利口りこう)” の例文
流して泣居なきゐるに大岡殿三吉を見らるゝに如何いかにも物賢ものかしこく利口りこうさうなる小僧ゆゑ此者をだまし能々よく/\聞糺きゝたゞさば百兩の盜賊も知れるに相違なしと最初さいしよより目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こんなことをっておしゃべりをしていくうちに、くらげはいったいあまり利口りこうでもないくせにおしゃべりなおさかなでしたから、ついだまっていられなくなって
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
猫女ねこおんなに……首領、おまえさんは利口りこうだよ。眼はしがくよ。しかし、猫女はおまえさんより一枚上手だ。さっき、抜穴ぬけあなのなかで、まんまと、猫女にまきあげられたよ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
○「自分ながら利口りこう過ぎるのが鼻につくから、少し馬鹿になる稽古けいこをしようと思うんだけど。」
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
恐らくこれは、さも利口りこうぶっている彼の頭脳に、非常な欠陥があった証拠ではありますまいか。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それにまた理窟りくつで自分をやりこめるほどゴットフリートが利口りこうだなどとは、思いもよらないことだった。かれはやり返してやる議論ぎろん悪口あっこうを考えたが、思いあたらなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
馬は動物のなかで一番利口りこうだといわれている。この馬は、源三郎の愛馬で、故郷伊賀からの途中も、駕籠でなければこの馬にまたがり、しじゅう親しんできたものだった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
無敵むてきにわけのわからぬ強情がうじよう加减かげん唯〻たゞ/\女房にようぼうにばかりやはらかなる可笑をかしさも呑込のみこめば、伯母おばなるひと口先くちさきばかりの利口りこうにてれにつきてもからさつぱり親切氣しんせつげのなき
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
娘があんまり利口りこうでもないしするから、片方の口は信じられないと、女の子によほど心を傾けて居ない栄蔵は、やきもきして、どうにかせずばとさわぐお節をなだめて居た。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「あれ、お前もなかなか洒落しゃれたことを言うぜ。何時の間に、そんなに利口りこうになったんだ」
ところで彼は、ルピック夫人が、利口りこうで確かな助手をしがっているということを感づいた。どうせ彼女は、それを口に出していうはずはない。それほど負け惜しみが強いのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「よきは利口りこうだからねえとこるんだぞ」おしなはいつた。おつぎは自分じぶんむしろうへいてつた。おつぎの落葉おちばほこりよごれてた。ふたゝ庖丁はうちやうつたとき大根だいこにはゆびあとがついた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
代助は、う真卒性急に万事を疑ふには、あまりに利口りこうに生れぎた男である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
西洋あちらの子供はいたつ利口りこうだといふお話で。著述ちよじゆつをなさるおかたがございます。
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちひさき潛門くゞりもんなか引込ひつこんで、利口りこうさうなをぱつちりと、蒋生しやうせいじつ
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うだ/\、全體ぜんたい杉村君すぎむらくんは、我々われ/\蠻勇ばんいうおどろいてしまつたのだ。とて太刀打たちうち出來できないから、それで見物けんぶつまはつたのだ。人間にんげん利口りこう出來できてる。我々われ/\馬鹿ばか出來できてるよ』と水谷氏みづたにしふ。
だまれ! だまれ、だまれ。だまっておれのいいつけどおりにしていればいいんだ。おまえは利口りこう人間にんげんじゃないし、あまり役に立ちそうもないが、おれのいいつけどおりにやりさえすれば、おれはいつもおまえを
利口りこうになりたくないかい?」と尋ねると
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
とられる半間はんまに 利口りこう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ま、お利口りこうだこと」
聞かれいやとよ夫は差置さしおき外々ほか/\の御役人にては誰が利口りこう發明はつめいなるうはさにやと仰せらる其時伊勢守さん候外御役人にては町奉行越前など發明との評判に御座候やにうけたまはる旨を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一寸法師いっすんぼうし宰相殿さいしょうどののお屋敷やしき使つかわれるようになってから、からだこそちいさくても、まめまめしくよくはたらきました。たいへん利口りこうで、いているものですから、みんなから
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
何しろ、力があってけんが立つということになっていたから、がさほど利口りこうでない大迫玄蕃、年功というわけで平番士の中では比較的上席じょうせきにもいたし、城中で怖い者がなかった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
にあるころ唐棧とうざんぞろひに小氣こきいたまへだれがけ、お世辭せじ上手じようず愛敬あいけうもありて、としかぬやうにもい、父親てゝおやときよりはかへつてみせにぎやかなと評判ひやうばんされた利口りこうらしいひと
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まったく利口りこうそうなところの感じられない、野蛮人やばんじんのような、異様な相好そうこうでした。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
うむ、はたきふかくなくつちや收穫んねえものよそら、らあさかりころにや此間こねえだのやうにあさうなあもんだたあねえのがんだから、現在いまぢやはあ、悉皆みんな利口りこうんなつてつかららがにやわかんねえが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
フランス人に言わせるとこの方が生活にも人生にも利口りこうなやり方だと言う。
女性崇拝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
田舎にもこんなに人間が住んでるかとおどろいたぐらいうじゃうじゃしている。利口りこうな顔はあまり見当らないが、数から云うとたしかに馬鹿に出来ない。そのうち評判の高知の何とか踴が始まった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たつとき事もあり、あはれなる事もあり、少しは空物語そらものがたりもあり、利口りこうなる事もありと前文ぜんぶんしるかれたり、竹取物語たけとりものがたり宇津保物語うつぼものがたりはなし父母ちゝはゝにして、それよりしもかたいたりては、ぢゞは山へ、ばゞは川へ洗濯せんたく
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わかしてつかはすはずなれど夫よりは近所ゆゑ湯に入てるがよいお文も父と共にゆくべしと辯舌べんぜつ利口りこうを以て口車くちぐるまに乘せ金のつると思ふめひのお文は如何なる容貌しろものかとお文が仰向あふむくかほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なかのよれるやうな可笑をかしきことをば眞面目まじめりておつしやりしものなれども、今日此頃けふこのごろのおひとるさ、くいほどお利口りこうことばかりおあそばして、わたしのやうな世間見せけんみずをばひらんでまるめて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「お待ちよ。そんな古い手は、よそじゃア知らないけれど、この神田じゃアきかないんだよ。あたしがこうやってにこにこ笑っているうちに、お前さん、とっとと帰ったほうが利口りこうのようだね。出直しておいでよ、顔でも洗ってサ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
とし十六じふろくなれども不圖ふとところいちか、肩幅かたはゞせばくかほちひさく、目鼻めはなだちはきり/\と利口りこうらしけれどいかにもせいひくければひとあざけりて仇名あだなはつけゝる、御免ごめんなさい、と火鉢ひばちそばへづか/\とけば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うでれは此樣このやう活地いくぢなし、馬車ばしやおもひもらぬこと此後このご辻車つぢぐるまひくやられたものければ、いまのうちおさまりをかんがへて、利口りこうもの出來できる、學者がくしや好男子いろをとこで、としわかいにのりかへるがずゐ一であらう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)