じや)” の例文
なくてはならざる匂袋、これを忘れてなるものか。頭巾づきんかぶつて肩掛を懸ける、雨の降る日は道行合羽みちゆきがつぱじやの目のからかさをさすなるべし。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そいつは氣の毒だ。岡つ引だつて鬼やじやぢやねえ、早くさういつて來さへすれば、何とかお前一人の身の振方位考へてやつたのに——」
じやの道はへびだ。弁護士は直に其を言つた。丑松は豊野の停車場ステーションで落合つたことから、今この同じ列車に乗込んで居るといふことを話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
脊戸せどした雨傘あまがさに、小犬こいぬがじやれゝつて、じやいろがきら/\するところ陽炎かげろふえるごと長閑のどかおもはれるもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
實に情なき者にて其の心の恐ろしき事おにともじやともたとがたき大惡人に御座候往昔むかしより惡逆あくぎやく非道ひだうの者のはなしもうけたまはり候へども此平左衞門殿程の大惡非道の人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
千条のじやも等しく眠つて頭から肩に懸つて居る。中央に顔を空に向けて眠つて居るのがメヂューサである。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
雪がら/\降つて來ましてなア、お供のお鶴どんが家へ傘を借りに來ましたんで、家内が嫁入りの時に持つて來た柄の長いじやを袋から出してお貸し申すと
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
けれども私は高利貸だ。世間から鬼かじやのやうにいはれて、この上も無く擯斥ひんせきされてゐる高利貸だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
左舷さげん當番たうばん水夫すゐふおにじやか、つてらぬかほそのこゝろわからぬが、いま瞬間しゆんかん躊躇ちうちよすべき塲合ばあいでないとかんがへたので、わたくし一散いつさんはしつて、船橋せんけう下部したなる船長室せんちやうしつドーアたゝいた。
唄声を背後うしろに、やがて守人は宵闇よいやみの中へさまよい出た。ひやりと横鬢よこびんをかすめる水気に、ぱっとじやを差し掛けて、刀の柄を袖でかばった篁守人、水たまりを避けて歩き出した。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
エデンに嘘吐うそつきのじやと、だまされやすい女とが居るやうに、日本にもこの二つがざらに居るから、この意味で楽園エデンだといふのに異議は無いが、景色はさう/\自慢する程のものではない。
治兵衛梅川などわが老畸人の得意の節おもしろく間拍子とるに歩行かちも苦しからず、じやの滝をも一見せばやと思しが、そこへもおりず巌角にいこひて、清々冷々の玄風げんぷうを迎へ、たいしづかに心のどかにして
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
日高川ひだかがは清姫きよひめなどは、きながらじやになつたといふから、これこの部類ぶるゐれてもい。死靈しれうは、死後しごたましひ異形いげう姿すがたあらはすもので、れい非常ひぜうおほい。そのあらはれかたみな目的もくてきつてことなる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
うらまれるは覺悟かくごまへおにだともじやだともおもふがようござりますとて、ばちたゝみすこびあがりておもておろせば、なん姿すがたえるかとなぶる、あゝかへつたとえますとて茫然ぼんとしてるに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのかみはじやは壺をいだき死せるかな青き蛇紋のうかびあるなり
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
谷路たにぢそこじやりつ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
じやにもなる
おさんだいしよさま (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
が、ではない。ばさりととなへたはおとで、正体しやうたい二本にほん番傘ばんがさ、トじやひらいたはいゝが、古御所ふるごしよすだれめいて、ばら/\にけてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
直接毒蛇に関した話ではないが、じやに縁故がありつ西洋の文学書に度々たび/\引用せらるゝゴーゴンの伝説は、希臘神話中最も興味多き部分であるから、茲に少しく書いて置かうと思ふ。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
じやの唐傘だつたら書生は自分のにする事を知つてゐたが、編笠では使途つかひみちに困つた。で、にかく奥へ入つて居士に訳を話してみると、居士は狼のやうな顔に、にやりと薄笑ひを浮べた。
熟々つく/″\見るに其結構けつこうなるこしらへはまがふ方なき高貴の御品次に御墨付すみつきおしひら拜見はいけんするに如樣いかさま徳太郎君の御直筆おぢきひつとは見えけることわざに云へる事ありじやは一寸にして人をかむの氣ありとらは生れながらにしてうし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其癖そのくせ學校がくかうで、おの/\をのぞきつくらをするときは「じやもんだい、清正きよまさだ。」とつて、まけをしみに威張ゐばつた、勿論もちろん結構けつこうなものではない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
じやの目の傘に
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
餘所よそに見るとは何云心の人なるぞ殊には自分の身勝手みがつてのみ云散いひちらすは鬼かじやか思へば/\なさけなやと愚痴の出るも道理なり偖裏口より入んと思ふにあかり萬燈まんどうの如く大勢なる他人の居る中へかく窶然みすぼらしき姿にて這入はひらん事此家の手前も有ば如何いかゞせんと少間しばしたゝずみ居たりしにかたへに寢て居し一疋の犬あやしく思ひてや齒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ちやうどいまあめれたんだけれど、じやかさ半開はんびらきにして、うつくしいかほをかくしてつてる。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じやからかさ脊筋せすぢさがりにひつかつぎたるほどこそよけれ、たかひくのみちの、ともすれば、ぬかるみのはねひやりとして、らぬだにこゝろ覺束おぼつかなきを、やがて追分おひわけかたいでんとして
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けたならけたでよし今夜こんやじやらうもんねえが、一晩ひとばん出懸でかけてべい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)