)” の例文
ある時ヘルンから万葉集の歌を質問され、答えることができなかったので、泣いてその無学を詫び、良人に不実の罪の許しをうた。
此書このしよ全部ぜんぶ六巻、牧之老人ぼくしらうじんねふりかる漫筆まんひつあづさまたざるの稿本かうほんなり。ゆゑ走墨乱写そうぼくらんしやし、また艸画さうぐわなり。老人らうじんしめして校訂かうていふ。
信頼できる支那学者であることをきいており、亜細亜研究所にこの詩人がつとめているときいたので、訪ねて行って教えをうた。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
これを先生にうて時事新報の紙上に掲載けいさいすることとなし、なお先生がこの文を勝、榎本二氏に与えたる後、明治二十五年の二月
瘠我慢の説:01 序 (新字新仮名) / 石河幹明(著)
先方と直接お逢いになってお話をする必要もあると思われるから、明日、とにかく銀座の私の事務所までおいでをう、という文面で
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
もし、この侍の頼みをこばめば、この侍は自分たちをただでくはずはないし、そのいを容れれば、関所で当然見つかるであろうし——
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
体温計を与へて見ると微熱がある。顔いろもわるい。夫人はその場で電話器を取り上げて、聖心会病院の院長の診断をうたのである。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
家に帰るべきわがうんならば、強ひてとどまらむとひたりとて何かせん、さるべきいはれあればこそ、と大人おとなしう、ものもいはでぞく。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かくて一方には大厦たいか高楼こうろうにあって黄金の杯に葡萄ぶどうの美酒を盛る者あるに、他方には襤褸らんるをまとうて門前に食をう者あるがごとき
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
家を移し、姉上の上京をい、比較的に安全な位置に彼女を置いて来たというのも、それは皆彼女のために計ったことであると書いた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此書このしよ全部ぜんぶ六巻、牧之老人ぼくしらうじんねふりかる漫筆まんひつあづさまたざるの稿本かうほんなり。ゆゑ走墨乱写そうぼくらんしやし、また艸画さうぐわなり。老人らうじんしめして校訂かうていふ。
もう忍耐にんたい出來できない、萬年まんねんペンをとつてりあげた、そのおそろしいしもとしたあわれみをふかのようにいてゐる、それがたゝけるか。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
ソヴィエト政権転覆のため、武力援助を日本側代表にい、敗戦後、独逸ドイツにはウクライナ、日本には沿海州を与えることを約束しました。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
美青年は応接室のアーム・チェアに腰を浮かすようにして、物にかれた眼で明智を見つめながら、真剣な調子で名探偵の判断をうた。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼れはなつかしさの余り、その香水を所有したいと云ふ欲望にかられ、ほんの一二滴をシャンダーラム夫人へうた訳なのである。
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
一度単于は李陵を呼んで軍略上の示教をうたことがある。それは東胡とうこに対しての戦いだったので、陵は快くおのが意見を述べた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
俊寛 (あわれみをうごとく)康頼殿、あなただけはわしを見捨ててくださるな。あなたは成経殿の例にならってくださるな。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
なんだかこの会話をしている時、マリイの顔に、人のあわれみをうような、自覚したる忍耐の表情が見えたように、病人は感じた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
戒問樹かいもんじゅという木の下に、地蔵菩薩が待っていて、お地蔵さんは子供の神様で情け深い方ですから、こどもたちのために哀れみをいます。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
浜田は口をもぐもぐやらせて、何か云いそうにしましたけれど、矢張黙って、私の前にあわれみをうかのごとく、うなじを垂れてしまいました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
高野山の弘法大師などが、猟人の手から霊山の地をい受けたなどという昔話は、恐らくはこの事情を反映するものであろうと考えます。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その一言は、「まあわしの許しをえ、わしの首に飛びついてこい!」という心の底のやさしい言葉を言い換えたものであった。
うて其上に山田と計て死骸をば泣々なき/\寺へはうむりけり不題こゝにまた其頃の北町奉行は大岡越前守忠相たゞすけというて英敏えいびん活斷くわつだん他人ひとまさり善惡邪正じやせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
昨年の春より今年の春まで一年ひととせ三月みつきの間、われは貴嬢きみわるるままにわが友宮本二郎が上をしるせし手紙十二通を送りたり
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
江戸開城かいじょうの後、予は骸骨がいこつい、しばらく先生とたもとわかち、あと武州ぶしゅう府中ふちゅうの辺にけ居るに、先生は間断かんだんなく慰問いもんせられたり。
君が東京にどうしてもいると言うなら、芳子を国に帰すか、この関係を父母に打明けて許可をうか、二つの中一つを選ばんければならん。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ある時も、彼女はパリへ立つ友人を見送る子供と三四人の同窓と、外国航路の船を見いかたがた横浜へ行こうとして、庸三の許しをうた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
夫人の整った美しい顔にあわれみをうようなすがりつきいような功利的な表情が浮んで、夫人の顔にはじめて生気を帯ばした。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そのほか君の前に書画帖を置いて画をふ者あれば君は直に筆をふるふて咄嗟とっさ画を成す。為山いざん氏の深思熟考する者と全く異なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
理詰りづめで判断はできるが、自分はだいたいの見地けんちよりこの問題を見る力なく、取捨しゅしゃ去就きょしゅうに迷うゆえ、いわゆる先輩の判断をうというならば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
なかはいってたすけをいますと、小舎こやなかには、おばあさんとむすめ二人ふたりきりで、いろりにをたいて、そのそばで仕事しごとをしていたのであります。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
臨終いまわきわに、兼てより懇意こころやすくせし、裏の牧場まきばに飼はれたる、牡丹ぼたんといふ牝牛めうしをば、わが枕ひよせ。苦しき息をほっ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
たとえば、五穀の豊饒ほうじょうを祈り、風水害の免除をいのり、疫病の流行のすみやかに消熄しょうそくすることをいのみまつったのである。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
自分の彼女に対する不信は、後でどんなにでも、許しをえばいゝ。今は妻を、美しい夫人の圧迫から救ってやるのが第一の急務だと思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
今度は声を出して案内をうて見た。依然、何の反響もない。留守なのかしら空家あきやなのかしらと考えているうちに私は多少不気味になって来た。
ベルを押して案内をうと、エデスが玄関に出て来た。四人の警官は、ガス会社の定期検査人にけていたので、わけなく家内へはいり込んだ。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
主題の提出をい受けて、即座に豪壮絢爛けんらんきわまる変奏曲をつけ、弾き終ると、驚き呆れるモーツァルトを尻目しりめに、たつとざして外へ出てしまった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
いちばん明るい窓の下で、毛脛けずねを撫でているところへ、例によって案内もわず、友人の鳴海三郎なるみさぶろうがぬっと入ってきた。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小山「ウム、そうし給え。では僕が大原君をここへ呼ぼう。ちょいと紙と筆を貸し給え、僕が今手紙を書くから」と紙筆をいて換舌かんぜつとくしたた
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
案内をうと、顔見知りの内門弟があらわれて、仰天しながら奥へ知らせる、すぐに稽古着のままで甲子雄が出てきた。
初午試合討ち (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まだ店の窓にはすっかり白い幕が下げてあって、とびらの片っぽだけ白い布があげてあった。朝のことゆえ遠慮なく戸口をけてはいり案内をうた。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
このあわれむべき学生、このから威張りの坊や、脚の曲った髯の男が、エルザのベッドの前にひざまずき、手を合わせて許しをうている情景だった。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
すっかり父にうち明けて、その許しをいたかった。メルキオルはそこにいなかった。クリストフは眠りもしないで、真夜中まで彼を待っていた。
紅玉島の無線電信局が、東京に向って、『休戦』をうて来た。ぐずぐずしていると、『富士』に攻めほろぼされると思って、おびえたのだろう。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
わたくしおもってそう案内あんないいました。すると、としころ十五くらいえる、一人ひとり可愛かわいらしい小娘こむすめがそこへあらわれました。
ものして婦女童幼ふじょどうようこびんとする世の浅劣せんれつなる操觚者流そうこしゃりゅうは此の灯籠の文をよみて圓朝おじはじざらめやはいさゝか感ぜし所をのべて序をわるゝまゝ記して与えつ
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
また貴族の中の音楽の大家たちにも教えをうたものですが、特に尊敬すべき芸を持った人と思われるのはなかった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
かかとのまがった靴をいて、紫色のはかまを引きずって、髪を算盤珠そろばんだまのようにふくらまして勝手口から案内もわずにあがって来た。これは主人のめいである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いろいろと私はその始末にいて思案したが、結局龍巻たつまき村の藤屋氏のもとに運んで保存をうより他は道はなかった。
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
星岡窯のAの発見と出資によって掘り下げていった洞窟どうくつの陶土、……それは容易に翁の使者の命ずるままうままには諾するところがなかったらしい。