口笛くちぶえ)” の例文
こうしたひとたちのあつまるところは、いつもわらごえのたえるときがなければ、口笛くちぶえや、ジャズのひびきなどで、えくりかえっています。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからは金太郎きんたろうは、毎朝まいあさおかあさんにたくさんおむすびをこしらえていただいて、もりの中へかけて行きました。金太郎きんたろう口笛くちぶえいて
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
教官室には頭の禿げたタウンゼンド氏のほかに誰もいない。しかもこの老教師は退屈まぎれに口笛くちぶえを吹き吹き、一人ダンスを試みている。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一言ひとことも物を言いませんでした。画家は口笛くちぶえを吹きました。ナイチンゲールが歌いはじめました。一羽いちわまた一羽と、だんだん高く。
小頭こがしら雁六がんろくが、ピューッと口笛くちぶえを一つくと、上から、下から伊部熊蔵いのべくまぞうをはじめすべての者のかげが、ワラワラとそこへけあつまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから元気よく口笛くちぶえきながらパンってパンのかたまりを一つと角砂糖かくざとうを一ふくろ買いますといちもくさんに走りだしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
余が口笛くちぶえいたら、彼女かのじょはふっと見上げたが、やがて尾をれて、小さな足跡あしあとを深く雪に残しつゝ、裏の方へ往って了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
口笛くちぶえ、やじ、ののしり声、モンクスがすっかりおびえているので、アメリカ人が承知しないのだ。場内はたいへんなさわぎだ。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
あいちやんはあまへるやうなこゑで、『まァ、可哀相かあいさうに!』とつて、おもはず口笛くちぶえかうとしました、が、てよ、其犬そのいぬころがゑてては
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
しかし、先生はまどのそばへ歩みよって、しばらく外をながめていました。そうして、きげんのいいときのいつものくせで、そっと口笛くちぶえを吹きはじめました。
はま通りを歩いていると、ある一軒の魚の看板の出た家から、ヒュッ、ヒュッ、と口笛くちぶえが流れて来た。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
したら、ひとたといふらせに、口笛くちぶえかうぞ。そのはなもおこせ。吩附いひつけたやうにせい、さ。
口をとんがらしてへたな口笛くちぶえをふいてみたり、なにかたべるものをくれるように見せかけたり、いっしょに遊ぼうというように道ばたの草の上にねころんで見せたりしました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
(これから蓼中たでなか御門みかどに行って、そっと弦打つるうち(弓のつるをならすことである)をして下さい。すると、だれかがそれに答えて弦打をするでしょう。そうしたら、口笛くちぶえいて下さい。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
忽然こつぜんとしてプラットフォームは、る人をいて捨てたようにがらんと広くなる。大きな時計ばかりが窓の中から眼につく。すると口笛くちぶえはるかのうしろで鳴った。車はごとりと動く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
で、夜になるといつも、小松屋の店の硝子戸ガラスどの外に来て口笛くちぶえを吹いたり、暗闇くらやみの中に煙草たばこの火をちらつかせたりして私に合図あいずをした。すると私は、何とか口実こうじつをつけては家を出た。
自宅じたくには、金塊きんかいこそないけれど、でめきん、りゆうきん、しゆぶんきん、各種各様かくしゅかくよう金魚きんぎょつてある。ランチュウを木製もくせいはちにいれてながいことながめて、うれしそうに口笛くちぶえをふきだした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
巡査じゆんさや、憲兵けんぺいひでもするとわざ平氣へいきよそほふとして、微笑びせうしてたり、口笛くちぶえいてたりする。如何いかなるばんでもかれ拘引こういんされるのをかまへてゐぬときとてはい。れがため終夜よつぴてねむられぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とき山彦やまびこ口笛くちぶえくかと、ふくろふこゑが、つきそらをホツオーホとはしる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
谷ぞこはひえびえとして木下こしたやみわが口笛くちぶえのこだまするなり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
代りに素気そっけなく横を向いて口笛くちぶえいている。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、小唄こうた口笛くちぶえでふいていました。
まがき根近し、忍び足、細ら口笛くちぶえ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
三郎さぶろうは、しばらくってこのようすをていましたが、ボンは、いまだ三郎さぶろうつけませんでした。そこで三郎さぶろう口笛くちぶえらしました。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから私たちは泥岩の出張でばったところりついてだんだん上りました。一人の生徒はスイミングワルツの口笛くちぶえきました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
勝手の方で、めしをやる合図あいず口笛くちぶえが鳴ったので、犬の家族はね起きて先を争うて走って往った。主人はやおら下駄げたをぬいで、芝生の真中まんなかに大の字に仰臥ぎょうがした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
竹童は、とくいの口笛くちぶえを吹きながら、ほかのさるとごッたになって、深林のおくへおくへとかけこんでいったが、ややあって、頭の上でバタバタという異様いようなひびき。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二十八歳としてあるが、どんな女性だったのだろうか……僕と同じ年齢ねんれいで亡くなった、この新墓の主の墓標の言葉に、僕は全く口笛くちぶえさえ吹きたくなったほど気持ちが軽くなった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
巡査じゅんさや、憲兵けんぺいいでもするとわざ平気へいきよそおうとして、微笑びしょうしてたり、口笛くちぶえいてたりする。如何いかなるばんでもかれ拘引こういんされるのをかまえていぬときとてはい。それがため終夜よっぴてねむられぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
騎士きしらしいひげが、あごのまわりにちぢれていましたが、その男のにはなみだがたまっていました。それもそのはず、人々から口笛くちぶえでののしられて、舞台を引き下がってきたばかりだったのです。
『どうともおまへ勝手かつてつて歩兵ほへい口笛くちぶえはじめました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ヂュリエットまた階上かいぢゃうあらはれて、そっ口笛くちぶえらす。
わたしもいそいそ口笛くちぶえいて
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
するといぬは、この口笛くちぶえきつけて、きゅうがってこっちへけてきました。そしてよろこんでクンクンいて三郎さぶろうにすがりつきました。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すきとおった硝子ガラスのようなふえが鳴って汽車はしずかに動きだし、カムパネルラもさびしそうに星めぐりの口笛くちぶえきました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
竹童ちくどう口笛くちぶえを鳴らしながら、鹿をおきずてにして、岩燕いわつばめのごとく、渓流けいりゅうをとびこえてゆくと、さるの大群も、口笛について、ワラワラとふかい霧の中へかげを消してしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此時このとき侍童こわらはあなたにて口笛くちぶえく。
口笛くちぶえきながら、街道かいどうはしりました。そらには、小波さざなみのようなしろくもながれていました。午後ごごになると、うみほうから、かぜきはじめます。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
町のあかりは、やみの中をまるで海のそこのおみやのけしきのようにともり、子供こどもらの歌う声や口笛くちぶえ、きれぎれのさけび声もかすかに聞こえて来るのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そうして、くるしそうないきづかいをしていました。口笛くちぶえきましても、ついてくる気力きりょくがもうボンにはなかったのであります。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから元気よく口笛くちぶえきながらパン屋へ寄ってパンのかたまりを一つと角砂糖を一ふくろ買いますと一目散いちもくさんに走りだしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
子供こどもは、ふたたびたからかに、口笛くちぶえらしました。すると、あかとりは、すぐみんなのあたまうえ電信柱でんしんばしらにきてまりました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ジョバンニはもう頭を引っ込めたかったのですけれども明るいとこへ顔を出すのがつらかったのでだまってこらえてそのまま立って口笛くちぶえいていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なぜなら、あたまはきれいにわけているし、くつはぴかぴかひかっているし、口笛くちぶえなどふいてあるくし、どこにも、苦労くろうなんか、なさそうだからでした。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
助手はのんきにうしろから、チッペラリーの口笛くちぶえいてゆっくりやって来る。鞭もぶらぶらふっている。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あるあさ三郎さぶろうきてそとますと、いつもよろこんでってくるボンがえませんでした。かれ不思議ふしぎおもって口笛くちぶえらしてみました。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二つまわってもう学校も見えなくなり前にもうしろにも人は一人も居ず谷の水だけ崖の下で少しにごってごうごう鳴るだけ大へんさびしくなりましたので耕一は口笛くちぶえ
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いつも、こうして口笛くちぶえけば、とおくからききつけて、けてきたものです。かれは、家無いえなしのジャックをおもうと、こころなかかなしかったのでした。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子どもらは、みんな新らしい折のついた着物を着て、星めぐりの口笛くちぶえいたり
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ボンはいるかしらん。」と、正雄まさおはいって口笛くちぶえいてみました。けれど、ボンはどこからもはしってきませんでした。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)