)” の例文
塩ブロ、石ブロなどのほかに、小屋がけして石をしきつめ、この石を焼いて水をかけて蒸気をだし、その上にをしいて蒸気浴をする。
人生三つの愉しみ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
……すくい残りのちゃっこい鰯子いわしこが、チ、チ、チ、(笑う。)……青いひれの行列で、巌竃いわかまどの中を、きらきらきらきら、日南ひなたぼっこ。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主人は盃を持ったままの子に出、青年も娘も出て行った。真白な大鶴がななめに中の島をよぎり、低く庭の上をすぎて行った。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
将門は、の子(縁)の端に腰かけた。そして、予期しなかった落着きにつつまれたように、あたりのたたずまいを見まわした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中央ちうあう青竹あをだけ線香立せんかうたてくひのやうにてられて、石碑せきひまへにはひとつづゝ青竹あをだけのやうなちひさなたなつくられた。卯平うへい墓薙はかなぎむれくははつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
といってピグミーは、軽快に立ち上り、またも籠目形の鉄瓶のつるに足をかけて、自在竹をスルスルとのぼって、天井のの間に隠れてしまいました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
の子にしいたひばの葉のうへに赤、青、白、いろいろなほほづきをならべて、雫がほとほととしたたつてゐる。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
猫背の馭者は将棋盤を枕にして仰向あおむきになったまま、を洗っている饅頭屋の主婦の方へ頭を向けた。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
とちは八月じゆくしておつるをひろひ、てのちかはかし、手にもみてあらきふるひにかけて渋皮しぶかはをさり、ぬのをしきてにしたるをおき、よくならし水をうちてしめらせ
きょうも朝から、のような銀糸がいちめんに煙って、かきいばらの花も、ふっくらと匂いかけている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
秋の出水が上流のやなに白泡を立て、注ぎ去れば跡に大きな子持ち鮎が躍っている。その頃は、冷え冷えと流水が足にしむのであるが、鮎の骨は一層やわらかである。
香魚と水質 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
又も飛付とびつく女の一ねんとまらぬ遣らじとあらそひける中茶屋の撞乎どつかり踏拔ふみぬきのゝしり合ていどみける此物おと本坊ほんばうへ聞えしにや何事ならんとあさ看經かんきん僧侶達そうりよたち下男諸共十六七人手に/\ぼう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この町で出来る漆工品として特色の目立つのは長方形の茶盆で、入りのものです。形もすっきりして使い工合も上々であります。土地ではこれを「茶舟ちゃぶね」と呼びます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その席にいた伸子の体は、さつき夫人の語る言葉で巻きにされるように苦しかった。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
中幕「和歌徳雨乞小町わかのとくあまごいこまち」は一幕なり。名は筋をあらわすとはこれ等をやいふならん。芝居にならぬものを芝居にするのは作者に非ず、福助に非ず、けだしにて薬火を燃す男なるべし。
肥後ひご五箇庄ごかのしょうと並んで、山中の隠れ里として有名であった阿波あわ祖谷山いややまなどは、小民の家はみな竹ので、あの頃はまだ夏冬を通して、このタフを着て住んでいるという話であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人の花とながめさせんよりはと無分別を起し、曾根崎の途中でその女を一刀に斬り殺し麦飯屋の下に隠れたが、翌夕腹へって這い出で食を乞う所を召し捕られた(『伝奇作書』初篇上)。
これをしならせて簀框が槽にひたった瞬間、腰、肩、手首が微妙に働いて、どろどろの漉き汁を三四遍揺すったと思うと、にはもう、一枚の紙となるべき繊維が毫末の厚薄もなくすくわれている。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
干す海苔のの辺のなづな伸び過ぎて咲き白らけたり浦の日和に
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕立やかにい上るえん
涼味数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
天井は低く、床は、の子。まッ暗で、箱みたいな湯殿の中である。白い二つの女体が、寄り添って、じいっと、全裸に汗を浮かせていた。
一束の白い菜をかかえた夫は、の子のうえに白い菜を置いたが、筒井つついはそれがどうして手にはいったかをたずねるには、あまりに解り切ったことだった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
(ヤヤ、難有ありがたい、仏壇の中に美婦たぼが見えるわ、の子の天井から落ちい。)などと、膝栗毛の書抜きを遣らっしゃるで魔がすのじゃ、屋台は古いわ、造りも広大。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれみなみいへからりたのこぎり大小だいせう燒木杙やけぼつくひ挽切ひつきつた。しまひかれうしろからけたたけつてのやうによこたへてひくゆかつくつた。たけつたなたかれ所有ものではなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
粉のさわし方は煮てどろどろにして上から水を当てる。これに用いる栃棚とちだなといい、こうぞの皮で編んで布が敷いてある(ひだびと六巻二号)。これを十分に乾燥して後に貯蔵するものと思われる。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三保びとやまだ春寒くを干して海苔たたき貼る唾つけつつ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
だが主膳は、そういう目にあった幾人もの女が、やがてはみな主人の局に、の美魚のごとくよろこんで飼われているのを眼に見てきた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私と同じ年頃の少年らは、みな規則正しい手なれた運び方をして、一と掴みずつの上に棒をならべていた。棒のさきには薬品がくろく塗られてあった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
わびしい山間やまあいの村で、弁当を使った時、雨をしのいで、の子の縁に立掛けた板戸に、(この家の裏で鳴いたり時鳥ほととぎす。……)と旅人の楽書らくがきがあるのを見て、つい矢立を取って
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勘次かんじうへむしろよこたへて、喪心さうしんしたやうに惘然ばうぜんとしてつた。かれ卯平うへい糜爛びらんした火傷やけどた。かれなにおもつたかいそがしくゆき蹴立けたてゝ、桑畑くはばたけあひだぎてみなみいへはしつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蒲原かんばら低地の周辺の村々には、自分の知る限りにおいてもをかかぬ小家がつい近頃まであった。村の衛生係員が床の下を清潔にといってって来ても、どうしようもない土床の家が方々にあった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
眼の白きなまの鰯はめて日乾ひぼしあまぼし串に刺せちふ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まきにした死骸を、海口へ捨てにでも行くらしい家来たちを追いかけて、大機の亡骸なきがらを、彼がいて、この空地の一隅へ埋葬まいそうさせたものだった。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くりやの夕暮、塗籠ぬりごめの二階、の子のたたずまい、庭の中というように、至るところに筒井は夫の呼吸を感じ、そのたびに少しきびしい声音こえになって筒井は胸の中でいった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
電燈のついたばかりの、町店が、一軒、檐下のきしたのごく端近はしぢかで、大蜃おおはまぐり吹出ふきだしたような、湯気をむらむらと立てると、蒸籠せいろうからへぶちまけました、うまそうな、饅頭と、真黄色な?……
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
姉様あねさまはすなわち長男の新婦、上とは屋根裏のことであるが、二階にをかき天井板を張ることは、古くからのことではないから、そこを姉様のつね居処いどころと見たことは、新たな趣向だったかと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
庵はもちろん手狭てぜまだが、軒ばの木々の芽ざし、(縁)に垂るる卯の花の朝露、清楚、眼を洗われるものがある。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生絹は笛の音をの子に出て、膝に手を置いてきき入っていた。吹く人はただ生絹の心をめあてに吹きいっているようで、ほかに、誰も聞いてほしくないふうであった。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
杜若かきつばた一年ひととせうゑたが、あのむらさきのおいらんは、素人手しろうとであかとりぐらゐなところではつぎとしかうとしない。ばかりのこして駈落かけおちをした、どろのまゝの土鉢どばちがある。……それうつして、ふたをした。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
実に、何の苦もなく、濡れ髪の一首級を獲て、たしかめるまでもない気がしながらも、小坪むかいのえんに出て、おりふしの月あかりに、それを、かざして見たのだった。
お鹿の内には、まだ開業当時というので手水鉢も柄杓ひしゃくも無かった。湯殿の留桶とめおけに水をんで、の子の上に出してある。恐らく待合の手水鉢に柄杓の無いのは、かわやに戸の無いより始末が悪い。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お甲は、白い足を、にしのばせて、そっと、前の炉部屋へもどって来た。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこのに、ぼうと映って見えた姿は、まぎれもない寮の御方である。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、駕のとともに、周馬の横鬢よこびんを切ってかすめる。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)