何向
(
なにむき
)
も少し歩こうと思った。そして、水車のようなものがあると見え、流を
堰
(
せ
)
いた処をわたって行った。人家は全く絶えて、すでに森が迫って来ている。
ドナウ源流行
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
早川の水が
堰
(
せ
)
かれて淵を成すところ、激して
飛瀑
(
ひばく
)
を成すところ、いずれもよき画題である。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
この私がもしも畜生なら
彼奴
(
きゃつ
)
は泥棒というものじゃ! 泥棒と云えばあの野郎め、俺に
堰
(
せ
)
かれたその夜から裏手の石垣を掻き登り、お前の
室
(
へや
)
へ
窃
(
こっそ
)
りと忍んで行くということだが
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
へどろの
赭土
(
あかつち
)
を
洒
(
さら
)
して、洒し尽して何の濁りも立てずに、浅く走つて行く水は、時々ものに
堰
(
せ
)
かれて、ぎらりぎらりと
柄
(
がら
)
になく
閃
(
ひらめ
)
いたり、さうかと思ふと
縮緬
(
ちりめん
)
の
皺
(
しわ
)
のやうに繊細に
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
つまりその滝の横に運河を掘ってその滝の上流を
堰
(
せ
)
き止めて、滝壺の水を掻き干して、底の方に溜まっている四百億円の砂金をスコップで貨車へ積み込もうという
曠古
(
こうこ
)
の大事業だ。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と、
高
(
たか
)
き
調
(
しらべ
)
は
荒鷲
(
あらわし
)
の、
風
(
かぜ
)
を
搏
(
たゝ
)
いて
飛
(
と
)
ぶごとく、
低
(
ひく
)
き
調
(
しらべ
)
は
溪水
(
たにみづ
)
の、
岩
(
いは
)
に
堰
(
せ
)
かれて
泣
(
な
)
く
如
(
ごと
)
く、
檣頭
(
しやうとう
)
を
走
(
はし
)
る
印度洋
(
インドやう
)
の
風
(
かぜ
)
、
舷
(
げん
)
に
碎
(
くだ
)
くる
波
(
なみ
)
の
音
(
おと
)
に
和
(
わ
)
して、
本艦々上
(
ほんかんかんじやう
)
、
暫時
(
しばし
)
は
鳴
(
なり
)
も
止
(
や
)
まなかつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
彼の眼はいろいろのものを見ながらはなはだ
攫
(
つか
)
みどころのない。キンカ糖の塔のように崩れた行先が眼の前に横たわった。この行先はひたすら広大にのみなりゆきて、彼の一切の
路
(
みち
)
を
堰
(
せ
)
き止めた。
白光
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
そして母親や女主人の方で二人の間を
堰
(
せ
)
くようにすればするほど三野村の方で一層躍起になってお園が花にいっている出先までも附き
纏
(
まと
)
うて商売の邪魔になるようなことをしたりするのであった。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
喰
(
く
)
い止め兼ねる主君は、開拓主事である阿賀妻に
援
(
たす
)
けをもとめるにきまっていた。そのときそこでこの流れを
堰
(
せ
)
きとめる力が彼に在り得たか?——むろん無かった。身をこわすより手はなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
何かものをしゃべると云ったところで、それも矢張り独り言でもした時のこと位だろう。その長い間、たゞ
堰
(
せ
)
き止められる一方でいた言葉が、自由になった今、後から後からと押しよせてくるのだ。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
陛下の御歌は実に為政者の金誡である。「浅しとてせけばあふるゝ」せけばあふるる、実にその通りである。もし当局者が
無暗
(
むやみ
)
に
堰
(
せ
)
かなかったならば、数年前の日比谷焼打事件はなかったであろう。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
胸が塞がつて熱い大粒の泪が
堰
(
せ
)
き切れず湧きあがるのであつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
冬晴の芝山を越えそのかげに魚釣ると来れば落葉散り
堰
(
せ
)
けり
渓をおもふ
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
例
(
いつ
)
も
例
(
いつ
)
も
堰
(
せ
)
きあへぬ
思
(
おもひ
)
豐
(
ゆた
)
かにて
切
(
せち
)
にあらなむ。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
“堰”の解説
堰(せき)とは、河川の流水を制御するために河川を横断する形で設けられるダム以外の構造物で堤防の機能をもたないものをいう。
(出典:Wikipedia)
堰
漢検準1級
部首:⼟
12画
“堰”を含む語句
大堰
堰堤
大堰堤
堰止
大堰川
井堰
堰塞
堰杙
馬堰棒
目堰
堰留
堰口
大洗堰
小堰
二挺堰
堰料
竹堰
目堰笠
堰切
疏通堰
...